ならばその流れに乗って突き進もう。
これは一時の珈琲時間。
現れる影の人々。
それは未来への軌道へと繋がる。
私達はシドニー基地を経由しアルビオン隊の案内でトリントン基地へ到着した。
エルシャンクは上層部から命令でそのままハガネ、クロガネ両艦が護衛。
アルビオン隊の母艦である戦艦アルビオンはシドニー基地で修理中のままだった。
地球へ降下する際の敵勢力の追撃で未だ修復が終了しないのである。
アルビオン隊、ドラグナー三馬鹿トリオはエルシャンク共々ハガネとクロガネ預かりとなったのである。
******
「ハスミ、お前が予言した通りの事が起こった。」
「そうですか…」
「以前宇宙は今だ停滞を保っているが地球内部はかなりの混乱に陥っている。」
「それに関しましては順に説明しますが宜しいですか?」
「任せる。」
前回の戦闘から翌日、テンペストはハスミの自室でコーヒーを啜りながら今後の事に着いてハスミと話し合いを行っていた。
今回は飲みやすいアメリカンである。
普段は紅茶やハーブティを嗜むが義父の嗜好に合わせてコーヒーを付き合う事もある。
「お義父さん、予定通りに一か月後にマクロスの出港式典が行われます。」
「以前から話していた例の事件だったな。」
「はい、蒼い睡蓮にも情報を回して置いたので近々大規模な部隊編成が行われると思います。」
「承知している。」
トリントン基地での一件が終わった後、伊豆基地に戻れば新たに仲間に加わった人達と交流があるだろう。
しばらくは共に行動するが、マクロスの一件で宇宙に飛ばされるので地上になるべく戦力を残して置く算段にしたのだ。
パワーバランスが取れれば地上に残存する敵勢力の鎮圧も出来る。
宇宙に移動した場合は協力関係になるだろう新たな仲間との出逢いを含めて漁夫の利を得ようと思っている。
だが、余りにもやり過ぎると無限力からの横槍が入る可能性があるのでマクロスの転移は止めて置かない事にしたのだ。
変異しすぎた物語にそれは必要ないと思うが念の為である。
ちなみに私達が宇宙ルートへ行く事はアカシックレコードで確定済みです。
「ハスミ。」
「何でしょうか?」
「お前の身体の事だが…」
私はコーヒーの入ったマグカップをテーブルに置くと感染が広がりつつある左腕を摩った。
「このまま感染が進めば…私はいずれ戦う為だけの傀儡となります。」
「ハスミ、やはりレイン君に…!」
「これは自分で決めた事です、必ず説得して戻ってきます。」
ハスミの決意は固いとその表情で判断したテンペストは内心心配しつつも送り出す事を決めた。
保護者としてどうかと思うが義娘の決意を崩すのは容易ではないと悟ったのもある。
「…分かった、それまでの『庭園』の行動は私の方で調節して於こう。」
「よろしくお願いします。」
エルシャンク防衛の一件で私は一度DGの破壊衝動に飲まれた。
仲間に被害が及ばなかったがそれでも私の失態に変わりはない。
DGの声が聞こえる様になったのもその後だった。
どうしていいのかわからないまま怖がっている子供の声だった。
誰もが皆同じものになれば怖くないとそう自分自身に言い聞かせていた。
それでは何の意味も持たない。
だから言葉を掛けて挙げなければならない。
「では、少佐…本題に入りましょう。」
「そうだな。」
アカシックレコードによってもたらされたジャブロールート、極東ルートへ向かった仲間達の動向を説明します。
まずジャブロールートより。
ジャブローに向けて出港したアーガマであったが、太平洋上にて突如発生した現象によりバイストンウェルへと転移してしまった。
そこで出会ったショウ・ザマと言う青年の話ではバイストンウェルは異世界であり、地球における海と大地の狭間にあると説明を受けた。
俗に言う伝承などで語られる『死後の世界』に近い世界らしい。
そこではアの国のドレイク・ルフトが地上から招いたロボット工学の権威の一人、ショット・ウェポンの手で完成したオーラマシンを利用しバイストンウェルの制圧を進めており、いずれ地上にその戦火を広げると話していた。
αと衝撃、UXを入り交ぜた状態にあるらしい。
彼の伝手からラの国の王女、シーラ・ラパーナとラウの国の女王、エレ・ハンムの協力を得る事で一行は一先ず地上に戻る事が出来たがアの国のオーラバトラーまでも巻き込む事態となってしまったのだ。
降り立ったのがアメリカのボストン。
流石に故郷を火の海に出来ないとドレイクに与していたトッドはショウ達の仲間に加わったのだ。
何とかドレイク軍を撤退させる事に成功した一行は目的地のジャブローへ向かった。
その後、アーガマ隊はバイストンウェルで数か月過ごしたらしいがこちらでは三日間のMIAだったらしい。
その為、大したお咎めは無かったそうな。
気になるのはバイストンウェルで数か月過ごした彼らの体内時間は行方不明期間と同じく三日間しか変動がなかった事だ。
あの浦島効果はどこ行ったー?
