幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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本来であればもう少し先の未来。

それが早期に現れた。

彼らは告げる。

本当の敵は誰なのかを?


第百四話 『声明《セイメイ》後編』

前回のWLF壊滅直後。

 

突如現れた巨大要塞ことグレート・アクシオンとアイムのアリエティス。

 

彼らが引き起こした次元歪曲…次元震によって破界の王が待つインサラウムへの扉が開かれた。

 

リモネシア共和国そのものを呑み込む次元震に対してZEXISは機体を回収後に一時撤退。

 

若干の損傷を抱えたまま…

 

再度リモネシア共和国へ足を踏み入れる事となった。

 

だが、次元震が引き起こされる中で…

 

彼女は残されたリモネシア共和国の人々と生き残ったWLFの者達を転移させていた。

 

 

「…(アイム、貴方の考えは良く分かった。」

 

 

それは冷静を通り越した静かな怒り。

 

 

「…(だが、浅はかな思惑は私には通じない。」

 

 

ガンエデンの力を駆使し安全な場所へ人々を強制転移させた。

 

 

「…(さて、貴方やあの脳筋馬鹿を蹂躙するお祭りはこれからだ。」

 

 

ハスミの眼は笑っていない。

 

あるのは父親譲りの残酷さを示した眼差しであった。

 

 

******

 

 

プロジェクト・ウズメによって抉れたリモネシア共和国の領土。

 

先程まで存在した美しい姿の島国はもう存在しない。

 

あるのは滅びに満ちた廃墟だけである。

 

 

「ああ…」

「シオニーちゃん…ど、どうしたの!?」

「私の…私のリモネシアが…」

 

 

プロジェクト終了後、グレート・アクシオンのブリッジから崩壊した共和国の惨状を目の辺りにしたシオニー。

 

余りの動揺で震える彼女に声を掛けるのは同伴していたスットコドッコイことカルロス。

 

 

「落ち着いてください、シオニー。」

「ア、アイム…これはどういう事なの!?」

 

 

アイムは説明する。

 

リモネシア共和国の惨状はDECを使用した次元震の反動によるものだと…

 

そして『若しくは、あの方の力でしょうか?』と答えた。

 

 

「あの方?」

「シオニー、貴方が求めていた世界を変える力ですよ?」

 

 

自身の言葉に疑問視するカルロスを余所にアイムは告げた。

 

 

「さあ…共に喜びましょう。」

 

 

意味深な言葉で『破界の王の降臨を…』と。

 

 

~リモネシア共和国内の次元震発生から数刻後~

 

 

一時撤退していたZEXIS。

 

崩壊し何も残らない荒地と化したリモネシア共和国と戻っていた。

 

その光景に誰もが驚くZEXISのメンバー。

 

 

「なんじゃ、こりゃ!?」

「さっきの綺麗な街が大穴だけになっちまった!」

「それがこんな…」

 

 

ダイガードのパイロットの赤木、トライダーG7のパイロットのワッ太、紅蓮のパイロットのカレンが口々に答えた。

 

 

「さっきの時空振動でどっかの土地と入れ替わったのか?」

「いや、違う。こいつは何らかのエネルギーで抉られた跡だ。」

 

 

甲児の疑問に答える隼人に更なる回答を加えるゼロ。

 

 

「…恐らくはDECだろう。」

「えっ!?」

「元々リモネシア共和国は国連でも少数のDECと呼ばれる希少物質の産出国だ。」

「まさか…それが原因だってのか!?」

「可能性とすれば、それしか思い当たらない。」

「確かにDECが原因なら、この現状にも納得がいく。」

 

 

ゼロの回答に同意するティエリア。

 

 

「じゃあ、リモネシアの人達は…!?」

「…」

「巻き込まれたって事かよ!?」

 

 

この惨状でリモネシアの人々が犠牲になったと察したゲッターチームの面々。

 

