幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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世界を巡る。

それは私達が決めた戦いの始まり。

再会と謝罪の意思。

想いは願うだけでは示せないから。



第百十話 『再廻《サイカイ》』

 

前回の三大国家の強硬手段から一週間が経過。

 

ソルの力を引き出した事で主戦力の半数以上が出撃不可能だったイグジスタンス。

 

現時点の三大国家の総戦力でも簡単に陥落する事は出来ずに戦力の多くを失って撤退。

 

そもそも破界の王を仕留めた組織と戦う意思がある事は認めるが…

 

無茶ぶり過ぎる強硬手段には呆れるしかない。

 

見事に惨敗した三大国家は武力による制圧が不可能と判断し再び会談の席へと戻った。

 

最初からそうすればいいのに…と溜息をする私ことハスミであった。

 

 

******

 

 

更に数週間が経過。

 

リモネシア共和国は国連…いや、三大国家といくつかの取り決めを行った。

 

破界の王が現出させた次元獣が今後破壊活動を行わない様にイグジスタンスが手綱を握る。

 

新たに出現した、ラマリス、ルーンゴーレム、アールヤブへの対応。

 

現時点でラマリスへの最も有効な打撃を与えられるのはイグジスタンスと鋼龍戦隊位だ。

 

更にこちら側が独自に転移装置を兼ね備えている事も遠回しに漏れていた。

 

緊急事態に付き、致し方ないと思っている。

 

漏洩の出所はブリタニア・ユニオンから来たあのメガネプリン伯爵辺りだろう。

 

その事を踏まえてイグジスタンスと張り合う国家は出てこないだろう。

 

例外を除いてはだが…

 

それ以上に問題は他にもある。

 

 

「…(エンブリヲ、とうとう現れたか。」

 

 

国連の呼び出しの際、リモネシア共和国の代表護衛と言う形で出席したファウヌス姿の私だが…

 

案の定、国連の新参議員としてエンブリヲが同席していた。

 

どうやら伝手はイノベイト側かららしい。

 

初対面ではあったが、あの品定めをするかの様な見透かした眼は嫌悪を感じた。

 

イグジスタンス代表の護衛と言う形で同席していたストラウス姿のエルーナさんも会談後に気色悪いと話していたし…

 

人数制限があったとは言え、セツコの同席は避けて正解だった。

 

理由として奴の行動は最大限注意しなければならない。

 

声聞いただけであの黒ワカメを思い出しちゃった…

 

 

「…」

 

 

会談の結果。

 

リモネシア共和国は引き続きイグジスタンスとの協力の元で破界の王の監視を続ける事。

 

ZEXISと共に人類共通の敵が出現した場合は率先して行動する事。

 

それらから得られた情報を国連間で共有を行う事。

 

以上の案件で収めた。

 

最初の案件以外はほぼ国連側にとって都合のいい案件だが…

 

此方としても破界の王の件を捥ぎ取るにはこうするしか方法はなかった。

 

まあ、三大国家側も此方に手出しをすれば国そのものを滅ぼす事が可能な戦力を有している事は理解されている。

 

下手な三下芝居をしない限りは目を瞑るつもりだ。

 

 

~半月後~

 

 

目まぐるしく日々は過ぎた…

 

まず、クロウのブラスタが無事リ・ブラスタへと改修作業を終えた。

 

ちなみに武装に関しては例の如くレッドとブルーの両方を換装出来る様に取り計らって貰った。

 

何時もながら資材とお金は大事です。

 

余談だが、資材代を抜いて改修作業費用としてクロウの借金に上乗せされたのは言う迄もない。

 

本人曰く『理不尽だろうがぁ!!!?』と叫んでいる始末。

 

クロウさん、貴方のスフィアは借金と斬っても切れない縁で離れられないんですよ。

 

諦めてください。

 

説明し忘れたMDとエスターの一件であるが…

 

次元獣が人と機体が変異した存在である事とMDの襲撃前に町は既に壊滅していた事をエスターに報告。

 

マルグリットとMDと化していた本人からも謝罪の言葉もあったので彼女なりに決着を着けたらしい。

 

で、エスターも開発中の量産型ブラスタのテストパイロットになる事を告げた。

 

今は戦線に出すのは厳しいが、セツコがみっちりと訓練をサポートすると話していたので参戦が近いだろう。

 

ちなみに展開早すぎない?と思われる方もいらっしゃると思われる。

 

…そうも言ってられない事が起きてしまった。

 

グレン団のカミナとタケルの兄であるマーグが倒された。

 

文字通りではなく本当にだ。

 

別行動中だったZEXISは螺旋王の軍団の一つであるチミルフの軍勢と戦闘。

 

その最中にカミナは死闘の末に…

 

結果、グレン団は拠点となる戦艦ダイグレンを入手するも支柱を失った事に変わりはない。

 

マーグに関してはズールの横槍が切っ掛けである。

 

同じ堕ちた筈の次元将が欲していた力を手に入れ反旗を翻した事が気に食わなかったのだろう。

 

タケルと兄弟同士で戦わせ相打ちの末にゴッドマーズに搭載された爆弾を起爆させようとした。

 

だが、戦闘中に洗脳が解けたマーグは弟を守ろうとして爆弾ごと自身をテレポートし未然に防いだ。

 

マーグの生死は不明であり消息不明となった。

 

ZEXIS側から詳細を追えないかと進言があったので『この世界に彼の反応はない』と告げて置いた。

 

この言葉をどう捉えるから彼ら次第だ。

 

更に月光号のメンバーの離反の際に語られたドーバーの悲劇。

 

フロンティア船団で行われたランカのアイドルデビュー時のテロ。

 

多くの事案が発生する中で最悪な事件が発生した。

 

行政特区日本…

 

エリア11を取り纏める第三皇女ユーフェミアが行おうとした思想。

 

そして『血染めのユフィ』と後世まで語り継がれる事となる大量虐殺。

 

だが、その事件はある事が切っ掛けで形を変える事となった。

 

 

『血塗られた眼』

 

 

行政特区を訪れた人々が全員この現象に巻き込まれ発症。

 

式典に参加していた第三皇女も倒れたと言う事態はブリタニア側に大きな波乱を呼んだ。

 

この現象を引き起こしたのは誰なのかを追求する為に…

 

血塗られた眼の現象は私達側の世界でも認識されているし半発症しているヒビキもいる。

 

解決策が次元力しかないのは理解しているが、人々が絶望に打ち勝ち希望を取り戻さない限りは戻ることはないだろう。

 

現時点で回復策が判明していない奇病と言う形で取り持っている。

 

問題は誰があの血塗られた眼の現象を引き起こしたか?だ。

 

あの時、御使いの気配は感じられなかった…

 

なら、誰が?

 

 

「エンブリヲでは現象を引き起こす事は出来ない……他のバアルが起こした。」

 

 

私はそう結論付けた。

 

アル・ワース側に新たなに転移したセフィーロ王国の一件もある。

 

やるべき事は多すぎる。

 

私は謝罪する、あの国を巻き込んでしまった事への償いの為に…

 

 

=続=





この言葉は誠意で示そう。


次回、幻影のエトランゼ・第百十一話『謝罪《シャザイ》』


振り払った手をもう一度握る事は苦痛であっても取り合う事を忘れてはならない。

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