魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
※注意※
「残酷な描写」「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
今回は基本あーちゃん視点で、途中第三者視点が少しだけ入ります。
……普段の説明的な書き方のせいで、あーちゃん視点を書くのが難しかったです。なんだか小動物感が足りない気が……。
「月島さんのおかげ」「月島さんのおかげ」と言っていたら、自分の失敗までもが月島さんのおかげになっていて、もの凄く読者の皆様と月島さんに申し訳ない気持ちになってしまいました。
「月島さんのおかげ」と胸を張って言える様に、一から心を入れ替えて頑張る…という決意ができるのも、月島さんのおかげ。
同じ第一高校に在籍する、私の一つ下の後輩の男子生徒。
そんな月島君に対して、私の感じた第一印象は「怖い」の一言だと思う。
そもそもは、新入生の入学の少し前に入ってきた噂からだった。
「地元の不良を束ねるような奴が第一高校に入ってくる」
魔法科高校には、魔法であれ剣技であれ、腕に自身のある生徒はいる。だけど、そんなあからさまに素行の悪い「不良」と呼べる人はまずいない。これは魔法科高校への入学の難易度も関係しているのかもしれないけど……。
とにかく、その噂を聞いた時、その人には関わりたくない…と思ってた。
けど、入学式の数日後、その人は自分からやって来た。
正確には、私と一緒にいた渡辺摩利先輩に用があったみたいで、たまたま会っただけだった。でも、その時のことはよく憶えてる。
噂を聞いた時に想像したイメージとは違っていた。男の人にしては少し髪は長かったけど、それ以外はとても落ち着いた印象で、制服を着崩したりすることも無くシッカリとした人。
……ただ、そんな噂の不良のイメージからかけ離れた容姿だからといって、安心できるものでは無かった。噂が嘘だったという保証は無いのだから、当然だった。
噂で「背が高い」とは聞いていたんだけど、それは私の予想以上で「この先、この人よりも大きな人には会わないだろう」と思っていた十文字会頭よりも高かった。そしてそれが私の中の恐怖をさらに駆り立てていた。
私と月島君とのファーストコンタクトは、私が泣く結果となった。
次に会ったのは……『新入部員勧誘週間』の頃。風紀委員会のお手伝いで、見回りをしていた私が、風紀委員になった月島君に追いかけられた、あの時。
……思えば、あれが始まりだったかもしれない。
二回目の対面だというのに、月島君は私をおだてた上で放置した。
それ以降、月島君はことあるごとに私をからかってくるようになって……それが続いていく中で、私の中で月島君は「怖い人」から「私をからかってくる、ふざけた人」という認識になっていってた。
同時に周りにいた、私と同じで月島君の噂のことを信じていた人たちの月島君への印象も、だんだんと変わっていっていた。
ただし、それは私とは違って「仕事が出来て、優しい人」というものだった。
周りの人たちの話を聞く限り、月島君は優等生そのもの。一般生徒としても、風紀委員としても高評価を受けていた。
そんな一学期のある日の昼休み。
私はふと、生徒会室で自分の中にあった疑問をこぼしてしまったことがある。
「うー…、どうして月島君は私のことをいつもからかうんでしょー…?」
その時、生徒会室にいたのは私以外には三人いたんだけど……
「それは反応が良いからだろう?」
「あーちゃんが可愛いからじゃないかしら?」
「もしくは、古来から言われている「好きな子にはイタズラしたくなる」というものなのでは?」
三者三様の答えだったけど、私には三つ目の言葉が頭に残った。
確かに、
でも、月島君には仲が良い女の子がいることは知っていたから、「まさか」とありえないことだと……でも、心のどこかでモヤモヤを残して、その時は終わった。
そんな私は、『九校戦』でエンジニアとして月島君のCADも担当することになった。
決まった時には、月島君の私への特別扱いのことが頭によぎって、少し考えたりすることはあったんだけど……実際に練習が始まるころには、そんな事は頭の中から消えてた。
