それでも伝えなければならない。
それは一つの結末の答えを示す。
ソーディアン調査中における次元震発生から数週間が経過。
ハガネ、ミネルバの両艦は地球近海で暫く活動後、合同任務の為に一度地球へ帰還。
そのまま任務拠点として選ばれたオービットベースへと向かった。
同時にオービットベースには旧ノードゥスメンバーも集結。
一部、護衛対象から離れられないメンバーは省かれている。
文字通り、事態収取の為にノードゥスメンバーが再編。
迫りくる脅威と戦う為に反撃の牙を研いでいた。
******
オービットベース内の一室。
各方面の情報を纏める為に記憶保持者達が集結。
尚、転移や失踪で行方不明のメンバーは省かれている。
そこでキョウスケ達はソーディアン調査前に起こった出来事を語った。
「「「「「えええええっ!!?」」」」」
先ず、記憶保持者の子供組からの叫びから始まった。
「ハスミさんがガンエデン!?」
「…そんな。」
「真実だ、彼女自身が明かした。」
シンジと光が納得出来ない状況で答え、キョウスケは真実だと告げる。
ハスミ・クジョウがアシュラヤー・ガンエデンにして秘匿されていたホルトゥスのリーダーである事が記憶保持者達に伝わった。
L5戦役以前からもホルトゥスの伝説的偉業は根強く残っていた。
そしてその奇跡を垣間見た者達も記憶保持者達の中に少なからず存在した。
「兄さん、僕らが無事にラダムから逃げられたのは…」
「ああ、彼女が裏で手を回していたんだな。」
「…ハスミさんはL5戦役で僕が初号機に取り込まれた時に綾波と一緒に助けてくれた。」
「エメロード姫達の説得や空白事件でデボネアの攻撃からセフィーロの城を守ってくれた。」
「プラントの核攻撃、ヘリオポリスの一件、世界樹攻防戦も全部…」
「あの人が防いでいてくれた。」
D兄弟、シンジ、光、キラ、アスランが思い当たる部分を語る。
同時にキョウスケとリュウセイ、マサキが助言した。
「…ハスミはホルトゥスを動かし連合内部の改革をしつつ敵勢力の大規模作戦を何度も失敗に追い込んでいた。」
「勿論、全部が成功した訳じゃねえ。」
「救えなかった命もあったって言ってたな。」
ハスミはアカシックレコードを駆使し無限力の陰謀に抗いながら世界を護ろうとした。
来たるべき日の戦いの為に。
「来たるべき日の戦い?」
舞人の疑問にキョウスケとアクセルが応対した。
「ハスミは霊帝と御使いの戦いは避けられないと話していた。」
「霊帝に御使い…その時が迫っていると?」
「ああ…今の所は修羅、デュミナス、ダークブレインとの決戦だろう。」
「…奴らとの衝突も免れないと言う訳だ、これがな。」
霊帝と御使い。
どちらも人類進化と存続のターニングポイントとして外せない戦い。
そしてある真実へと繋がっている事だけはキョウスケらに知らされていなかった。
これに関しては識るべき時ではないが理由である。
真実は必要以上に識り過ぎてはならないと言うハスミなりの配慮からだ。
「宗介、どうした?」
「…唯の一兵士の彼女が、まさか巨大勢力の頭目と言う事に俺も驚きを隠せない。」
「何言ってるんだ?宗介の所の大佐だって同じ様なものだろ?」
「確かにそうだが、大佐と彼女とでは規模が違い過ぎる。」
固まっていた宗介に声を掛けた桂。
宗介自身はその感想を桂に伝えた。
「銀河の予想、当たっちゃったね。」
「いや…俺も冗談で言ったつもりだったのに。」
「銀河の直感も時には信じてみるモノだな。」
「アルテアさんまで…」
GEAR組はいつもの調子。
「ホルトゥスは兎も角、ガンエデンって言われてもイマイチピーンとこない。」
『関わりを持たない私達には不明な存在としか言いようがない。』
『事前に伝えられた情報を信じるしかなさそうだな。』
ヨウタと彼の所持する二つに別れた運命の石からファルセイバーとブルーヴィクターが同様の感想を告げた。
「ウラキ、どうした?」
「ハスミの父親が孫光龍って……とんでもない人が仲間になっていた事にもう頭が痛い。」
「私は面識はないが、どの様な人物だ?」
「悪く言うなら愉快犯、反対に言うなら悪を無理矢理気取っていた人かな……四霊クラスの超機人の操者で強大な存在である事は間違いない。」
