幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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目まぐるしく変わる世界。

それは悪意の流出と噴出。

始めるのは再生への世。





第百十二話 『改始《カイシ》』

 

ブラックリベリオンによる黒の騎士団の一方的な失墜と壊滅。

 

ソレスタルビーイング・実働部隊の崩壊。

 

例の如くのドーバーの悲劇の再来。

 

本来の正史では第303独立愚連隊は時空振動を引き起こせるインぺリウムと手を組む筈だった。

 

だが、イグジスタンスがインぺリウムを仕留めた結果…

 

彼らはその道を断たれた。

 

そして、彼らを利用しようとある存在が協力を申し出た。

 

それがあのエンブリヲでだった。

 

こちら側の説得が早ければ、こんな事を引き起こす必要もなかったのだが…

 

無限力の横槍が早期に起こってしまった。

 

だが、二人はそんな困難の中でもZEXISの協力の元で奇跡を起こした。

 

 

「エウレカ、僕は…!!」

「レントン、私も!」

 

 

虹の光がポケットから溢れ出たのだ。

 

暴走するイマージュ達はエウレカから全ての記憶を貰って消えた。

 

全ての記憶を渡した事で記憶喪失になったエウレカだったが…

 

歌姫達の歌とZEXISで過ごした時間が彼女の記憶を戻した。

 

そして…イマージュ達は記憶と引き換えに彼女に奇跡を残していった。

 

奇跡の後にもう一つ解決しなければならない事がある。

 

彼らの起こした事は許される事ではない。

 

だが、償う事は出来る。

 

ホランド達の身体を急激に成長させている現象。

 

その流れはドーバーの悲劇…不安定な時空振動によって引き起こされたモノ。

 

経過してしまった彼らの時間を戻せないが、スフィアの力で元の流れに戻す事は出来る。

 

ホランド達も治療方法がある事を理解し投降を了承して貰った。

 

こうして、第303独立愚連隊はZEXISに舞い戻る事となった。

 

 

******

 

 

虹の奇跡の日から更に数週間が経過した。

 

早乙女研究所での悲劇とインベーダーの本格的な襲来。

 

ギシン率いる星間連合の一時撤退。

 

偽りの果てのバジュラとの戦い。

 

月に隠れていたムーンWILLとの決着。

 

キリコの因縁。

 

それらのいざこざの収拾を収めて…

 

この多元世界を訪れてから半年程が経過した頃の事。

 

国連のエルガン代表が例の如く拉致監禁を受けそうになったので対処。

 

原因の根源であるリボンズの配下達もとある事で尻尾巻いて逃げて行った。

 

…そんなに生身でMSを切断したのが可笑しかったのか?

 

あっちでは普通の事なのだが?

 

で、平和理事会は並行してエルガン代表が手綱を握れる様にイグジスタンスより護衛を送って置いた。

 

知る限り、まともなジ・エーデルは彼とスズネ先生位なので退場はしないで欲しいです。

 

なので、アロウズも下手な行動を取る事は出来ないだろう。

 

人道を無視した暴走を行うのであれば、容赦なく仕留めるだけだ。

 

一通りの流れで今の状況を察して頂く様に再世の話に入った状態になる。

 

これに並行してアル・ワース事件の解決も行っていく形だ。

 

いい加減、いざこざを解決して終末の日を潜り抜けなければならないので…

 

 

<リモネシア共和国・政庁>

 

 

最下層の円卓の間で各方面の経過報告を行う中。

 

アロウズや裏で暗躍する存在達の動きも警戒しなければならない。

 

そんな最中であるが、あの世界の一件も話に上がった。

 

経過報告の後に声を上げたアウストラリス。

 

 

「アル・ワースへ?」

「はい…アル・ワース側の状況も変わりつつありますし、威力偵察を兼ねて向かいたいと思います。」

「私も国との定期連絡と状況を把握しなければならない。」

「ハスミとユーサーはこのままアル・ワースへ転移か…他に行く者はいるか?」

 

