幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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最も自我を確立した者。

類は友を呼ぶ。

属する領域は違えど同じ概念を持つだろう。


第八十七話 『闇兵《アンヘイ》後編』

 

メキボスとの話し合いを終えた光龍。

 

彼はパリの領事館から転移し、とある場所へと移動した。

 

それは封印戦争後、侵入不可となった筈の場所だった。

 

 

******

 

 

天鳥船島内部・ライブラリー区画にて。

 

 

「数か月ぶりだけど、中はそんなに変わっていないか…」

 

 

区画内は管理用の作業ロボットが数機ほど清掃をしている姿が見える程度。

 

以前はホルトゥスのメンバーが滞在し賑わいがあったのが懐かしい。

 

 

「彼らの避難場所を移動させちゃったし、静かになるのは当たり前だよね。」

 

 

現在のホルトゥスは光龍、カーウァイ、テンペスト、この三人の指揮下の元で行動。

 

外部とのバイパス役として光龍が交渉役、必要な組織内統率や各配備の手配はカーウァイとテンペストが行っている。

 

 

「それで、今後はどうする?」

「例の奴らが入り込んだのは確認しているが…」

「その件も含めて話そうか?」

 

 

同じ管理者であるカーウァイとテンペストの二名が合流。

 

光龍は鋼龍戦隊からの依頼の件も含めて情報交換へと入った。

 

 

「僕の方はクロノと手を組んだ組織の調査依頼を鋼龍戦隊から受けたよ。」

「また現れたのか?」

「…まあ、足の引っ張り合いが目に見えているけどね。」

「その組織とは?」

「ゴライクンル、ウォルガとは別系統の指揮下にある武器商人らしい。」

「…」

「そのゴライクンルがフューリーのクーデター組と同盟を結べない様にサイデリアルに仕掛けさせた…それがハスミの予防線の一つだったみたいだね。」

「ハスミが視たと言う時系列では、今回の戦いはフューリー…グ=ランドン側が地球側へ戦闘行為を行った。」

「更にガディソードやダークブレイン軍団の侵攻…」

「最後にバルマー本星からの偵察部隊の暗躍、例外は各所で起こった次元断層位かな。」

「光龍、更に別の組織からの侵略若しくは侵攻の気配はあったのか?」

「それも調査中…ただカーウァイの言う様に僕らも把握しきれていない組織や現象も出てくる可能性もある。」

 

 

無限力の意思は前回の件で動きを見せていなかったが、再び干渉し始めた。

 

ハスミの言葉を借りるなら必然であり時期を見ての行動だろう。

 

 

「新たな組織の発見は兎も角…現象に関しては厄介でしょう。」

「…そうだな。」

「二人共、悲観している余裕はないよ?」

「判っている。」

「今は我々に出来得る事を進めよう。」

「そーそー、何事もハッピーに…ね?」

 

 

ネガティブな感情は負念を助長させてしまう。

 

希望の象徴となる彼らの負担を避ける為にも自分達も己の希望を絶やす事をしてはいけない。

 

 

「ん?」

「これは…」

「光龍。」

「二人も感じ取ったみたいだね。」

 

 

後天的念動力として覚醒したカーウァイとテンペスト。

 

封印戦争開始前の覚醒から時間が経過している為か念の扱いに慣れつつあった。

 

 

「何者かがクロスゲートが開いたのか?」

「…いや、勝手にこじ開けられたが正解。」

「光龍、まさか…」

「そ、二人も感じ取った通り…この気配はセントーの街で出会った奴だよ。」

 

 

「「…(ビキ。」」

 

 

光龍の言葉にカーウァイとテンペストの空気が一瞬で凍り付いた。

 

それもその筈、修羅の乱で遭遇し義娘に傷を付けた相手なのだから…

 

 

「テンペスト。」

「何でしょうか、隊長?」

「奴に遭遇したとすれば、どうする?」

「…その回答に言葉は要らぬでしょう。」

 

 

その回答に言葉は不要。

 

その意味は既に言葉にせずとも決まっていた。

 

 

