幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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それは奇跡の道筋。

希望の光と共に。

赤き船は虹の道を進む。

全ては天に隠されし真実を追い求める為に。


第五十九話 『虹路《レインボーロード》』

前回の転移より私達はエンドレスフロンティアへ再び転移する事となった。

 

EFの世界はヴァールシャイン・リヒカイトとの戦いの後に大きく変わった様だ。

 

だが、大まかな状況は識っているので困る事はない。

 

流れに沿って彼らと合流を急ぐ事にしたいが、彼らと合流する事は後手に回される事になる。

 

それが原因で色々と遠回りをさせられたのは言うまでもない。

 

毎度お馴染みのEFでのご都合主義とやらである。

 

しかも旅路のメンバーは個性豊かなボケ役が多すぎて常識的な突っ込み役が少ない。

 

一番の頭が痛い難点でもある。

 

それにアクセル中尉とアルフィミイの記憶喪失にコウタの突っ込みが少ない所もまた何とやらである。

 

必然的に私ことハスミが説明役に回る事になるので久々に頭痛にノー〇ンをプリーズである。

 

念の為、熟練者方は兎も角初見の方は判らない部分があると思います。

 

今回の話に入る前に軽いご説明に入りたいと思います。

 

様々な“世界”、あらゆる“人”、そして“刻”さえも混ざり合う、通称「未知なる無限の開拓地」。

あらゆる存在を内包する混沌さ、そして無限の可能性を秘めた大地である。

 

がキャッチフレーズの無限のフロンティアが主軸となった話の世界。

 

今回のその続編にあたるEXCEEDにおける新生エンドレスフロンティアが舞台である。

先ほど話したヴァールシャイン・リヒカイトとの戦いの後に世界は再編され新生エンドレスフロンティアへと変貌。

 

クロスゲートによって異なる世界を行き来する世界は一つの世界へと変異したのだ。

 

だが、この世界には新たな影が忍び寄っていた。

 

新たなる来訪者である『修羅』と『アグラットヘイム』と呼ばれる勢力の登場である。

 

前者は修羅界の波国と呼ばれる国の人々で羅刹機と呼ばれる小型の修羅神を使役している。

 

後者はEFにあるフォルミッドヘイムと呼ばれる国が別れてしまった国。

 

詳しく言えばアグラットヘイムから切り取られた国がフォルミッドヘイムと名乗っているだけだが…

 

前回の戦いから三か月ほど経過しているとは言えややこしい事に巻き込まれすぎと思うのは気のせいと思いたい。

 

現在、私達が転移した地点はと言うと…

 

 

「…おかしい。」

「何が可笑しいんだい?」

「再編後の世界のエスメラルダ城塞にはクロスゲートが設置されていなかったのですが…また変異の様です。」

「でも、知り合いの居る場所に転移出来て良かったね。」

「それだけなら良いのだけど…」

「?」

「納得した。」

「確かに異様な気配がするね。」

「はい、どうやら…ややこしい時間軸のエスメラルダ城塞に転移した様です。」

「えっと…つまり?」

「ゲルダ一派のヘイムレン・シルバートと城の主であるドロシー・ミストラル…彼らと一戦交える可能性があるって事。」

 

 

エスメラルダ城塞の地下層に安置されたクロスゲートの前で話し合うハスミ、ハリス、ロサ、ケイロン。

 

城塞の説明を終えるも既に敵の手が回っている事を告げるとそれぞれの装備を確認した。

 

 

「前にも説明しましたが、この世界の制約により元の世界の機体は使えないので白兵戦が主となります。」

「ハリスさんはどうします?」

「そうだね、僕は後衛に回るとするよ…ドンパチやらかすのは三人が適しているしね。」

「それじゃあロサ、お父さんの護衛に付いて貰ってもいい?」

「うん、判った。」

 

 

私とロサはセフィーロの鎧と剣。

 

ケイロンは前回EFで旅をした時に士浪さんに受注し作成して貰った籠手。

 

ハリスには私が宗介に頼んで作成して貰った数種類の爆破物を積載した特注ジェラルミンケースと応龍皇から数機程剥がれてきた龍鱗機が五機。

 

サイズに関してはこの世界の制約を受けてバスケットボールサイズ程度に縮小されている。

 

龍鱗機達にも少なからず意思があるので小さくなった事に対し不貞腐れている様子だ。

 

更にデフォルメされているので、ちょっと可愛いと思ったのは内心だけに留めておく。

 

 

「ハスミ、入り込んだ城塞の敵はどうする?」

「ある程度潰しても構いませんが、先にドロシーの私室兼研究室に向かった方がいいかもしれませんね。」

「何かあるの?」

「あのバナナ帽子に一泡吹かせようかと…」

「ハスミ、何があったか知らないけど…念に怨恨が籠っているよ?」

「前世上で色々と。」

 

 

あのバナナ帽子のせいで遠回りしなくちゃならないシナリオだったし。

 

つか、奴の台詞がムカつくんですよね。

 