 

現時点でスフィアリアクターは一四名。

 

更にニ、三名がアル・ワース向かっても戦力上のバランスは取れる。

 

 

「では、私が向かいます。」

 

 

軽く挙手しアル・ワース行きを志願するアイム。

 

 

「アイム?」

「私やガイオウ自身、今も表向きは首輪を付けられている扱いでしょう?」

 

 

リモネシア共和国の元、インぺリウムだったガイオウとアイムらはイグジスタンスが現在も監視。

 

本人や次元獣による破壊活動をさせない様に手綱を握っている状況は継続中。

 

表立って動けないのであれば、制限のない別世界で行動するのも悪くないと判断したらしい。

 

 

「ガイオウ、貴方も同行しますよね?」

「そうするか…ここで燻ぶっているよりはな?」

「アウストラリス、暇を持て余す位なら彼に仕事をして貰っては?」

「…そうだな。」

 

 

アイムも上下関係から同僚と化したのでガイオウを様呼びでしなくなった様だ。

 

ガイオウもこの所…思う様に動けない事に窮屈だったらしい。

 

ハスミの助言もあり、アウストラリスは二人のアル・ワース行きを認めた。

 

 

「でもさ、監視の件はどうすんの?」

「国連にはダミーの監視データでも渡して置けばいいでしょう。」

「流石にバレないか?」

「寧ろ…碌な仕事してないし、前回の向こう側のヘマに対する対価にして貰います。」

「あ~成程。」

 

 

エルーナやクロウの疑問も最もだが…

 

国連の平和理事会…例のエルガン代表拉致未遂事件の尻拭いをこちらでしている。

 

そのネタで今回の監視の件に目を瞑って貰う事にした。

 

アロウズの暴走をある程度止められないなら、その位はして貰わなければ困る。

 

 

「ハスミ、鋼龍戦隊はどうしている?」

「…事情を説明し元の世界に帰還して貰っています。」

「次に会う予定は?」

「それは向こう側の上層部次第でしょう。流石に直属の部隊となると動きが制限されてしまうので…」

「制限は避けたいが、向こう側の暴走も捨て置けんからな。」

 

 

鋼龍戦隊は軍上層部…ギャスパル元帥らに紛い物のクロスゲート破壊からの経緯を説明。

 

この事から元帥は軍内部に潜む曲者の正体がクロノである事を理解する。

 

奴らの暗躍に混乱を生じさせ一括りに捕らえる為に秘匿の流れに持って行って貰った。

 

早い話が、こちら側のイグジスタンスの件を知らぬ存ぜぬで通して貰う形に収めたのだ。

 

 

「鋼龍戦隊が去った後、こちら側のラマリスが激減したのも無限力の思惑でしょうし。」

「本来ならば過剰戦力だった者達…彼らの帰還でラマリスを現出させる必要も無くなったと?」

「無限力の横槍がまた飛び火するかもしれませんが、今は様子見をするしかありません。」

「…奴らの気まぐれに付き合わされるのも気に喰わんな。」

「本当ですね。」

 

 

鋼龍戦隊の一時帰還。

 

向こう側での彼らの行方不明は一か月程度。

 

それでも十分な妨害である事も確かだ。

 

今後、彼らはラマリスの痕跡捜査の為に地球圏を右往左往する事となる。

 

イルイに関してはラマリスの気配をいち早く察知出来るのもあるので鋼龍戦隊預かり。

 

あの子の護衛はハーケンさん達に頼んでおいたし…悪い様にならないと思う。

 

 

「…(そろそろ貴女の協力が必要になってきたよ。」

 

 

私は己の身に潜むあの子に静かに語り掛けた。

 

 

=続=





魔獣の潜む世界。

交差するXの名を持つ戦士達。

彼らの出遭いに彼女は静かに答える。


次回、幻影のエトランゼ・第百十三話『交遭《コウソウ》』


彼女の問いは彼らに対するモノと成長を促す為のモノ。

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