また無限力の陰謀ですかねー?
ジャブローへ到着した一行は現地で戦闘を続けるジオン公国軍の部隊の鎮圧並びに取り逃がしたドレイク軍の捜索に当たった。
例の如くガンダム界のロミジュリ騒動は何とか収まり、お付きの人も色々あって投降。
やはり、ジャブローへの侵攻を進めていたジオン公国軍内部でも疑心暗鬼か続いており、彼らに協力しているAnti・DCや例の機体こと
その名はギガノス帝国。
そのギガノス帝国とAnti・DCが裏で何やら行動を起こしているらしく、今だ公の場に姿を見せないザビ家が暗殺されたと言う情報はより確実になっているとの事だ。
そしてダカールへと巡航中にリクセント公国から脱出して来たシャイン・ハウゼン王女を保護した。
どうやら
もちろん、一度敵勢力に捕まったが王子様の如くライディース・F・ブランシュタインによって救われたとの事。
うん、その時のシャイン王女の心情は察しました。
そのまま王女共々同乗しダカールへと巡航を続けた。
道中でカサレリアのリガ・ミリティアに接触し協力を得られたのも幸いだったのかもしれない。
そしてダカール到着後は連邦基地内で内部抗争の真っただ中だった。
偶然にも左遷させておいた膿共が原因だったらしい。
しかし蒼い睡蓮の情報で手助けにやって来た『宇宙の始末屋』と呼ばれる者達の手によって首謀者達は捕らえられた。
彼らによってもたらされた首謀者達の悪行の数々が暴露された後、軍法会議にかけられるとの事だった。
外見が海〇主な人と髪型が某野菜人の様な人、しっかりお勤めしてきてください。
ちなみに彼らと内通していたと思われるAnti・DCの部隊が襲撃を掛けて来たがアーガマ隊によって返り討ちになりました。
エルピスに毒ガスをまき散らそうとした人よ、爪が甘いのだよ。
そんな輩には狼の印が黙っていない。
後続の部隊に事後処理を任せた一行は伊豆基地へと帰還していった。
「ジャブロールートのアーガマ隊の動きはこの様な状況です。」
「ついにギガノスとOZが動き出したか…」
「ええ、まあ彼らの飼い主であるロームフェラ財団に関しましては抑え込めると思います。」
「…あの若造に任せただったか?」
「はい、蒼い睡蓮の協力者である死天使さんには色々とやって頂く事がありますので。」
「そうか。」
「彼の前座としてはいい相手でしょう。」
「犬猿の争いの様にも思えるがな。」
「では、極東ルートのヒリュウ隊についての状況です。」
極東へ残ったヒリュウ隊の同行を説明します。
ネルガル重工で建造された戦艦ナデシコは火星の極冠遺跡から発見されたオーバーテクノロジーを利用して創られたものである。
しかし、彼らの雇い主の目的は古代火星文明の技術独占だった。
表向きは火星に取り残された火星都市・マルスシティの住民の救助となっている。
それを知らずにナデシコのクルー達は火星へと出港準備を進めていた。
所がその技術を接収しようと連邦軍内部の某真空管ハゲがやらかしてくれたのである。
それを止める為にヒリュウ隊は出撃を余儀なくなされた。
しかし、紫色の老人によってそれは崩されてしまったのである。
某真空管ハゲの下で動いていた兵士達は口々にこう言ったそうな。
『紫がぁ…』
『笑い声ひぃいい!!?』
『何でおさせげぇえあ!!』
等とトラウマと化してしまい全員病院送りとなったそうな。
相変わらずいい仕事してますね。
次に会う時は敵である以上、容赦しませんからね。
そして某真空管ハゲは伊豆基地の兵力無断使用並びに同基地司令部への命令違反からのその他諸々の一件で独房入りと相成りましたとさ。
念の為、蒼い睡蓮がナデシコにエージェントを送ったと話していたがどんな隠し玉なのか気になる。
ヒリュウ隊と某真空管ハゲの私兵隊が小競り合いを起こしている際に彼らは火星へと旅立って行った。
そしてその数日後、地球圏に飛来している異星人の集団による街への襲撃が行われた。
そして現れたのだ『勇者』と呼ばれる存在達がその場所へ。
