魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
「残酷な描写」「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
い・つ・も・の。
基本、月島さん(モドキ)視点で、最後に少し第三者視点が入ります。
前回で燃え尽きました。はい。
月島さんの……月島さんのおかげって何だ?
一つ物事を解決したと思ったら、新しい面倒事が芋づる式で沢山付いてきた。
……それが、中華街のことを
…というのも、周公瑾の過去に挟み込んだ際に色々と知れたのだが……本当にそれらが面倒事だらけだったのだ。
病院で周公瑾を初めてじかで見た時に、彼の雰囲気が何か「毒」のようなものに感じられたのだが、その直感は間違いなかったようで真っ黒だ。裏が有り過ぎて軽く引いてしまうほどだった。
色々と考えたうえで良い具合に挟み込んだから、周公瑾はちゃんと上手いこと動いてくれるとは思うが……どう考えても、放置していたら日本に手を出してくることは間違いないだろう…
周公瑾の記憶の中にいたある人物を思い浮かべながら、僕はひとり
予定を早める……いや、あんまりしたくはなかったけど、大幅に変えるしかないかな。
「『十師族』以外にも…、内にも外にも面倒な連中がいるなんて世も末だね、っと」
そう呟きながら僕が立ち止まったのは、『全国高校生魔法学論文コンペティション』が行われていた横浜国際会議場からほど近い高層建築の屋上。
そこから目を向けるのは、横浜国際会議場のそばにある大型特殊車両専用駐車場。そこには一台の大型バスと、数台の乗用車が止まっていて……バスの持ち主である第三高校の生徒たちと『大亜連』の兵士たちが乗用車を防壁代わりにしながら戦闘を行っていた。
戦闘を行っている第三高校生徒の中には、一条将輝や吉祥寺真紅郎の姿も見受けられる。
あの様子だと、戦闘が始まってからまだそこまで時間が経っていないのかな?
そう判断した理由は駐車場の地面だ。
「おや…」
そうしているうちに、駐車場の一角に、人ほどの大きさの
正確には花ではなく、『一条家』の秘術である『爆裂』の魔法による、人体の破裂なわけで、
あの『爆裂』をもって三年前の『佐渡侵攻事件』で敵兵を殲滅し、敵からの返り血と味方の血に濡れたその姿から一条将輝は「クリムゾン・プリンス」と呼ばれるようになったんだとか。
「強い」ことは味方としては頼もしい限りだと思うし、実戦経験がある事も含めて日本側から見ればありがたい兵力だとは思う。
……が、だ。
「アレは目に悪い…というか、精神衛生上よろしくないと思うんだけどな」
だって、敵とはいえ自分たちと同じ「人間」という生物がはじけ飛ぶのだ。
「戦争なのだから、人が死ぬのは当然」と言われてしまえばそこまでだが、見ていて良い気持ちがする人間はそうはいないだろうし、冷徹でいられる人間も限られるだろう。
そして、それは学生のような経験も覚悟も足りていない存在であればなおさらのことだ。現に、弾け飛んだ敵兵を見て吐き気をもよおすor吐いている第三高校生徒が複数人いる。ついでに、平然とした顔でその事態を引き起こした一条将輝を見て、引いている生徒なんかもいた。
一条ももっと見た目に配慮すべきだ。
僕なんて、人体を弾けさせたりするどころか、大量の出血をさせたりしたことはないのだ。……まあそれは、『ブック・オブ・ジ・エンド』のおかげなんだが。
それに……
「僕の場合は、見た目にこだわり過ぎて、発動速度や威力、効率は度外視気味だしね」
そもそも対人戦が少ないっていうのもあるけど……。
……だが、今回は
そんな事を考えながら、高層建築の屋上のへりから飛び出し、
空を駆ける方法は簡単だ。『
それを少し活用すれば……そう難しくは無い。……と思う。なにぶん感覚で行っているため、曖昧だったりする部分が有る。
第三高校陣営と大亜連合陣営の、ちょうど真上あたりに差し掛かったところで、僕は心の中で思いっきり土下座で謝りながら、『ブック・オブ・ジ・エンド』を
