魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
11/27 01:30
あとがきに長めの追記をさせていただきました。
月島さん(モドキ)が何をしたのか。その解説です。
※注意※
「残酷な描写」「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
もはやそれが通常営業。
今回のお話は、最初と最後以外、基本的に
そして、わかり辛いかと思われます。
今回は弾けてしまいました。主に作者が。
黒歴史待った無しです。
雪が降るほど凍えても、オサレのまがい物でも、色々と忙しくても……それでも頑張れるのは、月島さんのおかげ。
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横浜中華街の一角にあるとある店。
表向きでは、私自身がオーナーを務めているその店舗の上階の一室にある書斎。そこにある窓につけられているブラインドの隙間から、私は横浜中華街を……その先にある横浜の街を見ていた。
数分前に横浜の街のあちこちから立ち込めだした煙。おそらくは『大亜連』のゲリラ兵たちが活動を始めたのだろう。
ここまではブローカーとして大亜連合軍特殊工作部隊の人間に手を貸してきた。だが、今朝行った「横須賀の外国人刑務所へと向かう
今考えるべきは……
「呂剛虎の奪還の際の約束を破られた時のための、用意はしておきますかね」
大亜連合軍特殊工作部隊の隊長である
これに対し、陳祥山は一応は頷いてはくれたのだが、「中華街は目的地のひとつである日本魔法協会関東支部にほど近いから…」と、「絶対は無い」とでも言いたげに付け加えていたのを憶えている。故に約束を破られた際に迅速に対応するつもりなのだ。
―――――――――
それは突然だった。
金属音のような…
気のせいだったのだろうか。特に変わった様子も無く……
……いや次の瞬間、斜め斬りにされ二分されたドアが、ドアノブのついている方がバタンと書斎側へと落ち、蝶番で止められている方は力無く「キィ…キィ…」と揺れ出した。
ドアを斬った犯人は、床に落ちたドアが本来存在した部分から見えていた。
「…
「やあ、病院以来かな?
右手と…それと腰に刀を持って、薄い笑みを張り付けながら言い放つ月島を見据えながらも、私はどうするべきか考え出す。
登場の仕方から考えても、穏便な話し合いに来た…という様子ではないことは一目瞭然。ならば、こちらからもすぐさま迎撃すべきなのだが……
…何故、このタイミングなのだろうか?
今、横浜の街は混乱している。それは彼の所属する第一高校が参加していたコンペ会場も含まれており、当然生徒たちの避難に追われているはずだ。だというのに、今、このタイミングはどう考えても事が起こってすぐにココに急行してきたぐらいの時間だ。
しかし、そんな私の中の疑問をよそに、月島は斬り壊されたドアから悠然とした足取りで書斎へと入ってきた。
「僕からの警告、キミほどの人間ならちゃんと理解してくれると思っていたんだけど……全く、困ったものだよ。まさか、せっかく捕らえた
その月島の言葉に、私は驚かされた。
彼の言う「警告」とは、病院で会い、話した際に私に遠回しに伝えてきたのもだろう。
「これ以上千秋に関わらず、『大亜連合軍特殊工作部隊』にも手を貸すな」
無論、私もその事を忘れたわけでは無かった。しかし、まさかあれから何日も経ってからの「呂剛虎の奪還」を完全に把握されるとは思ってもみなかった。
「知られるはずも無い」と
「おや?心外ですね。そんな事に私が関わっていると思われるとは……」
「僕が何も無しに見逃したと思っているのかい?キミが
「…では、何故その時点で手を出さなかったのですか?その様子ですと、アナタはこの騒乱が起こる事を事前に止めることも出来そうなのですが?」
「こちらにも都合というものがあってね。……それに、キミに対しての怒りはいまだに
月島が右手を振るい、書斎の壁を刀で斬った……が、何にも傷がついた様子は無く、私は心の中で首をかしげた。
「意味のある行動に見えたかい?」
そう言った彼は、続いて自分の足のつま先の先あたり…そのあたりの床を横一線、私のいる場所と彼とを区切るかのように、刀の
床と刀とが当たる際に起こった「キィィン……」という不快さが感じられる金属音が書斎に響く。
「これも……」
「……私の目には、とても意味のある行動だとは見えませんでしたけど?」
「そうかい。それは残念だ……よっ!」
月島がそう言って一歩踏み出してきたかと思うと、その足元の床から…いや、その床自体がまるで変形したかのように無数の
だが…
「先程までの会話の時間、私が何もしてなかったとでも?」
床から伸びる無数の棘は『影』に打ち砕かれ、『影』は眼下から月島へと踊りかかる。
