幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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月下の街で巨大な侍は吠え、その剣を構える…






第二話 『嵐声《アラシノコエ》中編』

「くそっ、ジャイアントロボならいざ知らず…あのATXチームまで出てくるとは…!」

 

 

車両に偽装していたBF団所有の怪奇ロボを操縦する覆面の男性は外に丸出し状態のコックピットから悪態をついていた。

 

何故なら同団員が操る同型機が次々に破壊されてしまっているからである。

 

 

「チェストぉぉぉぉ!!!」

 

 

零式斬艦刀による一刀両断。

 

 

「取った!」

 

 

『切り札』と呼ばれる連続釘打ちから鉛玉の全弾発射。

 

 

「はいは~い、むさ苦しい人はご退場ってね!」

 

 

オクスタンランチャーBとWモードの連射攻撃。

 

 

「チャクラムGO!」

「パンチだ、ロボ!」

 

 

チャクラムシューターの援護攻撃とジャイアントロボの鉄拳。

 

 

「クスハ、今よ!」

「ええ、マキシブラスター!!」

 

 

バーストレールガンによる援護射撃とマキシブラスターのコンビ攻撃。

それぞれの武器の組み合わせによってBF団の放ったロボットは瞬く間に破壊されたのだ。

その為、残っているのは悪態付いていた隊長格のQボス機のみである。

 

 

「こんな筈では…!」

「男なら潔く引き際を見据えた方がいいわよ?」

「投降してください、次は撃ちます。」

「ふん、投降するくらいなら!」

 

エクセレンの挑発的な説得からクスハの献身的な説得を試みるが通じず…

最後の悪あがきに乗り、こちら側に特攻してきたのである。

 

 

「その意気や良し!」

「隊長…!」

「奴の相手は俺が引き受けた…全員手を出すな!」

 

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

ゼンガーは零式斬艦刀を構えると突撃を開始したBF団のロボットに対峙した。

 

 

 

「我が名はゼンガー!ゼンガー・ゾンボルト!悪を断つ剣なり!!」

 

 

その切っ先を向け、もはや名言とまで言われた台詞を語った。

 

 

「斬艦刀!疾風怒濤!!!」

 

 

グルンガスト零式がブースターを噴かせ、相対する様に突撃しそのままのその巨撃を振り下ろした。

強大な剣先は瞬く間に相手の戦闘ロボを押し潰し、機体は横浜の地に沈んだ。

 

 

「我が斬艦刀に…断てぬものなし!」

 

 

敵前逃亡は彼らBF団に取って最大の裏切り行為。

逃げる事は出来なかったのだろう。

潰されたコックピット部分だった場所に朱い跡が四散していた。

せめてもの鎮魂を込めて、私はコックピットの中から合掌と黙祷を捧げた。

 

 

「これで敵さんは全部かしら?」

「ブリッド、どうだ?」

「周囲に敵残存兵力はありません。」

「アーガマ隊は?」

「無事避難を終えたとアーガマより入電がありました。」

「よし、これより帰還…!?」

「隊長、これは!?」

「少佐!伊豆基地より入電、横浜郊外の海上発電プラントが謎の起動兵器に襲撃されていると通達です!」

 

 

ブリットが通信を受け、命令内容を復唱した。

 

 

「現現場は後続の別部隊に引き継ぎをし、ハガネ以下ATXチームは海上プラントへ急行せよと命令が出ました!」

「分かった、アサルト2と7は先行し海上プラントに向かえ!」

「了解よ、ボス!」

「アサルト7、了解。(海上しかも発電プラントに襲撃?それに夜って事は…まさか!?」

「そう言う訳だから先にドライブと洒落込むわよ、ハスミちゃん!」

「了解です。」

 

 

ヴァイスリッターとガーリオン・タイプTはそのまま部隊を離れて海上プラントへと急行した。

 

 

† † † † †

 

 

横浜郊外に隣接された海上発電プラントに向かっている道中の事である。

ちなみにこの海上プラントはヌーベルトキオシティへの電力供給を行っている発電所の一つだった事が後の報告書で分かった。

 

 

「全く、こういう忙しい時には白いキツネちゃんが欲しいわね。」

「あ、青いタヌキじゃなくて…ですか?(どう聞いてもどら焼きLOVEのネコ型ロボットです。」

「あら?そうだったっけ?」

 

 

最初はカップ麺?と思ったが空気を読んで青いタヌキと返しておいた。

エクセレン少尉、イイ感じのネタをありがとうございます。

 

 

「キツネは兎も角、この件が終わったらお夜食にうどんでも作りましょうか?」

「あら本当に?」

「はい、報告書を纏め終わったらですけどね。」

「わぉ、お姉さん期待しちゃうわよ?」

「甘辛お揚げの入ったきつねうどんでよろしければ。」

「それじゃ、早い所暴れまわってる悪い子さんにお尻ペンペンしに行きましょ?」

「了解です。」

 