「この世界に来訪した事を後悔させてやるだけです。」

「無論、跡形もなく消し炭にする事も忘れるな?」

「そうそう、そう来なくっちゃね……僕らの娘に傷を負わせた鏡餅君には痛い眼に遭って貰わないとね?」

 

 

二人の会話に光龍もまた揚げ足を追加する様な発言を加えた。

 

悪い事にこの会話が如何に末恐ろしい事であるかを表現する者はこの場に存在しない。

 

そう、残念な事に…

 

 

>>>>>>

 

 

先程の光龍らのやり取りから数時間前の事である。

 

ここ伊豆基地では鋼龍戦隊のメンバーが集結していた。

 

が、全員ではない。

 

ヒリュウ改は主力級を引き連れて『ラブルバイラ』と呼ばれる拠点と共に転移してきた異星人ガディソードとの会談の為に転移装置で宇宙へ上がってしまっている。

 

更にサイデリアルの出現により、元ノードゥスのメンバーも各方面に駆り出されている状態だった。

 

最も戦力を集中させているのは獣機戦隊を中心とした部隊だろう。

 

地球へ接近しつつある植物型惑星ディラドの襲来に備え、一部の外宇宙組と合流し対処に当たっている。

 

クロガネは軍とのつながりが緩いメンバーと共に『クロスゲート・バースト』による現象で地球に落下したと思われるアンノウンの捜索。

 

更に現在行方不明中であるゼンガー・ゾンボルトの捜索中の為、こちら側に訪れる事が出来ずにいた。

 

封印戦争後、友好的な同盟を結べたと思われていたフューリー。

 

その内部でクーデターが発生、グ=ランドンによるフューリーの反乱が行われつつあったが…

 

突如出現したサイデリアルにより完全降伏する事となった。

 

理由は彼らの切り札とも言える『ラースエイレム』が封じられた事が切っ掛けだった。

 

クーデターの最中、サイデリアルの襲撃もあり皇女シャナ=ミアはエ=セルダとアル=ヴァン、カルヴィナの手で難を逃れる事となった。

 

因みに禁士団所有の決戦兵器だったクストウェル・ブラキウムはシャナ=ミアの指示で一度強化外装を外されメンテナンス中だったのをカルヴィナが脱出の際に搭乗。

 

その為、グランティード、クストウェル、ラフトクランズ・アウルンでの脱出となった。

 

だが、グランティードとクストウェルの強化外装は未だガウ・ラ・フューリアの中である。

 

ベルゼルートは地球側で修復中だった事もあり実質四機での運用可能と言う形となった。

 

そして地球政府との会談でシャナ=ミアは鋼龍戦隊と共に行動、後にフューリー奪還を目指す事となる。

 

その懸け橋としてリリーナ外務次官らの協力もあったとの事だ。

 

 

「そう言う事があったなんて…」

 

 

伊豆基地の食堂スペースにて。

 

再会したフューリー組はそれぞれの動向を確認し合っていた。

 

因みにシャナ=ミアはリリーナ外務次官らと話し合いの為に不在。

 

先程の発言の皮切りはテニアからだ。

 

 

「けど、シャナ=ミアや父さん達が無事で良かった。」

 

 

無事であった事を安堵するトーヤと三人娘達。

 

しかし、カルヴィナやアル=ヴァン、エ=セルダの表情は複雑なままだった。

 

 

「間一髪って言いたいけど…アリー。」

「…ああ。」

「どうしたんですか?」

 

 

二人の様子にカティアが質問。

 

その問いにエ=セルダが答えた。

 

 

「あの時、サイデリアルの襲撃がなければ全員無事に地球へ降下する事は出来なかった。」

「それって…」

「あのハスミ・クジョウが関わっているって事よ。」

「でも、あの人ってサイデリアルに無理やり投降させられたんじゃ?」

「そうですよね?」

 

 

カルヴィナは脱出に一役買った仕立て人の正体を告げた。

 

その答えにテニアとメルアは?マークを浮かべる。

 

 

「…あの時、私はそうには見えなかったわ。」

「どういう事ですか?」

 

 

カルヴィナはその答えを渋った。

 

確証がない答えに意味がないから。

 

 