逆に取り乱さず冷静な判断で答えるクロウ。

 

 

「…あの巨大戦艦とアイムの野郎は何処へ行った?」

 

 

その内に秘めた怒りを抑えつつ原因を引き起こした相手を捜索していた。

 

 

「まって、あそこに人がいる!?」

「生き残りか!?」

 

 

大穴の中心に生体反応を見つけるカレンとミシェル。

 

ジェフリーは反応があった場所の映像を送らせた。

 

 

「彼が爆心地の動体反応か…」

 

 

生き残り…

 

この場の誰もがそう思っただろう。

 

だが、記憶を持つ者達はそれが間違いであると認識していた。

 

あれだけの規模の大時空振動が引き起こされた。

 

運が良くても次元震で無傷のまま無事である事はない。

 

 

「獲物か…」

 

 

その存在は口元を歪ませた。

 

あろうことか生身でマクロスクォーターへ攻撃を仕掛けたのだ。

 

 

「な、何なの!?」

「右舷に被弾!第一次装甲に被弾!!」

「被弾って…どこからの攻撃なの!?」

 

 

突然の攻撃に驚くクォーターのブリッジクルー達。

 

順に操舵担当のボビー、オペレーターのミーナとキャシーだ。

 

 

「あの男だ…!あの男が素手でクォーターにダメージを!」

 

 

攻撃を仕掛けた相手に気が付くジェフリー。

 

その言葉に更なる動揺が広がった。

 

誰もが在り得るのかと?

 

 

「何処の東方先生とかシャッフル同盟とかロムさんだよ!?」

「この世界にも似た者野郎がいやがったのか!?」

「この場合、九大天王や十傑集の方が妥当だろう。」

「言えてるな、それ。」

「うぉい!真面目に観察するなよ!?」

「いや、そっちの方が余計にヤバいだろ!」

「み、皆…落ち着いて。」

 

 

だが、元居た世界でMSやら戦艦に生身で攻撃を仕掛けられる存在を認識している彼ら…

 

Zチーム、ゲッターチーム、ヒイロ達には悪い意味での茶番で片付けられてしまう。

 

慣れと言うのは時に厄介な錯覚を生み出してしまうのである。

 

 

「最大エネルギー量の奴を…って、何言ってやがるコイツら?」

 

 

マクロスクォーターに取り付き攻撃を仕掛けた存在だったが…

 

一部の暴走に対して呆気に取られていた。

 

その暴走すら余裕の態度に見れたのか悪い気はしないと存在は思った。

 

 

「ま、喰いでがあるのは違いねえか。」

 

 

グレンラガンのサブパイロットのシモンがメインのカミナへ答える。

 

本来挙動不審だったシモンがある日肝の座った表情を取る様になった。

 

カミナは男として一歩成長したと認識するが、それは違う意味を示していた。

 

 

「それよりアニキ…あいつ!」

「ああ、気を付けろ…アイツ只モンじゃねぇ!!」

「判ってる!」

 

 

同じ様に気を取り直した謎の存在。

 

 

「さてと…!」

 

クォーター周辺に展開していた他の戦艦から機体に攻撃を加えた後に元の出現位置へと戻った。

 

 

「何だ…アイツは…?」

「人間じゃ…ない?」

 

 

突発的かつ在り得ない攻撃に他のZEXISのメンバーは恐怖した。

 

鬼、悪魔、正真正銘の死神か?と答える者も居た。

 

そう答えるしか出来ない相手が目処前にいるのは確かである。

 

 

「美味そうな獲物が揃ってやがる。」

 

 

存在の視線が語るのは品定めの視線。

 

 

「悪くない世界の様だな?」

 

 

その声はZEXISのメンバーにも伝わっていた。

 

機器を通していないにも関わらず、その声は通信を通していた。

 

この状況にダイガードのサブパイロットのいぶきは訳が分からず混乱する。

 

 