 

 

† † † † †

 

 

先程グルンガスト零式によって真っ二つにされた怪奇ロボを近くのビル街から伺う人影があった。

 

 

「ふん、小物を焚き付けてみたがこの程度か…」

 

 

独特の髪型、右目に独特の眼帯をした紳士服の男性が葉巻煙草を吹かしながら嫌味を呟いた。

その横にスキンヘッドの男性が付き従っていた。

 

 

「やはり、直接焚き付けなければいかん様だな。」

「アルベルト様、どうされます?」

「今は奴らの動向を探り、いずれジャイアントロボごと奴らを襲撃する。」

「はっ!」

「イワン、車を出せ!」

「只今。」

「我らがビッグファイアの語る『九浄家の姫巫女』…我ら十傑集に匹敵する力の持ち主か?それとも凡人か?楽しみだな。」

 

 

******

 

 

その頃、シン・ザ・シティの郊外に構える屋敷の一室にて。

 

 

「万丈様、先程横浜にて勇者特急隊が動きを見せたそうです。」

「ようやく彼も戦いに出られる戦力を整えたらしいね。」

「ええ、ですが確認できた機体は1機のみでした。」

「なるほど、足並みを揃えるにしてもGEARもGGGもパイロット候補者の確保や彼の調整と問題が山積みだからね。」

「ええ、ブレイブポリスからのデータ提供や旋風寺コンツェルンの極秘裏の協力がありましても…」

「判っている、彼らも僕らもあの『蒼い睡蓮』からの警鐘を無下にする訳にもいかない、来るべき日までにその戦力を整えよう。」

「そうですね。」

 

 

=続=

 




<今回の登場人物>

≪アーガマ隊≫
本来の正式名称は第13独立遊撃隊ロンド・ベル、上記は略称として使用される。
この世界ではティターンズが設立されなかったので連邦軍特殊独立部隊ロンド・ベルと呼称されている。
メンバーはMS乗りを含め日本各地に在住する研究機関の特機、フリーの傭兵、異世界帰り等が集結している。
度重なる連戦で機体の修理やオーバーホール中だった事と横浜の花火大会に戦闘要員の多くが出払っていた為に出撃する事が出来なかった。
今回の事件後にSRXチームが実戦での戦闘経験の為に合流する。

≪破嵐財閥≫
※破嵐万丈
シン・ザ・シティに屋敷を構える富豪。
現当主である彼自身の手腕もあり、経済的にもかなり裕福である。
その実態は火星のメガノイドに復讐心を燃やすダイターン3の隠れ蓑。
一節によると彼自身が最高傑作のメガノイドと言う説がある。

※ギャリソン時田
万丈の執事、旋風寺舞人の執事をしている青木とは執事仲間。

≪BF団≫
※衝撃のアルベルト
BF団十傑集の一人、ジェガン破壊の人。
BF団首領であるビッグ・ファイアの勅命で『九浄家の姫巫女』の監視を行っている。
特に能力の開花など目立った様子は無いと判断している。
放置してもいいと言う考えに至ってもいるが…?


※オロシャのイワン
BF団B級エージェント、ハニワさんの運転手。
『バシュタールの惨劇』の被害に遭っていないものの何故かBF団入りしている。


<今回の用語>
※きつねうどん
ハスミが作ったきつねうどん。
諸事情で一部が手抜きだが味は保証済み。
材料は冷凍うどん、冷凍だしキューブ(だし汁を煮詰めて冷凍したもの)、鰹節、油揚げ、しょうゆ、みりん、お砂糖、長ネギ、七味唐辛子。
エクセレンから「私のお嫁さんに来て~♪」と冗談交じりな発言をされている。
後に一日20食限定で伊豆基地の食堂に並ぶ羽目になる。

※クスハおにぎり
クスハの作ったおにぎり。
具材はおかかと梅わさび。
クスハの中で定番になっているチョコレートと梅ジャムが投入されそうになった所をハスミが止めたので普通のご飯と具材となっている。
理由は過去に学園全体で行われた体力強化合宿の際にクスハドリンクでご飯を炊こうとしていた為である。

※九浄家の姫巫女
ハスミの事を指す、九浄家は代々女性のみに特殊な能力が宿る。
ハスミの母である『蓮華』も特殊な能力を所持していた。
しかし、近年に入りその能力の伝承も薄れてしまっている。
先祖返りを起こして能力に目覚めた蓮華やその子であるハスミにも素質は受け継がれていると思われたが周囲からは何もないとの事で普通の子として扱われていた。
実際はハスミ自身は能力を所持しており、母親の形見であるペンダントの力で自身の能力を封印しているのが真実である。
ハスミが確認している中で姫巫女の秘密を知っているのは死去した先代当主の母方祖父母と実母、養父となったカーウァイとテンペストのみである。
何故、BF団首領のビッグ・ファイアがこの事を知っていたかは不明である。

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