「ただ…何となく、ね。」

「…(カルヴィナさんも気づいたんだ。」

 

 

答えを渋ったカルヴィナの様子にトーヤは静かに悟った。

 

彼女がサイデリアルへ下った理由の一つを知っている為だ。

 

 

「トーヤ、先の話し合いの通り機体運用の件についてだが…」

 

 

長引く話を切り上げ、エ=セルダは本題へと移した。

 

 

「やっぱり、父さんがグランティードに?」

「いや、クストウェルを使わせて貰う。」

「エ=セルダ様、グランティードは…」

「皇国の剣であるが、次代を担う者へとシャナ=ミア様と決めた事だ。」

「…」

「トーヤ、修羅の乱でお前が見せたヴォルレントの動き……悪くはなかったぞ?」

「父さん。」

「だが、トーヤ…訓練の難易度を今以上に上げて行くが覚悟はあるか?」

「…覚悟は出来ている。」

 

 

前世と同様にグランティードと共に戦う事を決めたトーヤ。

 

封印戦争時、臨時で搭乗していたものの…

 

その覚悟は既に出来ていた。

 

彼の表情に一片の曇りを感じられなかったのを確認したアル=ヴァンもまた彼を認めた。

 

 

「…」

「まだ、反対する?」

「いや、彼の決意は本物だ…否定はしない。」

「そう、なら私はベルゼルート、アリーはラフトクランズの配置でいいのかしら?」

「ああ、乗り慣れた機体の方が扱いやすいだろう。」

「父さん、テニア達は?」

「引き続き、状況に応じて各機体に乗り換えて貰う。」

 

 

エ=セルダの言葉に疑問状態になる三人娘達。

 

 

「あれ、全部で四機だよね?」

「でも、ラフトクランズとクストウェルは一人用で…」

「グランティード、ベルゼルートは複座。」

「一人余るよね?」

 

 

三人娘の複雑な反応にエ=セルダは助言する。

 

 

「それは安心していい、クストウェルは元々有事の際に玉座機の護衛として扱う機体…アシュアリーに複座式する手配は既に行っている。」

 

 

「「「よ、よかった。」」」

 

 

「通りで一人用のコックピットにしては広すぎる感じがした訳ね。」

「元々は皇族護衛の任を持つ機体の一つだ、建造当時は複座だったと思われる。」

「…成程。」

 

 

そんなフューリー組の話し合いが続く中でハガネに残った部隊。

 

戦技教導隊やクライ・ウルブズの話し合いも続いていた。

 

封印戦争時、ホルトゥスに救助されたアルベロとフォリア。

 

後にガルべルスのラズムナニウムに取り込まれてしまったヒューゴを救う為に協力し、そのまま鋼龍戦隊に下った。

 

封印戦争後、再びクライ・ウルブズを再結成し今に至る。

 

戦技教導隊はカイを筆頭にラミア、オウカ、アラド、ゼオラ、ラトゥーニ、ATXチームよりアリエイルが参加している。

 

尚、ATXチームはヒリュウ改の方へ移動しそちらの任へ就いている。

 

アリエイルが戦技教導隊へ移ったのは地球軌道上に現れた変異アレス・ガイストの件である。

 

封印戦争後、ファブラ・フォーレスで撃墜された筈の機体が何故復活し現在も逃亡中。

 

行方を追うにもアレス・ガイストも地球に降下している事もあり、アリエイルが地上側に残った訳である。

 

続けてクライ・ウルブズはアルベロを筆頭にヒューゴ、アクア、フォリアそして…

 

 

「アクア、どうだ?」

「うーん、まだ緊張しているわね。」

「やっぱり、ゲシュペンストの外装が不味かったか?」

「…」

 

 

食堂のテーブルの上に鎮座するオレンジ色でゲシュペンストmkⅡの姿をした1/144のロボット。

 

アクア、ヒューゴ、フォリアの三人に見られた状態で動きを見せていない。

 

 

「元AI1だったとしても根はまだ子供、自分でもどう接していいのか良く分かっていないのだろう。」

「んで、親父ならどうする?」

 

 

このゲシュペンストは封印戦争後にファブラ・フォーレスより回収されたAI1。

 

