そこに現れたのは交わる事がなかった事象。
これはある意味では娯楽たる現象。
無限力が指し示すのは人と言う駒を使った遊戯。
前回の戦いから翌日。
突如、CITY-NO.5が存在する海域に不可侵が出来ない島が出現。
次元震の反応もあった為、新たな領域が出現したと捉えられた。
連合政府は調査部隊の派遣を行おうとしたが…
島は次元震の影響で発生した多元領域によって隔たれており、侵入が困難である事が判明。
現時点では周囲海域での監視が手一杯の状況である。
手があるとすれば、クロスゲートによって多元領域を通過する手段であるが…
現時点でイルイは力を失い、ハスミはサイデリアルの手に落ちている。
…結局は如何する事も出来ない。
だが、現地に赴いている調査部隊は知る由もなかった。
監視を掻い潜って島へ上陸した者達が存在した事を…
******
島の海岸付近で会話は始める小牟と零児に説明を付け加えるハスミ。
そして周囲には同じ様に上陸した者達が集合していた。
「漸く、島に辿り着いたのう。」
「まさかあのクロスゲートの転移がここまで可能とは…」
「稼働や微調整までに色々とありましたけどね。」
政府や他勢力が血眼で監視や上陸方法を模索している島に上陸した者達がいた。
現在、活動中の物質界メンバーとハスミ達である。
天鳥船島の神殿深部に秘匿してあるクロスゲートを利用し島まで転移したのである。
島の座標自体は判っていたので後は島周辺に張り巡らされた多元領域を超えるだけと言う状況。
もしも今回の件が知れれば不味い状況であるが今は考えないで置こうとハスミは思った。
「島の状況からしてジャングル…熱帯系の島だろうか?」
「恐らくは…どんな状況なのかは分からないけど。」
こう言った島やエリアを捜索する事が多かったクリスとジルのペア。
「ジャングルを見るとあの事件の事を思い出すな…」
「ま、あれは凄かったよな。」
九十九事件からの関係者であるリュウとケンのペア。
「本当ね、まさかと思うけどアレが出てきたりしないわよね?」
「そうね、今は判らないわよ?」
同じく九十九事件後から互いのペアが変わってしまった春鈴とモリガンのペア。
「あーあれか…」
「アレって何だ?」
新たなペアでレイレイと新参者のフランクのペア。
「アイビス島に出現した恐竜しかありませんわ。」
「あの時は僕達もビックリしましたー!」
「しましたー!」
「したー!」
苦虫を噛み潰したような表情で答えるトロンとコブン40体のペア。
「きょ、恐竜だと?」
「ハリウッド映画の間違いじゃ…」
新参ペアそのアキラとパイのペア。
「九十九事件の最中、米軍が秘密裏に行っていた研究が原因でアイビス島と呼ばれる島に恐竜が出現したと事件に関わったレジーナさんから伺っています。」
「あのときはおっかなかったですぅ。」
「ぐすん。」
「ボクたち、たべられそうになりました。」
ハスミの説明の後に当時の悲惨な状況を伝える他のコブン達。
「マジだったのか…」
「流石に本物はハリウッド映画に使えないわね。」
「会えたならいっぺん戦ってみたかったな。」
唖然とするアキラ達を余所に盛り上がっているバン。
「話は後だ、ハスミ…気配が正しいなら俺達の時と同じ転移反応が島にあったんだな?」
「はい、間違いありません。」
「ここではぐれたメンバーとも合流出来るといいのう。」
「…では、明るい内に進めるだけ奥へ進んでみましょう。」
はぐれたメンバー。
それは零児らが魔界から別の場所へ転移した時に起こった出来事。
こちら側に転移した現在も行方が掴めておらず、安否が心配されている。
「…(本来の流れなら彼らは物質界の秋葉原に出現したクロスゲート付近に転移する筈だったのに…また無限力の仕業?」
この流れを知るハスミは彼らに真実を答えずに出来得る限りの助言と手助けをする事を心に決めた。
~数時間後~
「巨大昆虫に食人?植物…この島、一体何なのよー!!」
「お嬢、今更言ってもどうにもならないぞ。」
「そうだけど…」
島を探索中に島の生態系の恩威とも呼べる生物と交戦した一行。
その数と不気味さに文句を垂れる美依と諫める小吾郎。
「それでも距離は稼げましたし目的のピラミッドまで辿り着けた様です。」
「一帯のジャングルで隠れていたが、規模は大きいな。」
