幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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囁かれる情報。

それは静かに広がる。

最早止まる事は無い。


囁の付箋

 

ソレスタルビーイングの発起に伴い、ラマリスを迎撃するだけに現れた謎の部隊。

 

彼らもソレスタルビーイングのメンバーと思われたが、それは各国の技術者達から否定された。

 

理由はシンプルに使用されている技術が異なる事とラマリスを迎撃出来たと言う点である。

 

現時点で各国が欲している技術を謎の部隊…アンノウンはそれを所持している。

 

これにより各国並びに紛争地帯のテロリストやゲリラと言った組織もその捜索に乗り出した。

 

センセーショナルにソレスタルビーイングの発起が行われている筈がアンノウンの同時出現によって影に追いやられてしまったのだ。

 

流れは変わりつつある。

 

だが、アンノウンの存在をいち早く気付く組織も存在した…

 

 

******

 

 

それはここ、コロニー群の一つであるCMCの本部が置かれたコロニーにて。

 

 

~CMC・本部~

 

 

「成程…」

『それよりもトレーズ、先程の話は本当なのか?』

「ああ、間違いない。」

 

 

執務室でAEU・アフリカ支部からの通信を受け取っているトレーズ。

 

相手は仮面を脱いで姿を晒したゼクスである。

 

 

「あの列車はホルトゥスが使用していた輸送列車だ。」

『まさかホルトゥスがこの世界に?』

「…いや、ホルトゥスにしては動きが違う。」

『と、言うと?』

 

 

トレーズが戦場に現れた列車の情報をゼクスより受け取るとその詳細を伝えた。

 

ホルトゥスが使用していた輸送列車であると…

 

同時に行動パターンが余りにも違い過ぎる事も伝えた。

 

そのゼクスの疑問にトレーズが答えた。

 

 

「推測だが、彼女自身がこちら側に転移している可能がある。」

『彼女?』

「ホルトゥスの真の当主…そうなれば、あれはサイデリアルの手にあると見ていい。」

『!?』

「高軌道ステーションのテロと同時に起こった各地のラマリスの襲撃で出撃していた部隊…そこから導き出される答え。」

『トレーズ、それは…』

「彼女は漸く成したのかもしれない……反逆の一手を。」

 

 

トレーズは封印戦争時の事を振り返る。

 

L5戦役終盤でクロノに暗殺されかけたのを救助され庇護下に置かれてからの付き合いだ。

 

ホルトゥスの当主であるハスミより伝えられた言葉。

 

自身がバアルを討ち倒す為に懐へ潜り込む事を…

 

そして巡り巡って反逆の意思を纏めると伝えられていた。

 

行動を共にしていると思われるリ・テクの機体…

 

鋼龍戦隊と共に行動しているのもそれが成された事なのだろう。

 

 

『トレーズ、これからどうする?』

「特務部隊OZは引き続きAEUで活動、クロノの動向には注意してくれ。」

『了解した。』

「ヒイロ達には引き続き各地での潜伏活動を行って貰おう。」

『それはZEXIS設立まで…か?』

「その通り、クロノの行動を掴みやすくするにもかつての流れがいいだろう。」

 

 

トレーズはかつてと同じ流れで行動する事をゼクスに話した。

 

クロノが同じ行動へ移る事でより行動が判別しやすいからである。

 

これも保守派であるエルガンが同じ動きだろうと推測しての話だ。

 

 

『トレーズ、コロニーへの圧力は?』

「今の所はない、だが…今後の動き次第だろう。」

『ソレスタルビーイング…イノベイター達がどう動くか。』

「それも彼女らが訪れた事で覆されるだろう。」

 

 

ある意味で向こう側の常識に恐怖する。

 

並行世界にはそう言った規格外の存在も存在するのだと…

 

 

『…(素手でMSを倒せる人間は早々に居ない。』

 

 

ゼクスは空白事件から封印戦争まで行動していた頃の事を思い出していた。

 

過去の記憶で知っていたとは言え、改めて彼らの能力に驚かされる。

 

 

「彼らも一度は彼女らに戦いを挑めばいいと思っている。」

『…(確実に泥沼になる。』

「彼らが見下す人類…人の可能性を彼らもある意味で秘めているからね。」

 

 

並行世界と言う進んだ技術や価値観の違い。

 

ちょっとした行き違いや流れで諍いも起きてしまうだろう。

 

それでも手を取り合い互いに協力する事こそがバアル打倒への道筋。

 

 

「時間も押している。今回の長話はここまで……ゼクス、君の健闘を祈るよ。」

『ああ、任せてくれ。』

 

 

トレーズは長話の後に今後の活動に対して説明をし終えた後、通信を終えた。

 

 

「さて、これで良かったのかな?」

「ええ、お手数をお掛けしました。」

 

 

トレーズは執務室の応接スペースで待っている人物に声を掛けた。

 

 

「まさか鋼龍戦隊とサイデリアルが手を組むとは…事は早急になりつつあるのか?」

「残念ですが、こちら側の戦いを終わらせ…元の世界で起こる戦乱に介入しなければならないので。」

「そうか…終焉の銀河と呼ばれる戦乱と天獄戦役の同時勃発は避けられないのか?」

「あのアポカリュプシスによって定められた戦いである以上は防ぐ事は不可能です。」

「ならば、君が齎した可能性の未来へ進んでみよう……アシュラヤー・ガンエデン、いやハスミ君。」

 

 

トレーズは覚悟して話し相手の名を告げた。

 

ハスミは異空間からあるケースを取り出した。

 

 

「トレーズ代表、貴方にお渡ししたいものがあります。」

「…それは?」

「DDコミュミケーター。ある時代の並行世界で使用されていた通信機です。」

「通信機?」

「これで並行世界を跨いで通信する事が可能、試験的に天鳥船島と通信を行った結果…繋ぐ事に成功しました。」

「向こう側と通信が行えたのか?」

「はい、ですが…アビスの影響が薄れた時にクロスゲートを経由していますので頻繁には使えません。」

 

 

ハスミは色別コードで使用可能時が解ると続けて説明した。

 

敵に利用される事を避ける為にごく少数の仲間に預けると伝えた。

 

 

「渡す相手は此方で決めても?」

「はい、お願いします。」

「判った、君の努力を無駄にはしない。」

 

 

トレーズはDDコミュニケーターの入ったケースを預かると礼を告げた。

 

 

「次の連絡は追ってしますので、今は大きな動きはお避け下さい。」

 

 

ハスミはそれだけ告げるとテレポートでその場を去って行った。

 

 

=続=


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