深く、深く。
氷床下の奥へ。
そこは深淵の入り口。
ミッション・アイスブレイカーが開始してから数時間。
地球政府の呼び掛けによって集結した連合艦隊の護衛を受けてノードゥスは南極遺跡の最深部たるファブラ・フォーレスへと向かう。
しかし、ホルトゥスよって戦力が激減したとはいえレイラインよりエネルギーを供給し増産されたルイーナの軍勢に阻まれ遅々として進んでいなかった。
その絶望は再び破滅の王へ力を与える為に吸収されている。
だが、絶望を糧としているのは単に破滅の王だけではない。
それは暗い闇の中で目覚めの時を待っていた。
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並行世界の間には僅かではあるが異空間が存在した。
無数に存在し固定されている異空間もあれば繋がっている異空間も存在する。
その異空間の一つで闇が蠢いた。
「…ほぼ七割程度か。」
自身と同じく闇を思わせる深淵で不鮮明な闇は答えた。
「あの時の様な完全復活ではないとは言えないが、動く事は可能。」
不鮮明な闇は徐々に形作られ独特の鎧姿が形成される。
「相反する対極の根源は切り離せない……それはお前達も同じ事。」
鎧のマスクの奥で眼光がうっすらと輝いた。
「今は高見の見物とさせて貰おう。」
異空間に入り込み、彼の周囲に纏わりついたドロドロとした黒いオーラは彼によって吸収された。
そのオーラから感じ取れるのは黒い未来…恐怖に怠惰、諦めの絶望の感情だった。
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同時刻、再び南極の地にて。
ミッション・アイスブレイカーは継続し行く手を阻むルイーナの軍勢と交戦を続けるノードゥス。
先の作戦説明時にメインとなる四艦を護衛、配属部隊は各艦で待機のまま出撃が出来ない状況となっていた。
メインとして選ばれたのは鋼龍戦隊のハガネ、ヒリュウ改、バトル7、ラーカイラム。
これはDの物語に繋がるメンバーとルイーナと因縁を持つメンバーでの構成。
四艦と言う編成なのはフューリー側の情報でファブラ・フォーレス内で活動出来るのは戦艦四艦位が限度と釘を打たれたからである。
残りの部隊はファブラ・フォーレスへの入り口を中間地点としファブラ・フォーレス破壊までの間の中継地点の護衛を継続。
そしてメインとなる艦の護衛の理由は万全の状態でファブラ・フォーレスへ四艦を突撃させる為である。
戦力を削られない為に残りのノードゥスの艦隊と部隊が現在もルイーナの軍勢と交戦。
どちらも歯痒い思いが心を揺らがせていた。
だが、水先案内人とも言える存在達がファブラ・フォーレスへの道を閉ざすメリデンブルムの前に待ち構えていた。
「艦長、メリデンブルムへのルート前方にショメルが展開しています。」
「何だと!?」
ハガネのブリッジにてエイタの言葉に反応したテツヤ。
先の様子からアシュラヤー・ガンエデンの直属の配下である三体のショメル達とその下に位置するアフ達が各小隊ずつに分かれて展開していた。
そしてノードゥスの大艦隊が接近した事に気が付くと各自移動しその道を開けた。
「道を開けた?」
「一体、どうなっている?」
同時に居住区で待機していたイルイがブリッジへやって来た。
その様子に驚くアズキを余所にイルイは告げた。
「…」
「イルイちゃん!」
「イルイ、一体どうしたんだ?」
「あの子達が言っているの。」
「えっ?」
「このまま進めって…扉は開いているって。」
「扉は開かれている、か…」
ショメル達から発せられる念を読み取り、その意思をテツヤ達に伝えるイルイ。
同時に案内人として出撃していたウェントスやグラキエースからも同様の言葉を受け取る事となった。
「その子を言うとおりだ。」
