幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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これは必要な事。

これは目覚めさせる為の行為。

脅威となれば、反逆の意思は高まる。


第八十五話 『布告《フコク》』

サイデリアルによってガウ=ラ・フューリアが制圧されてから一か月後。

 

彼らは星間軍事連合サイデリアルと名乗りを上げた。

 

突如として出現したサイデリアルは手始めに月面に点在する施設を制圧。

 

事実上、月を自身らの拠点へと作り替えた。

 

彼らは月面都市並びに施設の住民への侵略行為は行わず静観を続けていた。

 

但し、地球政府並びに同盟を結んでいる異星人や組織への侵略は一切行っていないが…

 

それ以外は別の話である。

 

地球圏に侵略行為を行っている勢力へは積極的に戦闘行動を行っていた。

 

サイデリアル代表のアウストラリスは地球政府に声明を出し、こう告げる。

 

 

『脆弱な種よ…圧倒的な力へ抗う意思があるならば、かかってくるがいい。』

 

 

言葉の意味としては多種多様の種への宣戦布告。

 

彼らは抗う力を持つ者と戦う事を望んでいる。

 

その気になれば、現在の地球圏を手中に収める事が可能な戦力を秘匿していたとしても。

 

前回と同じ行動は控えつつ戦いの牙を研ぎ澄ましていた。

 

 

******

 

 

サイデリアルから宣戦布告を受けて数週間後。

 

地球政府は連合軍を始めとした同盟組織に対しサイデリアルへの攻撃を中止させた。

 

その理由はサイデリアルの情報を知る同盟組織からの忠告からだった。

 

 

『サイデリアルの中核を担う者達はスフィアを所持している。』

 

 

スフィア…空白事件でも名が出て来た謎のアーティファクト。

 

それは尋常ならぬ力を発揮し、戦場を引っ繰り返す事さえ可能な代物。

 

独立機動部隊ノードゥスに協力していた二名のスフィアリアクターは一方は所属する世界へ帰還し、一方は行方不明の状態。

 

スフィアに対抗するにはスフィアしかなく、現状では総攻撃を仕掛ける事が困難であると上層部で中止決定が下った。

 

もしも、上記のスフィアリアクター二名が残っていたのなら無謀とも言える総攻撃作戦は遂行されていただろう。

 

これにより地球側の行動はこの様な形となった。

 

問題は地球圏へ侵略行為を行っている勢力である。

 

此方に関してはほぼ惨敗し撤退を開始している勢力も出ている状態だった。

 

理由は説明するまでもないだろう。

 

閲覧者側から見れば、システムエラーを起こした無理ゲー状態なのだから。

 

言い方が悪いが、戦闘狂その壱、戦闘狂その弐、腹黒巫女、泥酔隊長、電波狂人の五名のスフィアリアクターが集結。

 

知らなかったとは言え、そんな連中の相手など誰もしたくもないだろう。

 

それはさておき…

 

月面にターミナルベースを構えたサイデリアルの一行。

 

彼らは現状報告と次の行動に移る為に会議を行っていた。

 

 

「それでは、定例会議を行います。」

 

 

私ことハスミ。

 

流石になぜなにナデシコなノリは無理なのでごく普通に事務的に行っている。

 

ナデシコクルーがやってこそのアレだと思っているので。

 

私はアウストラリス達にフューリー側の現状報告と皇女の亡命成功の件を伝えた後…

 

地球政府の状況を報告した。

 

 

「引き続き、こちら側の地球政府はサイデリアルと事を構える事はせず静観を続けています。」

「正しい判断と言うべきか…自分達の力量と現状を把握した上での決断だろう。」

「いえ、政府内で厄介な動きが起こったと思われます。」

「理由を話せ。」

「政府の行動がやけに大人しいのです、いつもなら馬鹿なタカ派が無謀な行動を取る…今回はそれが一切ない。」

「…」

「あのサイガス・エイロニーはそちら側の地球に居る……それにより行動を起こせる人物達は絞られる。」

「正体は?」

「元タカ派だった三輪、真空管ハゲと言った連中です、現在も梁山泊の最下層監獄へ収監されているのですが妙な気配が…」

「成程な、では…お前はどう見る?」

「バアル、負念の一部になったバラオの仕業かと…」

「奴らが動く理由は?」

「こちら側のスフィアの気配に感づいた、サイデリアルの侵攻を危険視した、御使いからのいつもの横槍のいずれかかと。」

「無事に疑似餌に掛かったようだな?」

「ですが、奴らを燻り出す為にはノードゥスが動く必要があります。」

「ならば、奴らに情報を与え…泳がせる必要がある。」

「アウストラリスのご指示前ですが、既に手は打ってあります。」

「ファウヌス、後の手段は任せる。」

「心得ました。」

 

 

アウストラリスとファウヌスのやり取りを静観していた三名。

 

その会話の後、ストラウスから感想を告げられた。

 

いや、正確には鎧を外したストラウスことエルーナルーナ・バーンストラウスからである。

 

 

「何か凄い事になっているけど…」

「いつもの事だ、ファウヌスの先を視ると識るは下手をすれば戦況を引っ繰り返せる代物だぜ?」

「そう、彼女が生まれつきアカシック・レコードからの情報を識る人間だからかな?」

「成程、こっちや向こうさんの動きも全部お見通しって事かい?」

「それはない。」

「へっ?」

「ストラウス総司令…私はアウストラリスとの決闘に敗れた時、敗者として知り得た記憶や知識の公表を制限されています。」

「あらーま…」

「…ストラウス総司令も決定された勝ち戦などされたくもないでしょう?」

「そうだね、判っているじゃないか?」

「私はアウストラリスの指示通りに行動し障害となる状況に対処するだけです。」

 

 

呆れた表情でガドライトは突っ込みを入れた。

 

 

「…そもそも命令云々前にお前はアウストラリスにゾッコンの癖によ。」

「///」

「え?マジ?」

「ガドライトさん…!!」

「ぷっwww。」

 

 

会議の最中の茶番、更に混乱へと突き進む。

 

 

「…フッ。」

「…(え、今…笑った?」

「…(すっげー違和感。」

「…(へえ、彼も笑うんだね。」

「アウストラリス、話がそれましたが……先程の条件で残りの作戦を進めても?」

「構わん、お前の采配に任せる。」

「承知しました。」

 

 

アウストラリスは最後にファウヌスにこう告げた。

 

 

「軍師、頼むぞ。」

「はい。」

 

 

その言葉を最後に会議の場を去った。

 

 

「さてと…皆さん、やる事は山ほどありますよ。」

「…(不味い予感が。」

「特にガドライトさんには…頑張って貰わないとですので?」

「そう来るかよ。」

「フフフ、口は禍の元って言うよね?」

「アサキム、お前もそう来るか?」

「まあ、面白いものが見れたしアタシはどっちでも?」

「では、複数の作戦とそれぞれの作戦の実行役を決めます。」

 

 

バアル、頸を洗って待っているがいい。

 

その先端を全て切り裂いてあげるわ。

 

 

=続=

 




突如として引き起こされた。

三つの結界は何を齎すのか?


次回、幻影のエトランゼ・第八十六話『異球《イキュウ》』


更なる悪意達を払う為に。

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