いなくなったと思ったら他の人の練習を手伝っていたりと、基本私以外には迷惑をかけずに自由過ぎる行動を始めた。
それは、『九校戦』が開催されてからも同じで、からかいも含めて、私はいっつも月島君に振り回されて大変だった。
その頃には、私の中で月島君は「私を困らせる人」という認識になった。
……それと同時に、何でもすました顔でこなしそうな月島君の新たな一面を身近で感じることになった。
そのきっかけとも言えるのが、『九校戦』中に月島君に会いに来た月島君の後輩の人たち。
まさに「不良」というイメージそのままの5人組で、最初、第一高校の仮設本部にその人たちが来た時はもの凄く怖かった……けど、彼らは思った以上に大人しくて……月島君が来た時に本性を表した。
「「「「「おはようございます!月島さん!!」」」」」
「よし、キミらは帰るんだ」
「「「「「そんなっ!?ヒドイっす、月島さん!」」」」」
月島君は終始……別の日も後輩たちに振り回されていた。
怖さなんかいつの間にか何処かへ行ってしまっていて、そのことを月島君に言った時はなんだか少し恥ずかしそうな顔をしてた。
そして『九校戦』の最後。
『後夜祭』で『バトル・ボード』と『ミラージ・バット』に出場していた、小早川先輩と踊っているのを見かけた時、そばにいた会長がこんなことを言った。
「月島君っていつもキッチリまとまってるけど、やっぱりこういう賑やかなことが好きなんじゃないかしら?」
「やっぱり?」
「ほら、後輩の不良の子たちと漫才みたいにふざけてる時、面倒そうにしながら、なんだか楽しそうだったじゃない。……もしかしたら、第一高校にそういう相手がいなくて大人しいだけで、ふざけて騒いだりするの
さすがにそれはどうだろう?…と、思った。
でも、その後に会長のせいで月島君と踊る事になった時。
緊張、そして月島君との体格差のせいもあって中々歩調が合わなくて、月島君も合わせようとしてくれたけど上手く踊れなくて……そんな中で、月島君は……
「抱っこして差し上げましょうか?」
月島君の足を踏みつけたけど、それでも月島君はいつも通りの薄い笑みを浮かべてた。
私は頬を膨らませてみせたが、それを気にするどころかむしろ楽しそうにして、手を引いてきて……そして気がついた。不思議と緊張が解けていたことに。
思えば、あの二回目の対面の時からそうだった。
あの放置のせいで次に月島君に会った時、私は放置の事を非難するために詰め寄るようにして月島君に話しかけることになり……その次も、からかわれたことへの……その次は先輩扱いせずに、まるで子供扱いすることへの……。
その繰り返しがいつの間にか月島君への恐怖心を薄れさせる結果となった。
もしかして、狙ってからかっているのか?と向かい合って踊る月島君の顔を見たけど……月島君は微笑むばかりだった。
会長が言った事を思い出し……思った。
確かに、優等生な月島君も、後輩に振り回される月島君も、私をからかう月島君も……どれもが月島君なんだろう、って。
―――――――――
そして今、こうして『地下シェルター』への避難の集団の先頭に立って、皆を引っ張って行く中で、改めて思うこと……。
「この人がお姉ちゃんの後任らしいけど……なんだかなぁ」
「そんな事無いわよ、香澄ちゃん。お兄様が信頼を寄せている方なんですから」
「ていうか、泉美。本人がいないのにその呼び方は……いい加減やめたら?」
……やっぱり月島君は「私を困らせる人」でした…。
避難集団の先頭……つまり、私のすぐそばにいるのは、前会長の妹の二人。香澄ちゃんと泉美ちゃん。避難を始める際に月島君が押し付けてきた子たち。
「地下通路内で起こるであろう敵との戦闘に同行させるわけにはいかないから」…という、理由で押し付けられた。……コンペの途中に押し付けようとしてきた時とは違って二人(というか、泉美ちゃん)が大人しくしているあたり、月島君がちゃんと何かしらの説得をしておいたのだとは思う。だけど…。
香澄ちゃんはずっと「お姉ちゃんの後任…」と私を観察し続けてきて、泉美ちゃんも「お兄様が信頼を寄せる会長…」と観察してきて、「戦場のそば」とは別の意味で緊張してしまう…。
……というか、泉美ちゃんが月島君のことを「お兄様」と呼んでいるのがまず意味不明なんですけど…?