見知った声の主はエターナルヒヨコとかで十分です。

 

それに色々とストレス溜まってるしフルボッコしようっと。

 

城塞に侵入している錫華姫との合流はハーケンさん達に任せて置くとして…

 

顔だけナルシストよ、せいぜい首を洗って待っているがいい。

 

 

「…ハスミ、また怒ってる。」

「相当ストレス溜まっているみたいだったから、ここらで発散させてあげた方がいいかもね。」

「御義父上殿…」

「ケイロン、僕はまだ君に父親呼ばわりされる事を許した覚えは無い。」

「…」

「僕もテンペスト達と同様に君をまだ認めた訳じゃない…発言には注意してくれよ?」

「承知した。」

「…(ま、今までの行動を含めて及第点位は認めてあげるよ。」

 

 

辛口評価のハリスの言葉にケイロンは無言の後に肯定した。

 

親馬鹿は並行世界を跨いても続くのである。

 

 

「ハリスさん、茶番はそこそこにお願いします。」

「了解したよ、外で暴れている連中がこの部屋の存在に気が付いた様だからね。」

「迎え撃つか?」

「いえ、クロスゲートへの損傷は避けたいのでここから出ましょう。」

「撃つ準備はバッチリです。」

 

 

段取りと武器の確認を済ませた後、私達はクロスゲートが安置された室内を後にした。

 

それから数時間後…

 

 

「こいつはどうなっているんだ?」

 

 

エスメラルダ城塞に到着したハーケン一行。

 

城塞が何者かによって襲撃を受けたのは理解していたが、その襲撃者達が城塞内で倒れ伏している事に驚いていた。

 

理由は城塞の主であるドロシー・ミストラルだけで行える事ではないからだ。

 

彼女はドレスの下に隠している爆薬などを駆使した戦法を得意としている。

 

この為、それ以外の戦法による襲撃者達の負傷の仕方が不自然だった。

 

爆薬による負傷だけでなく打撃や斬撃に銃撃の跡が在った為、城塞に他の来客が訪れているとハーケン達は推測していた。

 

城塞調査の途中で再会した錫華姫の話では一瞬の事だった為、正体が掴めていないと話していた。

 

ドロシーが施した仕掛けを解きながら城塞の最深部である彼女の私室へと向かったハーケン一行。

 

それは新たな来客者と異世界の仲間達との再会を意味していた。

 

 

「さて、私の品を返して頂けます事?」

「…」

「事情はドロシーさんから伺いました、貴方の笛による精神操作の類への対策は出来ていますので。」

「大人しくお縄についてください。」

「これは困ったねぇ。」

 

 

城塞の主であるドロシーの発言からハスミとロサの会話が続き、城塞の侵入者であるヘイムレン・シルバートは困った様な表情で答えていた。

 

 

「ま、目的の物は手に入ったしこの場は下がらせて貰うよ。」

 

 

そう答えるとヘイムレンはドロシーの研究室より離脱した。

 

 

「逃げられちゃったね。」

「己の不利を悟った以上、撤退を選んだか…」

「…(オズマゴスを奪われた以上、後手に回るしかないか。」

「ハスミ、後を追う?」

「いえ、今は情報の整理が必要よ……追うにしても如何とでも出来るし。」

「どういう事だい?」

「奴との戦闘中にロサに発信機を仕込んで貰ったんです。」

「向こうも気が付いていないので跡追いバッチリです。」

「抜け目がないな?」

「あの手の手合いは逃げ足だけは早い様ですし…偶には狩りをするにも良いのでは?」

「悪辣どうも。」

 

 

無限力のやり口は大体理解しているので保険は付けておいた。

 

後は奴を追うだけである。

 

私は再会したハーケン一行と新たなメンバーの自己紹介を兼ねて会話を続けた。

 

 

「久しぶりだな、博識ガール。」

「お久しぶりです、ハーケンさん。」

「あの時以来だな?」

「皆さんとお会い出来て嬉しいです。」

「エトランゼファイターにリトルメカガールも一緒か…それと?」

「僕はアラン・ハリス、彼女達と同じ部隊のメンバーだよ…以後お見知りおきを。」

 

 

同時にネージュ・ハウゼンとアレディ・ナアシュの紹介を終えて、各自の情報整理へと進んだ。

 

どうやらヴァールシャイン・リヒカイトとの戦いから三か月が経過しているのは原作と同じ様子。

 

アレディ達と合流したハーケン一行はアグラットヘイムと名乗る組織とヘイムレンを追ってここまでやってきたとの事だ。

 

まだ再会出来ていないメンバーもいるが徐々に遇えるだろう。

 

ハーケンの話ではシュラーフェン・セレストのクロスゲートから転移した二人組が居る事。

 

現在はツァイト・クロコディールに引き取られたと伺った。

 

念の為、名前を伺った所…アクセルさんとアルフィミイである事が判明した。

 

最悪な事に記憶喪失と言う状況だ。

 

私達はヘイムレンを追う形でヴァルナ・ストリートへと移動。

 