「応龍皇……映像データで見た限りだが、途轍もない存在である事は理解できた。」
「そりゃ…8,000km(推定)の…万里の長城の大きさの超大型機動兵器を乗り回している相手がいきなり仲間になれば脳内整理が追いつかないよ。」
「…胃が痛くなってきた。」
ある意味でカルチャーショックに陥り、顔色を悪くしながら頭痛と胃痛を引き起こすコウとガトー。
二人の会話を横で聞いていたD兄弟とトモルが「あー確かに。」とハモっていた。
「…」
「コウタ、どうしたんだ?」
一人黙っていたコウタに話しかけるリュウセイ。
「なあ、リュウセイ少尉…聞きたい事があるんだけどよ?」
「聞きたい事?」
「そのハスミ少尉って奴がガンエデンの一人なんだろ?」
「ああ…」
「もしも…その人がガンエデンに乗ったらイルイみたいに素っ裸になっちまうのか?」
「い!?」
「コウタ君だったっけ?その時のお話に詳~しくお兄さんに話して欲しいんだけど?」
「桂…お前な!」
コウタの発言に声を荒げるリュウセイ、素っ裸と言う言葉に反応する桂と桂の暴走を止めようとするオルソン。
「コウタ、そんな事になったら光龍やテンペスト少佐達が黙っていないぜ?」
「へ?」
「下手すればテンペスト少佐達からのハチの巣か光龍の応龍皇から雷撃を落とされるからな?」
「げ!」
「最後に本人から締め上げられる……それも梁山泊流にだ。」
青ざめた表情でマサキとリュウセイが先の発言の危険性をコウタに伝えた。
マサキとリュウセイは彼らの報復がどれだけ恐ろしい物かを脳内で想像。
その笑っていない笑顔な彼らの恐るべきシーンで更に土気色にまで顔色が変貌していた。
「そもそもリュウセイとマサキにコウタ、最後に桂は既に発言でアウトだと思うけど?」
「「「「は?」」」」
片頭痛を引き起こしていたコウが四人に処刑宣告な発言を付け加えた。
「彼女もイルイと同じでアカシックレコードを読み解けるのなら…ココの発言も全部筒抜けだと思うよ?」
青褪めた表情でコウはサラリと答えた。
「「「「…」」」」
ギャクの法則で言うと彼らは石化し砂埃となって消えて逝く様な位に沈黙していた。
コウの宣告は『情けは人の為ならず』に該当。
不憫に思ったのかガトーも遠回しに言い過ぎてあると伝えるが、事実である以上はどうしようもないと言う意味でコウは答えた。
「ウラキ、今の発言は流石にショックが大きすぎると思うが?」
「仕方がないだろ?先に事前通告しておいた方が被害が少ないと思う。」
「自業自得と言う訳か…」
記憶を何通りも持つコウもまたアムロ達の影響を受けて悟りからの腹黒さが増している。
ライバルで良き戦友でもあるガトーも本人らの発言ミスとして捨て置いた。
話は戻し、キョウスケらは極東エリアで戦闘を展開していたメンバーに状況を聞いていた。
「万丈、地上の方では何が起こっていた。」
「彼女が助言した通り、バルトール事件後に修羅とデュミナス一派による戦闘が地球各所で発生しています。」
「同時に火星の後継者やロゴスの協力者と化したアマルガムの介入によるテロも起こっている。」
「それだけじゃないぜ、ガルファやギシン・ガルラ連合とかって奴らも襲ってきやがった。」
「それにアルジャーノン感染者による大規模暴動も捨て置けない。」
地上に残っていた万丈、ロジャー、コウタ、凱より戦乱を起こしている勢力の名を告げられた。
そしてキラとアスランはシンにオーブで例の事件が起こった事を話した。
「シン、残念だけど…オーブに例の工作員が入り込んだよ。」
「まさか!?」
「うん、彼らはラクスの命を狙っていた…バルトフェルドさんやアイシャさん達の御蔭で今は安全な場所に避難して貰っているよ。」
「議長、今回もディスティニープランを…」
「その可能性はあるだろう。」
「アスランさん…」
「今回はカガリのプラントへの視察を中止させた事で俺達と議長との接点は無くなってしまったが、あの人は計画を実行する可能性は高い。」
「…」
「アスラン、シン、今は目処前の事件を終わらせる事に専念しよう。」
「そうだな。」
「…はい。」
