幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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それは記す事。

記録、記述など様々。

記憶として脳裏に魂に刻まれる。


記の付箋

 

シカゴ騒動から数日後。

 

クロウがAEUの軌道エレベーター付近で行われる新型機のお披露目会に乱入する為に移動中の頃。

 

クロウは毒舌&ウザ晴らしの入ったトライアとのやり取りの後、秘匿通信である情報を語った。

 

 

『…って事だ。』

「では、トライア博士が?」

『ああ、バッチし記憶を持っていた…この様子だと他の奴らも記憶を持っていそうだ。』

「いえ、クロウさんの方ではトライア博士だけかと…」

『どういう意味だ?』

 

 

ハスミは知りたがる山羊を駆使し前世上の記憶を持つ人物らの追跡を行っていた。

 

その結果、ある法則性に辿り着いたのである。

 

スフィア覚醒者の覚醒に最も関わった人物達が引き寄せられるように記憶が呼び起されると…

 

 

『つまり、俺の場合は博士だったって事か?』

「そう言う事です。」

『なら、ランドやセツコ達の説得が上手く行った理由も頷けるな。』

「二人は現時点で破界戦役に関わっていませんし、私達同様に裏側から行動する予定です。」

『となると人類側のスフィアリアクターはアイムと皇子さんを抜いて十一人、ほぼ揃えた形か…』

「問題はアイム・ライアード…いえ、ハーマル・アルゴーがどう出るかですね。」

『…』

「お察しの通りアイムの本名、スフィア起動時にバルビエルと同じく名前を失ったか捨てたかのどちらかでしょうけど…」

『詮索する様な事でもねぇか。』

「いえ、そう言う訳にもいきませんよ。」

『?』

「前回と同様にアイムの持つスフィアは御使いによって少し手を加えられたらしく、今後の活動でも用心しなければ。」

『前回もって?』

 

 

ハスミの語った内容で気になった部分を訪ねるクロウ。

 

その事についてハスミは語った。

 

 

「前回も砕け散ったソルの魂の一つを御使いが手に入れ、そのスフィアに改良を加えたのです。」

 

 

アサキムと同様に御使いが仕掛けたもう一つの保険。

 

偽りの黒羊を手に入れた存在が他のスフィアを捜索し適合者を覚醒させる役割を強制させた。

 

それぞれのスフィアの覚醒条件が余りにも酷な条件である事は知っていますよね?

 

正に牡羊座のスフィアリアクターへ条件に当てはまる行動を仕向けていたのです。

 

結果的にユーサー皇子の皇国が記憶を失ったガイオウ…ヴァイシュラバに襲撃された原因の一つ。

 

覚醒者達をいずれ御使いの元へ誘う為に…

 

 

『…遠回しに言えばアイツも犠牲者だったって訳か。』

「ええ、前回と同様にスフィア起動時に自分を偽る為の別人格が生まれた様です。」

『前に知りたがる山羊が見せた光景がアイツ本来の性格って…何か違和感だらけだぜ。』

「でしょうね、私も一度対面していますが……見事に尻尾巻かれましたよ。」

『は?』

 

 

ハスミは答える。

 

自身の世界で起こった修羅の乱と呼ばれる戦乱の最中。

 

次元震による強制転移で様々な世界に飛ばされた事。

 

その転移した世界の一つが聖インサラウム皇国だった。

 

最悪な事に転移したのがガイオウによる侵攻で混乱した戦場と言う状況。

 

 

『マジか…』

「飛ばされた時に対応したのが私が所属していたSTXチーム…戦力上ギリギリの対応でした。」

『ギリギリって、どうやったかは詮索しないが一個小隊?で対応したのか?』

「ええ、偽名で潜伏していたアウストラリスもいらっしゃったので…どうにか。」

『地獄絵図だな。』

 

 

この時、クロウはまだ知らなかった。

 

インサラウムへ侵攻したガイオウとアイムがどうなったかを。

 

後に知る事となるのでハスミは聞かれなかったで通して話を進めた。

 

 

『おっと、そろそろ予定の場所に着きそうだ…また後でな?』

「判りました、ご武運を。」

『ああ、まだ99万9999Gの支払いが残っているからな。』

「…(見事な借金額。」

 

 

クロウは答えると通信を切った。

 

 

「…と、言っても現地で合流しますけどね。」

 

 

ハスミは通信を終えた後、静かに呟いた。

 

 

「ラマリスの出現回数が向こう側と桁違いだし……それにこちら側の世界は負念の澱みが酷い。」

 

 

溜息を付いた後、私は書類の入った記録媒体を持って通信室を後にした。

 

 

=続=

 


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