幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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変える程に流れは変わる。

代役は誰?

静かにゆっくりと…

奴らは笑みを浮かべる。


歪の付箋

一通りの区切りがついた所である現象が起こった。

 

インぺリウムの早期退場後、代用として発生した破界の現象。

 

ラマリスの異常現出。

 

出所は破界戦役での最終決戦地となった陰月。

 

そこにペルフェクティオの残滓が残るファートゥムの残骸が鎮座していた。

 

それがこの世界におけるラマリスの発生原因だった。

 

今までスフィアの感知に引っかからなかったのも無限力の横槍が要因だろう。

 

だが、ソルの覚醒に伴い無限力に抗う力を手に入れた以上は倍返しする。

 

今までの分…頸を洗って待っているがいい。

 

と、言う形で鋼龍戦隊と共に駆除に向かいましたとさ。

 

 

******

 

 

問題のブラックリベリオン後の事。

 

エリア11では行政特区での一件に伴う黒の騎士団への弾圧が継続。

 

関りを持つ者や持たぬ者の分別を付けずにイレブンは処理されていった。

 

その処理に関してリモネシア共和国はイレブンを含めたナンバーの人々を緊急避難民として…

 

受け入れる方針を定めた。

 

勿論、ブリタニア・ユニオン側は抗議したが…

 

 

「確証もない一方的な弾圧は虐殺…只のヒトゴロシと変わらない。」

「だが、現に証拠が…」

「よくもまあ上手く造ってますね…コレはB級映画か何かですか?」

 

 

提示されたブリタニア・ユニオン側の証拠映像。

 

その映像に加工されたフェイクフィルターを一つずつ外していく。

 

元の映像は単なるフェイク映像へと変貌した。

 

 

「それにしてもこんな嘘の証拠で世論を動かせましたね?」

「…それは。」

「一方の利益でどれだけの人々が貧困に苦しんでいたか…貴方達が苦しい土下座しても無理でしょう。」

「…(鎧のせいで表情が見えない、彼はどんな表情をしている?」

 

 

更にブリタニア・ユニオンの強制執行への矛盾点を大量に指摘してぐうの音を持たせない様に仕留めた。

 

これに対してユニオン側の外務担当は土気色で絶望した表情。

 

ブリタニア側の外務担当のシュナイゼルも青褪めた表情で顔を引きつらせていた。

 

リモネシア共和国大統領の護衛兼外務代理のファウヌス姿の私がズバズバと腹の痛い所を言ったのが余程堪えたのだろう。

 

 

「…(本気の彼女を敵に回したのが運の尽きだったね。」

 

 

様子を見ていたトレーズさんも困ったような表情を見せていた。

 

まあ、執行しろと言ったのが他の連中である事は理解しているので酷く寝込まない程度にはやってやりました。

 

黒の騎士団代表のゼロの身柄は今の所は行方不明と表向きに公表されている。

 

流れは知っているのでそろそろユーロ・ブリタニアの方へ彼と共に向かっている頃だろう。

 

ジュリアス・シーザーの名で。

 

こっちの地球連邦も出来たてホヤホヤだから仕方がない。

 

方針が切り換わっても外務で互いに小競り合いを続けているのでどうしようもない。

 

アッシュフォード学園にも全生徒の総入れ替えが始まっているし…

 

黒の騎士団やその友人達が真実を知るのはもう少し先になるだろう。

 

 

「それで?まだ続けますか。」

「…いえ、そちらの方針は判りました。」

 

 

衣食住込みで避難民の受け入れをこっちでしてやるんだからさっさと許可しろや?

 

やらねえとその澄まし顔を三枚下ろしにしてやるぞ?

