魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
※注意※
「独自解釈」「捏造設定」等が含まれます。ご注意ください。
変更しているのは、主に『クラウド・ボール』と『アイス・ピラーズ・ブレイク』の時間が重ならないようにしたことによる細かい部分や、謎会食のあたりです。
新人戦で第一高校が勢い付いているのは、月島さんのおかげ。(久々に本編に関係がある
月島が新人戦・男子『クラウド・ボール』で偉業を成し遂げた、その日の午後。
予定通りに、新人戦『アイス・ピラーズ・ブレイク』の予選トーナメントが行われる。
『アイス・ピラーズ・ブレイク』は少し変則的で、まず24名によるトーナメントで人数を3名にまで絞ってしまう。(24→12→6→3)
そして、残った3名で決勝リーグを行う。
つまりは、残った3名をA,B,Cとすると、「A対B」「A対C」「B対C」を行い、1~3位までを決定するわけだ。
『アイス・ピラーズ・ブレイク』の基本的なルールは至ってシンプルで、12メートル四方の隣接した互いの陣地に、それぞれ12本の氷柱が一定の間隔で3×4で並べてある。そして、選手は自分陣地に接するように建てられた4メートルの高さがある
そして、自陣の氷柱を守り、敵陣の氷柱を倒す。制限時間は無制限で、先に敵陣の氷柱を全て倒すもしくは破壊した選手が勝利となる。
また、この競技は他のいくつかの競技に決められている「魔法の殺傷性ランク」によるレギュレーションは設定されておらず、殺傷ランクB以上の魔法でも使用して良いことになっている。ただ、当然相手選手への直接的な干渉は当然ながら禁止されている。
そして、もうひとつこの競技には特徴的な部分がある。
それは競技参加時のユニフォームが自由である事だ。これは『アイス・ピラーズ・ブレイク』が他の競技と違って肉体を使うことが無いためで、「公序良俗に反していないこと」という規制以外は特に何も無く、男女共に「自分が気合の入る服装」というものを着る事が多い。
特に女子のほうは華やかな服装で来る選手が多く「九校戦のファッション・ショー」なんて呼ばれ方をすることもあるようだ。
俺の担当している雫は振袖、深雪は巫女服。他校には学ラン(女子なのに)なんて選手もいたりした。
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さて、気になる月島なのだが、新人戦・男子『アイス・ピラーズ・ブレイク』に出場しているのだが、俺は女子のほうに技術スタッフとして行っていたから詳しくは知らない。
ただ、月島の一戦目を見に行ったレオ、エリカ、美月、幹比古から話を聞くことはできた。
「結構ギリギリだったけど、月島が勝ったぜ!」
「まあ、ギリギリって言っても
「はい。残り2本まで壊されても、すごく落ち着いてました」
「たぶん、最後に残った2本以外は守る気が無かったんだと思うよ」
……とのことで、最終的にその2本が残ったまま、相手の氷柱を倒してしまったらしい。
おそらく、月島が『アイス・ピラーズ・ブレイク』でとっている作戦は「干渉力の高さを活かした防御で守っている間に、少しずつ着実に相手の氷柱を破壊していく」…そんな持久戦向けの作戦だろう。
『クラウド・ボール』のすぐ後の競技で、よくそんな作戦を実行しようと思えたものだ。……いや、むしろそれくらいのことが出来るくらいに月島の基礎的な能力が底上げされているということなのかもしれない。
他にもレオたちから話を聞けた。
月島が攻撃用に使っていた魔法はどうやら収束系統の魔法のようで、圧縮した空気を氷柱の間で解放することによって膨張による空気の爆発を起こし、その衝撃で氷柱を倒していたそうだ。
圧縮した空気の量が量だったのか、発動までに少し時間はかかるものの破壊力は十分にあったらしい。その時間を稼ぐためにも、自陣の氷柱は少数に絞って強固な情報強化の守りを築いたんだろう。
なお、服装は第一高校の制服だったらしく、エリカは「面白くなーい」と文句を言っていた。