「くっぅ…!?」
月島は身をひねりかわそうとしたが……彼の右肩あたりを通り過ぎ、天井を
その途中、「ガシャン」と音を立て、私と彼との中間地点辺りに彼の右手が持っていた刀が
私のもとに来た『影』…『
「ぐうぅあぁ…!?」
汗と自身の血で濡れた顔で睨めつけてくる月島。その彼の口が動いた。
「『双天帰盾』…僕は……」
「後ろががら空きですよ」
月島が何かをしようとする前に、彼の後ろから
「…………!…………っ!」
首を酷く損傷した月島の口からは何かを言おうとしているのか、あふれる血と肺から押し出された空気とが混ざり「ガポッ…ゴポッ…」と漏れ出す空気の音だけが
そしてほどなくして、月島は自分の血で汚れた床に倒れた。
僅かにだがもがき続ける月島に向かって、私は言葉をかける。
「月島昊九郎。確かにアナタの力は強く、未知数です。…しかしその余裕から
その言葉が彼の耳に届いているかは不明だが……そんな事は私にとってはさほど重要ではない。
……さて、この死体はどう処理したものだろうか。
今、街で起こっている騒乱の中にどうにかして放り込むか、それとも完全にこちらだけで何とかしてしまうか……。
そんな事を考えながら、次第に動きが無くなっていく月島を眺めていた。
―――――――――
「さて、そろそろお喋りはお終いにしようか」
そんな声が自身の右側のほど近くから聞こえ、私はとっさにその場から飛び退き……そして、舌打ちをした。
とっさに避けたその先は、ちょうど月島昊九郎が倒れた位置。
この先のことを考えると、場合によっては日本の兵と顔を合わせなければならないため、なるべくならば血には汚れたくは無かった。一応、ゲリラ兵を排除した時のものと誤魔化せなくはないが……。
トンッ
なるべく衝撃を
……だが、違和感があった。
水音が一切しなかったのだ。
……おかしい。腕と首からの出血はかなりのものだったはず……
そう思った時点で、私はある事に気付いた。
死体が……無い……?
ハッっとし、自身の足元…床ではなく、先程まで自身のいた方向へと目を向ける。
「どうしたんだい?いきなり跳び跳ねたりして……」
私がいた場所のすぐそば……そこには、
「な……!?」
「実はそこまで時間は使えないから、一瞬で終らせることも考えたんだけど……。でもやっぱり、あと少しだけ、お喋りをしようか」
私の驚愕など気に留めた様子も無く、月島は薄い笑みを浮かべたままひとりでに話し始める。
「キミにとって、「過去」とはどういったものだい?」
唐突に投げかけられる質問。
「……何の話ですかね?」
「そのままの意味だよ。何をもってして「過去」は「過去」となるか…という話だ」
「時間が経てば、では」
「確かにその通りだ。物であれ人であれ…時代でさえも、時が経てば「過去」のものとなる」
そう言った月島は、刀を持っていない方の手…左手の人差し指を立てて、そのまま言葉を…新たな疑問を口にしてきた。
「…なら、個人の「過去」はどうとらえる?例えば、今、この瞬間のキミだ。僕の言葉を聞いているキミさえも、次の瞬間には「過去」となり
「…………」
「では聞こう。キミは何故「夢」の中での出来事を自身の「過去」としてとらえない?」
月島の問いの意味が解らず、顔を僅かにしかめてしまう。
…そんな私からの返答など最初から期待していないかのように、月島は語り続けた。
「それは眠りから覚め、先程までのことが「夢」であり、自身が実際に体験した記憶からなる「過去」とは別のものと認識するからだ」
「…その話に何の意味が……」
「キミが必死に考えている疑問へのヒントだ」
「……!?」
相変わらずの薄い笑みを張り付けたまま月島は軽く頷き……そしてため息を吐いてきた。
「周公瑾。キミは思っているはずだ。「月島昊九郎は殺したはず…。何故、怪我一つ無く生きているのか。それに、生成したはずの『化成体』は何処へ行った」と」
彼の指摘に、今日何度目かの驚愕をおぼえた。
確かにその通りだった。死を目前としていたはずだった月島昊九郎。そして、彼に重傷を負わせた『哮天犬』。そのどちらも見当たらなかった。
「…それは夢だった、とでも言いたいのですか?」
「いいや。まぎれもない「過去」だ。……キミの中では、ね」
そう言った月島は……消えた。
驚く暇も無く、
自身の左肩から生える刀身。
それを「後ろから刺された刃」だと認識するのに、僅かに時間がかかった。
半ば転がるように前方へと身を避けた後に反転した私が見たのは……予想はしていたが月島昊九郎だった。
「さて、質問をしよう。……キミと僕は、今日会ってから何をした?」
「ほんの数分前の出来事とは、ふざけた質問ですね。…私はアナタとのジャンケンに勝ち、今回の件を水に……」
ふと、違和感を感じ、口が止まってしまう。
……何故だ?
