幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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魂魄を喰らう者。

暴虐の化身。

それは一つの例外で覆される。

本当の主は誰なのかを…


第七十話 『逆鱗《ゲキリン》後編』

前回、航行道中で協力者である加藤機関のシャングリラから離脱。

 

南米・エクアドル東方面より上陸した私とクスハ。

 

移動中にも襲撃を仕掛けるルイーナの部隊を潰しながら目的地のエクアドルの基地へと向かった。

 

だが、既に想定していたシナリオは覆されていた。

 

 

******

 

 

「ハスミ、アレは!?」

「…っ(既に動かれていた様ね。」

 

 

基地の防衛部隊は既に壊滅状態。

 

そして六方から妖機人に囚われたアルトアイゼン・リーゼとライン・ヴァイスリッターの姿があった。

 

何度か撃墜している様だが、符術による連続再生の罠に嵌ってしまっている状況。

 

ルイーナの軍勢は既に撤退した様子からレイラインの防衛に戻ったと見ている。

 

そして雀武王、黒い虎王機に見慣れない超機人が二体出現していた。

 

 

「来たね、アシュラヤー・ガンエデンと青竜の少女。」

「夏喃…やはり今回の一件を先導したのは貴方の仕業か。」

「あの時は君の約束を守ったが、今回はそうはいかない。」

「キョウスケ中尉達はその為の人質か?」

「察しがいいね、君の推測通り…彼らは大事な贄さ。」

「ハスミ…」

「…条件を聞きましょうか?」

 

 

この巨乳ハンターは何処までも救いようがない。

 

既に四凶が出ている時点でキョウスケ中尉達の魂魄が狙われているのは確実だな。

 

 

「条件自体は察していると思うが、君の身柄と青竜の少女だ。」

「成程、ゴリ押しで四凶を出したのもその為か?」

「ホッホッホ、四凶の事も光龍の入れ知恵ですかな?」

「四凶?」

「クスハ、前に超機人にクラスがあるのは教えたわね?」

「うん。」

 

 

超機人には順に四霊、四凶、四罪、四神の四つのクラスが存在する。

 

中でも百邪に下った超機人が四凶と四罪の二つのクラスなの。

 

四凶の超機人は操縦者を喰らい、四罪は機人を喰らう。

 

超機人の中では扱いにくく開発後に百邪へと堕ちたらしいわ。

 

そして四凶の超機人は操縦者を喰らう事から『暴虐の超機人』と呼ばれているの。

 

 

「そんな超機人が存在していたなんて…」

「四凶と四罪の元となった神話生物は『善から悪に寝返った。』と『元から悪だった。』って言う逸話がある位だし。」

 

 

ハスミは『何でそんなものまでも創ったのか当時の人達が居たらをシバきたいと思ったわ。』と告げて説明を終えた。

 

 

「そう、だからこそ…元の位置へ戻す為に僕らが枷を加えて使役しているのさ。」

「枷か……(奴の中に内包された魂魄達を解放する為にも倒すしかないけど。」

「して、アシュラヤー様…どうなされますかな?」

 

 

泰北の回答に対して元から決めていた答えをハスミは告げた。

 

 

「答えは…拒否する。」

「な!?」

「ホッホッホ、切り捨てたお仲間を捨てると?」

「クスハ、私達が援護する…今の内にキョウスケ中尉達を!」

「判ったわ!」

 

 

たった二機だけでこの地を訪れた訳じゃない。

 

アシュラヤー・ガンエデンを守護する番人達は引き連れている。

 

さあ、アフ達の出番だ!

 

 

「この状況でも神僕ではなく神僕の模造兵らを引き連れてくるとは…」

 

 

夏喃は不服な表情でハスミらの出方を伺っていた。

 

エクリプスの後方に現れた鳥人のトフェル・アフ、人魚の二ヴ・アフ、獣人のラアマー・アフと呼ばれる機動兵器群。

 

それらはハスミの指示に従ってクスハを援護する為に対応した。

 

永続トラップに嵌っていたキョウスケらもクスハ達の援護で何とか離脱。

 

だが、予想以上の攻防戦で機体の武装類を使い尽くしていた。

 

 

「キョウスケ中尉、エクセレン少尉、大丈夫ですか!?」

「クスハとハスミか…」

「二人ともありがとう、グッドタイミングだったわよ。」

「良かった…」

「お二人とも相変わらずの様子ですね。」

「キョウスケの悪運が私にも移ったのかも?」

 

 

救助に成功したキョウスケ中尉らのいつものやり取りの後に私は話を戻した。

 

 

