幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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隠された力は禁忌。

女神の目覚め。

戦いは続く。

星の輝きが真の使命を果たすまで。


第七十五話 『人祖《アダマトロン》後編』

ビッグファイアの手引きによって亜空間に転移したノードゥス。

 

その先に広がるのは命なき虚無の世界。

 

それはまるで原初の世界にして混沌の世界。

 

始まりを示す世界の再現だった。

 

 

******

 

 

亜空間と一言で言ってもユーゼスが作り出した空間の規模は不明。

 

その為、光龍らが先行し行ったと思われる戦闘で破壊された残骸の跡を頼りに一行は辿っていた。

 

その惨状にエクセレン、タスク、カチーナも愚痴を零していた。

 

 

「あらまあ…随分と派手に破壊されちゃってるわね。」

「親バカもここまでくるとマジで怖いっす。」

「…そりゃ言えてるぜ。」

 

 

即時出撃が出来る様にノードゥスの各戦艦のカタパルトデッキや艦砲のない甲板で各々の機体に搭乗し待機するパイロット達。

 

先の転移で亜空間に転移した艦隊は鋼龍戦隊に前世でガンエデンに関わった部隊が中心となって編成されている。

 

残りの部隊は各地の防衛戦線とUN跡地周辺のエリア防衛に当たっていた。

 

戦力上ならガンエデンと戦える戦力は集結している。

 

だが、余剰の戦力は与えないかの様な配置である事は間違いない。

 

 

「まるで迷路の中に居るみたいだ。」

「つまり、亜空間の迷宮…て事か。」

「恐らくはクロスゲート・パラダイム・システムを応用し異なる空間との隙間に新たな空間を生み出したのだろう。」

「隊長、奴の目的は一体?」

「L5戦役と同じであれば、奴の目的は神に至る事だろうな。」

「神?」

「文字通り、神に匹敵する力……恐らくは『次元力』の完全な掌握でしょうね。」

「次元力…空白事件で判明した次元を超える力の一つにして星の命の源。」

「それをユーゼスに掌握させる訳にはいかないわ。」

「その為に…ハスミとイルイを連れ去った。」

「…(これも無限力の仕業って事かよ、ハスミ…そろそろマズい状況だぜ。」

 

 

マイの発言からチーム内で会話が進むSRXチーム。

 

L5戦役後、今まで会話らしい会話がなかったのはユーゼスの生存が予期されていた事が関わっている。

 

アルテウル・シュタインベックの声とその手腕がかつてのユーゼスと酷似していると予感したイングラムとヴィレッタの行動によって修羅の乱後と封印戦争中は表立った行動は控えていた。

 

上層部命令に関してもホルトゥスの横槍もあった為だろう。

 

ノードゥスは一部の異動命令を除いて謀殺や暗殺などの事件に巻き込まれなかった。

 

それが功を成したのか水面下ではあったが、ノードゥスは密かにかつての仲間達を収集し迎撃部隊を纏め上げる事が出来た。

 

その迎撃部隊が必要な程、今回の戦いは重要な戦いだと言う事。

 

南極での戦いの折にハスミはケイロンと共に終焉へと繋がる世界崩壊のタイムリミットを告げた。

 

それを防ぐ為の術を知るのは彼女らだけである。

 

ビッグファイアの助力を経てノードゥスの突撃艦隊は迷宮の奥へと進むが…

 

 

「あれはガリルナガン!」

「アーマラ・バートンか…!」

「アルテウル様の命令だ、お前達はここで沈んでもらう。」

 

 

侵攻方向に現れたガリルナガンとガイアセイバーズの残党部隊。

 

どうやら迷宮と化した亜空間の中で先に潜入した光龍らと遭遇しなかった様だ。

 

 

「簡単に通れると思わん事だな。」

「各機、展開した敵部隊を迎撃せよ!」

 

 

無事に通れると思ってはいないブライトら艦長達は各機に指示を出してガリルナガンと残党部隊の迎撃に当たった。

 

 

 

>>>>>>

 

 

同時刻。

 

 

「…」

「どうした、貴様達の力はここまでか?」

 

 

迷宮の奥底。

 

そこで対峙する光龍らとユーゼス。

 

戦いは優勢に見えたが『次元力』を有した巨大起動兵器の顕現によって劣勢に追い込まれていた。

 