 

と言いそうになったのは気の所為ダヨw

 

 

「所で其処の博士達は隠し事を曝露する気になりましたか?」

 

 

ファウヌスが次の獲物としてコーウェンとスティンガーに視線を移す。

 

 

「隠し事?」

「何の事ですか?」

 

 

ファウヌスは仮面越しであるが、冷徹な視線のまま静かに答えた。

 

 

「ああ、インベーダーに何を言っても無駄でしたね?」

 

 

ファウヌスの発言に議会に出席していた者達はどよめきの声を上げ、当人らも焦った表情をしていた。

 

図体と顔がデカい分…ものすっごく分かりやすい。

 

 

「い、一体何を根拠に?」

「う、うんそうですよ。」

「獅子身中の虫…何処も小競り合いで本質を見抜けないのは置いといて、議会の方達も戦うべき敵を招いてどうするつもりだったのですか?」

 

 

コーウェンとスティンガーは焦りを隠せずにいた。

 

この場の誰も知る筈のない事をファウヌスは理解し徐々に自分達を追い詰めようとしている。

 

 

「早乙女研究所での一件…貴方達が仕組んだ事であるのは知っていますので。」

 

 

同級生のミチルにインベーダーを寄生させ早乙女博士を脅迫しようとしていた事。

 

黙って見過ごすと思ったか?

 

結局、あの悲劇は別の形で起きてしまう未来。

 

それでも救えるのなら救いたい。

 

 

「…」

「戦うのであれば、我々イグジスタンスを敵に回す事になるのはご理解頂けましたか?」

「…コーウェン君。」

「この場はおとなしく去ろう、いずれ真実を知る事になるがね。」

 

 

二人は白衣の中からぐにゃりとインベーダーの眼を現出し周囲にちらつかせて去って行った。

 

インベーダーと同化している基地外博士ズも本能で判っていたのだろう。

 

この場で事を構えても勝ち目がない事を…

 

議会の行われているニューヨーク本部には別室でコーラ飲みながら不貞腐れている次元将も来ている。

 

最初から彼らの正体を暴露して貰う為の茶番劇に付き合わせたのだ。

 

 

「エルガン代表、奴らの後始末はこちらでさせて頂いても?」

「まさかインベーダーの研究を行っている博士達が既に寄生されていたとは…」

「あの見た目な奴らですが、意外に知恵は回る。」

 

 

実際、襲われた人々に寄生し無事だった人々に寄生する。

 

単純であるが、人の心理を理解した上での増殖行為。

 

前世で関りのあったジョッシュ達から経緯を聞いていたが、実際にやられると胸糞悪い。

 

 

「リモード代表…こちらの危険行為に付き合わせてしまい申し訳ありません。」

「いや、私もインベーダーを軽視していた…皆さんも考えを改めてはどうでしょう?」

 

 

もう一つの目的はデモンストレーションとしてインベーダーの危険性を周知して貰う事。

 

誰しもいつどこで寄生され襲われる状況は溜まったものではない。

 

流石の旧三大国家も理解した様だ。

 

 

「…(無限力の圧力か…結局、アロウズの設立は阻止できなかった。」

 

 

…人類が成長する為の流れでは必要な措置なのだろう。

 

彼らでも止められない暴挙に出そうなら所々で妨害して置く。

 

完全に介入するのでは意味が無いから…

 

長々と他勢力の利益目的の議題は終わりを迎えた。

 

 

>>>>>>

 

 

世界が虚偽の世界になりつつある中で芽吹くのは悪意だけではない。

 

 

~ゼロの行方不明から1週間後~

 

 

ブリタニア・ユニオンが植民地化したユーロ方面へ向かう護送列車にて。

 

 

「ルルーシュ、大丈夫?」

「ああ…」

「いくら何でも無茶が過ぎるよ…」

「奴らを欺くにはあれしか方法はなかった。」

 

 

ルルーシュことジュリアス・シーザーの監視兼護衛の任を任されたスザク。

 

彼はゼロを捕らえて皇帝の前に引きずり出した事でナイト・オブ・ラウンズへ昇格。

 