「ハスミ、状況は?」

「ブリットは変わらず奴らに洗脳されたまま…数は四機ですが、残りの二機には注意が必要です。」

「うーん、ハスミちゃんが連れて来た部隊があっても厳しいの?」

「今回はショメル達を引き連れていないので時間稼ぎ程度と思ってください。」

「ショメル?」

「アシュラヤー・ガンエデンを守護する三体の護衛の総称です。」

「ああ、あの三体のカワイ子ちゃん達ね?」

「…」

「あら…じょ、冗談よ。」

「ハスミ、ブリットの救助に心当たりは?」

「何度かこちらで接触し揺さ振りを掛けて来たので頃合いかと。」

「了解した。」

「ハスミ。」

「クスハ、今が頃合いよ…ブリットに貴方の想いをぶつけなさい。」

「うん、判ったわ。」

 

 

その後、私はクスハを援護する為に二機の四凶、キョウスケ中尉らは雀武王へ対応する形となった。

 

残りの妖機人らは引き連れて来た部隊に任せて置いてある。

 

後はクスハとブリットの戦いに水が差されない様に相手をするだけだ。

 

 

「それにしても…」

 

 

饕餮王、B級ホラー並みに顔がキツイし内包された気配が…吐き気がしてきた。

 

奴に喰われた魂は輪廻転生が出来ない。

 

その魂は次第に穢れてまつろわぬ霊と化す。

 

あれではネシャーマ製造機と言われても可笑しくないわね。

 

不念の溜め込み具合から察するに暴発寸前。

 

…これはバアルの仕業か。

 

窮奇王も居るけど、残りの二体が破壊された状態だったのは救いかもしれない。

 

あんなものが世に解き放たれたら地球がネシャーマだらけになってしまう。

 

最悪の場合、この世界もバアルの闇に飲まれていたかもしれない。

 

 

「…本当に厄介な。」

 

 

四凶の二機はより強い念動の魂魄に惹かれていた。

 

私自身が囮を買って出たのはこの為だ。

 

奴らは夏喃達の命令には逆らえない様に枷をされている。

 

だが、その枷すらも外しかけていた。

 

奴らに内包された負の念がバアルの気配と反応し相乗効果を生み出していた。

 

何時首輪を外せても可笑しくない位に…

 

 

「キョウスケ…どうして今頃になってハスミちゃん達が私達に接触してきたのかしら?」

「恐らく、俺達が大統領暗殺の件で不問になったからだろう。」

「それもあるけど…」

「クスハがブリットを取り戻す為の手助けをしている様にも思える。」

「まあ、廻り巡って私達も助けられちゃってるけどね。」

「だが、ハスミは文字通り…助ける為に俺達から離れたのは事実だ。」

「そうね、まあ…元気に部下の子達の指示もちゃんとしている様だし。」

 

 

キョウスケとエクセレンが会話を続ける間。

 

ハスミが引き連れたアフ達の一部がアルトアイゼン・リーゼとライン・ヴァイスリッターの補給物資を提供していた。

 

元々ATXチームに在籍していた頃にこの関係の書類も扱っていた関係もあったのか用意周到とも思える。

 

ちなみに各機の弾倉サイズから補給に必要なEN量もピッタリであるオチが付いていた。

 

本人曰く『節約&貧乏性が…』と嘆いていたのはまた別の話である。

 

 

「貴方達もありがとね。」

 

 

補給を終えたエクセレンは補給を行ったアフ達に冗談交じりでお礼を告げたが…

 

了承の意なのか、関わった三機が「「「…(ペコリ」」」」とお辞儀だけ返す反応を見せていた。

 

 

「あらーお辞儀してくれるなんて礼儀がいいのね。」

「話はそこまでにして置け。」

「そうね、第二ラウンドと行きましょうか?」

「ああ!」

 

 

補給を終えた二機は再度雀武王に対峙した。

 

引き続き、激戦を繰り広げる龍人機と黒い虎王機。

 

 

「ブリット君、今日こそ貴方を救って見せる。」

「…」

 

 

龍人機は如意金箍棒を構えて対峙するが対人戦闘で不利な状況は続いている。

 

スピードを生かした戦法に関しては虎王機が有利である為だ。

 

これは元々龍王機が所持していた身分身の術の符を虎王機に渡してしまった事にある。

 

旧西暦の第一次世界大戦頃に起こったバラルとの戦いで当時の操者達が窮地を脱する為に行った。

 

結果的に龍王機は身分身の術を永劫使えない事を承知で符を虎王機に譲った。

 

もしも龍人機が身分身の術を使えていたならばクスハ自身で窮地を脱していただろう。

 

 