そんなこんなしてるうちに、『地下シェルター』の一歩手前の広く取られた空間にたどり着いた。
目前であることを伝えようと振り向き、避難者の集団を見て……一度、跳び跳ねて……首をかしげた。頭一つ…とまではいかないかもしれないけど、飛び出して見えるはずの人が見当たらなかった。
……あれ?
「…ええっと……地下シェルターはすぐそこなので、進んでくださーい!」
私の言葉に双子を含めた何人かが「どうしたんだ?」と首をかしげていたけど、結局はそのまま進んでいった。
それを見てから、警備隊の人たちの中の……服部君を見つけて問いかけた。
「あの、月島君が見当たらないんだけど……?」
「月島が?……本当だ。まさかまだ追い付いていないのか?」
「……?それってどういう…?」
「合流地点の敵の殲滅なんだが、月島が請け負っていて。敵が追ってこないことを見る限り……って、おい!」
途中までで、私は駆け出していた。避難者たちの間を逆走するようにして。
もう!本当に月島君は『九校戦』のころから……あっ、春の一件でも勝手に行動していたっていう話も聞いたことが……と、とにかく!月島君をちゃんと連れて来ないと!
それこそ『九校戦』の練習期間中にそうしたように、ちゃんと見つけて叱らないと!
そう考えて駆け出したんだけど、後ろからは「会長は人員の確認をしているので気にしないで、皆さんは前に進んでください!」っていう服部君の声が聞こえてきた。……足は止めなかったけど、よくよく考えてみると、いきなり逆走する人がいたら皆驚いちゃいますよね…。
そうして、集団の最後尾まで進んだんだけど……そこにいたのは、月島君と同じクラスで時々一緒にいるところを見たことのある…そして警備隊に所属している森崎駿君がいました。
私が来たことには目を見開いて驚いていた。
「どうしたんですか!?」
「あの!つ、月島くんは、まだ!?」
「それは、まだですね……あいつ、何やって…って!?何処に行くんですか、会長!」
私がまた逆走するように通路を10mほど進んだところで、森崎君から呼び止められた。
「何ですか!?早く月島君を連れて来ないといけません…!」
「それはそうですが、会長は…」
「みなさん!伏せてください!」
その警告とほぼ同時に、地下通路の天井が崩れ落ちだした。
――――――
この時、色々な偶然が重なった。
月島による迅速な合流地点の制圧によって、避難自体が
集団自体は前に進みながらも、中条あずさが逆走していたこと。
最後尾を過ぎても、そのまま駆け続けていたため、森崎からも少し距離が離れてしまったこと。
結果的に、本来ありえないことが起きてしまった。
本来であれば、地下通路の崩落をとある教師が魔法で一時的に受け止めその間に避難するのだが……その魔法の範囲からあずさは外れてしまい……そして、その頭上には……。
――――――
「すみません!会長!」
その声と共に、私は浮いた感覚がしました。
大きな音を聞きながら、視界が何か移転かして……気づいたら床に転がっていました。…でも、不思議と痛くはありません。
「一体何が……!?」
顔を上げると、通路をふさいでいる大小様々な大きさの
そして、その向こうに誰がいるかを思い出す。
「会長!大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」
そんな声が瓦礫の隙間から聞こえてきた。私は瓦礫に極力近づいて声を出す。
「こっちは大丈夫です。そちらは…」
「良かった…。瓦礫そのものは多すぎてどうにもできそうになかったから、会長に手荒な真似をしてしまって……。こっちは廿楽先生の魔法で、低めですが何とか空間が出来ているようで……でも、そう長くは持たないみたいです。皆、シェルターへと急いでいます」
皆が無事なことに安心しつつも、このまま話して森崎君を引き止めるわけにも……でも、分断されてしまった私自身はどうしたら……
「会長!……さっきは止めようと思っていましたが、こうなっては仕方ありません。袋小路になってしまったそこにいるよりも、早く誰かと行動を共にするほうが安全です。…月島に会いに行ってください!」