刃を向けて地面へと高速で落ちていった『ブック・オブ・ジ・エンド』は、その驚異的な切れ味故に、まるで抵抗がないかのように
それを確認し、僕は足を下に向けた状態のまま、ゆっくりと垂直落下を開始する。
当然、目の前に
そしてその原因は……
「なっ!?」
いち早く
地面からドンドン伸びてくる巨大な刀身。
それが複数……乱立するのではなく、生徒と兵を挟むように2列で綺麗に並んでいる。
「なんだよ!何なんだよこれは!?」
第三高校生徒の一人が、焦った顔でそう声をあげている。
…まあ、無理もない。ただでさえ「戦場」という緊張で張りつめていた空気の中で精神を擦り減らせていたというのに、理解不能な状況に投げ込まれたのであれば当然だろう。
早く「敵のものではない」という事を分からせてあげるべきだろう。
僕は落下速度を上げ……片膝をつきながらも、地面に刺さっている『ブック・オブ・ジ・エンド』の近くに着地。そして……
「『
地から生えるいくつもの巨大な刀身に薄緑の淡い光が
「『
巨大な刀身たちが桜の花弁のように散り、薄緑の淡い光が桜色に変わり……舞った。
木なんて無い、アスファルトの地面の駐車場に突如現れた桜吹雪の空間。
幻想的とも言えるその光景。第三高校生徒も大亜連合の兵士も、驚いたり、目を瞬かせたり……中には目を輝かせたりしている人間もいる中……
「危ない!」
吉祥寺真紅郎の声が聞こえた。
生徒たちが我に返り、乗用車の陰などに身を縮ませた。…対して、僕は何が危ないのかにすでに気づいていたため、その場から動かずに
大きな発砲音……そして、高い金属音が駐車場に響く。
「なっ……」
そう声をもらしたのは、僕に向けて銃火器を発砲した大亜連合兵士。
その兵士が凝視しているのは、小川の様に一本にまとまって流れる桜吹雪……兵士が持つ銃火器が放った弾丸を防いだソレだった。
僕は金属音が響いた際にこぼれ落ちた「半分にくだけた花弁」を
「へぇ…かなり硬く作っておいたつもりだったんだけど、まさか一枚割られてしまうなんてね……。思ってた以上に強いみたいだね、その銃」
背後からざわめきが聞こえてきた。おそらく、陰に身を隠していて何があったのか見ていなかった第三高校生徒たちが、僕の言葉から何があったのかを察して驚いているのだろう。
それに対して、まさかの結果となった大亜連合兵士側は呆然としていた。
「人を殺めるには十分で驚異的な威力と言うわけか……だけど…」
呆然とする大亜連合兵士に向かって、僕は地面に刺さった『ブック・オブ・ジ・エンド』を抜きながら言ってみせる。
「今、キミたちのもとには何発分の銃弾があるんだい?」
淡々と、淡々と言ってみせる。
「一発で一枚を壊せる程度じゃあ…………僕の
その言葉を聞いてかどうかは分からないが、大亜連合兵士たちは僕に…そしてその後方にある第三高校生徒の隠れる乗用車に向かって銃を乱射しだす。
しかし、それらは僕が操る桜吹雪の流れにことごとく
その銃声を聞きながら、兵士たちに聞こえる様に言い放つ。
「眼前の光景、その目に焼き付けて土産にするといい。……季節外れだけど、趣深く美しい桜だという自負はあるからね」
腕を振ってみせ、それと同時に駐車場に散っていた花弁の全てを大亜連合兵士たちを覆い隠すように囲い、そして逆巻かせる。
その光景は桜吹雪の竜巻…と言ったところか。
「……で、何ほうけているんだい?避難するんじゃないのかい?」
未だに渦巻いている桜吹雪の竜巻を見て呆然としている生徒たちに、僕が振り向きながらそう言うと、先程まで戦闘に参加していた生徒たちは「ハッ」とし、自分の近くにいる生徒と顔を見合わせた後、一条将輝と吉祥寺真紅郎がいる方へと向いた。
「…そうだね。皆、先にバスに乗って。…僕らは彼と少し話してからすぐに行くから」
吉祥寺がそう言うと、生徒たちは頷いてバスへと向かって行った。
その生徒たちの中には、僕に頭を下げてから行く人なんかもいた。