「嘘でしょ…一体どうやって?」

 

 

会話の中で獲物と言う言葉に反応するダンクーガノヴァのメインパイロットの飛鳥。

 

 

「獲物って、あたし達の事!?」

「だろうよ、あの野郎…さっきから殺気を隠そうとしやがらねえ!」

 

 

存在が放つ『殺気=臨戦態勢』であると悟る竜馬。

 

 

「撃て!やらねば此方がやられる!!(ここで奴を止めなければ!」

 

 

ゼロは先の存在を人の形をした異形の存在であると認識し攻撃の合図を送った。

 

その状況に黒の騎士団の団員である扇と玉城が戸惑いの声を上げた。

 

 

「相手は人間だぞ!?」

「そ、そうだぜ!」

「人間にあの様な事が出来るか!?」

 

 

ゼロの言葉は最もだが、それが出来てしまう人物らが並行世界に存在する事を知らない。

 

城田は人の姿をした存在への発砲に戸惑うが、ジェフリーはゼロの言葉を信じて発砲許可を告げた。

 

 

「だが…」

「全責任は私が請け負う!!発砲を許可する…やるんだ!!」

 

 

発砲許可と同時に攻撃を開始するZEXISのメンバー。

 

ありったけの攻撃を存在へ撃ち込むものの…

 

土煙を上げて地表に無数の爆撃痕を残すだけだった。

 

つまり…

 

あの存在はあの攻撃の最中でも無傷で立っていた。

 

本来の姿である次元獣の姿で再度現れた。

 

 

「な、何だあのデカブツは!?」

「次元獣…なのか?」

 

 

その姿に驚くデュナメスのロックオンとゴッドマーズのタケル。

 

 

「やるじゃねえか!思い切りの良さは合格だ。」

 

 

更に先程の集中砲火の中で生きていた事に驚くホランドとレントン。

 

 

「アイツ…!生きていやがったのか!?」

「いつの間にあの怪物に乗り移ったんだ…!」

 

 

この時点で次元獣に乗り移ったと認識されていた。

 

知る者は変身したと言った方が正しいだろう。

 

 

「俺の隙間を埋めて貰うぜ…お前らの全力でな!!」

 

 

相手は戦う意思を見せている。

 

相手の戦力が不明のまま戦う事を極力避けたいティエリア発言を余所に…

 

逃がすつもりはないと悟ったキリコ。

 

ゼロも『やるか、やられるか。』と二つに一つの選択を強いた。

 

周囲の空気からやらなければやられると悟ったZEXISのメンバー。

 

 

「全機、攻撃を開始!アンノウンを排除するわよ!」

「持てる最大火力を叩き込め!一時も油断するな!!」

 

 

意を決してスメラギとジェフリーも攻撃開始の合図を送った。

 

 

「全力で来いよ!お前達の魂ごと喰らってやる!!」

「…(くそっ、この状況でも黙って見ているつもりかよ…アウストラリス!!」

 

 

合図を認識した存在と最悪の状況になりつつある展開に内心悪態を付くクロウ。

 

ZEXISは先の戦いから疲弊した状況下で連戦を強いられる事となった。

 

その後、暫く戦闘が続き…混乱が続いた後。

 

存在は飽きた様な口調で答えた。

 

 

「それじゃあ、足りんな?」

 

 

今出し切れる最大火力をつぎ込んだZEXIS。

 

だが、存在にはビクともしなかった。

 

唯一、ダメージを与え続けたクロウのブラスタも弾数からEN不足で戦闘不能状態に陥ろうとしていた。

 

 

「…(くそっ!スフィアで次元力を使えば…いや、奴に余計な情報を与えちまう!」

 

 

正真正銘の化け物と言える存在。

 

圧倒的な力の前に首を垂れるしかないのか?