女子とは違って外部からそこまで注目されるわけでは無いが、男子も各々が好きな服装を着るのはよくあることだ。…まあ、「じゃあ何が月島に似合うか」と聞かれたら答え辛いし、仮装して出て来られたらそれはそれで変な気もするが…。
そんな感じで、月島の試合の大まかな内容を聞けたのだが、どうにも納得できなかった。
確かに、自分の長所である干渉力を活かして戦略を立てるというのは間違ってはいないし、実際にとっている行動も思い切りは良いが堅実でもある。だが、『クラウド・ボール』で見せた演算能力があるのであれば「空気を圧縮して爆発させる」なんてレベルの魔法ではなく、もっと強力な魔法が使えてもおかしくない。
「この程度で十分」ということなのか、他に何か作戦でもあるのか……その真意は定かではない。
―――――――――
その後、それぞれの選手が予選2戦目を終え、今日の日程は全て終わった。
そして、ビュッフェ形式で夕食がふるまわれることとなった。
なんでも、新人戦の序盤である昨日と今日の成績が想定以上に良かったらしく、「この勢いのまま行ってもらおう!」ということで英気を養ってもらうために、少しばかり豪勢になったらしい。
いや、それはいいんだが……
「すごかったわよねー深雪のあれ!」
「
「やっぱり起動式は司波くんがアレンジしたの?」
俺は女子の一年生に囲まれている。それも、彼女らは俺の担当する選手ではない。
ならば、何故こうなったか。
理由は今日あった競技で成績を残した・目立った選手にある。
『クラウド・ボール』では、女子準優勝の
このうち、深雪、雫、里美スバルは全員が全ての競技で…というわけでは無いが、俺がCAD調整をしているため、そばに来るので、引かれるように人が来る。そして、深雪や雫が使った魔法やCADを俺が調整したからということで、色々聞いてきたり、褒めちぎったりしだすわけだ。
大会前には「一年生初の技術スタッフだー」とか「それも二科生だー」と良くも悪くも目立っていたが、これはこれで面倒である。
そして、ここまで俺の周り一点に集中する最大の理由は、この場に
始まる前に「ちょっと遅れるかもしれない」という趣旨の連絡があってから、顔を見せていない。一体何をしているのだろうか…。
そんなことを考えていると、ふと周りが静かになったことに気がつく。
どうしたのかと周りを確認すると、女子生徒たちの視線がある一点に行っていることに気づいた。そちらには、こっちへと歩み寄ってくる男子生徒、
深雪や雫、ほのかは、入学してすぐにあった下校時の騒ぎのことを思い出したのだろう。警戒するように訝しむように森崎を見ている。
だが、当の森崎は深雪たちの視線や周囲の女子生徒を気にするようなそぶりは見せずに、俺の前まで来た。
「なんだ、何か用か」
「ああ、用があったからこうして来たんだ」
俺の問いにぶっきらぼうに答える森崎。周囲は俺たちの会話に注目している。
「その前に、けじめをつけておかなければならないことがある。……司波、お前を…いや、お前たち二科生を俺は軽視していたようだ。この場を借りて謝らせてもらう」
「…………なに…?」
深々とまではいかないが頭を下げた森崎に、自分でも信じられないが驚いてしまう。周りも一瞬ピシリと固まったかと思えば、何かが割れるような音まで聞こえた。
そんなことを気にした様子も無く、森崎は言葉を続けていた。
「筆記や実技の試験でも測れない力というものもあるんだな。お前だけでなく他の二科生にだって何かしら
「…そうか」
……なんだろうか、この感じは。
言葉使いはお世辞にも丁寧ではないし乱暴な部分も多々あるが……断片的だが俺が知っている森崎駿という人物から大きくかけ離れている。本当に目の前にいるコイツは、ほんの数ヶ月前までウィードだのブルームだの言っていた森崎なのだろうか?
そんな森崎が頭を上げ、「で、話を戻させてもらうが…」と半ば勝手に話を進める。いやまあ、こういう勝手なところは俺の記憶にある森崎っぽいんだが……。
「司波に用があるって言うのはだな、少しお前の意見を聞いてみたかったんだ」
「意見?」
「ああ。今現在の第一高校のCADに関する教育をお前はどう思っている?」
また何を言いだしているんだ
CADに関する教育についてとはいったいどういうことだ?