「は、はい!」
瓦礫ごしの声に、反射的に返事をする。
月島君を連れてくることが目的だったことを考えると……でも、ゴールだったはずの『地下シェルター』への道は途切れてしまってる。
「そのまままっすぐ行って、通路の合流地点から僕らが来た方とは別の方向に行けばきっといるはずです。月島と合流してからは、事情を話せば月島が……って!ちょ、なんでキミたちが!?」
そんな森崎君の慌てる声が聞こえたかと思えば……
「そんな事、決まってます!お兄様に会いに行くんです!あの会長さんはそのために走っていたのでしょう!?」
「ちょっと!落ち着いてよ、泉美ー!早くシェルターに行かないと危ないって言ってるから!」
「そんなの二人で瓦礫をドカンと吹き飛ばせば……」
「それ、通路も外も、被害が広がるだけよ!?」
泉美ちゃんと香澄ちゃんが私を追って逆走をしていたみたいで、森崎君も巻き込んで、大変なことになっているようだった。
「と、とにかく!会長はいち早く合流を!!」
「わ、わかりました!」
瓦礫の向こうの皆も心配ではあるけど……ここにいても私ができることなんて無いことは一目瞭然だった。
そう思い、その場から離れて、私は月島君を探す為に走り出した……。
―――――――――
通路の合流地点にたどり着いてから、月島君が行ったであろう方向の通路へと慎重に進んでいった。
なぜなら、そこからは何処で戦闘が行われているかわからない領域。…私も魔法は使えなくはないけれど、実際に戦えるか?となればそうでもない。なので、いつでも逃げられるように戦闘音に注意しながら進んでいったんだけど……。
「……あれ?」
途中までしか話は聞いていなかったけど……確か、月島君は敵を撃退するために合流地点の先にいたはずなんだったよね?
なら、なんでこんなにキレイなんだろう?
銃弾のあともなければ、何かの魔法による攻撃で地面や壁が傷ついた様子も無い。それどころか、血も、人も見当たらなかった。そんな様子を不思議に思いながら私は進んでいったけど……やっぱり
結局、警戒する気になれず通路を走りだしてしまったんだけど、やっぱり何も無く……ついには出口まで来てしまった。
「……って、月島君もいない!?」
地上の様子を見てみたんだけど……ときどき遠くから爆発音が聞こえるくらいで、そう近くには敵はいそうにない。
「そうなると……月島君は何処に…?」
完全に通路から出て地上の建物の陰に隠れる。そして辺りを見渡してみたけど……この通りには月島君どころか誰もいないようだった。
このままここでジッとしておくか、それとも移動して探し回るか……
そう考え出して……ふと、ある事に気付く。
「あ、そうだ!ケイタイがあるんだから、それで連絡を取ればいいんだ!」
ポケットからケイタイを取り出してみる。
幸い、電波は通じているみたいで、何の問題も無いみたい……でも、もし月島君が誰かと戦っている最中だったらどうしよう?
そんなことを考えている私の耳に、大きな爆音が聞こえた。
それも……
似たことがついさっきもあった気がする。
けど、あの時はそばにいた森崎君が助けてくれた。
でも、今は……
「あっ…」
私は心の何処かでここが戦場だということを忘れていたんだと思う。
…いつもみたいに、月島君を探して回れる学校とは違うんだと、わかっていなかったん―――
―――――――――
揺れてる。
なんだか波のある浮遊感が感じられる。
ちょっと前に、似たような感覚が……でも、あの時とは違って、なんだか温かい気がする。
「……んん?」
「起きましたか?」
うっすらと見える視界には、月島君が……
「……って、あれ?月島君…?月島君!?」
「そうですが?」
そういつも通りに答える月島君、に一安心し……ある事に気がついた。
揺れは月島君が歩いている振動からきているもので、浮遊感は私が抱きあげられてるからで……。
……って!こここ、これって『お姫さま抱っこ』!!??