彼らは故郷の星を追われた者、星の意思により生まれた者、平和を誓う人々の手によって生み出された者、その思いは様々であるが弱きものを助け悪を挫くスタンスは崩していない模様である。
彼らは国連事務総長が指揮する地球防衛軍所属の為、管轄が違うもののいずれ共に手を取り合える事を願いたい。
命と呼ばれる宝を守る白き獅子よ。
この世の悪を挫く不死鳥よ。
地球の意思を継ぐ蒼き命よ。
大いなる風となれ颯爽せし嵐よ。
白と黒に彩られし金色の印を胸に抱く者。
黄金の祈りを携えて冒険心を持つ者よ。
七色の七人の戦士達。
未だ姿を見せない金色の獅子と緑の誓い。
蒼き竜と紅き鳳凰。
雷を纏う少年少女達。
忍の心を志す三人の少年達。
太古の恐竜の魂を受け継ぐ少年少女達。
御伽の鬼退治を続ける少年少女達。
彼らとの出逢いを胸に行く道違えどいつか会える日を願う。
そしてヒリュウ隊は更にその翌日に使徒との遭遇を果たした。
残暑の残る第二新東京市に第三使徒が出現。
彼らは救援に向かおうとしたが『ネルフ』によってそれを遮られてしまう。
何故なら彼らの保有する機動兵器である『EVA』がいともたやすく倒してしまったからだ。
実際の戦闘は見ていないが恐らく彼も転生者である。
理由とすれば『暴走』と言う言葉を耳にしていないからである。
彼が何処までの記憶を持っているか不明である。
まさかと思うが『御使い』までの記憶もあるとは考えにくい。
蒼い睡蓮はエージェントを控えさせると話してはいたが『ネルフ』の暗部達が黙っていないだろう。
その為、エージェントの一人は彼が身近な場所で出会える様に手配はするらしい。
そして問題は使徒との戦闘後に現れた『鉄甲龍』だ。
現在も『国際電脳』を隠れ蓑にしている。
後々残して置くのも何なので『国際電脳』の一件は『博士』に一任している。
うん、異星人のAIプログラムその他を掌握するウイルスを仕込めるのだから一巻の終わりであろう。
出来る事なら彼らからキチガイの遺伝子の呪縛を解いてあげたいのもある。
ヒリュウ隊を襲った『風のランスター』は様子見だけだったのだろうかちょっかい程度の戦闘を行った後、そのまま撤退したそうだ。
理由とすればあの『八卦ロボ』は原作でも15年の歳月をかけて開発されたのだ。
未だ解明されていない部分も多いのだろう。
流石、あのキチガイの作品である。
その内。『烈』も出そうな気もしなくもない。
「少々無駄口が過ぎましたね、申し訳ありません。」
「いや、二つの部隊の行動で奴らを閑職に追い込んだ事だけは何よりも救いだ。」
「そうですね。」
「所でハスミ…お前が話した『紫の老人』と言うのはまさか?」
「ええ、先のガンダムファイト優勝者である人外級の御人です。」
「…あれはもう人と言えるのか?」
「お義父さん、それを言ったら国際警察機構とかBF団がもっと人外級ですよ。」
「そ、そうだったな。」
「それに彼らに襲撃予定の敵の刺客達がもっと不憫と思います。」
「う、うむ…」
いや、あれはさすがにね。
地球の人外級が集う秘境に刺客を送り付けちゃ駄目でしょ。
Zなお話の31話を思い出したよ。
アハハ、あれよりももっと酷いけどね。
今回は国際警察機構、BF団、シャッフル同盟、クロノス星勢等々が揃ってる。
説明とか描写とか難しいかもね。
そんな事でテンペスト少佐との話を切り上げ、私はある事をふと思った。
気がかりなのがあのキチガイの作った『次元連結システム』である。
微妙に『交差する門』に原理が似ている様に思える。
まさかと思うが今は考えておかない事にする。
あの確証が当たっている事もなければアカシックレコードから警告されていないからである。
いや、伝えたくても伝えてくれないと言うのが正しい。
ここ最近無茶をしすぎたのでアカシックレコードから心配されているのだ。
今もし過ぎている。
自覚はあるし申し訳ないと思っている。
=続=
砂の大地で睡蓮は何を思う。
異形が集う地で何を見るのか?
太陽すら掻き消す暗き闇夜。
静寂を求める存在がその姿を現す。
次回、幻影のエトランゼ・第五話『異形《アインスト》』
変異する物語は加速する事を止めず、ただ突き進む。