「何だ?先輩方のCAD調整に不満でもあったのか」
「俺を担当していたエンジニアの先輩の腕は十分なものだと思っている。だが、お前を見ているとまだ上があるような気がしてならないんだ。ならその上に行くにはどうすればいいか、今の選択の授業でもCADの基礎的なことしか教えず授業数が限られている状態でいいのか、そういうことを考えているんだ」
その為に、今回のCAD調整を行った技術スタッフの中で目立った成果をあげていた俺に意見を求めたのか…。一応はわからなくもないが……本当にコイツは森崎なのか?
「もっと魔法工学に力を入れる教育もあれば、『九校戦』だけでなくその先…生徒一人一人の進路の幅を大きく広げることにもつながると思うんだが……」
「真剣なのは良い事だけど、時と場は選んだほうがいいよ、森崎君?」
森崎によって引き起こされたよくわからない空気を壊したのは、いつの間にかそばに来ていた月島だった。
意識外からいきなり現れた月島に、皆がギョッとした。
「月島!いままでどこにいたんだ?」
「いやぁ、知っている人と会って話しててね、少し遅れてしまったんだ。…森崎君、この会は明日以降の英気を養う場なんだ。堅苦しい話じゃなくて、もう少し話題を選んだ方が良いよ」
森崎とは打って変わって淡々とした調子で話す月島。それに対し森崎は少し不満そうな顔をしながらも頷いていた。
「それより森崎君。あそこにいる彼らがキミの事をジッと見ているよ。確かあの中には『モノリス・コード』のチームメイトもいるだろう?本番前に交流を深めてきたらどうだい」
「ああ、それもそうだな。ちょっと行ってくる」
そう言った森崎は、俺に「すまないが、これで」と軽く礼をしてから、男子の集団のほうへと歩き出した。
その途中、森崎が振り向き、月島にむかって……
「あっ!今日の『クラウド・ボール』優勝できたからって油断するんじゃねえぞ!明日の『アイス・ピラーズ・ブレイク』も……」
「はいはい。僕とは部屋に帰った後にいくらでも話せるから、そういうのは後で聞くよ」
月島に軽くあしらわれた森崎だったが、特に気にした様子もなく男子の集団に入っていった。
「災難だったね、達也。いきなりあんな話されちゃって」
「話の内容というよりは森崎の変わりように驚かされたんだが……部屋でもあんな感じなのか?」
「ああ、憎まれ口は相変わらずな部分はあるけど、随分とトゲが無くなったよ。……ただ、何かと「負けないからな!」って張り合ってくるのは少し困りものなんだけどね」
「まいったよ」と苦笑いをしながら肩をすくめる月島。だが、どうにも本当に困っているようには感じられなかった。
「お前が何かしたのか?」
俺が勘ぐるように聞いてみた。だが、月島は特に何ということも無いようにあっけらかんと答えた。
「
本当に何でもないように答えているので、特に隠す気が無いんだろう。
……と、女子の集団の中から俺と月島のほうへ深雪と雫とほのか、それにスバルとエイミィが近づいてきた。
その中で、新人戦・女子『クラウド・ボール』に出場していたスバルが最初に月島に声をかけた。
「月島君、『クラウド・ボール』優勝おめでとう。直接見ることは出来なかったが、話は聞いたよ。凄かったそうじゃないか」
「ありがとう。スバルさんも準優勝おめでとう。これは『ミラージ・バット』のほうも期待してもいいのかな?」
「ああ、もちろんだとも。月島君こそ明日の『アイス・ピラーズ・ブレイク』楽しみにしているよ」
互いに今日の健闘を
そして、続いてほのかが月島に祝いの言葉をかける。
「優勝おめでとうごさいます!月島さん!まさか繊細な『光学迷彩』を連続して使用できるなんて、感激しました!!」
そのままの流れで、他の生徒たちも月島に祝いの言葉や魔法への質問をしたりしだした。
そんな様子を見て、俺はひと息ついた。というのも、月島が来てくれたおかげで俺の周りから人がずいぶんと流れて行ってくれたからだ。
ただ、俺が月島と話せる機会が失われてしまった。……まあ今のところは特別聞きたいことがあるわけでは無いからいいか…。
聞きたいことがあるとすれば、何故遅れて来たかくらいだが……応援に来ていた壬生先輩あたりにでも捕まっていたんだろう。