「…(このピラミッド、何処かで?」
労いの言葉を掛けるハスミと目処前のピラミッドに感想を答えるアウストラリス。
しかし、ハスミはピラミッドの全容を見ると何処かで見た事を不意に思い出していた。
周囲を調べた後、特に変わった様子はなかったのでピラミッド内部に潜入する話が出ていた。
「周囲には何もなかった、後はピラミッドの中に入ってみるしかないか?」
「危険…と言いたいけど調べる必要があるものね。」
「レッツ、大冒険じゃあ~!」
「ふう、結局はこうなるのか…」
クリスとジルからピラミッド内部への調査の案があったので内部に入る事を決めた一行。
順にピラミッドの内部に入っていく一行。
そして、最後に侵入しようとしたハスミとアウストラリスのペアを遮断する様にピラミッドの扉は閉じてしまったのである。
「扉が!?」
「遮断されたか!」
「…こんな所で!」
何とか扉をこじ開けようとするものの座標が変異し向こう側とこちら側が完全に遮断された事をハスミは感じ取った。
「残念ですが、完全にこちら側とは遮断されました。」
「…」
「恐らくは無限力の…」
「今回の一件も仕組んだと?」
「はい、その通りです。」
無限力は新たに出現させた駒だけではこちら側での戦いに面白みがないと判断したのだろう。
更なるメンバーの分断を行う為の次元震現象。
では、残された私達に降りかかるのは一体…
「っ!」
「これは!」
「スフィアが反応している?」
「…どういう事だ?」
「判りませ……これは!」
「どうした!?」
「転移です!」
島の上空に転移してきた二体の機体。
「おいおい、一体どうなっているんだ?」
「僕にも判らない。」
「そりゃそうだけどよ…て、あそこにいるのは。」
突如、島内部に転移してきたジェミニアとシュロウガ。
島中心部に位置するピラミッドに見知った相手が居た為、その近くに機体を下した。
そして、機体から降りたガドライト達はハスミ達と合流し今まで経緯を整理した。
同行していた仲間がピラミッドの中で消えてしまい取り残された事。
スフィアの謎の共鳴反応の事を…
「俺達は島で待機中にスフィアが反応しやがったと思ったらいきなり機体に乗ってるわ転移するわで…何があったんだ?」
「私達にもまだ…ただスフィアが反応しだしたとしか。」
「こちらも突然だったと言う事だ。」
「それで原因は?」
「……恐らくはアレです。」
各自に双眼鏡を手渡して位置を伝えるハスミ。
現在居る島の北部に位置する場所で唸り声を上げる一体の巨獣。
知る者は絶対に手を出してはならない伝説の怪獣である事が解るだろう。
「な…」
「随分と…」
「ハスミ、あれは一体?」
「かつて世界を震撼させた怪獣の王…その名もゴジラです。」
恐竜を思わせる黒い巨体、先端を赤く染める背ビレ、島全土を響かせる雄叫び。
「全長は150から300m位、様子から察するに何かで暴走してますね。」
「ハスミ、呑気に解説している所悪いけどよ…」
「はい。」
「アウストラリスが奴に眼を輝かせているんだが?」
ハスミの説明に対して途中で遮るガドライト。
とんでもない事になっている状況を伝えた。
双眼鏡を下げてアウストラリスの様子を伺うハスミ。
「…」
「これは…無理ですね。」
「と、言うと?」
「ゴジラに対して襲撃態勢に入ってます。」
「うぉい!」
「二人の戦いね…僕は見て見たいよ。」
「いや、止めろよ!?」
「そもそも、この状態になったアウストラリスを止められますか?」
「…」
ガドライトは突っ込みを連発し二人の同意を得ようとしたが…
マイペースなアサキムと悟りすぎて遠い眼をしたハスミの発言により沈黙。
「「「無理です(だな、だね。)」」」
三名は色々と悟りすぎて遠い眼な笑顔で静かに答えた。
「貴様がゴジラと言うのか?」
「!?」
「たかが人間と思うな、俺はお前と戦いたい。」
「…」
「貴様が何故此処に現れたのか…理由を知る為にな?」
ゴジラが暴れる場所へ移動したアウストラリス。
互いに火花が散る。
白銀の次元将と怪獣の王の決闘。
無限力が望んだカードによる対決が開幕したのだ。
=続=
その島は何故現れたのか?
その島は何を求めているのか?
次回、幻影のエトランゼ・第七十八話 『聖島《インファント》後編』
交じり合った伏線が新たな災いを呼ぶ。