「ああ、メリデンブルムの結界が既に破壊されている。」
二人の言葉に反応するリアナとジョッシュ。
「本当なの!?」
「なら、このまま強行突破出来る。」
「ルートはこのまま、直進すればいい。」
「メリデンブルムのあった場所を抜ければファブラ・フォーレスまではそう遠くない。」
彼らの言葉に従い、ノードゥスはメリデンブルムを通り過ぎファブラ・フォーレスへと向かう。
その行く末をショメル達は見守る形で見送った。
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メリデンブルムを通過しファブラフォーレスへと向かう一行。
その道中でノードゥスを殲滅させようと生き残っていた敵連合勢力が襲撃。
どうやら連合軍艦隊の包囲網を突破したか、或いは何かしらの方法で潜り抜けてきた様子だった。
ノードゥスは一部の艦隊を襲撃してきた勢力へ向けた。
今回の作戦に参加中のノードゥスの艦隊は以下の通り。
鋼龍戦隊よりハガネ、ヒリュウ改、クロガネ。
連合軍よりラー・カイラム、アルビオン、リーンホースjr、ドミニオン、ナデシコC。
他組織からの協力で大空魔竜、バトル7、マザー・バンガード、アークエンジェル、トゥアハー・デ・ダナン。
ザフトよりエターナル、ミネルバ。
地球防衛軍より方舟とイオニア、ジェネシックガオガイガーのツール艦である三艦が出撃。
ちなみにガンドールとVナデシコに関しては修羅の乱で起こった火星での決戦で破壊されている。
またエルシャンクやグラン・ガラン、ゴラオン、NSX等の外宇宙&異世界の艦隊は今回の戦いには諸事情より不在。
メインの四艦は省かれ、この場に残ったのはアルビオン、ドミニオン、大空魔竜、イオニア。
更に木星での決戦で死亡した筈のドゥガチもバイオ脳で増産されたディビニダド部隊を引き連れた状況にロゴスの残党がデストロイとサイコガンダム部隊を差し向けてきたのである。
続けてマザー・バンガード、トゥアハー・デ・ダナン、アークエンジェル、エターナル、核爆発対策でGGGの三艦も残る形が決定。
これも無限力からの圧力とアカシックレコードからの制約がかかっている事はこの場の誰にも解らないだろう。
艦隊の半数をその場に残し、残りのノードゥス艦隊はファブラ・フォーレスへと向かった。
「ふん、ようやくか…」
「予想よりも遅かったな。」
「まあいいだろう、その分…我らの王への供物は多くなる。」
ファブラ・フォーレスへと繋がる入口、南極基地の跡地周辺に部隊を展開させるとコンターギオとアクイラ。
戦いの気配を察し、臨戦態勢を取っていた。
彼らにとってメリデンブルムの結界が破壊されたのは一つとトラブルに過ぎないが、それも破滅の王への供物へと成り下がっていた。
「ふん、雑魚風情が吠えるとはこの事か…」
南極遺跡へと先に辿り着いたエクスガーバイン・クリンゲと蒼雷。
先のアクイラ達の会話に対して煽りの言葉を掛けた。
「漸く表れたか、蒼の女神とその従者よ。」
「従者とはな…貴様の目は節穴か?」
「…どう言う意味だ?」
ケイロンは蒼雷から降りると同時にもう一つの姿を晒した。
かつて先史文明期に置いて『バアル』と戦った白銀の戦士の姿へと変貌した。
「その姿、まさか…!?」
「我らの王と対峙した…!」
絶望の使者達が驚愕する中で彼の中のスフィアが鳴り響いた。
「フ……貴様らの糧である絶望すら感じる事無く終わらせてやろう、光栄に思うがいい。」
『音速』も『光速』も『刻』すらも超えた動き。
彼らは絶対に相手にしてはならない存在に獲物として眼を付けられたのだ。
=続=
希望の歌を。
未来への思いを。
明日への歩みを。
次回、幻影のエトランゼ・第七十四話 『闇淵《ヤミノフチ》後編』。
爆ぜる炎の歌は勇気と生命の象徴。