「ついでにもう一つ聞こう。その時、
そう言われて、この書斎の出入り口のドアへと目を向けた。
……どういうことだ?
彼は文字通りドアを
「いやぁ…それにしても、せっかくチョキを出したのに負けるだなんてね」
「…何を言っている。チョキを出したのは私で、アナタはパーを……」
月島の間の抜けた言葉に、ついそのまま言葉を返してしまい、ドアから目を離し、月島のほうへと目を向け、彼の足元に淡い光が見えた瞬間……彼がまた消えた。
前のこともあって、瞬時に反転しながらその場を離れようとし……
とっさに防御のために眼前で交差させた私の腕に、彼が刀を振り下ろし……帰す刃でもう一度斬りつけてきたという状況を、この目で見た。
回避から体勢を立て直しつつ、自身の腕へと意識を向ける。
斬られたはず……しかし、斬れていない。
ふと頭によぎったのは『化成体』のとある一種。
『化成体』というものは
故に、『化成体』が人体に何かしらの害を与える場合、そういった魔法…もしくは精神干渉系の魔法で呪殺に近いものを与えるものが基本だ。
つまり、実際に私の腕を斬れなかったあの刀は、もしかすると一部の『化成体』と同じく実体への干渉ではなく、別の何かへと影響を与えているのではないだろうか?
そんな私の思考をさえぎるかのように、月島がまた語りかけてきた。
「それじゃあ再び問おう。……キミと僕は、今日会ってから何をした?」
「何を……といわれても、アナタとはずっと殺し合いを……!?」
いや、待て!
何故だ…!?
何故、さっきまではジャンケンなどというお遊びで全てを片付けたと思っていた!?…いや、その前には「殺したはず」と思っている……ずっと戦い続けていたはずなのに!
しかも、それを何の疑いも無く当然のように、私自身が言っている。
…待て。ということは、もしかすると……あの「斬られても、斬られていない」現象は……!?
そう考えた時、また月島が消えた。…だが今回はこれまでとは少し違っていた。
私の周り……決して広くはない書斎の中で分身しているかのように高速で移動してまわる月島。彼は同じ方向に移動してグルグル回っているわけでは無く、まさに縦横無尽に飛び交っていて、目で追うことも困難なほどだった。
そして彼は、私のスキを突き、攻撃を仕掛けてくる。
きまって、一度に二度斬りつけてくるその攻撃に何とか対処しようとしている私をよそに、月島の口はなおも動き続けていた。
「キミのような人間は、僕は嫌いじゃない。…いや、むしろ羨ましいくらいだよ」
やっとのことで生成した『哮天犬』で月島を迎撃しようとするが、それを避けてきて、また私に
「誰か一人の為に、献身的に影で暗躍する……素晴らしいよ」
また消えた月島が、もう何度目かもわからない攻撃を加えてくる。またしても
「影の支配者なんてのもカッコイイかもしれないけど僕の趣味じゃない。僕にはキミのような立ち位置のほうが魅力的だ」
何度も、何度も襲い来る実害の無い攻撃に、私は時折
「だけど……それを踏まえたうえで言わせてもらうよ」
さっきから時々感じる違和感……。私も
つまりは、やはりあの刀には私が予想したような効力があるに違いなく……そして、わざわざそうするということは、二度斬ること自体に意味があるはずだ。
……ならば。
「「月島さん」には程遠い…!」
そう言って、また死角から斬りつけてきた月島。
その一度目の斬撃でなんとか反応し
その私の行動に月島は目を見開いており、その反応から私はこれが正解なのだと確信した。
「……なるほど。刀で斬る事により引き起こす「記憶の操作」……現代魔法はもちろん、古式魔法でも初めて見る能力…ですが、どうやら重複させることは不可能なようで……それ故に二度斬らなければならない」
