ダンガンロンパ ~超高校級の凡人とコロシアイ強化合宿~   作:相川葵

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PROLOGUE 超高校級の凡人は超高校級の夢を見るか?
日常編① 最も普通な高校生


 

 

 

 

 普通。

 普通とは、果たして何なのだろうか。

 辞書を引けば、特筆することのない事、ありきたりな事、標準的なものだのといったことが書いてあるだろう。要するに、特徴がない平凡なものという認識で間違いないはずだ。

 

 だとすれば。

 

 希望ヶ空学園に【超高校級の普通】としてスカウトされたこの俺は。

 【超高校級の凡人】ということになるのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

      PROLOGUE

 

        超

        高

        校

        級

    超高校級の凡人は

        夢

        を

        見

        る

        か

        ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 約50年前、希望ヶ峰学園で起きたある事件を発端として、人類史上最大最悪の事件が発生し、世界は絶望へと包まれた。しかし、未来機関をはじめとする希望を信じる人々の働きにより、世界に少しずつではあるが希望が広がっていった。その道のりは決して簡単なものではなかった、否、かなり厳しいものであったが、彼らは諦めるということをしなかった。

 そして、今からおよそ20年前、新生希望ヶ峰学園――『希望ヶ空学園』の誕生により、世界の復興は果たされたのだった。

 

 希望ヶ空学園は、前身となる希望ヶ峰学園と同じく『超高校級の才能を持つ高校生』を集めた学園だ。先に述べた誕生の経緯から、世界の希望の象徴とまで揶揄されている。

 さらに、この学園は希望育成のための研究機関でもあるために入学費用は格安であり、経営費用の多くは世界の財閥からの出資でまかなっているのだという。この情報からも全世界から期待と信頼を寄せられているのだということが伺えるだろう。

 

 そんな希望ヶ空学園は、希望ヶ峰学園と同じく完全スカウト制でそう簡単には入学することができない。そのスカウト条件は二つで、【現役高校生であること】と、【超高校級の才能を持つこと】だ。

 入学すれば将来の成功は約束されたも同然との評判があり、現代に生きる高校生なら誰もが希望ヶ空学園にスカウトされることを夢見ていることだろう。

 

 

 

 

 

 とまあ、こんな誰でも知ってるような話は置いといて、そろそろお決まりの自己紹介といこうか。

 俺の名前は平並凡一(ヒラナミボンイチ)。特徴は特にナシ。長所もナシ。平々凡々なごく普通の高校生だ。何をやってもうまくいかず、どれだけ頑張ってもせいぜい平均を超えるくらい。『普通』という単語を擬人化するなら俺を参考にしろという具合だ。当然のごとく、こんな俺が劇的な人生を歩んできたわけもなく、誰にだって勝てやしないような、そんな灰色の日常を過ごしていた。

 もちろん俺も希望ヶ空へのあこがれはあったが、人を魅了するような美貌も、軽やかな身体能力も、他人を率いるカリスマ性も、他人を圧巻させる芸術センスも、人生を豊かにする幸運すらも持っていない俺には、縁のない話だと思い込んでいた。

 

 ……俺の元に、あの封筒が届くまでは。

 

 

 

 

 

 

「『我々希望ヶ空学園は、平並凡一様を【超高校級の普通】として希望ヶ空学園20期生にスカウトいたします』……?」

 

 封筒は希望ヶ空学園からのスカウトの通知書だった。

 十中八九、希望ヶ空学園のミスか近所の誰かのいたずらだろうと思って確認の電話を3回ほどかけたが、俺は本当に【超高校級の普通】としてスカウトされたようだった。 毎年抽選で選ばれている【超高校級の幸運】とは違うのかということも聞いてみたが、担当の女性曰く、

 

『ですから、平並凡一様は紛れもなく【超高校級の普通】でございます。厳正な審査を経て、最も平均的で、最も普遍的であるという才能を私共は見出したのでございます。

 確かに、例年一般の高校生から抽選で一人【超高校級の幸運】としてスカウトしていますが、こちらもれっきとした【幸運】という才能を持った、人並み外れた高校生なのでございます。』

 

 とのことだった。

 

 正直に言ってあまりいい気分ではない。そりゃそうだ。いきなりあなたが一番普通な高校生ですと言われて喜ぶやつはそういないわけで、スカウトの件も断ってやろうかと思った。それに、俺みたいに何もできないやつが希望ヶ空に行く資格なんてないし、希望ヶ空に行ったところで俺には何もできないとも思っていた。

 ……けど、その考えは次第に変わっていった。このまま平凡な人生を歩んだところで、つまらない日々が待っているだけ。けれど、あの学園でなら、あらゆる才能の集う希望ヶ空学園でなら、この灰色の人生を少しだけでも色づいたものに変えられるかもしれないと、そんな淡い希望を抱きはじめたのだ。

 

 

 

 そして今、俺は希望ヶ空学園の前に立っている。俺は、希望ヶ空学園に20期生として入学することに決めたのだ。

 やっぱり、俺は【普通】の高校生だったようで、結局のところ、最後の最後まで、希望ヶ空への憧れを捨てられなかったのである。だが、それと同時に諦めも多分に感じている。なぜなら、()()希望ヶ空学園に【超高校級の普通】と認められた、 最も平均的で、最も普遍的な高校生の俺は、つまり【超高校級の凡人】に他ならないからだ。

 ……それでも、俺は夢を見たいんだと思う。

 

 とにかく、いつまでもここにいたってしょうがない。今日は別に入学式の日じゃない。制服の採寸を兼ねた身体測定にやってきたのだ。学園に入るのが初めてだから緊張はするけど、本当のどきどきは入学式まで取っておこう。

 

 

 

 ――なんてことを考えながら学園に足を踏み入れた瞬間、俺の意識はあっさりと闇へと消えていった。

 

 

 

 


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