幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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世界は揺れ動く。

新たな脅威と共に。

新たな可能性と共に。

だが、出会いは妨げられる。


第九十二話 『揺界《ユレルセカイ》』

 

前回、極東方面で起こった事件。

 

それは後日となったが、ノードゥス関係者に速やかに通達された。

 

だが、宇宙へ上がったノードゥスのメンバーにトラブルが引き起こされた事もまた通達されたのであった。

 

植物型惑星の侵攻を止めたノードゥス艦隊。

 

突如、時空振動が発生し一部の部隊が巻き込まれる事態が発生。

 

その巻き込まれた部隊が皮肉にも前世で飛ばされた世界に関わった人物達だった。

 

混乱するノードゥス艦隊だったが、時空振動による転移では手が出せず…

 

仲間の安否も不明のまま地球への帰還を余儀なくされた。

 

彼らが戦うべき相手は他にも存在する。

 

ノードゥス艦隊は飛ばされた仲間達の無事を祈るしかなかった。

 

 

******

 

 

極東での事件発生から二週間後、引き続き鋼龍戦隊は発生したラマリスの対処に当たっていた。

 

この二週間の間に鋼龍戦隊に新たな協力者が加わった。

 

ガディソードの軍人であるジーク・アルトリートとサリー・エーミルの二名である。

 

表向きは最上重工の社長秘書、裏側ではクロスゲート・バースト発生時に地球へ降下したドリフト・ウィング改めアリアードのパイロット…

 

フェアリ・クリピアの行方を追うと同時にヘルルーガ・イズベルガの計画を探る為に鋼龍戦隊へ接触。

 

そのまま協力者として行動している。

 

二人の話とフェアリの話を照らし合わせた結果、ヘルルーガの行動が黒と判明。

 

ゴライクンルとの結託も判明しているので、今後は敵性勢力として襲撃してくるだろう。

 

問題はマルム・クイスードと彼を支持する穏健派に真実を知らない民間人達の身の安全。

 

マルムの人柄は以前にヒリュウ改のクルーと接触した政府関係者らにより理解されている。

 

戦うべき相手はヘルルーガと彼を支持する強硬派。

 

フューリーの一件と同様に鋼龍戦隊が中心となって対処する事が統合参謀本部から通達された。

 

現在はパリとカラチに出現し占領したラマリスの件があるので今はその期ではない。

 

戦力が整い次第、対処する形である。

 

 

******

 

 

月のターミナルベース、内部の円卓が設置された会議の間にて。

 

私ことハスミは二週間の間に起こった出来事をアウストラリス達に報告していた。

 

 

「最後にアカシックレコードからの警告通り、ノードゥス艦隊の一部がADW世界へ転移しました。」

「時差があるとは言え、早すぎる転移だな?」

「はい、例の如く無限力の陰謀ですよ。」

 

 

ちなみに前回のヒビキとスズネの発見とヒビキに釘を刺して置いた件を伝えて置いた。

 

その件でヒビキ達の監視はガドライトらジェミニスに一任された。

 

 

「ヒビキ達に関してはガドライト、引き続きお前に任せるぞ?」

「了解した。」

 

 

軽い応対をし終えたのを見計らってハスミはアウストラリスに進言した。

 

 

「アウストラリス、パリとカラチの件なのですが…」

「何かあったのか?」

「以前話して置いたゴラー・ゴレム隊がこの頃にイタリア方面で行動しているので接触を試みたいのですが?」

「…それは構わんが、単独行動であるのならファウヌスの姿で行え。」

「了解しました。」

「アタシはいつも通りで?」

「ああ、エルーナは引き続きターミナルベースの警護を頼む。」

「へーい。」

「アサキム、お前はどうする?」

「そうだね…先行してADW世界に行きたいけど、どうだろう?」

「ハスミ、転移は可能か?」

「次元境界線の方にまだADWへ続く支流の流れが残っているので転移は可能ですが…」

「何か問題でも?」

「僅かですが、転移中に時差変動が起こる可能性があるのでどの時間軸に飛ばされるかは不明です。」

「そこは運次第って事か……僕にとっては時間の流れは関係ないからいいけど。」

「アサキムにはカラチ方面への出向を頼みたかったのですが…無理強いは出来ませんね。」

「ハスミ、カラチの件に関しては俺が出る。」

 

 

アウストラリスの言葉に動揺する一同。

 

 

「おいおい、総大将が自ら出ていいのかよ?」

「構わん、それに二分された鋼龍戦隊…一時的とは言え関りを持った者達の様子も見て置きたい。」

「あーあー、何時ものアレ出ちゃったね。」

「ハスミ、お前は先述通りにファウヌスとしてパリ方面の件を頼む。」

「了解しました。」

 

 

ガドライトとエルーナからの口論があったものの、アウストラリスは自らパキスタン・カラチ方面への出撃を決定した。

 

理由はケイロン・ケシェットとして鋼龍戦隊に潜伏していた時に使用していた特機・蒼雷…その強化版の試運転だろう。

 

サイデリアルの次元力研究の成果を組み込んだ機体で鋼龍戦隊と一戦交えたい気持ちが強く出てしまっている。

 

これは止めようがないので全員一致でそのままになった。

 

結果的に地球圏への侵略行為ではなくラマリス討伐がメインであるので被害を受けるのは実質的に鋼龍戦隊である。

 

これも試練と思って鋼龍戦隊には耐えて欲しいと思うハスミだった。

 

 

「では、ガドライトさんはヒビキ達の監視と極東エリアでの活動、エルーナさんは月・ターミナルベースの防衛、アサキムはADWへの先行、私はイタリアを経由しフランス・パリでの活動、アウストラリスはパキスタン・カラチでの活動に決定、異論はありませんね?」

 

 

ハスミが復唱し一同に異論がない事を確認した後、会議は終了した。

 

それから数時間後。

 

 

「…」

 

ガドライトらジェミニス隊は先に出撃。

 

アサキムも準備を終えて、破壊された植物型惑星の残骸の場へ転移、更に次元転移でADWへと移動した。

 

エルーナはストラウスの姿でハイアデス隊と共にターミナルベースに待機。

 

アウストラリスは数名の側近を連れて後から出撃。

 

私ことハスミ…いや、ファウヌスはアルシャト隊を引き連れてイタリアへと転移した。

 

アルシャト隊は全て私が組み上げた自立型AIで構成された部隊。

 

元となったそれぞれの思考は…例の彼らを元にしている。

 

それぞれが個性豊かであるが、それも懐かしい思いが込み上げた。

 

共に背を預け、刀を振るい合った。

 

その志は今も続いている。

 

彼らを夜の道へ歩ませてしまったのは私の罪だ。

 

それは受け入れよう。

 

 

「ファウヌス様、出撃の準備が整いました。」

『判った、我々はこれより地球へ降下しイタリアからパリで行動を行う。』

 

 

アルシャト部隊に数名であるが末端のサイデリアル兵が配備された。

 

共に私もまた出撃を開始した。

 

 

 

=続=

 





それは偽りの変異。

接触の時は来た。


次回、幻影のエトランゼ・第九十三話『接触《セッショク》』


それは必要な処置。

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