 

誰もがそう思った時…兆しは現れた。

 

 

「艦長!もう一つの動体反応が!?」

「何だと!?」

 

 

もう一つの生体反応を発見したクォーターのクルー。

 

先の存在と同じ様に生身で戦場に現れたのだ。

 

この状況下でそれは自殺行為である。

 

 

「おい!?」

「アイツは!?」

「っ!」

「まさか!?」

「…(何故、ここに!?」

 

 

前の世界で姿を見知っている甲児らは声を荒げた。

 

目元を隠す為にサングラスをしている様だが間違いなかった。

 

本来であれば、居る筈のない存在が…

 

 

「相変わらず無様だな。」

「て、テメェは!?」

「久しいな、あの国での戦い以来か?」

 

 

かつて蹂躙しつつあった国。

 

その国だけを滅ぼしそこなった事がある。

 

理由は邪魔をした存在が目処前に現れたからだ。

 

 

「まあいい、アイツらは収穫時期じゃねえし……今はテメェの相手をしてやる!」

「…」

 

 

サングラスの人物…アウストラリスは生身の状態で存在の顔面にドロップキックを炸裂。

 

息まいていた存在は玉座型の次元獣から見事にバランスを崩して落下した。

 

その様子に声も出ないZEXISのメンバー。

 

同時に現れたグレートアクシオンとアリエティス。

 

 

「ちょ、どうなってるの!?」

「破界の王が…」

「お、王よ!?」

 

 

同じく目処前の状況に驚愕するカルロスとシオニーに焦るアイム。

 

 

「一体何が!?」

「アイム!例の奴も現れやがった!!」

「な!?」

 

 

ドロップキックを終えて地面に着地したアウストラリスの姿を発見したアイム。

 

 

「あの者は…!」

「貴様もこの地に辿り着いていたか…大ほら吹き者?」

「ひっ!」

「…(アイムの奴、もの凄ぇビビッてやがる。」

 

 

クロウも今惹き起こされた現状にウンザリした表情で思った。

 

規格外の化け物を蹴り飛ばした化け物を目処前にすれば当然の結果だろう。

 

そのアイムも元の上っ面の表情に戻すとアウストラリスへ質問をした。

 

 

「…お連れ様はご一緒ではないのですか?」

「俺が呼べは来る……今は必要ない。」

「成程、では…貴方は一人でここへ訪れたのですか?」

「理由はいるか?」

「いえ、ただ…命知らずだと思いましてね。」

 

 

アイムは破界の王の力と次元獣の力を結集すれば勝てると見越していた。

 

それも浅はかな考えてだとも知らずに…

 

 

「貴方一人だけならこちらにも勝機があるとね…?」

 

 

それを告げるとアリエティスを移動させ無防備になっているアウストラリスへ攻撃を仕掛けるアイム。

 

ある意味で地雷は踏み抜いた瞬間でもあった。

 

 

「ハスミ、あの策士の相手は頼むぞ?」

「は?」

「…」

 

 

アウストラリスへ接近し攻撃を仕掛けるアイム。

 

アウストラリスの合図と共にそれは遮られた。

 

アイムの…目処前のモニターへ映ったのは華奢な人影。

 

それも身の丈以上の巨剣を携えた存在。

 

先と同じくアリエティスも巨剣の一撃を喰らって地面に叩き付けられた。

 

 

「な、何が?」

 

 

叩き付けられ仰向けになったアリエティスのコックピットハッチの上に立つ人影。

 

 

「貴方は…ハスミ・クジョウ!?」

「お久しぶりですね、嘘つきさん?」

 

 

剣の鍔を肩に掛けてニッコリと笑みを浮かべるハスミ。

 

勿論、その笑みは笑っていないが…

 

 

「相変わらず、嘘を振りまいてて楽しいですか?」

「…」

 

 

アイムは今の状況に開いた口が塞がらない。

 

思考の混乱が続いているからである。

 

理由とすれば生身で機体に攻撃を仕掛けて沈黙させたからだ。

 