だが、今の私は二度目を受けずにいる。これまでに感じていた違和感がまるっきり消えたわけでは無いが……問題無いだろう。
「アナタの速さにも慣れてきました。…さあ、どうしますか?」
目を見開いていた月島が顔を伏せた。そして……
「ふふっ…あはははっ!」
再び顔を上げた月島は笑っていた。それも、これまでの薄い笑みなどではない笑顔……しかし、ここちの良いものではない
「何がおかしい…?」
「いや、だって笑わずにはいられないじゃないか」
そのまま腹を抱えてしまいそうなほど笑う月島が、その笑みを私に向けて言う。
「だってキミが、僕が最初に説明したこととほとんど同じことを、まるで自分が解き明かしたかのように…鬼の首を取ったように言うんだからさ!!」
「なん…だと…」
何を言っているんだ、彼は。
そう疑問符を浮かべている私に向かって、なおも笑い続けていた月島だったが、ふと笑みを消し……失望したかのように冷たい目をしてため息を吐いた。
「まさかとは思うけど「もう自分は何もされていない」とでも思ってたのかい?…キミと僕は、今日会ってからしたことは「僕による『ブック・オブ・ジ・エンド』の能力についての説明」だ。……さて、キミは何をしたと思っている?」
何を言って……月島がこの部屋に入ってきてからの一言目は…
「部下たちはすでに中華街に配置してもらったよ。これでいつでも侵入してきたゲリラ兵を捕縛できるよ」
で、その言葉に私は…
「どういう意味ですか。月島昊九郎」
と言ったはずだ。…それは当然の疑問だった。何故、完全な部外者である月島が中華街の人間に命令を下せるのか…。そのままアナタは語りながら私のそばまで来て……
「デタラメだ…!口だけの偽りに過ぎない!!」
そう自分に言い聞かせるように叫び、『哮天犬』を跳びかからせ…月島の死角からもう新たな一体の『哮天犬』も同時に襲わせる。
「…ああ、「ほとんど同じ」って言ったのは……『ブック・オブ・ジ・エンド』はキミの言ったような「記憶の操作」じゃないってことだよ」
『影』が『影』に飲まれた。
「ぇぁ……?」
訳が分からなかった。
私が月島に向かって差し向けた二体『哮天犬』が、突如現れた別の二体の『哮天犬』に噛みつかれ、噛みつき返し、互いに影へと消えた。
「『哮天犬』は僕には通じないよ」
「なっ、馬鹿な…」
「当然だろう?
ありえない。あれはかなり昔の話……高校一年であるはずの月島が一緒にいるはずがない。
だが、何故だ?月島は今『化成体』とは言わずに『哮天犬』と言った。そう広く知れ渡っている術ではない。……一体いつ、その名前を知ったというのだろうか?
……私は何を考えているんだ?
あの時……月島が「誰か一人の為に、献身的に影で暗躍する……素晴らしいよ」と言った時、私は「アナタも一緒だったじゃないか」と
……私は何故迷っているんだ?
あの時……月島が「影の支配者なんてのもカッコイイかもしれないけど僕の趣味じゃない。僕にはキミのような立ち位置のほうが魅力的だ」と言った時、私は「滅相も無い。私のような立場は師に立たせるわけにはいかない」と
……私は何故あんなことを思ったんだ?
あの時……月島の攻撃から逃れようとするとき、一瞬私は「何故私がアナタと争わなければいけないんだ」と…………
「違う…!!」
自身の思考を無理矢理止める。
月島には記憶を操作するということはわかっているのに…。
……だが、月島自身は「記憶の操作」ではないと言っていただろう?
私が行った平河千秋への精神操作を看破していたという時点で、精神系統には強いということは予測はついてはいたが…。
……それも、月島が操作した記憶なのではないだろうか?