それがわかった瞬間に、私の心臓が頭に登ってきたかのようにドキドキと大きな音を立て出した……気がした。たぶん、今、凄く、顔が、真っ赤、だと……
そんな私をよそに、私を抱えたまま歩いている月島君が口を開いた。
「それにしても……ダメですよ?陰になっているからって、あんなところで寝ていたら。見つけたのが僕だったから良かったものの……というか、シェルターに避難したのでは?」
寝ていた…?
どういうことだろう?私はあの時、上から振ってきた建物の瓦礫で……。
そう思い出していたら、身体に寒気が走った。
それを抑えながら、私は溜まっていたものを月島君に吐き出した。
「月島君こそ何処に行ってたんですか!?通路の先で誰かが戦ってるっていうのは聞いてましたけど、まさか一人でなんて…!それに、通路からもいなくなっちゃって!!みんなで避難しようって言ったのに、服部君たちも護衛してくれることになったのに!一人で全部やろうとして!!月島君に任せちゃう服部君たちも、そうですけど、もっと、もっとちゃんと……して……ぐしゅ」
いつの間にか言葉以外にも、色々と漏れ出してしまってた……。
そんな私の膝のほうを持っている月島君の左手が、肩のほうを持つ右手が……私を強く握りしめてきた。
「…すみません、中条会長」
歩いている月島君はそう私に言った。
その表情は涙でよく見えなかった。
「ぐしゅん…敵とは、戦ったんですよね?……つらく、なかったですか?」
「…元々、僕の手はそんなにきれいなものじゃないですよ?それに……中条会長が思っているほど、僕は優しい心を持っているわけでもありませんから」
そう言う月島君に、私は…根拠は無くても「そんなことは…!」と否定しようとした。
けど、それよりも先に、月島君が動いた。
私の足を抱え上げるように持っていた左腕が一瞬離れ……反対方向に巻き付き、それと同時に私の肩側を持つ右腕が私を月島君に引き寄せるように動き……私のあごが月島君の左肩に乗るくらいに密着した。
……つまり、私は抱き上げられた状態で抱きしめられてて……
「っーーー!?」
しかも!私の肩を持って体に押し付けてきていた月島君の右手が何故か離れてしまったので、後ろに倒れて落ちないように…と、とっさに私の方から月島君の首と肩あたりを掴んじゃって……!?
「『
月島君が何か言ったと同時に、轟音が鳴り響いた。
「なっ、何!?なんなんですかぁ!?」
月島君に
するとそこには……数十メートル先からこちらへと向かってくる足のようなものがある戦車が二台。そして、私と月島君の少しだけ前に三角形の障壁があって、その向こう側にはかなりの数の弾丸が落ちていた。
ふと視界に入ったのは、私から離れた月島君の右手。その手には刀型のCADが握られていた。
そして、月島君はそれを振り被りながら、また何かを言った。
「『
それと同時に、
ガシャンガシャン…と胴体の片割れが落ちたところで、もうその戦車は活動できなくなったのだろう。うんともすんとも言わなくなった…。
でも……
『うっし、久々に仕事した気がするぜ!やっぱ見回りとかよりこういうのが一番だな!』
戦車のほうに飛んでいった
続いて、別の声が聞こえた……それは
『そう言うな、
あれ…?でも、首を動かして確認してみたけど、月島君の口は動いていないような……?
そんな事を思っていると、月島君の右肩に変な羽(?)がついた服を着た、髪を結んだ糸目の
『椿鬼、マスター。ちょっと悪いんだけどさ……』
『あん?どうしたよ』
そう言ったのは、さっきまで
『どうしたんだい?舜桜?』
『この子、見えるようになっちゃったよー?……どうすんのさ?』
『あっ』
『……いや、何言って…』
「え?見えるって、どういう?」
私がそう言うと、月島君が目を見開いた……