そんな人たちを見ていると、一条から「月島昊九郎」と声をかけれたので、そちらを向く。しかし、一条が向いているのは僕ではなく桜吹雪の竜巻のほうで、目を少し細めているようだった。
「今、
「想像にお任せするよ。…ただ、あの中にいる人間は戦闘不能になっていることは保証するから、心配する必要は無い」
「そうか」
そう言うと、一条は改めて僕を見てきた。
それとほぼ同時に、吉祥寺が一条の隣に立った。
「礼を言うよ、月島
ふと「月島さんは朽木白哉と共に鍛練を続けてきたんだよ?彼の真似事ができても何もおかしくないじゃないか」と言いたくなったが、「『くちき』ってどこの家だ!?聞いたことも無いぞ!」というツッコミが入ることは間違いないので、寸前のところで止め……代わりにはぐらかすことにした。
「吉祥寺くんの知識・観察力には感心するけど……自分の知識の中だけで決めつけてしまうのは欠点でもあるね。『群体制御』以外の可能性も考えるべきなんじゃないかな?」
「それは…確かに……『群体制御』も「億」なんていう規模を扱うなんて聞いたこと無いし…。それに、地面から生えてくる剣。あれは幻覚…?いや……でも……」
「考えるのも良いが、今はもっと優先すべきことがあるだろう、ジョージ。お前は早くバスに乗って避難するんだ」
「…!ああ、そうだね、将輝……将輝?」
一条の言葉に疑問を…そしてなんとなくの予感をもったのだろう、吉祥寺がハッとした顔で一条を見る。
「俺はこのまま魔法協会支部に向かい、義勇軍に参加する。『十師族』の「一条』としての責務を果たす」
その言葉の後、吉祥寺が何かを言おうとする前に……一条は僕を見て問いかけてきた。
「お前はどうするんだ、月島」
「……『
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その後、僕は一条、そしてバスで横浜を脱出する第三高校生徒たちを見送り、一人となった。その理由は、後始末だ。
『千本桜景厳(モドキ)』。
地面に、「桜色の発光・そして硬化の効果を組み込んだ花弁型に分裂する巨大な刀身がせり出すギミックを作っておいた過去」を挟み込み現実に反映させ、それを『完現術』で操るという、『ブック・オブ・ジ・エンド』で挟み込む内容以外はそれなりにシンプルな技だ。
僕はその桜吹雪を元の地面に戻した後『ブック・オブ・ジ・エンド』で地面を斬りつけて、挟み込んでいた内容を取り除く。…これで元通りだ。
「さて……残りカスはどうするかな…?」
僕は駐車場に残る、切り刻まれた大亜連合兵士たちを見て……ため息を吐いた。
「……地下通路の連中と同じでいいか」
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時折、聞こえる爆発音などから、未だに各地で戦闘が行われているのがわかる。
そんな中、後処理を済ませた僕は次の目的地へと建物の上を跳んで移動を続けていた。
『十師族』、そして多くの魔法科生にチカラを示した後のことは「十文字先輩と合流する」…という道筋もあったのだが、僕は別の方向へと向かっていた。
周公瑾が逃がしてしまった
理由は簡単。彼が『
「やはり、名を上げるには、敵の中でも強い奴を倒すに限る」
何を隠そう、今回、僕の中で一番の目標なのは「二つ名」なのだ。
その為には大きな印象付けが必要となる。
『……!?…ストップ!ストップだ!!』
「どうした?」
一応、狙撃などを考えて、移動する僕から少し離れた周囲を飛び回せながら移動していた六花の
「敵か?」と周囲の気配を探ろうとしたのだが……
『俺の場所、わかるか!?舜桜、あやめ、早く来てくれ!』
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同時刻。
桜木町駅付近の『地下シェルター』……その近くの地上、地表が崩れ落ち地下空間が瓦礫で埋まっている部分の近くで、精霊との『感覚同調』で地下を探っていた幹比古が周りの人たちに言った。
「瓦礫の下敷きになっている人はいないみたいです。……ただ、月島と