母親だったエルデ亡き後、そのコアはクライ・ウルブズに引き取られた。

 

エルデの最後を知る存在で彼女より『生きて、未来を…』と言う言葉を残された。

 

その言葉の意味を知ろうと本人の希望もありクライ・ウルブズと共に行動している。

 

 

「AI1の名のままが良いのならそのまま呼称する、生まれ変わった以上は新しい名前で生きる事も選択の一つと思うが?」

 

 

アルベロは静止したままのAI1に告げた。

 

自分自身で道を選ばせる事もまた本人の為だと。

 

 

「…」

「やっぱり、まだ怯えているのかしら?」

「いや、親父の顔が怖いからじゃ…あでっ!?」

「お前は一言余計だ。」

 

 

アクアの心配を余所にフォリアの茶化しが入るが、余計な一言でアルベロより拳骨を喰らう事となる。

 

 

「つけて…」

「え?」

「つけて…なまえ。」

 

 

AI1は静かに言葉を発した。

 

 

「この子、今…名前を付けてって。」

「名前かぁ…」

「元の名前がAI1…とすると。」

 

 

アクア達がAI1の新しい名前を考えているとアルベロが一案を出した。

 

 

「母親の名前からEと元の名前のL…イルはどうだ?」

「イル?」

 

 

その言葉にAI1は少し考えてから答えた。

 

 

「イル……ボクは…イル。」

「結局、親父が決めちまったか…」

「でも、気に入っているみたいよ?」

「それじゃ、イルに決定でいいか?」

「…」

 

 

ヒューゴの返答にAI1改めイルは了承の意で首を縦に振った。

 

 

「イル、これからもよろしくな。」

「はい。」

 

 

イルは引き続き、クライ・ウルブズのサポートメカとしての立ち位置で行動。

 

クライ・ウルブズで使用している機体はガルムレイド・ブレイズ、サーベラス・イグナイト、メディウス・ロクスの三機。

 

ガルムレイド・ブレイズとサーベラス・イグナイトはヒューゴとアクアのペア、フォリアとイルのペアで使い分けている。

 

アルベロは一人乗りに改修したメディウス・ロクスに搭乗。

 

複座式の機体が多いので結果的に三機での運用になっている。

 

そんな話し合いの中で第一種戦闘配備の連絡と警告音が鳴り響いた。

 

 

******

 

 

大阪・梅田地区。

 

封印戦争後、更に数日前の新宿、浅草方面で出現し日を追う毎に出現する様になったラマリス。

 

そのラマリスが西日本方面でも姿を見せる様になったのだ。

 

現場に居合わせたミチル・ハナテンはショウコのGサンダー・ゲートで輸送されたGバンカランに搭乗し応戦。

 

続けてハガネの到着も間に合い、ラマリスの掃討が継続した。

 

だが、同時に予期せぬ来訪者達が現れた。

 

 

「久しぶりだなぁ~ロア?」

「…」

「ホンマや、久しぶりやなあ?」

 

 

ゲートらしき現象で現れたダークブレイン軍団。

 

順にデブデダビデ、クリスタルドラグーン、スカルナイトと名乗った。

 

この時点で出現していたのはクリスタルドラグーンとデブデダビデの二体。

 

スカルナイトの出現は早期すぎた。

 

 

「大仏に栗金団にスカル野郎の登場かよ!?」

「デブデダビデ、クリスタルドラグーン、スカルナイトだからねお兄ちゃん。」

 

 

Gコンパチカイザーでいつものやり取りをするコウタとショウコ。

 

緊張感がないのは変わらずである。

 

 

「ラマリスに続いてダークブレイン軍団ってキリがないじゃない。」

「それでも奴らを止めるしかない。」

「そうは言うけどよ、ラマリスは同時破壊…おまけに幹部級の登場だぜ?」

「きけん…?」

 

 

クライ・ウルブズの実況が始まり…

 

 

「カイ少佐、ラマリスの同時掃討とダークブレイン軍団の迎撃に部隊を分ける必要があるが?」

「そうだな、避難民の誘導が続いている以上は…こちらも足止めになる。」

 