何度攻撃を繰り返そうとも内蔵された機関によって修復してしまう為に…

 

 

「成り損ないでもガンエデンの素体か…。」

「アシュラヤーとナシムの直系はレビやアタッド以上の念動力を有している……あの愚帝の血筋なだけはあった。」

「愚帝だと?」

「…(ハスミが話していたゼ・バルマリィ帝国の霊帝の事か?」

「ふん、貴様らには関係のない事だ。」

「ま、どんなに力を振りかざしても君が神様とやらになった訳じゃないだろう?」

「…何が言いたい?」

「しいて言うなら他人の威厳で威張るなって事かな?」

 

 

ユーゼスに対し辛口の劣勢発言をするカーウァイとテンペスト。

 

その状況に光龍は挑発めいたの表情でユーゼスに答えた。

 

 

「君、あのイングって子を使って無理やりハスミ達から念動力を奪っているんだろ?」

「…!」

「全員じゃないけど僕らはアシュラヤーとナシムの力を受けた念者だよ?その位の流れは読めるさ。」

 

 

光龍はユーゼスの声色で彼の動揺を感じ取り、痛恨の発言を開始。

 

 

「それに君はガンエデンのコアに成り得ない、理由とすれば…君も彼と同様に造られたモノと言った方が正しいかな?」

「!?」

 

 

ユーゼスの更なる動揺と共にテンペスト達は会話を続ける。

 

 

「光龍、造られたとは?」

「言葉通りだよ、あのユーゼスも誰かの手の中で踊らされた人形って事さ。」

「そうか、あのハイブリットヒューマンを生み出した存在であれば…!」

「カーウァイ、察しがいいね。」

「隊長、どういう事ですか?」

「かつてL5戦役で戦ったラオデキヤはハイブリットヒューマンと呼ばれる人造人間だった…その技術をユーゼスを生み出した存在も奴へと転用したのだろう。」

「つまり、奴自身も人の手で造られた者と?」

「そう言う事、今まで本人自身が疑心暗鬼にならなかった事が不思議な位だろうね。」

 

 

傀儡と言う意味合いでは似た状況に陥っていたケイロンもまた言葉を漏らした。

 

 

「人形が人形を動かしていた…余りにも皮肉だな。」

 

 

茶番はそこそこに光龍らは再度抗いの言葉は告げた。

 

 

「さてと、そろそろ三人を返して貰おうか?」

「勝てぬと判っているだろう?」

「そうかな?」

「!?」

「君はあの子達を過少評価しすぎ、進化と成長を遂げた彼女達を止める事なんで出来はしないよ?」

 

 

光龍らが茶番を行ったのは時間稼ぎ。

 

異なる力の気配。

 

そして歪な人祖から離脱する決定的な方法を持ち合わせていた。

 

状況を覆す為の『次元力』を操る術は既に手の内に在った事を…

 

 

「まさか!」

 

 

巨大起動兵器『アダマトロン』を内側から破壊する様に這い出てきた機体。

 

取り込まれていたエクゼクスバインとエクスガーバイン・クリンゲが離脱を開始したのだ。

 

置き土産とばかりに制御コアを破壊してである。

 

 

「…」

「イング、大丈夫?」

「は、はい。」

「解除は出来たけど無理はしないで。」

「お姉ちゃん。」

「イルイ、怖いだろうけど我慢してね。」

「ん、大丈夫。」

 

 

アダマトロンと対峙していた光龍ら元へ急ぎ合流するハスミ達。

 

 

「ハスミ、無事か?」

「はい、ご迷惑をお掛けしました。」

「無事ならいい…だが。」

「彼ならもう大丈夫です、奴の繰り糸は自らの手で断ち切れていますので。」

「おやおや、男らしく根性を見せたね…君。」

「あの、鋼龍戦隊やノードゥスの皆は?」

「鋼龍戦隊やノードゥスのメンバーもいずれこちらに合流する、我々は先に侵入していただけに過ぎない。」

「そう…ですが。」

 

 

ユーゼスはアダマトロンに搭載したラズナニウムによる再構成で体勢を立て直してから告げた。

 

 