月島の言っていた「一瞬で終らせることも考えたんだけど……」という言葉は事実なのかもしれない。彼がその気なのであれば、一瞬で平河千秋のように私も彼を信じて疑わない存在になっていたのではないだろうか…。
……そう月島が言ったことさえも、信じられるものなのだろうか?
『キミにとって、「過去」とはどういったものだい?』
月島に言われた
『何をもってして「過去」は「過去」となるか』
ただの哲学的な問いだと思っていたものが……
『キミは何故「夢」の中での出来事を自身の「過去」としてとらえない?』
「過去は過去でしかないだろう?」と月島の意図がわからなかっただけのものが……
『先程までのことが「夢」であり、自身が実際に体験した記憶からなる「過去」とは別のものと認識するからだ』
私の頭の中を飛び交い、今、私が「過去」と「
ダメだ、これ以上は…!考えてはいけない!!
自分自身を……その思考さえも信じられなくなっていく…!
しかし、だ。
このままでは平河千秋の
だが、私にはまだ手段が…最期の選択が残されている。
敵の手におちるくらいなら……
……あの方のために動いているということさえも、本当に私の記憶なのだろうか?
疑念を持ちながらも、私は最終手段を取る……
しかし、何も起こらなかった。
「何故…!?」と内心困惑している私に、月島が淡々と告げた。
「ああ……言い忘れてたけど、危険な立場がら、昔からキミが常に用意している「自害用」の術には
その言葉に私は目を走らせた。
そして気付いた。私の体のいたるところに
「な……っ!?」
「何故驚くんだい?」
月島は笑っていた。口の両端を上げ、嬉しそうに、楽しそうに。
その口元は、まるで刃物のごとき鋭さを持った三日月のようで……。
「当然だろう?
私は……
私は…
……
私は……?
―――――――――
「これは
「だけど安心してほしい。僕の手元にいる限りキミは満たされる。それは約束するよ」
「……とはいっても、もう聞こえていないだろうけどね。…「知らぬが仏」とはよくいったものだ、本当にさ……」
月島さん(モドキ)が行ったこと。
『ブック・オブ・ジ・エンド』で挟み込み、解除し、また挟み込み……と続けて、自分自身の本来の記憶さえも信じられなくする。
これは「『ブック・オブ・ジ・エンド』って二回目斬ると挟んだ内容が元通りになるけど、挟まれた内容は取り除かれるだろうけど、挟まれた後の行動って普通に記憶に残るんじゃない?」という考えから、可能なのではないかと思ったことです。
原作ではどうだったか?
…微妙なんですよね。明確な描写が無いって意味で。
銀城あたりは憶えてそうだったし……。
じゃあ遊子とかは?…憶えてないでしょうね。どう考えても。
一応死神側にも、初期の頃に使っていたような記憶置換装置みたいな記憶の改変技術自体は存在するので、そのあたりで月島さん絡みの記憶は封じられているのでは…?と思っています。
重ね重ね言いますが、原作では不明です。
…話を戻しますが、月島さん(モドキ)の考えとしては…
「挟み込んだ時に現実とのギャップで壊れることはあるけど、挟み込んでない状態で錯乱させて壊せないかな?…でもって、それを『ブック・オブ・ジ・エンド』で都合の良いように隠して平静を保たせて手中に置き、何かの拍子で『ブック・オブ・ジ・エンド』が解除されても周公瑾が壊れるだけにしてしまえばいい駒なんじゃないかな?」
…といった感じです。
……実際は『ブック・オブ・ジ・エンド』が月島さん(モドキ)が意図せずに解除されること自体、ほぼありえないし、月島さん(モドキ)が生きている間は意味無いので、今回の所業はほとんど「一度は見逃してあげたことだけど、『ブック・オブ・ジ・エンド』が燃やされるきっかけを作ったことへの軽い報復」(自己満足)です。
―追記―
予想通り「わかり辛い」等の感想をいただきましたので、少しばかり別視点からの解説をさせていただきます。
順序立てて、詳しく書くと……
(A),書斎に堂々と入り「部下たちはすでに中華街に配置してもらったよ。これでいつでも侵入してきたゲリラ兵を捕縛できるよ」等の話をする。
