幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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それは古き契約。

それは確かな証。

だからこそ護らなければならない。

その先の願いの為に。



契の付箋

作戦決行を決定した私は各方面への出撃準備が整うまで彼と話し合っていた。

 

 

「浮かない顔だな。」

「ヴィル?」

「レイラインの奪還後…その後はどうするつもりだ?」

 

 

私は恐らく起こるであろう戦いの一端を説明した。

 

 

「ガイアセイバーズの悪行が明るみになった以上、それぞれが決着を着けるべき時が来ています。」

「お前は奪われた以上のモノを取り戻すつもりか?」

「いけませんか?」

「否定はしない。」

「私は自ら起こした戦いを放棄する事は出来ません。」

 

 

私はあの日…宣言した。

 

己の全てを賭して決着を着ける。

 

対面式の遊戯盤で駒を動かすように。

 

最後の一人に成り果てようとも戦う事を放棄する事はしない。

 

唯一の願いの為には自ら歩まなければならないから。

 

 

「願う事は誰にでも出来る…問題は叶える為に動けるかが重要。」

「…」

「私は幼き日より出来得る事をL5戦役から重ね続けていました。」

 

 

お前は何度も傷尽き倒れようとも手を伸ばし続けた。

 

これからもこの先の未来でもお前は手を伸ばし続けるのだな。

 

それが如何に過酷で修羅の道であろうとも。

 

 

「前にもお話ししましたが…同情なら必要ありませんよ?これは私自身が決めた事ですので。」

「…それは俺との約束に関係するのか?」

「はい。」

「ならば、忘れてはいないだろうな?」

「この世界で成すべき事を終えた時、貴方の片腕となる…でしたね。」

「その通りだ、偽りとは言え地球皇帝の名の元にお前はサイデリアルに組み込まれる事になる。」

「覚悟は出来ています。」

「後のZ-BLUEと雌雄を決す戦いと成してもか?」

「…彼らにはかつての友であろうとも戦う覚悟を持たせなければなりません。」

 

 

そう、いずれ毒の様に甘い声でエゴの塊である己の神徒へと導こうとするアドヴェントに対抗する為にも。

 

情け容赦なく戦う覚悟を…

 

 

「それに私はあのアドヴェントの性格は受け入れられませんので。」

「何故だ?」

「存在自体、気色悪いからです。」

「…」

 

 

私、ああ言うタイプって好きになれないんだよね。

 

真っ先に鳥肌立つって感じがする。

 

寧ろ顔面崩壊させてもいいですか?ってレベルでボコりたい位です。

 

世の乙女達はどうかは知りませんが…

 

 

「それに私はヴィルの方が…」

「俺が何だ?」

「…お慕いするに値する方と想っています///」

 

 

今は語れない。

 

この願いは諸刃の剣。

 

愛していると言う想いすらも敵に悟られてはいけない。

 

彼の足枷になってはいけない。

 

私は彼の為に戦う武器であり鎧であればいい。

 

 

「ハスミ、お前が何を考えているのか俺には解らんが…己を犠牲にする事だけは止めろ。」

「…ヴィル?」

「前世におけるヒビキ・カミシロの母親の選択がヒビキ自身に何を齎したのか判っているだろう?」

「…はい。」

「救う為とは言え、死を持っての犠牲は助けたものへの枷となる。」

「…」

「死と言う犠牲はお前が求めた結末ではないだろう?」

「理解しています。」

「ならば、先の約束に追加事項を告げる……決して死に至る犠牲を行わないと誓え。」

「それは貴方も同じです、ヴィル。」

「ハスミ…」

「私達は誰一人欠けずにあの戦場に皆を導かなければならないのですから。」

「そうだったな。」

 

 

契約による誓いは互いを縛る枷。

 

だが、枷は時によって引き留める役割を担うのだ。

 

 

=続=

 


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