魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

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初期の頃と比べてセリフが多くなったりと、随分書き方が変わったなぁと感じています。

そして、月島さん…ひいてはBLEACH的なネタを出していこうにも、物語を進めていくことを考えると、ネタを挟む箇所が限られてしまうという…。
でも、緩急があるからこそ際立つものもある…と考えながら書いています。


どんなことでも「月島さんのおかげ」になるのは、月島さんのおかげ。


九校戦編-2:『九校戦』への準備…?

ある日の放課後、渡辺委員長に電話で生徒会室に呼び出された。

 

 

「どうかしたのだろうか?」と思い行ってみると、そこには渡辺委員長以外に、七草会長、中条先輩、そして珍しく十文字会頭がいた。

 

十文字会頭がいたので、『九校戦』のことだろうと大体の察しはついたが……僕の耳に入ったのは、予想外の言葉だった。

 

 

「月島、お前の出場する競技は『アイス・ピラーズ・ブレイク』と『()()()()()()()()』に決定した」

 

「…えっ」

 

十文字会頭の発した言葉に、僕はつい間の抜けた声を出してしまう。

 

いやまあ、ルール上全体の出場者数に上限があるので、成績上位の生徒が一人の選手が参加できる競技の上限である2種目に出場せざるをえないことは予想していた。

だが、それでも僕は『モノリス・コード』あたりだと思っていたのだが……よりにもよって『クラウド・ボール』とは……

 

 

「あの、十文字会頭。僕が苦手とする系統についてはお話ししましたよね?何故、加速系統魔法によるベクトル操作が重要になる競技に僕を…?」

 

「俺もそう思ったのだが、他に上位を狙える生徒がいなかった事と……後、お前を()す者がいたからな」

 

「……もしかして、委員長と会長ですか?」

 

僕の問いに答えたのは十文字会頭ではなく、当のふたりだった。

 

「まあ、そういうことだ」

 

「私も「月島くんなら何とかなりそう」って思ったんだけど……今回は代理ってところかしら」

 

「代理?」

 

七草会長の妙な言い回しを疑問に思い、僕は首をかしげる…が、次の一言で全て納得した。

 

「十文字君とその話をした時にたまたまいた達也くんがね、月島くんを推したのよ。「彼なら、自身の苦手を克服できるでしょう。実績も有りますから」って」

 

ああ、達也(お兄様)なら仕方ないなぁ(白目

本当にもう…

 

 

 

諦めたようにため息をつく僕の肩を渡辺委員長がポンポンと叩く。

 

「まあ、上位に食い込めるかどうかは置いといて、月島にも良い機会なんじゃないか?聞いたところによると今使っているCADも見た目だけで選んだ上に、他のCADもロクに使ったことがないんだろう?」

 

「…それも、達也からの情報ですか?」

 

「まあな」と答える渡辺委員長に続き、今度は七草会長がにこやかに笑いながらある提案…というよりも、命令に近いものをしてきた。

 

 

「そういうわけで『九校戦』で総合優勝するためにも月島くんには、実用的なCADの知識を()()()()()と勉強してもらうわ!」

 

「なるほど、それで中条先輩が…」

 

「い、イヤです!!」

 

僕の発言に被るように大声で拒否したのは、いわずもがな中条先輩だった。涙目で首を振って嫌がっている。

 

…が、それを見越していたように七草会長が中条先輩に手招きをし、何か耳打ちをした。すると……

 

「ハイ!やってみせます!!」

 

…数秒でのビフォーアフター。

いったい、七草会長は何を言ったのだろうか?

 

 

 

「それじゃあ頑張りなよ」

 

そう言いながら、渡辺委員長は僕の肩を叩いて生徒会室から出ていった。

 

「そうそう、『九校戦』での月島くんのCADの担当エンジニアもあーちゃんの予定だから、仲良くしてあげてね?」

 

次に七草会長がイタズラをした子供のようにニコニコ笑いながら、渡辺委員長の後に続いた。

 

「自身の不得意と向き合うのは大変だとは思う。何かあれば遠慮せずに相談してくれ」

 

最後に十文字会頭が出ていった。…この状況をどうにかしてくださいと言うのはダメなのだろうか…?

 

 

そして、ひとり僕と残された中条先輩は薄い胸を張りながらピシッと背を正し、僕を指差して言った。

 

「さて!お勉強ですよ、月島君!これを機会に、月島君には私のほうが年上だということをしっかり認識してもらいます!」

 

…その一言で、七草会長が中条先輩に何を吹き込んだのかが大体わかったような気がした。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「というわけで、キミのことをあと3日くらいは恨ませてもらうよ、達也」

 

特にうらめしそうな顔もせずに僕は言う。

 

あれから数日後の食堂。そこには僕と達也、それにいつものメンバー+1がいた。

そこにいたメンバーの中では、僕以外にもすでに深雪さん、ほのか、雫が『九校戦』の代表メンバーとして選ばれていた……が、発足式等はまだだ。原作通り、生徒会が技術スタッフ(エンジニア)の選考に手間取ってしまっているのだろう。

 

 

「…彼が言ってるあの中途半端な日数はいったい…?」

 

「ミキ、月島君が冗談を言う時は、なんとなくで言ってるからそんなに気にしなくていいよ」

 

エリカに「ミキ」と呼ばれたのが先程言った「+1」、新生『お兄様と愉快な仲間たち』の一員である吉田(よしだ)幹比古(みきひこ)だ。

右目脇の泣き黒子(ぼくろ)が特徴的な彼は、精霊魔法の名門である吉田家の出であると記憶している。なお、家同士の付き合いもあって、エリカとは幼馴染だそうだ。

 