 

アルベロとカイで状況打開の為の通信。

 

他は狙ってくるラマリスを掃討に専念していた。

 

 

「だぁはっは!!ロア、さっきまでの威勢はどうした?」

「うるせぇぞ!」

「ふん、減らず口もそこまでだぁ~!!」

 

 

Gコンパチカイザーへ再度攻撃を仕掛けようとするデブデダビデ。

 

だが、奴の企みは新手の存在によって防がれる事となった。

 

 

「炎の…矢!!」

「氷の…刃!!」

「碧の…疾風!!」

「金剛の弾道!!」

「隙だらけだ…!」

 

 

デブデダビデへと向かう魔法の総攻撃。

 

 

「な!?」

 

 

その攻撃が放たれた先に現れたのは…

 

 

「やっぱり、鋼龍戦隊の皆だ!」

「一体、これ…どうなっているの?」

「判りません、私達がセフィーロに居た間に何が…」

「その話は後で説明するから合流を急いで。」

「イルイ、ハガネへ一度降りて貰うぞ?」

「うん。」

 

 

順に光のレイアース、海のセレス、風のウィンダム、ロサのエザフォス、ピートのアシュセイヴァー。

 

 

「あれは魔神に機神…ロサ達か?」

「副長、彼女達は?」

「彼女達は味方です、所属は防衛軍の扱いになりますが。」

「そうか。」

 

 

テツヤは彼女達に艦周辺へ移動して貰い簡易的な状況を伝えた。

 

その間にイルイはアシュセイヴァーよりハガネのブリッジへと転移した。

 

 

「事情は分かりました、そちらの指示に従います。」

「テツヤ副長、イルイの保護を願います。」

「判った。」

「皆、気を付けて。」

 

 

イルイの無事を確認した後、彼女達は戦闘中のコウタらの元へ急行する。

 

 

「ショウコ、大丈夫?」

「光、海、風、三人共…今までどうしてたの?」

「それは後で話すね、今は…」

「ああ、この大仏野郎共をぶった倒さねえと!」

「くそぅ、奴らも魔術を使うのか…!」

「魔術と言うよりも魔法が合っていると思いますけど?」

 

 

魔術は術式を組み込んで行う、魔法は精霊などから力を借りて行う。

 

その違いを律儀にデブデダビデへと説明するロサ。

 

 

「…」

「なので、デデデさん訂正してください。」

「デデデだとぅ!?」

「デブデダビデ、略してデデデさんです!そのお腹…グルメレースでメタボリックシンドロームまっしぐらみたいですしダイエットをお勧めしますよ!!」

「で!?」

「ぶっ!デデデやて…ぶっはっはははは!!!デブ公、随分と良い仇名付けられたもんやな?」

「ナサケナイ。」

「ぐぬぬぬぬ~っ!!!うるさーい!!」

 

 

続けて真面目な忠告のつもりで発言したロサだったが、どう見ても火に油を注ぐ発言である。

 

その発言に噴き出すスカルナイトと呆れた声を出すクリスタルドラグーンに地団駄を踏むデブデダビデ。

 

 

「ロサさん、相変わらずですね?」

「寧ろ天然度がアップしているわよ?」

「アハハ…」

「だが、敵の動きが乱れた…巻き返すのなら今だ。」

 

 

その様子に苦笑い気味のマジックナイト達と正論を答えるピート。

 

ピートの言葉通り、動きに乱れが生じたデブデダビデ達はこのまま一気に巻き返される事となる。

 

 

「く、くそぅ!」

「フカク…。」

「潮時やな、ワイらもやるべき事をやらんと?」

 

 

スカルナイトの言葉で三体は撤退を開始。

 

同時に残存していたラマリスを回収していった。

 

 

「デデデさん、今度会ったら地獄のダイエットメニューです!」

「ロサ、方向性が違う方に行ってるわよ?」

「ロサさんの天然も時に役立つ事もありますわね。」

「ロサ、それよりも…」

「えっと、御免なさい…大事な事を言いそびれそうになりました。」

「光、お前ら今までセフィーロに居たんだろ?」

「その事なのですが…」

「どうしたんだ?」

「…セフィーロ、オートザム、チゼータ、ファーレンがサイデリアルに降伏したんだ。」

「何だって!?」

 

