幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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早期の集結。

それは共鳴。

そして一つへと繋がる。


第百七話 『共鳴《キョウメイ》前編』

 

前回、調査チームはゲートの向こう側にある聖インサラウム王国のある世界へと辿り着いた。

 

だが、王国は既に異世界アル・ワースに取り込まれていたと言う厄介な事が判明。

 

今後はこの一方通行型のクロスゲートと言う抜け穴を駆使し行動するしかない。

 

アル・ワースに潜む暴食の魔獣が動き出す前に…

 

 

******

 

 

前回と引き続き、ユーサー皇子らと対談を進めた。

 

対談の相手にかつて戦ったクロウさんが居てくれた事で流れ的にスムーズに済んだ。

 

ガイオウを止める事はこちらとしても同じ考えなので、彼の生死は今後の動き次第だろう。

 

長々と小難しい話し合いは一言に纏めるとこうなった。

 

 

「では、こちらと共闘関係を結んで頂けると?」

「国の存亡が掛かっている…そしてかつての様に滅びの運命を覆す為に。」

 

 

ユーサー皇子もまた記憶に目覚め、愛情と言う意味を理解した。

 

かつての様な怯えはない。

 

共に立ち向かう姿勢は聖王たる証に相応しかった。

 

 

「殿下、我らも志は同じ…共に戦いましょうぞ。」

「ありがとう、ジェラウド。」

 

 

皇子自身が抱える事を最も信頼した部下であるジェラウドに話していたのだろう。

 

皇子の意志の強さを見抜き、その命を懸けて仕える姿勢だった。

 

私ことハスミは皇子の意思に嘘偽りがない事は能力で判ってしまうので無礼が無いように礼を告げた。

 

 

「ユーサー殿下、ご協力感謝いたします。」

 

 

礼を告げた後、ユーサー皇子よりアル・ワース側の国家並びに勢力圏の解読を求められた。

 

私は変異してしまったアル・ワースに分散された各勢力を説明した。

 

 

「まず、アル・ワースの勢力圏は大きく四つに分けられます。」

 

 

東部に神聖ミスルギ皇国を中心としたマナの国。

 

西部に階層ごとに独自の世界を持つ創界山。

 

南部に聖インサラウム王国。

 

大陸の中心地に魔従教団の聖地である『真実の世界樹』の樹が存在。

 

宇宙空間に該当するエリアには動きらしい動きがないので省きます。

 

 

「本来、南部に位置していたのは獣の国と呼ばれる国家だったのですが…恐らくは無限力の悪戯でしょう。」

 

 

聖インサラウム王国の位置する場所。

 

多元地球ではリモネシア共和国。

 

私達が存在した世界ではマヤン島。

 

それらの国や島が隣接する様に同座標に存在している。

 

これが何を意味しているのか…詳しく調べる必要がありそうだ。

 

 

「その獣の国とは?」

「破界戦役後の多元地球に立国するカミナシティの事です。」

「!?」

 

 

ハスミの説明で驚きを隠せないユーサー。

 

そんな状況でもハスミは冷静に解説を続けた。

 

 

「そしてこの世界では魔獣エンデはアンチスパイラルと対立している様です。」

「対立?」

「魔獣エンデは例の大災害で生き残ったバアル側の高次元生命体だからでしょうか?」

「…」

「今回もアンチスパイラルはスパイラルネメシスを危惧している。」

 

 

元々、天獄戦役終盤でもスパイラルネメシスで滅びるか御使いが故意に滅ぼすかで終焉が定められていた。

 

更にザ・パワーの根源たるオウス・オーバー・オメガことトリプルゼロの存在もあるし…

 

ぶっちゃけ、これがスパイラルネメシスの発生の要因の一つだったりする。

 

トリプルゼロから発せられる次元力が人の子孫繁栄と文明発展をコントロール。

 

つまり、人のDNAを目印に例の生誕と終焉を管理していると言う訳だ。

 

偶に例外とも言える現象としてシンカを迎えた存在が現れる。

 

これに関してはまだ結論を出す事は控えよう。

 

他に解決すべき問題が果てしなく山積みなので。

 

 