 

…と、話を戻そう。

僕の「恨むぞ」宣言に対し、達也はいつもの淡々とした調子で返してきた。

 

「そう言うな、月島。前から思っていたことだが、お前は勉強に関しては意欲的だが、自分が魔法を使うこととなると無頓着過ぎる節がある。今のうちにそれを改善すべきだ」

 

「そうです。お兄様の言う通り、実技や論理といった成績は良いのに実戦ではサッパリでは学年総合1位でも格好がつきませんよ?」

 

達也の言葉に同意するように、深雪さんも言った。…が、それはどちらかと言うと、期末試験の総合成績で勝った僕に対する当てつけのようにも聞こえなくはなかった。

 

 

「…それにしたって、教えてもらうなら中条先輩じゃなくて達也に教わりたかったよ」

 

「どうかしたのか?中条あずさ先輩ならCADの知識や技能は十分持っていると思うが……」

 

その発言を聞いた達也が少し不思議そうにする。そして、そこに話を聞いていた雫が間から入ってきた。

 

「いつも中条先輩をからかってたから、ちゃんと教えてもらえなかったんじゃない?」

 

「いや、それはなかったよ。むしろ「私の方が年上だということを思い知らせてあげます!」と張りきってた」

 

「なら、何が…?」と首をかしげる美月とほのか。他の人たちも同じような反応だ。

…僕はいったん息をついてから、その理由を告げる。

 

 

 

「途中から『トーラス・シルバー』の話ばかりしだすんだよ、中条先輩(あの人)

 

『トーラス・シルバー』。

『フォア・リーブス・テクノロジー(FLT)』という日本のCADメーカーに所属する魔法工学技師だ。『ループ・キャスト』技術を中心に、魔法界的には彼の功績は多大なものである。

…ただ、プロフィール等は公開されていないため、謎の人物とされている……のだが、まぁそこは色々とあるのだ。

 

 

僕の言葉に、皆は目をパチクリとさせていた。…が、達也と深雪さんは納得…というか呆れ気味に「ああ…」と呟いた。

 

「そういえば、そうだったな…」

 

「はい…、そうでしたね」

 

何とも言えない表情の二人を見た他の皆が「えっ、どういうこと?」という視線を僕に向けてくる。なので、端的にではあるが説明することにした。

 

「生徒会の中条先輩なんだけど、『トーラス・シルバー』の熱狂的なファンでね。どれくらいかと言うと、達也の持ってる『シルバー・ホーン』モデルのCADにたまらず頬擦りするくらいには大好きなようでね。」

 

「本当に!?」といった様子で皆が達也へと目を向ける。すると、達也は沈黙という肯定を返した。

 

「…で、勉強と称して時間の許す限りに『トーラス・シルバー』談議に付き合わされたわけだ。全くの無駄だったわけでは無いけど、精神的に疲れたよアレは…」

 

ため息交じりの僕の言葉に、納得したようにほのかが言った。

 

「あっ!そっか!『九校戦』にはCADの性能制限があるから『トーラス・シルバー』の『シルバー・モデル』の話されても使えないんですね!」

 

「そう、ソフトのほうはともかくハードの話になると特に。…まあ、長い目で見れば意味のある講義だったのかもしれないけどね」

 

 

 

「そうか。…なんというか大変だったんだな、月島」

 

何とも言えない感じに達也は言ってきた。

「誰のせいだ」と言いたくもあったけど、半分以上はこれまでマトモに自分のCADについて考えてこなかった僕自身が悪かったわけだから、何も言わずにおいた。…けど。

 

「あそこまでお熱だと中条先輩は『トーラス・シルバー』の正体を知ったら、その人のそばにずっとついていきそうだよ。それこそ小動物みたいに……いや、もっと…恋人か何かになろうとするかな?」

 

 

ピシリッ

 

 

急に空気が変わった気がした。…というか、実際変わった……主に深雪さんのせいで。

 

理由は簡単。『トーラス・シルバー』…正確には『トーラス』と『シルバー』の『シルバー』が達也なのだから、その手の話にすれば当然深雪さんは多かれ少なかれ反応してしまう。

だが、その変化の理由を知るのは達也だけで、周りは「えっ、何かあった?」と状況を飲み込めていない。故に、達也はひとりで笑顔で固まっている深雪さんへの対処を考えなければならないのだ。

 

 

自分が『シルバー』であるということを周囲に悟られないようにしながら、今の状況を打開する手段を考える達也が取る行動は……

 

「それで結局、月島が出場する競技は『アイス・ピラーズ・ブレイク』と『クラウド・ボール』になったんだろう。大丈夫そうか?」

 

僕に別の話題を振って、話をそらしていくつもりのようだ。

…特に答えない理由は無いので、僕は素直に答えることにした。

 

 

「『アイス・ピラーズ・ブレイク』はまあ安定していけそうかな?『クラウド・ボール』が、やっぱり加速系統の魔法が苦手なのが厳しいけど、ボールを相手コートに返す方法さえ得られれば、何とかなりそうだよ。……というか、気を遣ってあげるなら僕じゃなくてほのかや雫に対してしてあげなよ」

 

…あの空気の中では、僕に話を振るのが一番安全だったからだろうけどね。

と、内心思いながらも僕は達也に言った。すると……

 

「そこは気がまわる月島に任せるさ」

 

……いや、どうしてそうなるのかな?

 

 

―――――――――

 

 

最後のことも含め、達也には色々と言いたいところだけど……近いうちに達也は彼としては不本意で『九校戦』の技術スタッフになるはずだから、それでまあ良いとするかな…。

 





次回は『九校戦』前々日くらいまで一気に飛ぶ予定。

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