(B),周公瑾に近づき、不意打ちで(A)の部分に「月島昊九郎と戦い、殺した過去」を挟み込む。この時、挟み込む瞬間さえも挟み込む内容に重ねる…つまり、実質(A)と(B)上に「殺した過去」が張り付けられている(これが今回の話の最初のほう)
(C),会話で(B)で挟み込んだ「月島を殺した過去」のことを周公瑾に意識させ印象付けて認識させる。
(D),スキをついて二度斬り、(B)で挟み込んだ内容を消し、(A)と(B)に重ねるように「月島とのジャンケンで勝った過去」を挟み込む。この時(C)や(D)には重ならないようにし、あえて(C)での「月島を殺した過去」を周公瑾自身が肯定した記憶を消さないようにしておく。
(E),会話で(D)で挟み込んだ「ジャンケンで勝った過去」のことを周公瑾に意識させ印象付けて認識させる。
この時点で(B)で挟み込まれていた「月島を殺した過去」自体は(D)で消えているが、(C)で認識させた「月島を殺した過去」を肯定した時の記憶は他から干渉されることなく残っており、「月島を殺した過去を肯定する自分」と「ジャンケンで勝った過去を事実ととらえる自分」が並列してしまう。
(F),また二回斬り、(D)で挟み込んだ内容を消し、(A)と(B)に重ねるように「出会い頭からいきなり戦闘をした過去」を挟み込む。この時(C)~(F)までには重ならないようにし、(C)での「月島を殺した過去」、(E)での「ジャンケンで勝った過去」のそれぞれを周公瑾自身が肯定した記憶を消さないようにしておく。
(G),会話で(F)で挟み込んだ「いきなり戦闘をした過去」のことを周公瑾に意識させ印象付けて認識させる。
この時点で(B)(D)で挟み込まれた「月島を殺した過去」「ジャンケンで勝った過去」自体は(D)(F)でそれぞれ消えているが、(C)(E)でそれぞれの過去を肯定した時の記憶は残っており、「月島を殺した過去を肯定する自分」と「ジャンケンで勝った過去を肯定する自分」と「いきなり戦闘をした過去を事実ととらえる自分」の三つが並列してしまう。
……大体、この繰り返しです。
周公瑾の周りを高速移動して何度も攻撃した際も同じようなことをしていました。
その中で二回、(A)(B)だけでなくそれより昔の記憶に重ねる様にして「月島と共にあの方の為に働いた過去」、「月島が自分の師であるあの方だった過去」を挟み込み、周公瑾もそれを月島の言葉から認識してさらに混乱。
……そして、途中、周公瑾が「二度斬る」ことを何か意味があると思い、二度目を回避しましたが、これも月島さん(モドキ)の想定通り。というのも、そこに気付かせるために(B)以外ではワザと周公瑾に斬るところを認識させている。
そうすることで「一度だけでは記憶の入れ替えの前段階である」と認識させ、「もう今は大丈夫な状態」と思わせたところで「『ブック・オブ・ジ・エンド』の能力は最初に話したよね?」と言って「まだ錯覚させられている」と
実は、これは周公瑾が思っていた通り&言っていた通りで、何も挟み込まれていない状態であり、月島さん(モドキ)が言った「『ブック・オブ・ジ・エンド』の能力は最初に話したよね?」というのは嘘。
……けれど、何も挟み込まれてない状態でも「異なる過去を肯定している自分」が乱立している周公瑾には心の底から自信を持って否定することが出来なく、半ばやけくそ状態になってしまう。
そこに、改めて「月島と共にあの方の為に働いた過去」、「月島が自分の師であるあの方だった過去」を肯定していた自分を周公瑾に認識させてトドメ。
オマケに、自身を燃やしてしまうという周公瑾の自害手段も、挟み込んだ過去から読み取り事前に対策。これには周公瑾に「自分がただ錯乱しているだけでなく、確実にあった過去だ」と認識させる効果も期待したもの。
周公瑾は、記憶を……果てには自分自身を疑ってしまうようになり、何も信じられなくなり、錯乱・崩壊する。
最後に(A)~(G)を含め、今日…そしてこれまで全ての周公瑾の記憶に、月島さん(モドキ)が望んだように、都合の良いように挟み込んでしまう。
そうすることで、周公瑾の中では錯乱していた自分さえも別の過去に置き換えられる。……が、逆に言えば、もしその最後に挟み込んだ過去が無くなってしまった場合、錯乱していた自分が戻ってきてしまい、まともな精神状態ではいられない……。
……というわけです。