一方で親友を売った裏切り者と呼ばれる末路が待っていても…

 

 

「盗聴や監視の方はない、今なら話せるよ?」

 

 

護送列車の客車の一つ。

 

豪奢な客室の席でルルーシュは片目元だけの仮面を外して一息ついた。

 

そして客室に隠れていた存在に声を掛けた。

 

 

「そちらにも感謝するぞ…アイム・ライアード。」

「…」

「でも、どうして貴方達が協力を?」

「私もまた誰かに利用されるのはまっぴら御免ですので。」

 

 

ゼロとしての姿をルルーシュを皇帝の前で引きずり出した後。

 

彼に新たなギアスがかけられたが…それを彼が偽ったのである。

 

ルルーシュは皇帝のスフィアに掛かったように見えて実は掛けられていない。

 

ギアスを妨害する術はいくらでもある…ただそれだけだ。

 

 

「世界すらも偽るスフィアもあるのなら真実を白日の元に晒して開放するスフィアの存在していただけですよ。」

「…」

「それに見て見たいじゃないですか、あの連結したちくわの様な頭の皇帝がうろたえる姿を?」

「…」

「…」

 

 

あのアイムが嘘ではない発言をする姿に驚く二人。

 

 

「かつての私なら出来なかった事です、偽る事で守れるものがあるのなら私は偽りましょう。」

 

 

白日の元に晒しても意味はない真実ある。

 

優しい嘘もまた必要であると…アイムは彼女に告げられた事を思い出した。

 

 

「今後の連絡役は私とアサキムが行います……それに子供の姿をした曲者にも一泡吹かせたいでしょう?」

「V.Vの事か?」

「ええ、所々でエンデの意思も関わっていると彼女も仰ってましたので…」

「な!?」

「エンデって!」

「その様子では気づいていなかった様子ですね?」

「…」

「エンデの一件はこちらでも対処します。今はすべき事に専念してください。」

「判った。」

「頼みます。」

 

 

その後、ルルーシュはゼロ復活の日までジュリアス・シーザーの傀儡を演じた。

 

 

~ブラックリベリオン後、アシュフォード学園では~

 

 

「えっ、沙慈が?」

「うん…」

「お姉さんが亡くなって学園に通えないからって…うちの学園でも制度利用が出来たのに。」

 

 

ルルーシュ達が学園に来なくなってから目まぐるしく変わった学園。

 

テロ行為を受けて学生の多くが本土へ帰国し残っている学生のはごくわずかとなった。

 

生徒会のメンバーは変わらず通学しているが、ここでも変化が起こった。

 

生徒会のメンバーだった沙慈が退学届を出して学園を去って行った事。

 

従兄の結婚式を無事に終えたルイスが彼のマンションを訪ねた事で発覚した。

 

退去時に大家から彼から預かったと言われた婚約指輪を目にして彼女は涙するしかなかった。

 

 

「私、何も知らなくて…絹江さんが殺されたなんて。」

「沙慈のお姉さん、ジャーナリストだったもんな。」

「シャーリィ…そう言えばルルーシュ達は?」

「ルルも留学先で戦闘に巻き込まれて暫く戻れないって…スザク君も現地で。」

「…ゴメンね。」

「いいの。私もルイスと同じ気持ちだから。」

「ニーナも行政特区の一件であれっきり姿を見せなくなって…」

「皆…バラバラだね。」

 

 

シャーリィからルルーシュが留学先で戦闘に巻き込まれた事。

 

怪我をしエリア11へ戻れない事、スザクも留学先で現地配属が決まり戻れなくなった。

 

妹のナナリーは流れ流れで本国へと戻された。

 

カレンはブラックリベリオンの一件で自身がハーフである事と理不尽に故郷を奪われた民族の怒りを口にして去って行った。

 

流れは変わりつつあった。

 

 

=続=





アンケート撤去しました。

ご協力ありがとうございました。

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