そこでアグラットヘイムの刺客、ガンド三兄弟の長兄であるヴァナー・ガンドと対峙する事となった。

 

その戦闘後の事である。

 

 

「ハーケンさん、奴らはおそらく逢魔と何らかの関係を持っていると思います。」

「どういう事だ?」

「奴の背後にあった人が取り込まれた兵器…あれは逢魔が生み出した九十九と呼ばれる兵器に酷似していました。」

「!?」

「そしてあの兵器が発言した次元掘削ですが推測として空間を掘り進む事で別の場所に移動する事が可能な兵器と思います。」

「やれやれだな。」

「…今回の事件、かなり根本から深い様です。」

「うむ、ハスミのお陰でとんとん拍子で解る事が多いぞよ…どこぞのポンコツメカと大違いである。」

「黙っとれ、鰻腹姫。」

 

 

私とハーケンさんのやり取りを他所に錫華姫とアシェンの毒舌会話が入った。

 

 

「と、言う事は奴らは自由に何処へでも移動出来ると言う事で宜しくて?」

「いえ、それはないと思います。」

「どういう事ですか?」

「奴らが各地に出現したと言う情報が少ない様なので恐らくは限定的な使用しか出来ないと思います。」

「つまり、向こうも頻繁に使えないって事ね。」

「はい、それがこちらの攻め手に為り得ると思います。」

 

 

こう言う件に関して説明出来る相手が居ないのがネックなのよね。

 

ネージュ姫やアレディが話しやすい方で良かった。

 

 

「早い所、ドゥルセウス封墓へ向かわないとだな。」

 

 

ハーケンはテンガロンハットを深く被り直すと仕切り直しをして一行と共にヴァルナ・ストリートを後にした。

 

話す事が多すぎるので簡易的な事だけで後は締めくくろうと思う。

 

再編後世界の旅路で再会した仲間達と共に修羅の侵攻を止め、アグラットヘイムへと決戦が近づく中で…

 

W03のピート・ペインにロサが拉致されると言うハプニングに見舞われた。

 

理由はネバーランドの後部部分での出来事が関わっていた事とピート自身に自我が芽生え始めていたのが原因である。

 

色々とあってロサを奪還したが、ピート自身もロサとのやり取りで何かあったのか私達と同行する事になった。

 

その様子はピーターパンとティンカーベルの様なやり取りだ。

 

彼にも何かの変異が起こったのだろう。

 

記憶を取り戻したアクセルとアルフィミイに再会したファイターロアを仲間に加えて…

 

最終決戦の地シュテルベン・シュロスへと向かう事となった。

 

城の主であるガグン・ラウズはスヴァイサーへと変異。

 

世界は城に埋め込まれたヴェルトバオムの大樹によって食い尽くされる寸前だったが、アレディの一撃でそれは阻止された。

 

大樹に埋め込まれたスヴァイサーを二人の姫が封印しようとしたが奴の力が予想以上に強かった為に難攻していた。

 

 

「このままでは封印が…!」

「…」

「ハスミさん?」

「私も手伝います……恐らく私がこの世界に再び転移したのはこの時の為だったのかもしれないから。」

 

 

輝夜姫とネージュ姫の封印に私ことハスミも参加した。

 

ガンエデンの巫女の力、甘く見ないで貰おう。

 

三人の封印の力が合わさり、ヴェルドバオムの大樹はスヴァイサーと共に封印。

 

世界が食い尽くされる事を阻止したのである。

 

 

「ハスミさん、その力は…」

「…」

「彼女はガンエデンの巫女として役割を持っていてね、強大な念の力を所持している。」

「ガンエデンの巫女?」

「銀河を守護する四体の人造神、その一柱を司っている。」

「まさか博識ガールが本物の女神様だったとはね。」

「隠すつもりはなかったのですが…」

「それでも私達を幾度なく助けてくれました。」

「…私がそうしたいと願っただけです。」

 

 

輝夜姫の会話からハーケン、ネージュ姫と続き小牟と零児が続いた。

 

 

「相変わらず、主は謙虚じゃのう。」

「だが、明かすには強大な力と見える。」

「…そうじゃのう。」

 

 

つかの間のやり取りの後、城の崩壊が始まり脱出する一行。

 

後にエスピナ城にて祝勝会が開かれた。

 

英気を養った後、私達は本人の希望でピート・ペインを引き連れてシュラーフェン・セレストのクロスゲートで元の世界へと帰還。

 

道中で色々とハプニングに見舞われたが、アカシックレコードで転移が完了し無事に各々が帰還出来た事を識った。

 

惑星エリアの一件も解決した様なので少し安堵した。

 

だが、戦いはまだ続く。

 

私達が歩みを止める事はないのだから…

 

 

=続=

 




流れはそのままに。

世界は大きく揺れ動く。

終わらない円舞などない。

開演すれば終演も訪れるのだ。


次回、幻影のエトランゼ・第六十話 『円舞《ロンド》』


帰還の先に私の別れは一刻と差し迫る。



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