「一体、何故…私の枷から。」

「どの様な枷でも外せる…ただそれだけの事。」

「それだけだと?」

「まあ、賭けであったのは確かです。」

「…賭け?」

「念動力とは、すなわち思念…その思念により強い暗示と指示を掛けたとしたら?」

「…」

 

 

残留思念、死によって強まる思念、己の危機に反応して発動する思念。

 

やり方は様々であるが、私はユーゼスに操られたイングに拉致された際にある思念を強めて置いた。

 

それが私の答えた賭けである。

 

一定の条件下に置いて、己の念動力が少なくなった時に念晶石からストックして置いた念動力を補う事で危機より脱する事。

 

それが私が仕掛けた思念を用いた緊急措置だ。

 

結局、自力で離脱する前にノードゥスの到着は間に合わなかった様子なのは明白。

 

これで方針は決まった。

 

 

「後は状況を把握し内部から脱出した…それだけです。」

「それだけだと?」

「思念とは何か…その言葉の意味を理解し導き出された可能性を見出しただけの事。」

「…」

「さて、ここからが反撃開始と言いたい所ですが……貴方にはそれ相応の末路を迎えて貰います。」

 

 

周囲を巻き込む膨大な思念の高まりと覚醒。

 

それは機械仕掛けの女神を顕現する為の力。

 

最早、止める術はない。

 

 

「紛い物のガンエデンをこれ以上放置する訳にはいかない。」

「お姉ちゃん、私も一緒に…!」

「イルイ…」

「もう、守られるだけの私じゃない。」

「…そうだったわね。」

「お姉ちゃん。」

「一緒にやろう、イルイ。」

「うん!」

 

 

空間を揺さぶる振動。

 

響く女性達の祈りの声。

 

それは白き女神と蒼き女神の目覚め。

 

ここに神話に刻まれた守護神が降臨する。

 

 

「あれは…!?」

 

 

迷宮を潜り抜け目的地へ辿り着いたノードゥス一行。

 

だが、一足遅かった。

 

彼女らの顕現がもう少し遅ければ…

 

彼女は考えを変えたかもしれない。

 

 

「問答無用、ここまで世界を混乱させた対価は…ユーゼス、お前自身で支払って貰う!」

 

 

ハスミは告げた。

 

出現した弐基のクロスゲートを介して現れる機械仕掛けの女神達。

 

紛い物たるガンエデンを依り代としたアダマトロンとは異なる。

 

銀河を守護する真の守護神。

 

 

「あれがこの星に遺されたガンエデン…」

「ナシム・ガンエデンとアシュラヤー・ガンエデン。」

 

 

テツヤとレフィーナはブリッジの艦長席でそれぞれが答える。

 

全長は不明だが惑星の守護を司っていた事もあり巨大かつ威厳のある姿。

 

ナシム・ガンエデンは六枚羽の女神を模した姿だがアシュラヤー・ガンエデンは異なり鎧を身に纏った戦女神の姿だった。

 

その姿に各々の感想を告げたATXチーム。

 

 

「あれがガンエデン…」

「随分と大きな女神ちゃんね。」

「惑星…いや銀河の守護する為に生み出されたのならあの大きさは妥当だろう。」

「ハスミ、イルイちゃん、無事なの!?」

「クスハ、私達は大丈夫。」

「何とか最悪の事態だけは防いだわ。」

「よ、良かった。」

「イング、そっちは無事なのか?」

「はい、ハスミさんとイルイのお陰で助かりました。」

「さっすがハスミちゃんとイルイちゃん、やる事はやっちゃうわね。」

「いえ、正直賭けでしたよ?」

「あらま。」

「賭けだと?」

「イングに仕込まれたバインドスペルが完全ではなかったから出来た事です。」

「不完全だったからこそ開放出来たと?」

「その通りです。」

「ベーオウルフの賭け癖が移ったらしい、これがな。」

「フフフ、キョウスケも顔負けですの。」

 

 

ノードゥス艦隊の到着で僅かな焦りを見せるユーゼス。

 

 

「馬鹿な、アーマラの包囲網と突破したと言うのか?」

「流石の俺達もヒヤヒヤしたけどな。」

「迷宮の一部が牢獄になる罠…僕らも引っかかりそうになったけどね。」

「こちとら優秀な科学者達が勢ぞろいしているんだ。」

「力を合わせれば突破出来ない場所はない。」

「くっ…」

 

