魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

46 / 69
※注意※
「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!


最近、注釈も常連になってきてますね。
一応、作品のタグにあるモノばかりなので書かなくてもよかったりしますが。


月島さん(モドキ)が存在できるのも、月島さんのおかげ。



※追記※

「月島さん(モドキ)は小早川先輩が原作キャラだということ知らない設定だったのに、今回の話では原作で小早川先輩が怪我をするはずだったことを知っているのか」といった内容のご指摘をいただきました。

これについては感想欄で詳しくしておりますが……
・小早川先輩の登場時に考えていたプロットが『九校戦』中に変わってしまった。
・改変前のプロットではあった「月島さん(モドキ)が小早川先輩の事に気付く」というエピソードが、改変後には挿入する機会が無かった。
・そのズレが今の今まで残ってしまっていた。
……というのが、大まかな要因です。

つまり、『九校戦』の本戦『ミラージ・バット』の少し前頃にはすでに月島さん(モドキ)は小早川先輩の事を思い出していた……という描写が入っていたはずだったわけです。

これに関しては、今後、何処かの話を加筆修正することで補完する予定です。
その際には今回のように、最新話の前書きにてご報告しようと思います。


横浜騒乱編-3:不穏な狼煙

生徒会の書記としての生活が始まってから、一週間ほどの時間が経った。

 

僕がちゃちゃっと仕事を片付けていたため、特に問題も無く過ごすことが出来た。

とはいっても、風紀委員の頃より活動時間はどうしても長くなってしまっている。風紀委員は事務的な仕事よりも見回りのような仕事が多かったから…というのも一因だろう。

 

そんなこともあって、必然的に剣道部としての時間は減ってしまった。これは少しだけ寂しくもある。強引とも言える勧誘からの入部だったが、なんだかんだ言っていつの間にか気に入ってしまっていたようだ。

 

 

 

……と、まぁその辺りのことはひとまず置いておくとしよう。

 

僕は今、少しばかり面倒…というよりは不可解な状況に出くわしている。

正確には、数日前の放課後に『お兄様と愉快な仲間たち』と話した時に「あれ?」と思ったのが始まりだったかもしれない。

 

いったい何なのかというと……

 

 

「それで……月島君は小春の妹さんと友達だったりしないかい?」

 

「いえ?何度か顔を見たことはありますが、特に交友はありません」

 

「そうか…」

 

僕の答えに軽く肩を落としたのは、テーブルを挟んで向こう側の席に座っている小早川先輩。

 

 

―――――――――

 

 

僕は、小早川先輩から「すまない、相談に乗ってくれないか?」と連絡を貰い、こうして放課後に学校のカフェで会う約束をしていた。

そして、会った小早川先輩からされた相談と言うのが……

 

「『九校戦』で私のCADを担当していた小春が、ここ一ヶ月ほど登校していないんだ」

 

……うん。特に気にする内容ではないようにも思えなくもない。

 

一つ付け加えるとするならば、僕に相談した理由は上で小早川先輩が言ったように、僕が平河妹と友好があるか否か。

何故、そんなことを僕に聞いたのか。それは小早川先輩が平河姉と連絡が取れなかったため、何とかして平河姉の状況を詳しく知れないか…と考えた結果だそうだ。

 

 

僕が「不可解」と感じているのは、この平河姉…平河(ひらかわ)小春(こはる)先輩が不登校になった事という話だ。

「平河小春が引きこもり、不登校になる」という出来事はアニメでも存在した出来事。それにより、10月末に行われる『全国高校生魔法学論文コンペティション』…魔法に関する研究論文を発表する場の参加メンバーに欠員ができ、達也が急遽参加することとなる。

…僕は先日、原作通り達也が参加するそのことを、達也本人から聞いた。それが最初に「不可解」だと思ったタイミングだ。

 

 

だが、しかし、それは()()()()()()()()()()()

 

どういうことかと言うと、平河小春が引きこもる原因となったのは『九校戦』の『ミラージ・バット』で、小早川先輩のCADに不正工作され競技中に魔法を失敗、その一種のトラウマから小早川選手が魔法師としての能力を失ってしまい…そこから平河先輩が、CADの細工に気づけなかった自分を責め引きこもってしまう……そういう流れだ。

 

…さて、もう気づいているかもしれないが、そんな出来事は()()()()。その証拠に、小早川先輩はこうして普通にこれまで通り学校生活を送っている。

 

出来事自体が存在しなくなった理由は、この世界では僕が試合前に小早川先輩のCADへの細工を看破し解消したから。

これによって僕はてっきり「平河小春が不登校になる」という出来事も連鎖的に無くなると思っていたのだが……どうやら、そうでもないらしい。

 

 

本来の物語に無理矢理引っ張られる……何かしらの力が働いているのだろうか?