「流石にアンチスパイラルと共闘は考えにくいですけどね。」

「アンチスパイラルと共闘だと?」

 

 

敵対していた存在と手を組む。

 

余程の例外が無ければ成し得ないだろう。

 

特に前の大災害で敵対していたアウストラリスもこの言葉には驚きを隠せなかった。

 

 

「こちら側はスパイラルネメシスの絡繰りを理解し対処方法もある…交渉出来る条件は揃っていると思いますが?」

「…問題は奴が交渉を行うか、か?」

「その通りです、恐らくは戦うしか道はないと思いますけどね。」

 

 

ま、人の意思によるアル・ワースの再誕シーンでも見せれば気が変わるかもしれませんけどね?

 

それは最後の最後まで伏せて置きます。

 

 

「話を戻します、他にも脅威となる危険人物は多いので。」

 

 

ハスミは引き続きマナの国と創界山、魔従教団の状況を説明。

 

マナの国を影で支配するエンブリヲと創界山を侵略したドアクダーに関する注意点。

 

上記二名と他の意思によって召喚される存在。

 

協力関係を結べると思われるエクスクロスと呼ばれる義勇軍。

 

シンカの果てに正しき進化を迎えたアウラと神部七龍神と呼ばれる神獣。

 

後者の二つと協力体制を結べば、打開策に繋がる事を告げた。

 

 

「判った、協力関係を結べる様に出会い次第交渉をしよう。」

「殿下、協力関係を結ぶのは良いのですが…全面的はお控えください。」

「何故だ?」

「彼らにも成長が必要だからです。」

 

 

恐らくエクスクロスもZEXISと同様に芽吹いたばかりの若木である。

 

ただ力を貸すのではなく見守る事も必要であるとハスミは答えた。

 

 

「要は飴と鞭です。」

「…(言えない、ハスミさんの飴と鞭の境目が余りにも酷過ぎる事を。」

「…(どう見たってありゃえげつねぇ飴と鞭だろ。」

「…(わーすっごい言われようだけど、お二人様…後で覚悟してくださいね?」

 

 

ヒビキとクロウの内心ツッコミをスフィアで聞いていたハスミ。

 

後に二人にはある意味でお仕置きが待ち構える事となる。

 

アル・ワースに関する情報を一通り話し終えたハスミはユーサーよりある事を尋ねられる。

 

 

「ハスミ、インぺリウムにはシュバルとマルグリットが囚われている。」

「お二人の救助ですね…そろそろZEXISがZEUTHのメンバーと合流し行動を開始する頃合いなので早期救助を考えています。」

「その戦場には余も出陣する。」

 

 

ユーサーの発言にその場の全員が反応した。

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

王自らの出陣に対してジェラウドが静止しするも紛れもない本心で在るとハスミが説明を加えた。

 

 

「殿下、しかし…!」

「余にも借りを返さねばならない相手がいる…二人を救うのは余の義務だ。」

「ジェラウド卿、今の殿下の意思は曲げられません…覚悟を決められたのです。」

 

 

王自ら配下である二人を救いに出向く姿勢を変えられないと悟ったジェラウドは了承の言葉を述べた。

 

 

「…承知しました。」

「済まぬが余の留守の間…国を頼む」

「この命に変えましても死守いたしましょう。」

 

 

ユーサーはジェラウドに国の守護を任せる命令を下した。

 

同時にジェラウドはイグジスタンスと共に多元地球へ向かうユーサーの安全をアウストラリスに願い出た。

 

 

「アウストラリス殿、どうか殿下を…」

「共に戦う同志を見捨てる事はせん、無事に返すと約束しよう。」

 

 

 

話し合いを終えた私達はクロスゲートから多元地球へと帰還。

 

反撃の狼煙となる戦いへ向かう為に散っていた他のスフィアリアクター達と連絡を取り集結。

 

総勢十二人のスフィアリアクターの出陣。

 

それがあの様な結果を生み出す事になるとは思いもよらなかった。

 

 

=続=





暗躍の果てにそれは共鳴した。

楔は切り離され解き放たれた。


次回、幻影のエトランゼ・第百七話『共鳴《キョウメイ》中編』


始めよう。

反逆の狼煙を。

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