 

竜馬、万丈、甲児、凱らがユーゼスの問いに答える様に告げた。

 

 

「ユーゼス、貴方の目論見もここまでよ。」

「ふん、コアたる念動者を失ったとしても疑似コアがある限りアダマトロンは稼働出来る。」

「…ジ・エーデルが貴方に完全な次元力を行使出来る技術を与えると思ったのか?」

「どういう事だ…!」

「奴は貴方の様なプライドの高い存在を奈落に蹴落とすのが好きな気分屋…不完全な技術が生み出すのは欠陥品だけよ。」

「ふん、奴を出し抜けぬ私だと思ったか?」

「大アリです、貴方の性格を把握して一番効率の良い時にそれは発動する。」

 

 

会話を続けるハスミとユーゼス。

 

その時、ユーゼスのアダマトロンに変化が起こった。

 

機体を維持出来ずに各所より誘爆が始まったのだ。

 

 

「な…!?」

「やはり…(一定の念動力の供給が無くなると発動する様になっていたのか。」

「ジ・エーデルめ…死してなおも嘲笑うか!」

「…(まあ、別の姿で生きているんですけどね。」

 

 

ジ・エーデルが愉快犯であった事はこの時だけ感謝すべきなのだろうか?

 

ユーゼスの思惑とは裏腹にアダマトロンはその力を行使出来ずに崩壊を続ける。

 

 

「イルイ、イング、最後は私達の手で。」

「うん!」

「了解!」

 

これ以上、紛い物のガンエデンを悪用される訳にはいかない。

 

 

「「テトラクテュス・グラマトン。」」

 

 

女神達は守護聖霊へと変異する。

 

 

「「テフェリンの開放を。」」

 

 

二対の巨躯の竜は力を合わせて滅びを与える。

 

 

ナシムのフォロー・ザ・サンとアシュラヤーのリリース・ザ・サンが交差しアダマトロンを撃ち抜く。

 

 

「「クロス・ザ・サン!」」

 

 

むき出しになったコアをイングのエグゼクスバインのブラックホール・バスターキャノンが撃ち抜く。

 

 

「超重獄に堕ちろぉおおお!!!」

 

 

眩い光に呑まれた空間は消失。

 

二対の女神は戦士達を引き連れ帰るべき世界へと誘う。

 

 

 

=数時間後=

 

 

 

UN跡地にて待機していたノードゥスの残留組。

 

各地に散っていたメンバーも集結し突入したメンバーの帰還を待っていた。

 

そして出現したクロスゲートを通して二対の女神の手によりノードゥスの部隊が帰還。

 

事情を知らないメンバーは動揺したが、突入メンバーによって説明され落ち着きを取り戻した。

 

そして最後の問題が残っていた。

 

突入部隊を亜空間へと誘ったビッグファイアの事である。

 

彼もまた妹たるガンエデン達の帰還を待っていたのだ。

 

 

「ナシム、アシュラヤー、今なら彼女達を介して話せるだろう?」

「バビル兄様…」

「幾年ぶりでしょうか?」

「永い様でつい最近にも思える。」

 

 

イルイとハスミの身体を介してバビルと語るナシムとアシュラヤーの意思。

 

アシュラヤーは混乱するノードゥスに対して彼女達の身体を介して話しているだけであり彼女達の意思はあると説明。

 

聞くべき事は山程あるが、そのままバビル達の会話を静聴する事となった。

 

 

「君達は今後どうする?」

「イルイを通して人々を見定めていましたが、今の人類に希望を託そうと思います。」

「私も同意見です、ですが…」

「クロノとテンシの事だね?」

「ええ、彼らの手が迫っている以上…必要以上の干渉を控えるべきかと。」

「それは僕も同意見だ。」

「…」

「いずれ彼らの干渉を受けた世界に向かう事になるだろう。」

「目覚めるべき力に彼らが目覚めているのなら話は別だったのですが…」

「目覚めて間もない者もいる…今は見守るしかないだろう。」

 

 

今後の戦いに必要なヒントたる会話。

 

それを読み解くのは彼ら自身。

 

 

「では、その時まで私達は干渉を避ける事で?」

「その方がいいだろう。」

「長い道のりかもしれませんね。」

「いや…そうでもないと思っているのだろう?」

「ええ。」

「僕は僕で動く…君達は君達で動くといい。」

 