マサキは地球防衛軍側のメンバーで姿が見えない面々がいる事に質問した。
「そういや、瞬兵達はどうしたんだ?」
「その事なんだけど…」
事情を知る舞人がマサキや事情を知らないメンバーに事の次第を告げた。
「何だって!?」
「そう言う訳でエクスカイザー達…宇宙警察機構の出身者達は管轄を越えた捜査や介入は出来ないと言う理由から惑星ブレイブに強制送還されてしまっている。」
エクスカイザーら宇宙警察機構はあくまで犯罪集団の検挙もしくは逮捕のみが権限で許されている。
しかし、地球に戦乱を持ち込んだ異星人を退ける戦力を保有する事が知れ渡った事でエクスカイザー達の保護対象惑星の管轄から除外されてしまったのだ。
これによりエクスカイザー達は惑星ブレイブの政府上層部からの命令で強制送還と言う形となった。
逆にバーンら大いなる意思アスタルから遣わされた者達はある理由により里帰りしていると言う状況だった。
これにより地球防衛軍の戦力が一気にガタ落ちとなり、中立の外部協力者を引き入れてバランスを取っている状態だった。
「ゾヴォーク側の連中からは?」
「まだ内部抗争の終息が終わっていないらしく追加報告は受けていない。」
「また面倒な事になってやがんな。」
「それと気になる事が…」
以前、舞人は外宇宙にガンエデンの逸話が残っていないかエクスカイザー達に話を聞いた所…
それに関係あるかは定かではないが似たような逸話を聞く事が出来たそうだ。
「俺が聞く事が出来た逸話は…」
白と蒼が眠りし星と黒と紅が眠りし星を何人たりとも踏み入れる事なかれ。
白と黒は人祖の育み手にして守護神。
紅と蒼は人祖の導き手にして戦神。
四つの神が揃いし時、終焉と破滅を齎す者達が目覚める。
かつて見守る者達が産み出した神は彼らの所業に抗い欠片となった。
破滅を導く者となった者達を退く為に。
四つの神と星に導かれし十二の宝玉が集う時、それらを退けるだろう。
それは最初であって最後の時。
心せよ、同じ事は繰り返す事は無い。
事を仕損じた時、永劫の牢界が訪れるだろう。
「俺が知るのはここまでです、恐らくガンエデンと万丈さん達が話していた御使いやバアル…スフィアの事を告げたモノと思います。」
「俺達の予想を超えた戦いが迫っている…か。」
先の逸話を略すならば、この世界に銀河大戦とZ事変の両方の戦乱が発生する事が伝えられている。
それらに引き寄せられる様に様々な戦いも集約されている事も…
「今の所、協力を得られるガンエデンは二名…その内の二名は判らない。」
「ハスミさんとイルイですね。」
「もう一方はビッグファイアとケイサル・エフェス……どっちも協力が得られるか判らねえ連中。」
「接触出来ているスフィアリアクターの内、ランドさんとセツコさんは兎も角…アサキムがどう出るか。」
「この伝承通りならビッグファイアとケイサル・エフェス、そして他のスフィアリアクター達の協力を得なければならない。」
事情を余り知らない面々…主にコウタと光はその様子に感想を告げた。
「何かややこしいな。」
「あの…その人達と話し合う事は出来ないんですか?」
光の発言も最もだが、説得しようにも我が強く癖の多い面々の為に流石に無理があるだろうと関係者達は口々に告げた。
「光、悪いけどそれは難しい。」
「残念だけどね。」
「アスランさん、キラさん。」
「ケイサル・エフェスに関しては死者の思念を統べるモノ……隙あらば僕らを取り込もうとするだろう。」
「ビッグファイアは人類に絶望してBF団を指揮している、その彼らが急に掌を返すとは思えない。」
「万丈さん、コウさん…」
「そして他のスフィアリアクター達も前回と同様に協力的かは不明だ。」
「十二人中…五人はサイデリアルとして御使いの手に落ちている可能性も否定できない。」
「ロジャーさん、オルソンさんまで…」
どの様な状況であれ、彼らは自分自身の思いと心に従って動いていた。
世界を救うと言う一つの目的に到達するには何かのきっかけが必要だろう。
それこそ奇跡と体現する何かが…
「私はそうだとは思えない……エメロード姫やセフィーロの人と解り合えたんだもの。」
「光。」
