遺恨は全て排除する。
跡形もなく。
これは先を見据えた決定事項。
僕は大切な者達を護る為にその手を汚そう。
エクリプスの鎧を纏った蒼雷の一撃を喰らったデブデダビデ。
その一撃は致命傷に近く、当人は不本意ながらも撤退を余儀なくされた。
手駒を失い、自身らが求めた情報を手放す結果となった以上。
デブデダビデの立場は先に撤退を余儀なくされた二人と立場が均一となった。
そしてここ、ダークアイアンキャッスルでは…
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「ようデブ公、随分と派手にやられた様やな?」
「ぐぬぬ…」
「誰ニヤラレタ?」
「あの手駒の仲間らしい……あの連中。」
「連中?」
「戦力に関してはアムロ・レイと変わりはないが、その内の一人は俺様と同じく魔術を行使する様だった。」
「何か気になる事でもあるんか?」
自身の研究室の一室で傷を癒しながら同僚二名と話し合うデブデダビデ。
半分は嫌味と小言であるが、自身らと同様の失敗を犯したデブデダビデに対して二人も寛容な態度で接した。
話を続ける中でデブデダビデ本人は何か腑に落ちない点があるかの様な素振りを見せたが…
ハッキリとした答えが出ないので有耶無耶にしていた。
「…奴らの情報が少ない以上は俺様もこれ以上の事は言えん。」
「なら、次の接触でデータを集めるしかないって事かいな?」
「役立タズガ。」
「ふん。」
そして彼らに更なる不運が舞い込んできた。
手を出した相手が予想以上の化け物であった事をその脳裏に刻みこむ様に。
「な、何や!?」
「城ガ揺レテイルダト!?」
「こんな時に!?」
ダークアイアンキャッスルを揺るがす事態が外で起こっていた。
娘を傷つけられた以上…彼が黙っている筈はないのだ。
>>>>>>
「さてと、あの不細工君は出て来るかな?」
ダークアイアンキャッスルから少し離れた場所にて小惑星帯を潜り抜けて城に進攻する存在。
無理を承知でこの世界に再度転移させて貰ったとの事。
それ相応の成果を出す事と個人的な怨みを兼ねて奴らの目処前に現れたのだ。
「俺らの城を襲ったのは何処のどいつや!」
「出テコイ!」
「言われずとも出て行くよ…」
高次元ステルスを解除し現れたのは城すらも飲み込む勢いの巨大な龍。
それはうねりながら骸骨騎士と水晶の竜を睨み付けていた。
「初めまして、ダークブレイン軍団?」
「な、何やねんオドれは!」
「僕の名は孫光龍、アシュラヤーを守護する者さ?」
「コノ城ニ何ノ様ダ!」
「その城に逃げ込んだ…不細工君にちょっとした御礼をね。」
淡々と答える光龍。
しかし彼の様子は普段とは異なっていた。
「…僕の大事な者に傷を負わせた報いは受けて貰おうか?」
先程の軽い口調とは違いドスの利いた声で告げた。
笑っている様で笑っていない表情と凍り付かせる様な気配。
「逆に抵抗しても無駄だろうけどね。」
復活を遂げた応龍皇より放たれるのは雷の豪槍。
「折角だから出血サービスで消してあげるよ……応龍皇!超新星召喚砲!!」
「「!?」」
星をも飲み込む雷の光。
それはスカルナイトとクリスタルドラグーンそしてダークアイアンキャッスルを飲み込んだ。
応龍皇の一撃が放たれ終わると半壊したダークアイアンキャッスルを残して二体の姿は消えていた。
「出てきたらどうだい?この程度で消える君らじゃないだろう。」
「こっちの動きもお見通しって訳かいな…!」
「グ、ウウウッ!」
先程の一撃を避けきれず、ボロボロと化したスカルナイトとクリスタルドラグーン。
その衝撃は凄まじさを物語る様に彼らの肉体をボロ布の様な姿へ変貌させていた。
「そうだよ?」
続けて『それに…君達が逃げると言う選択肢を僕があげると思ったのかい?』と付け加えた。
その表情はしてやったと言う様な表情で挑発していた。
「ん?」
「な、何やねん…!?」
「コレハ!」
「成程ね、手出しの必要はないって…この事だったか。」
負傷したスカルナイトとクリスタルドラグーンにダークアイアンキャッスルの周囲に引き起こされた現象。
そう次元震である。
成す術もなく二体と城はスダ・ドアカワールドより転移し消失した。
「さてと君のリハビリも済んだし、元の世界で控えめに暴れるとするかな?」
光龍の問い掛けに応龍皇も反応。
光龍は向こう側からの帰還準備が整うまでその場で暫く傍観していた。
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同時刻、ランタオ島にて。
引き続き、東方不敗らによって守られているODEシステムのコア。
その島に新たな援軍が到着したのである。
「…」
「相変わらず、慌ただしい島なのは変わらずか。」
「悠長な事を言っている事態ではない事は確かだ。」
ランタオ島の北端にて島に上陸した二つの人影。
一方は赤のジャケット姿の男性、もう一方は青と白、赤が目立つ装甲の男性。
「連絡通りならドモンはODEシステムのコアの中でレインさんと…」
「その件でブルーロータスからの情報では今夜だと話していた。」
「一波乱の予感しかしない。」
「ロム、早い所…ドモンの眼を覚まさせないとな。」
「勿論、そのつもりだ…一矢。」
かつて、前世の世界で彼と拳を交えて友情を誓い合った友が訪れた。
必然とされた決戦の時は近い。
=続=