 

そんなことを考えながらも、僕は気になることがあったため小早川先輩に問いかけた。

 

「一つお聞きしたいんですけど、何故、僕に平河先輩の事を……はてには、その妹の平河千秋(ちあき)の事を聞いたんですか?普通に考えれば、平河千秋に聞きに行くべきなのではないですか?」

 

「うっ…!」

 

僕の言葉に、小早川先輩は珍しく言葉を詰まらせ、目をわずかながら泳がせていた。何やら隠し事があるらしい。

 

「小早川先輩の頼みでもありますし、相談に乗る事自体はそこまで嫌ではないのですが……何かやましい事があるのであれば、考え物ですね」

 

「ああっ!?す、すまない!やましいことは……無くもないが(ボソリ)。と、とりあえず、私の話を聞いてはくれないか?」

 

焦り慌てながら言う小早川先輩。言い辛いことではあるが、言えないことでは無い…ということだろうか?

 

「実はだな……妹さんには会えないんだ。正確には、会おうとしても避けられているんだ、わたしが。……それと」

 

「それと?」

 

「もしかしたら、なんだが、小春が不登校になった理由が…確証は無いがなんとなくわかっているんだ」

 

驚いたことに、小早川先輩の口から出た情報は、意外とも思えるものだった。

平河妹に避けられていて、平河姉の不登校の理由を知っている……正直、僕がさっきまで考えていた疑問を拭い去る事が出来るかもしれないものだと思う。

 

 

「理由ですか…?いや、不登校になってから連絡が取れないと聞いていましたが……」

 

「実を言うと、夏休み中に一度だけ電話で話したことがあったんだ……いや、アレを話したというべきかは微妙だがな」

 

(うつむ)き気味になった小早川先輩を見て、僕は首をかしげてしまう。…どういうことだ?

 

「あの時の電話は一方的なものだったよ。詳しい内容は割愛させてもらうが「私が劣るはずがない、それを証明してみせる!」って。小春はそう言ってた」

 

「劣る?一体、誰に…?」

 

 

 

 

 

 

「言い辛いんだが……キミにだよ。月島君」

 

 

 

 

 

「へぇ、僕に……えっ?」

 

予想外の言葉に僕は、少し遅れて素っ頓狂な反応をして呆けてしまう。

その反応を見てどう思ったのかはわからないが、小早川先輩が慌てて手を振ってきた。

 

「いや!月島君が悪いってわけじゃないんだ!……悪いのは私の方なんだ」

 

小早川先輩の表情が再び暗くなる。

 

 

「あの時、私はCADのことを君に任せた。それはキミが凄いという事を、あんな場面で嘘をいう奴では無いことを……私がキミのことを信頼できる存在だと知っているからの行動だった」

 

「だが…」と小早川先輩は言葉を続けた。

 

「それは、誰にでもいきなり納得できることでは無かった。はたから…担当エンジニアだった小春から見れば、いきなり(ないがし)ろにされたも同然だ。……なのに、私は自分の中だけで完結させてしまい……そして最後まで気付かなかった」

 

 

「……つまり小早川先輩は、平河先輩が不登校になったのは僕への劣等感…というよりも、言葉を聞いてもらえない・信頼されるほどの実力も無かった自分自身が嫌になった…ということですか?」

 

「大体はそんなものだと思っている…。ただ、言葉一つでは言い表せない感情かもしれない」

 

…まぁ、その感情自体はわからなくも無い。だが、それが不登校にまでなってしまうとは……

 

ここで僕は不意にある考えに至った。

 

僕のCAD技術はそれ自体はあくまで学生レベル。平河先輩が特別劣っているわけでは無い。ならば、何故あの細工に気付けるか・気付けないかという差が、僕と平河先輩の間にできたのか?

