幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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闇の淵に潜む者。

彼らは復活の時を待った。

これはその証。

だが、彼らの復活は悪夢の始まりだった。

彼らにとっての悪夢の…



第八十七話 『闇兵《アンヘイ》前編』

 

並行世界より齎された情報の一つTOKYO JUPITERに酷似した現象が発生してから一週間が経過した。

 

これにより三つのエリアとの連絡が遮断され途絶。

 

ムトロポリス、ビルドベース、インダストリアル7…

 

そのエリアに在籍、滞在中の仲間の安否は不明のままだった。

 

 

******

 

 

一方、その頃。

 

 

パリにある領事館に滞在中のメキボスの元へ現れた光龍。

 

その二人が鋼龍戦隊からの連絡を受けていた。

 

理由はサイデリアルと発生したTOKYO JUPITERの件である。

 

サイデリアルに関してはインスペクター…ウォルガでも危険視されていた。

 

前者に関しては次元力の研究が進まない以上は手出しが出来ない為、後者の話に進んでいた最中だった。

 

 

「成程な、噂のサイデリアルの本隊が出張ってくるとはね。」

『メキボス氏、そちら側でサイデリアルの情報は何処まで掴んでいますか?』

「正直、封印戦争で総大将の顔を拝めたのは奇跡に近い…こちらも奴らの兵力や規模を完全に把握できて居た訳じゃない。」

『そうですか…』

 

 

レフィーナとテツヤがメキボスに通信で話し合う中。

 

メキボスはある情報を告げた。

 

 

「だが、金色の戦艦の件に関しては情報がある。」

『その情報とは?』

「金色の戦艦の主はストラウス…サイデリアルの総司令官だ。」

『総司令官が自ら前線に出て来たと?』

「ああ…恐らく総大将もこちら側にまだ居るのなら戦力を呼び寄せている可能性がある。」

『向こう側はスフィアも所持している、やはり…事を構えるのは危険か。』

 

 

テツヤの判断は間違いではない。

 

スフィアに関しては現時点で情報が少なすぎる。

 

最も記憶保持者達が腹を割って話していれば事は進んだだろう。

 

だが、彼らにも理由があって話す事が出来ない状況だった。

 

知り過ぎれば、その喉元に刃が向けられるのだから…

 

 

「そうだな…俺からすれば、そっちの協力者…スフィアを持っている奴らと合流を条件で行動した方がいい。」

『サイデリアルの所持するスフィアがどの様な効果を持つ力なのかも未だ不明のままですからね。』

 

 

既に記憶保持者達からスフィアの所持者の情報を得ていたメキボス。

 

現時点で勝敗が掴めない以上は流れに任せていた。

 

 

「…(アイツらの話だと向こう側のスフィア持ちはアサキムを含めて六名…正直、分が悪い。」

 

 

話は継続し続けて質問されるメキボス。

 

 

『メキボス氏、もう一つ聞きたい事がある。』

「もう一つ?」

『一度撤退したザール率いる星間連合が再び進軍を開始した、その中にゲスト…そちら側の起動兵器が混じっていたとの事だ。』

「……そいつは厄介な案件だな?」

『と、言うと?』

「恐らくゴライクンルの連中だ、こちら側で言えば武器商人の様な役割を持っている。」

 

 

メキボスはゴライクンルの情報と同じ星間連合でも派閥の違う組織の為に手出しが出来ないと告げた。

 

 

「成程、それなら裏側の動きはこちらで調べようか?」

 

 

今まで静観していた光龍が提案を上げた。

 

 

「いいのか?」

「ハスミなら状況打開の為にそのゴライクンルや他の敵勢力の情報を虱潰しに調べる方針を告げると思うからね。」

「だったらゴライクンルと深く繋がっている連中を調査してくれ、他の方はゼフ達に調査させる。」

「艦長のお二人もそれでいいかな?」

『はい、情報は多い方が助かります。』

『お二人共、頼みます。』

 

 

テツヤとレフィーナは二人に礼を告げると通信を終える。

 

通信が終わった後、メキボスと光龍の話し合いが引き続き行われた。

 

 

「調べると言っていたが、アテはあるのか?」

「艦長の二人には申し訳ないけど、確実な事は既に判明しているよ?」

「どういう事だ?」

「君が言っていたゴライクンル…彼らもクロノと繋がりを持っている。」

「!?」

「ハスミも『利害一致からの同盟関係を前提としているが、何処かポセイダルと似た雰囲気が漂っている感じがする。』って言っていたし。」

「それは言葉通りに受け取ってもいいのか?」

「どうかな、ミスリードを含ませているかもしれないし…まだハッキリとしていないのかもしれないよ?」

「自分の娘の情報だろ…なら、信じるしかないんじゃないのか?」

「そうだね。」

 

 

酷似した状況を照らし合わせて情報を構築する。

 

経験し似た状況であれば、呑み込みが早く理解され安いからだ。

 

ハスミは照らし合わせる事で、必要であり与えられる情報を開示する方法を取っている。

 

 

「…正直な所。」

 

 

光龍は空気を読まない発言をボソリと答えた。

 

 

「僕としては、月のサイデリアルに殴り込みをして娘を連れ戻したいけどね。」

「…殴り込みの件は聞かなかった事にする。」

 

 

四霊の超機人が猛威を振るう事。

 

それは月を星図上から抹消する勢いである事を理解したメキボスは遠い眼でスルーを決め込んだ。

 

光龍は再び何時ものノリで話を続ける。

 

 

「と言う冗談半分はさておき、さっきの調査とは別件で現れる三馬鹿トリオのお相手をしなければならないから…一先ずはそっちに専念するよ。」

「三馬鹿トリオ?」

「そ、修羅の乱で僕が消し炭位にコテンパンにしておいたんだけど…案外しぶとくてね。」

「…(消し炭かよ。」

「流石は負念の一端と思ったよ、復活する為の負念が変わらず漂っている状態じゃ同じ事の繰り返しだし。」

「漂っている?」

 

 

光龍は負念についての新たな情報をメキボスに答えた。

 

 

「破滅の王・ペルフェクティオがこの世界に残した負念の残滓…アレが負念を糧にする連中の復活に必要な力を十分に持っている事は前の会議で話したよね?」

「ああ…」

「負念は本来…死の概念や負の感情とかネガティブな死者側のイメージが強い。」

 

 

光龍は続けた答える。

 

 

「時間は掛かるだろうけど、ばら撒かれた破滅の王の負念はこの世界に漂っている残滓に引っ付いて復活する。」

 

 

ケシカス程度の連中が力を経て天狗になる様に。

 

奴らは同じ負念の力を持つ存在と同調し融合の末に一つの存在に変異する。

 

あの破滅の王とまではいかないけど、それなりの奴が顕現するだろう。

 

 

「それが危険視している案件の一つか?」

「そ、で…もう一つは純粋な器が狙われる可能性がある事。」

「純粋な器?」

「生まれつき正念と負念の両方に至らない中間的な存在だよ。」

「…」

「そこへ負念の塊が入り込んだらどうなると思う?」

「真っ先に負念側に堕ちるって事か?」

「そう言う事。」

 

 

純粋な器。

 

それが誰の事を示すのか?

 

それを知るのは光龍の娘である彼女だけだろう。

 

 

=続=

 


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