 

光達の発言は新たな戦乱を呼び込む言葉だった。

 

 

>>>>>>

 

 

大阪での激戦の末に撤退するダークブレイン軍団。

 

この時、ハガネに一通のメールが届いていた。

 

その内容を確認したオペレーターの一人であるエイタは素っ頓狂な声を上げてしまう程だった。

 

 

「ひっ!?」

「どうした!」

「副長…ホルトゥスの孫光龍より入電、『あの鏡餅達の後始末はこちらで引き受ける。』との事です。」

 

 

「「「…」」」」

 

 

エイタの発言でギント艦長以外の副長以下全ブリッジ要員達が表情を青褪めさせた。

 

 

「テツヤ副長、どうした?」

「いえ、少々……悪寒が。」

 

 

艦長らのやり取りにアヅキらブリッジ要員らは心の底でボソリと呟いた。

 

 

「…(言えないですよね。」

「…(そうだよな。」

「…(こぇえええ。」

「…(実際見ていないと説明しにくいと言うか何と言うか。」

 

 

そして『知らぬが仏』と言う言葉は彼女らの脳裏を過ぎるのだった。

 

 

******

 

 

鋼龍戦隊と交戦し撤退中だったダークブレイン軍団。

 

その拠点への帰還道中の事である。

 

突如、海上で発生した現象に巻き込まれた三人。

 

その場所とは『限仙境』と呼ばれる異空間だった。

 

 

「そこの三馬鹿トリオ君達、お久しぶりだね?」

 

 

異空間の中で応龍王に搭乗した光龍からの発言。

 

 

「お、お前は!?」

「僕だけじゃないよ、君達に恨みがあるのは?」

 

 

光龍が両手で左右に視線を案内させると怨念の籠ったオーラを纏った二体の機体が待機していた。

 

 

「「…」」

 

 

アルブレード・カスタムとエクスガーバイン・アクストに搭乗したカーウァイとテンペストを紹介。

 

但し、二体の形状は封印戦争時よりも様変わりしていた。

 

所謂バージョンアップされた機体での登場である。

 

 

「あ、そうそう…」

 

 

光龍は取って付けたかの様な台詞を答えた。

 

 

「ここで簡単に逃げられると思わない事だね?」

「セントーの街では随分と後手に回された。」

「ここで貴様らを仕留めても文句はないだろう?」

「そう言う事で……もう少し粘って貰うよ?」

 

 

光龍、カーウァイ、テンペストの三名から告げられた処刑宣告。

 

只でさえ鋼龍戦隊と事を構えていたダークブレイン軍団の三将軍。

 

ある程度のダメージを引きずりながら次の交戦を余儀なくされた。

 

 

「…」

「おーい、デブ公。」

「…泡ヲ吹イテイルゾ。」

 

 

彼らの怒りの原因を造った張本人であるデブデダビデに関しては情けなく白目顔からの泡を吹き気絶しかけていた。

 

その様子に二人もウンザリと諦めに近い表情で発言を告げた。

 

 

「…ワイらもタチの悪い相手を敵に回した様やな。」

「…ソウダナ。」

「…(ブクブク。」

 

 

今後もこんなフレーズの『教訓・地球の親バカには手を出すな』と言う名言が浸透するだろう。

 

これによりダークブレイン軍団は更なるダメージを蓄積し拠点あるダークアイアンキャッスルへと引きこもる事となった。

 

流れの予定だったダークブレイン軍団によるバラルの園や天鳥船島への襲撃を止める為の茶番劇であろうとも。

 

そして、ペンタゴナワールド、ドキドキスペース、セフィーロ側の世界へ進軍を開始したサイデリアル。

 

新たな戦乱と共に世界の混乱は続くのだった。

 

 

=続=

 





砂塵に潜む深淵。

その淵に堕ちたのは罪人。

彼らの悪意もまた奴らの糧。


次回、幻影のエトランゼ・第八十八話『牢獄《プリズン》』


穢れを仕留めよ。

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