この状況はアイムだけではない。

 

双方共に戦場へ乱入した存在達を凝視していた。

 

それは一部を除いてだが…

 

 

「は、ハスミ!?」

「あら、甲児…久しぶりね。」

「何でお前がここに!?」

 

 

向こう側の世界出身者代表で甲児がハスミに呼び掛けた。

 

 

「事情があるのよ、それよりも竜馬達…ちょっと老けたんじゃない?」

「うるせぇ!こっちにも事情ってもんがあるんだよ!!」

「老けたか?」

「まあ、四~五年?ここに居りゃ老けるかもな?」

 

 

ゲッターチームの老け顔に対してツッコミを入れるハスミにツッコミで返す竜馬。

 

同時に何が言いたそうなヒイロらにツッコミを入れるハスミ。

 

 

「ヒイロ…念の為に言って置くけど、こっちも巻き込まれてあのゲートは使えないから。」

「!?」

「マジか!」

「ハスミ、君は…」

「…サイデリアルに囚われていた筈だ。」

「貴方達が行方不明になった後にややこしい事が起こった事だけは伝えて置くわ。」

 

 

サイデリアルに囚われたままの認識状態のヒイロ達。

 

それもややこしい事態が起こったで返したハスミ。

 

 

「詳しい事情を話す前に…この大嘘吐きと上にいる脳筋の阿保を止めないとね。」

 

 

ハスミはかつての仲間達に優しい笑みで静かに答えた。

 

足元のアイムを大嘘吐き、玉座型の次元獣に戻った破界の王を脳筋の阿保と…

 

それは怖いもの知らずと言える発言だろう。

 

周囲は余りにも酷い失言であると認識するが…

 

甲児達だけは違った。

 

 

「何処までも私達を…ひっ!?」

 

 

アイムは自身に向けられた視線に恐怖した。

 

先程とは異なる異常までの殺気。

 

それがあの華奢な女性から放たれていた。

 

 

「黙れ、お前の薄っぺらな虚偽は聞き飽きた。」

 

 

理解出来るのは目処前の存在が破界の王や王を蹴り飛ばした相手と同じ化け物だと言う事。

 

 

「その声、あん時の鎧野郎か?」

「間違い…ではないですね?」

「そこのアイツと同じで随分と喰い応えがあるじゃねえか!」

 

 

次元獣…いや次元将化していてもニヤニヤと笑っている破界の王。

 

 

「アウストラリス、どうなさいますか?」

「構わん、奴に見せてやれ。」

「では、お構いなく。」

 

 

ハスミはアウストラリスに了承を得ると静かに念動の圧を強めた。

 

 

「…がっ!?」

 

 

余りの念動の圧に超能力者のタケルが過呼吸を引き起こした。

 

 

「おい!タケルどうしたんだ!?」

「いかん!?誰か!ゴッドマーズを近場の戦艦へ!」

「ど、どうなってやがんだ!?」

 

 

クラッシャー隊のクルーがタケルの状況に混乱し城田が救援を要請。

 

タケルの変わりように動揺する赤木。

 

 

「いけない、圧が強すぎた。」

 

 

ハスミは気配を強くし過ぎたと感じて範囲を狭めた。

 

同時に過呼吸状態から解放されたタケル。

 

 

「ううっ…」

「タケル君、一体何が?」

「城田さん…彼女…は念動…力…者です。」

「!?」

 

 

自身と同様に超能力を秘めた存在であると城田に説明するタケル。

 

 

「そちらにも能力者が居た様で…すみません。」

「…」

 

 

ハスミは彼に謝罪を告げた。

 

 

「あーあーあれだけの殺気出して置いて…勿体ねぇ。」

「別にそちらを楽しませる為に出した訳ではありませんけど?」

「なら?」

「…お分かり頂けませんか?」

 

 

楽しむ為じゃなく確実に仕留める為であると?