「…(動きが速い、私だけじゃ動きを捉え切れない。」

「…」

「龍人機?」

「…」

「判ったわ、その手で!」

 

 

クスハは戦闘前のハスミの助言通りに龍人機と連携を取って虎王機を待ち構えた。

 

『貴方は一人で闘っている訳じゃない、パートナーを信じて。』と言う助言と共に。

 

 

「…」

 

 

動きを止めた龍人機に対して再び突撃攻撃を仕掛ける虎王機。

 

だが、思いもよらぬ戦法で反撃される事となった。

 

 

「ノリコとベンケイ君直伝!如意金箍棒ホームランっ!!」

 

 

L5戦役の頃、クスハは健康器具の普及を兼ねて二人の野球の練習に付き合っていた事がある。

 

その時のクスハの記憶を龍人機は覚えていた様で反撃の糸口にと一案で告げたのだ。

 

まさかの提案に驚いたクスハであったが、相手の意表を突く攻撃である事に変わりはないので了承。

 

その一撃は見事に虎王機の頭部に直撃したのである。

 

見事なクリーンヒットで怯む虎王機。

 

 

「ブリット君、お願い戻ってきて!」

「…ぐっ。」

 

 

同じ様に言葉を告げるキョウスケ達。

 

 

「ブリット!」

「ブリット君!」

 

 

その言葉に揺らいでいる様子も続いていた。

 

 

「クス…ハ。」

「ブリット君!」

「…」

 

 

しかし、術の効果で引き続き攻撃を仕掛けようとした様子にハスミは…

 

 

「クスハ、悪いけど前に話した通り…言わせて貰うね。」

「う、うん…」

 

 

ハスミは事前にクスハへ断りを入れてからブリットに告げた。

 

 

「好きな子を泣かせておいて正気に戻らないヘタレ男。」

「!?」

「最低、男の風上にも置けない奴…万年ヒヨコ、だからまるで駄目な男…略してマダオって言われるのよ。」

「は、ハスミちゃん?」

「始まったな。」

「虎王機、いい加減にしないとマタタビ宜しくで猫王機と改名しますけど?」

 

 

ハスミの毒舌は洗脳されたブリットだけではなく虎王機にも広まっていた。

 

その鋭さは普段の倍以上であり、グッサリと一人と一機の心に突き刺っている。

 

元ナシムの傘下とは言え姉に当たるアシュラヤーの言葉の苛烈さは恐ろしいものである。

 

その様子に二機の四凶と雀武王も動きを止めていた。

 

 

「「…」」

 

 

「何だい、この茶番は?」

「フオッホッホッホ、アシュラヤー様も中々の活舌であらせられるな。」

 

 

何とも言えない表情で夏喃らは感想を告げた。

 

 

「ハスミ、その辺にして置け…」

「そうよ、ブリット君達が相当落ち込んでる様子だし?」

「済みません、少々失言でしたね。」

 

 

ここでは言えない毒舌の数々ををブリットに演説したハスミ。

 

その様子にキョウスケらもブリット達が不憫だった様で止めに入った。

 

洗脳の術を覆す程の精神ショックは洗脳を解く為に必要な事だったが、当のブリット達には脱力で気力50までに下げられた状態までに陥っていたのである。

 

ハスミは失言しすぎたと反省し残りの説得をクスハに委ねた。

 

 

「ブリット君、私の事が判る?」

「…」

 

 

クスハ達は洗脳と正気の狭間に立たされたブリットと虎王機に説得を続けた。

 

どうか戻ってきて欲しいと『大好き』と言う感情を込めて。

 

 

「そろそろ下らない茶番は終わりにしようか?」

 

 

だが、空気を読まずに手を下す者が居る事を忘れてはならない。

 

夏喃は動きを止めた四凶を引き戻し、再度攻撃を仕掛けようとした時だった。

 

饕餮王と窮奇王に異変が起こったのである。

 

 

「む、いかん!」

「!?」

 

 

その様子を察知した泰北だったが、時既に遅し…

 

神仙の枷を外し雀武王に喰らい付く饕餮王。

 

 

「夏喃っ!」

「ハスミ、あの人が!」

「…くっ!」

 

 

予想以上にバアルの行動が早かった。

 

饕餮王の飢餓を増幅させるなんて…

 

これでは無尽蔵に命あるものを喰らい尽くす。

 

ルイーナの絶望収集を防いだ結果がこれか…

 

無限力の介入があったとしてもやりすぎにも程がある。

 

 

「…」

 

 

饕餮王は雀武王の一部を喰い千切ると咀嚼音を響かせながら後退した。

 

どうやら夏喃は逃げ遅れたらしい。

 