 

そう答えるとバビルの意思は眠り、ビッグファイアはその場から去っていった。

 

 

「ナシム、貴方にはこの世界の守護を任せます。」

「アシュラヤー姉様、貴方は?」

「私、いえ…ハスミ自身がやるべき事が残っています。」

「では、ご武運を。」

「ええ、貴方も気を付けて。」

 

 

ナシムとアシュラヤーも眠りに就き、再び意識はイルイとハスミへと戻っていった。

 

 

「お姉ちゃん、行っちゃうの?」

「うん、私にはやるべき事が残っている。」

「また会える?」

「それは判らない……それでもいつか会えるから。」

「判った、私…待ってるね。」

 

 

ハスミはやるべき事が残っていると告げると光龍達に指示を出した。

 

 

「二対のガンエデンは引き続きバラルの園と天鳥船島へ安置、誰にも触れさせないでください。」

「了解、老師にも伝えて置くよ。」

「そしてホルトゥスの全権を孫光龍、カーウァイ中佐、テンペスト少佐の三名に預けます。」

「行くのか?」

「約束は約束ですから。」

「そうか…」

 

 

静かに告げられた別れの言葉。

 

ハスミはガンエデンを天鳥船島へ転移させエクスガーバイン・クリンゲに搭乗し直すと待機していた蒼雷の元へ向かった。

 

彼女の取った行動はノードゥスとの決別と別れの意味を示した。

 

己の武器を収め跪く姿。

 

それは敗北者か?忠臣か?

 

どちらにせよ、彼女は彼の元へ集ったのだ。

 

 

「ケイロン・ケシェット、これはどういう事だ?」

「貴様はハスミの仲間では無かったのか?」

「一言で言うなら立ち位置が異なるだけだ。」

「立ち位置?」

「星の守護を司る者と星を支配する者がやる事はただ一つ…」

 

 

『すなわち決闘のみ。』

 

 

「まさか…!」

「俺との決闘で敗北、互いに勝敗を決した時の契約を守っているだけだ。」

「…」

「契約だと?」

「俺との戦いに敗北した時、その身を預かるとな?」

 

 

次元の将との決闘。

 

それがどれだけ熾烈な戦いであるかを前世で知るZ事変の関係者達。

 

それをたった一人で戦ったのだ。

 

余りにも無謀だと思っただろう。

 

互いの志が違う以上は戦うしかなかったのか?

 

別の道はなかったのか?

 

それは戦った当人達しか知り得ない事。

 

 

「ハスミ、君は…」

「彼の言葉通りです、私は勝負を挑み敗北した…それは偽りのない真実です。」

「…」

「あの時、もう少し到着が早ければ考えを変えていたかもしれません。」

 

 

アムロの言葉にハスミは真実と答える。

 

それは決別の言葉。

 

去り行く彼らに対して引き留めようとしたが…

 

 

「見所があったと思ったが…俺の勘違いだった。」

 

 

スフィア覚醒者の力。

 

その圧倒的な重圧を前にノードゥスは立ち上がる事は出来ない。

 

互いの覚悟の差が違う為に。

 

 

 

「俺の真の名はアウストラリス…サイデリアルの名と共にいずれ貴様達に宣戦布告させて貰おう。」

 

 

 

振り返る事もなくその場から彼らは去った。

 

 

「行くぞ…。」

「はい。」

 

 

理解されないまま蔑まれようとも私は…私達は進む。

 

それぞれの道がいずれ交わる時まで。

 

どんな荒波に呑まれ様とも歩みを止める事はない。

 

進むべき道は違えど往くべき先は繋がる。

 

それを忘れてはならない。

 

 

 

 

 

=第四章・完=

 

 




これは夢か?

これは幻か?

これは現か?


遠き日の夢と理想の幻は現実へと変貌する。


次回、幻影のエトランゼ・第五章『夢幻ノ詩篇』

目覚めの旅は始まった。

次なる戦いの為に進め。


******

<補足>

=ノードゥス側=

※指定ターン内に指定エリアまで到達…失敗。
※指定エリア到達後に発生する敵部隊を指定ターン内に撃破…失敗。


以上を踏まえて離別フラグが成立しました。


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