「それだけじゃない、敵だった人達とも解り合えたんだ……だから。」
「光君、君が言う様に信じたいのは判る……それでも譲れない想いも時として存在する事を忘れてはならない。」
光の言葉は万丈らにも伝わったが…
解り合えずに手を取り合えず違えた事もあった事を告げた。
全員がそうでない事。
異なる正義が重ね合うと言う事は真の意味で奇跡なのだと。
押し付けるだけが正義ではない。
時には解り合えない正義も存在する。
「光。」
「シンさん?」
「確かに光の気持ちも大事だと思う、でも考える時間も必要だと思うんだ。」
「考える時間?」
「うん、誰にだって譲れない想いとか願いもある……だからどうしても解り合えない時ってあると思う。」
「それは…急ぎ過ぎちゃ駄目って事?」
「そう、自分の気持ち相手の気持ち互いの気持ちを考えてから答えを出すんだ…きっといい答えが出るよ。」
シンは光に助言した。
かつての自分も迷いの中に居た。
だから、自分と同じような間違いをして欲しくないと言う意味合いを込めて。
「話の所、悪いがギリアム少佐から連絡だ。」
「何かあったのか?」
「セフィーロの城がある北米エリアでラーカイラムが転移して来たらしい。」
「ブライト艦長達が?」
「アムロ大尉もハスミ達も無事との事だ。」
ギリアム少佐からの通信で彼らに朗報が舞い込んできた。
そして悲報もまた告げられた。
「だが、ハスミ達はソーディアンズ・ダガー奪取の任務に就く為、こちらには合流出来ないそうだ。」
「いよいよか…」
「ああ、俺達の反攻作戦が始まる。」
戦いの流れを巻き返す為の作戦決行日。
その決行日までの猶予は一週間。
それぞれの戦いの地で互いに反逆の時を迎える時まで。
今は逃避し牙を研ぎ澄ませよう。
=続=
=とある真相=
情報交換を終えた一行は室内を後にし配属先の部隊へとそれぞれ戻っていった。
だが、一組だけは戻らずに静けさを増した室内で話し合いが設けられた。
「万丈さん、俺…話しておきたい事が。」
「話?」
「はい。」
シンは室内を後にしようとした万丈を引き止め、話を持ち掛けた。
それは自身の真っ直ぐな想いを正直に伝えたい意思からである。
残りのメンバーが去った後、室内に残ったシンは万丈にある話を告げた。
「実は…」
シンから告げられた事。
それはこの戦いを根本から覆す真実だった。
「…それは本当なのか!?」
「はい、俺も一瞬…他人の空似と思いましたけど。」
「では、彼女は…」
「本当はそっとして置くべきと思ったんですが…やっぱり話しておいた方がいいと思って。」
「まさか彼女が『次元の将』と関係を持っていたとは…」
「こっちの世界に来ている事に正直ビックリもしましたよ。」
「…彼女自身もL5戦役から数々の転移騒動に巻き込まれる事が多かった。」
「じゃあ、その時に?」
「出会った可能性も否定出来ないだろう。」
彼女はガンエデンにしてホルトゥスと言う組織の頭目。
そして国防産業理事とも秘密裏のバイパスを持っている。
彼の身分位は容易に準備も出来ただろう。
彼女は一体、何を考えているんだ?
「ハスミさん、あの人と再会した時……凄く嬉しそうだった。」
「嬉しそうだった?」
「何て言うか、大切な人に逢えたって感じで…」
「…」
何処か寂しそうで神経を張り詰めた表情のハスミさんがあそこまで穏やかな表情になったのは見間違いじゃない。
「シン、その話が本当なら彼女は彼の事を…」
「俺も万丈さんと同じ考えです。」
恐らくハスミ君は次元将ヴィルダークを愛している。
それが今後の戦いに影響を与えるのは確実。
最悪の場合、彼女は僕らの敵になるかもしれない。
「万丈さん、俺…」
「シン、よく隠さずに話してくれた。」
「いえ…これからどうします?」
「この話を誰かに話したかい?」
「いえ、万丈さんだけです。」
「判った、シン…この話は僕と君だけに留めて置いて欲しい。」
「判りました。」
誰かを愛する事に理由は要らない。
彼女は識っていたとしても彼を愛したのだろう。
それが裏切るきっかけとなっても。
彼女の性格上、彼の傍で寄り添う事を止めたりはしないだろう。
それは最悪の結末を物語る様に。