奴は増幅された力で夏喃の念動をも吸収して離脱を防いだ様だ。

 

片方の操者を失った事で雀武王の動きも停止していた。

 

夏喃を失い、意気消沈する泰北にハスミは静かに答えた、

 

 

「…夏喃。」

「泰北、何故…四凶を黄帝獄から解き放った?」

「アシュラヤー様…?」

「奴らが黄帝獄に繋がれた理由は単に凶暴性だけの問題じゃない事は貴方も知っていた筈。」

「…」

「奴らはその属性故に負念の力を受ける器と化していた…だからこそ黄帝獄へ永久に封印する必要があった。」

「生生流転…ワシらは判断を見誤っただけの事、アシュラヤー様が常々仰られた通り…ワシらは事を急ぎたのじゃ。」

「貴方達が話していた大邪を滅ぼす為の行いですか?」

「己が宿命の歪み…ワシもまた弟子の夏喃や部下の禁牙を静止しなかった事への罰なのでしょう。」

「…」

「アシュラヤー様同様にナシム様もまた己の剣を見定めた、ワシらの様な古き思想は消えるべきなのでしょうな。」

「…(相変わらず考え方は仙人そのもの。」

 

 

生きる力を見失う事は死する力へ引きずり込まれる前兆。

 

私は腹を括って告げた。

 

 

「ならば、泰北いやバラルに告げる……我が傘下へと集え!」

「な!?」

「己の罪を認めるのなら新たな思想と新たな剣が目指す未来をその目で見届けよ!」

「アシュラヤー様…」

「人界へ齎された禍を…大邪を打ち倒す為にも貴方達の力は必要だ。」

 

 

ハスミの宣言に驚愕する泰北だったが冷静に戻ったと思いきや大笑いを始めた。

 

 

「フ…フォッホッホッホ! それも善哉!」

「…(やっぱり、拒否されたかな?」

「フワッハッハッハッハ!! 善き哉、善き哉!!」

「泰北。」

「これもワシらに架せられた天命なのかもしれませんな?アシュラヤー様…この泰北、バラルと共に新たな思想を求めて力を貸しましょう。」

 

 

その様子を伺ってたキョウスケ達もまた驚きを隠せなかった。

 

 

「えっと、つまり…味方になってくれたって事?」

「その様子らしい。」

 

 

泰北は改めてクスハに告げた。

 

 

「青龍の少女よ、白虎と青年の枷は外された……今こそ必神火帝・天魔降伏の時!」

「は、はい!」

 

 

促されたクスハは真言を唱え無敵青龍を顕現する。

 

 

「必神火帝!天魔降伏っ!!」

 

 

黒から白へと戻った虎王機と共に龍虎王は復活を果たした。

 

 

「無敵青龍!龍虎王!顕現っ!!」

「クスハ、俺は…」

「ブリット君、今は!」

「ああ、奴らを倒すぞ!」

 

 

 

これまでのやり取りで動きを封じていたアフ達も饕餮王と窮奇王の猛攻に耐え切れず、出撃した三割が撃破されていた。

 

 

「泰北、無茶を承知で言います……まだ戦えますね?」

「ですが、朱雀の操者を失った以上は無理強いは出来ませぬぞ?」

「一時的とは言え念者が一人要れば済むと言う事で宜しいですか?」

「アシュラヤー様、もしや?」

「私が一時的に代わりになる、今は四神の力を合わせる時です。」

「ならば、神農炎帝、来護我身、此刀一下、何鬼不走、何病不癒、急々如律令。」

 

 

泰北はハスミの考えを察して装符修復の真言を唱えた。

 

ハスミは念神エクリプスを異空間へと戻し、再生した雀王機の操縦席にテレポートする。

 

 

「…」

 

 

雀王機、貴方の選んだ操者を救えなくて御免なさい。

 

今は奴らを打ち倒す為に力を貸して欲しい。

 

いつの日か、貴方が再び志を共にする操者と出会う為に。

 

その時こそ人界を守護する超機人として立つ為にも!