単純である。ソレを認知できる手段を持つか否かだ。

 

そのことに平河先輩が気付けるかどうかはわからない。だが「月島(ぼく)に劣らない」という目標であるのであれば、恐らく平河先輩は夏休み中、CADへの細工を看破する手段を模索していたハズだ。

 

 

正直に言おう、無謀と言うか無意味に近い。

まず、「CADへの細工」と一言で言っても様々なものがあること。

続いて、『九校戦』の時のように精霊魔法によるものだと仮定したとしても、それを認知する手段と言うのは、幹比古のような古式魔法の一種や美月のような先天的な体質などが一般的だろう。一個人が普通に練習したところで身につくものではない。逆に、精霊魔法以外の電子的な細工なら色々と方法はあるが……。

そして、最後に……どう練習しようというのだろう?細工されたCADを用意するなんて出来るもんじゃないし、自分で細工できたとしても細工を探すっていう練習はできない……というか、自分で出来るなら解除もできるだろう。

 

…で、だ。

平河先輩が不登校になった理由を考えると……答えが出るはずもない無意味なことを延々考え試行し、結果できなくて、自分に失望して引きこもってしまった……という、凄く残念なものに……。

 

いや、まぁまだ少ない情報での僕の勝手な想像だし。そもそもの理由だって、小早川先輩の個人的な予測な部分が大きい。

…まあ、アニメでの平河先輩も豆腐メンタル…というか不安定気味な印象があったから、可能性はゼロとは言いきれない気もするのだが……。

 

 

 

 

 

なにはともあれ、今、一番考えなければならないのは……目の前にいる小早川先輩への対応だ。

 

「そうですね……明日にでも、平河先輩の家にでも行ってみましょうか?そうすれば話すなり、謝るなりできるでしょう」

 

「小春の家…?すまない、私は場所を知らないんだ」

 

「大丈夫ですよ」

 

「何?なら、月島君が知っているのか?」

 

小早川先輩の問いに僕は首を振った後、軽く微笑んで見せる。

 

「僕は生徒会ですので、多少の無理は通ります。…相手が不登校者となれば色々理由付けをすれば先生方も話しあってくれるはずです」

 

「なるほど…」

 

 

まあ、これはおおよそ本音ではあるが、そこまで食い下がったりはしないつもりである。だって『ブック・オブ・ジ・エンド』を使うことを前提とすれば、生徒の個人情報を得る方法はいくらでもあるのだから、そう悩む必要は無いのだ。

 

……いつ行くのかを「明日」としたのは、ただ単純に僕が平河先輩の扱いを考える時間が欲しかったためだ。

というのも、平河先輩および平河妹のイベントは有っても無くてもその後の大事の有無にそこまで関係は無かったりするからだ。あって、「人喰い虎」と「イリュージョン・ブレード」さんの勝負の有無とそれによる負傷くらいだろう。

だからといって、小早川先輩に相談されてしまった以上、放置するのも気が引けた。故に、考える時間と…あと準備する時間が欲しかった。

 

「それでは、明日の放課後にまた会いましょう」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「……というわけで、住所の情報を得たいと思ってるんですけど、問題は無いでしょうか?」

 

 

翌日の昼休みの生徒会室にて、僕は中条会長にそう問いかけた。

生徒会室には僕と中条会長、それと五十里先輩と…おまけにその許嫁の千代田先輩がいる。

残りの生徒会メンバーである深雪さんがいないのは、昼にやるべき仕事が無いため、お兄様にべったりとしているからだ。

 

 

「そういう理由なら問題無く先生方からも教えて貰えると思いますよ。あっ、もちろん他の人に漏らしちゃダメですよ!」

 

「うん、僕も家への訪問については賛成だね。…それに、月島君なら安心できるよ」

 

 

昨日、小早川先輩と話したことをおおよそ伝えたのだが、反応は思っていたよりも良かった。

というのも、平河先輩の不登校については理由は不明でも気になっていたそうで、中条会長はもちろん、五十里先輩も誰かが様子を見に行くべきではないかと言う考えはあったようだ。

 

 

 

 

 

……というわけで「それじゃあ早速」と昼休みが終わる前に職員室へと向かって行ったのだが……

 

「……ん?」

 

その途中、学校の中庭の一角が騒がしいことに気がついた。

どうやら人が集まっているらしく、何やらうっすらと煙らしきものが見えた。

 

「…まあ僕も生徒会なわけだから、見て見ぬふりは出来ないか」

 

そう呟き、僕はその現場へと向かった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。