 

 

「面白れぇじゃねえか!!」

 

 

破界の王は楽しみたいが…ある気配を察して撤退を促した。

 

 

「アイム、撤退するぞ。」

「破界の王よ、しかし…」

「美味いもんは最後に取って置くもんだぜ?」

 

 

アリエティスは機体を立て直し、破界の王の元へ移動。

 

体制を立て直す為に破界の王の一行は撤退。

 

撤退と同時に次元震で現れたアウストラリスの率いる部隊と鋼龍戦隊。

 

 

「アウストラリス、来ますよ?」

「ラマリスか?」

「はい、恐らくこの地で亡くなったWLFの負念に引きずられたのでしょう。」

 

 

ハスミの警告と同時に出現するラマリスの集団。

 

出現と同時に周囲の負念の澱みが一層酷くなった。

 

 

「ならば、叩くまでの事!!」

 

 

アウストラリスは部隊に目配せし指揮を促すと攻撃を開始した。

 

それは圧倒的な力による殲滅。

 

この世界で誰もが成し得なかったラマリス討伐を行える戦力。

 

その正体が目処前に現れたのだ。

 

ラマリス制圧後に現れた連合軍の艦隊。

 

アウストラリスは連合軍側の申し出に対して告げた。

 

 

「我らはサイデリアルと言う傀儡たる名は捨てた!」

 

 

アウストラリスは新たな名称と共に答えた。

 

 

「我らの名はイグジスタンス!我らは侵略と言う介入は行わん!」

 

 

それは侵略者ではない。

 

 

「だが、向かってくる者が存在するのなら誰であろうと相手をしよう!」

 

 

対話を求めず武力行使を行うのなら徹底的に抗う。

 

 

「我らは他者の侵略と他者の支配に屈しない!許さない!」

 

 

支配と侵略を許さず、屈しない意思。

 

 

「我らが倒すべき存在…貴様達が過小評価している人類の敵!」

 

 

標的は人類の敵たる存在のみ。

 

 

「心せよ…愚かな思惑は我らには届かん!仕掛けたのならそれ相応の破滅が待ち受けているだろう!!」

 

 

力強いアウストラリスの声明。

 

それは中継役を担った連合軍を通して全世界に向けられた。

 

ZEXISと同じく世界に変革を齎す存在。

 

思惑の絡んだ虚偽は打ち払われる。

 

 

~リモネシア共和国の崩壊から後日~

 

 

リモネシア共和国はアイムが仕掛けた『プロジェクト・ウズメ』によって国は失ったが住民は生きている。

 

潜伏していたWLFの本隊も壊滅状態に陥り、彼らも世界の歪みに利用され続けた以上は二度とテロを行う事は出来ないだろう。

 

イグジスタンスは無防備となった彼らと会談しリモネシア共和国跡地にセントラルベースを建設する事を決定。

 

この国を新たな拠点としバアル対抗の足掛かりにする事となった。

 

リモネシア共和国の住民らはイグジスタンスの庇護下で安全保障は約束され、生き残ったWLF残党は国を防衛する傭兵として雇い入れる形を取った。

 

この国に現存するDECが全て消失し産出され無くなった以上は利用される事はない。

 

新たな利用価値としてイグジスタンスの規格外な戦力とラマリス退治に特化した鋼龍戦隊が標的となるだろう。

 

それらを手に入れる為に各国が黒い思惑を巡らせるのも時間の問題。

 

だが、忘れてはならない。

 

破界の王を退けた彼らがそれ以上の異常すぎる存在である事を…

 

そう、手懐ける事など不可能であると自覚するのはもう少し先の話である。

 

 

=続=






滅びた大地に新たな拠点。

それは世界への侵略ではない。


次回、幻影のエトランゼ・第百五話『建国《ケンコク》』


興した国は美しき国を守る為の行為。

そして黒い思惑の標的となる為に…

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