 

 

「…」

「ありがとう、雀王機。」

「アシュラヤー様、往きますぞ?」

「頼みます。」

 

 

同じく真言を唱える。

 

 

「必神火帝!」

「天魔降伏!」

「武雀王、顕現っ!」

 

 

再起した武雀王の姿にクスハは驚くが、ハスミはそれを静止し連携の合図を送った。

 

 

「えっ?」

「クスハ、こちらと合わせて!」

「わ、判ったわ。」

 

 

龍虎王、アルトアイゼン・リーゼ、ライン・ヴァイスリッターが囮役を呈している間に武雀王は必殺技の形態へと変貌する。

 

 

「玄天大聖、後玄武避万鬼。」

「紛維衝天!上元天都東北方振動!天門忽開!」

「玄天衝天砲!!」

 

 

饕餮王と窮奇王を砲撃の着弾点へと移動させたのを見計らい発射。

 

 

「神州霊山! 移山召喚! 急々如律令!!」

 

 

着弾と同時に龍王移山法ことマウンテン・プレッシャーで動きを封じる。

 

 

「四神の力、今こそ合わせる時!」

「四心合一! 一意専心!」

「これぞ奇跡の象徴!」

「四神招魂・龍虎王!!」

 

 

四神の力を合わせ、四神は一つの神となった。

 

 

「龍王破山剣!」

「黒蛇刀!」

 

 

「「龍雀一閃!!」」

 

 

 

「虎王神速槍!」

「玄天衝天砲!」

 

 

「「虎玄撃砲!!」」

 

 

逆鱗と黒蛇の一閃が。

 

槍と砲撃の一撃が。

 

饕餮王と窮奇王を切り裂き撃ち貫く。

 

四凶とその内に潜んでいたバアルの闇は今一度因果地平の彼方へと葬られたのである。

 

 

******

 

 

青龍と白虎が再び集い。

 

再会を喜ぶ二人の姿があった。

 

 

「ブリット君、お帰りなさい。」

「ただいま、クスハ。」

 

 

饕餮王と窮奇王の暴走、そして夏喃の死。

 

これはバラルにとって大きな痛手でもあった。

 

弟子の死と二体の四凶の破壊を持って泰北はバラル代表として降伏を宣言。

 

後に話し合いの場へ訪れる事を告げると武王機、雀王機を回収しその場を去って行った。

 

ハスミは後続の部隊と合流し、その言葉を聞き届けると約束を果たす為に同じ様に去ろうとしていた。

 

 

「ハスミ…」

「クスハ、約束は約束よ。」

「…行ってしまうのね。」

「私の役目の一つは終わった…残りの役目を果たす為にも行かなければならないから。」

「お姉ちゃん…」

「クスハ、イルイの事をお願いね。」

「判ったわ。」

 

 

ハスミはそれを告げると残存していたアフ達を引き連れてその場から撤退した。

 

龍虎王の手に先程の後続の部隊と共に移動してきたイルイを託して…

 

 

「クスハ、何があったのか聞かせて貰えるか?」

「はい。」

「クスハちゃんお帰りなさい…ブリット君もね。」

「はい、只今戻りました。」

「キョウスケ中尉、俺のせいで色々ご迷惑を掛けたようで…」

「その件も含めて話は戻ってからだ。」

「はい…。」

 

各地のレイラインも同じく奪還に成功しルイーナの軍勢は南極へと追いやられる事となった。

 

そして宇宙で展開された戦いもまた終息の道を辿っていた。

 

 

******

 

 

エクアドルでの一戦を終えた夜の事。

 

天鳥船島内・庭園の一角にて。

 

 

「まさか黄帝獄に繋げていた四凶を解き放つとはね…」

「代償として夏喃はバアルによって力を付けた饕餮王に喰われました。」

「ま、身から出た錆って事だよ。」

「残った四凶の破壊と夏喃の死を持って…泰北からバラルの降伏宣言を受け取りましたよ。」

「雀王機の操者を失った以上は老師も下手な博打を打たないだろうね。」

「残りはルイーナとガイアセイバーズ…そしてゲストを含めた他勢力だけです。」

「で、今後の動きはどうするのかな?」

「少々、ノードゥスには茶番に付き合って貰います。」

「茶番?」

「ええ、内部に入り込んだ毒物を絞り出す為の茶番にです。」

 

 

光龍と話す中でハスミは静かに告げた。

 

 

「私は彼らの元には戻りませんし…いい加減、ノードゥスには危機感を持って貰わないといけないので。」

「言い方が悪いけど楽しんでいないかい?」

「まあ、少しばかりは。」

「…(敵に対して悪辣なのは彼女譲りだよ。」

「彼も茶番の提案には満更でもない様子ですので。」

「やれやれだね。」

 

 

『困った子だ。』と呟きながらも提案に乗った光龍。

 

 

(この世界を蝕む真の敵とは何なのか?そろそろ思い知った方がいい…ノードゥスそして鋼龍戦隊。)

 

 

目を伏せたままハスミは夜天を見上げた。

 

 

=続=

 




明日を求め集う絆。

彼女は護る為に拒絶する。

いつの日か繋がる道の為に。


次回、幻影のエトランゼ・第七十一話 『拒絶《キョゼツ》』


茶番は真の真実を曝け出す。


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