原作ではこんな設定ではありませんが、想いが力になる
あと劇中BGMは闇を照らすものから「漆黒~GARO~」です
かつて天使、悪魔、堕天使たちが起こした大戦争があった。
その戦いの最中、戦いを止めるべく各勢力に立ち向かった者たちがいた。
名前を魔戒騎士。秩序を守る彼らにとってこの戦乱は許容しがたいものであった。
しかし、いかに強い彼らとは言えその数は少なく三勢力との争いで次第にその数を減らしていった。
戦争末期、二匹の龍が現れ各勢力を巻き込んだ戦闘を開始した。
疲弊した三勢力は二匹の龍に苦戦する。
その時だった。
一人の騎士が二匹の龍を止めるべく立ち向かった。
たった一人で後に「二天龍」と呼ばれる二匹を相手にする騎士だったが、二匹の龍は強すぎた。
騎士は決断した、この場でこの二匹を止める方法は一つしか無かった。
騎士を中心に
だがその代償により、当時装着していた騎士は二度と鎧を纏えず、鎧はその象徴である黄金を失った。
三勢力は戦争終結後、敬意と畏怖を持ってその名前を後世まで語り継いだ。
騎士の名前は、黄金騎士牙狼と言った。
****
「何故なの、何故今更現れる!!」
「……すげえな」
体を動かす。
鎧は俺の思った通りに動いてくれるのと信じられないくらいに軽い。
あと声の調子がなんか変だ。掠れているような感じになっている。
『まさか鎧召喚まで出来るとはな』
「お、おう? そんな凄いことなのか?」
よくわからないが、指輪の声色とレイナーレの表情を見るに信じられない事態なのは確かだ。
というか俺も信じられない。剣で円描いて、偶然振り下ろしたら鎧が装着されていたとか特撮の変身ヒーローみたいだ。
ふと顔を横にすると先ほど堕天使がイチ兄とともに突き破った天井にあった、ステンドグラスが突き刺さっており、鏡のように今の俺の姿を写していた。
殆どの部分が漆黒を塗ったような黒で構成されているが、頭と胸、それに肩の部分の一部が金色に輝いている。
一番印象に残るのは頭部のデザインだ。
狼のような兜に、青い宝石でも埋め込んでいるのだろう、瞳は青だった。
腰には黄金の剣が鞘に収まって付いている。
綺麗、だと場違いに思ってしまうしこれを傍から見たいという欲求に駆られる。
そんなときだったレイナーレの笑い声が聞こえ、俺は構える。
「黄金、騎士……フ、フフフ、考えようによってはチャンスよ。あなたを捕獲してアザゼル様に献上すれば。私の地位は更に盤石のものになる」
「……黄金騎士?」
「何も知らないのね」
黄金騎士というのはこの鎧の称号なのだろうか?
にしても金と黒の比率が合ってないような。これなら漆黒騎士とか名乗ってたほうがまだしっくり来る。
『お前さん何も知らないんだな』
「だから言ってるだろ、てかお前なんだよ」
『俺か? ……俺はザルバ、魔導輪だ』
「ッ!! やはりお前がザルバ! 黄金騎士に常に付き従うと聞いてたからもしやとは思ってたけど」
『で、どうするんだ坊主?』
レイナーレの言葉を無視して俺に話しかける指輪、いやザルバはそういう。
どうするって決まってんだろ。
「あいつを……倒すッ!」
「私を? あなたが? 粋がるのもいい加減になさいな。あなたは誰も守れなかった、そこに転がる子も、大切なお兄さんも、それさっきまで無駄な抵抗をしてくれたお仲間さんもねえ!!」
頭が沸騰しそうになるが生きてると思う。
コイツの性格上、殺したのであれば俺の目の前で何かしら挑発する。だってコイツ性格悪いもん。そこだけはわかる。
「何も守れず、さっきまで諦めてた人間が至高の天使である私を倒せるはずがないでしょう!!」
「ただの堕天使だろうが、アーシアから奪った力で粋がってんじゃねえよ」
そう言うとレイナーレの表情が憤怒に変わる。
そうだとも、コイツは至高の天使とやらになりたくてアーシアの
笑っちまうよ、何が至高の天使だ。人間から無理やり奪わないとなれないのかよ。
「気が変わったわ。五体満足じゃなくてもいいでしょう、腕の一本残っていればねっ!!」
怒りの言葉と共に、レイレナーレは光の槍を投げてくる。
俺はとりあえず足に力を篭め、走りだそうとしたのだが……。
「くっ――――ってうぉおおおおっ!?」
何故か跳躍していた。
多分足を蹴った衝撃なんだろうけどそれにしては飛びすぎている。
うわっ、天井近くまで飛び上がってるじゃねえか。
てか、空中じゃ何もできねえ!!
「やっぱり使いこなせてないじゃない! いくら伝説の黄金騎士でも未熟者が扱えばそうなるっ!!」
「やばっ」
バタバタと手足を動かすがいかんせん、伝説の鎧だろうと重力には勝てないらしい。
自由落下していく俺に目掛けて、次々と光の槍が着弾していく。
「ぐぅうううう」
「アハハッ!! 鎧も不完全なようね! 伝承では全身黄金のはずがほとんど真っ黒じゃないの!」
笑いながら次々と光の槍を投げてくるレイレナーレにどうすることも出来ない。
体が思うように動かない。さっきまで羽毛のように軽かった鎧が今じゃ岩を四肢に繋がれているように重い。
畜生、どうなってやがる。
『鎧は使用者の想いに反応する。今のお前は不安になってるから重くなるし、防御力も下がってんだよ』
「んな馬鹿な……がぁっ!?」
ザルバの脳天気な解説を聞いてたせいで着地に失敗する。
想いに反応って、んな無茶苦茶な鎧あったもんじゃねえよ。なんだその不安定な鎧は、扱うの滅茶苦茶難しいじゃねえか!
『当たり前だ。なんだ鎧を召喚できたから最低限の訓練が終わってるかと思ったら、お前もしかして鎧とか初めて触れるのか?』
「一般人の俺がそんなもんにッ! 触れられるわけねぇだろ!」
無様に転がりながら、光の槍を回避する。
ザルバは心底呆れたようにため息を付くがこちとらお前だけが頼りなんだよ!
「使い方教えてくれ!」
『アホか、一朝一夕で扱えたら今頃騎士は溢れかえってる。……しかしそうだとするとお前さん凄いな、ソウルメタルを半ば扱えてんだから』
知るか! 俺は普通にしてるだけで扱ってるのかすらわからねえよ!?
このまま柱に隠れているのもいいけど防戦一方なのをどうにかしないと。
「流石に硬いわね、腐っても守りし者かしら?」
「守りし……者?」
レイナーレの言葉が何故か引っかかるが、隠れていた柱がついに壊れた。
とっさに転がり、また次の柱に隠れるが埒が明かねえ!
畜生、やっぱ無理なのか……ただの人間じゃ、イチ兄の借りも、アーシアの敵すら出来ないのか。
そう思っていると心なしか鎧が更に重くなっていくような気がしてくる。
『不安になるな、その分だけ鎧はお前さんにとって重みになる』
「どうしろってんだよ」
『……曲がりなりにもお前さんは牙狼剣を抜いた。その時の気持ちを思い出せ』
抜いた時の、気持ち。
……アーシアの敵討ちがしたい、ただその一心で抜いたはずだ。その気持ちは変わってはない。
『そうだ、お前さんの心の奥底で燃え上がった反抗の炎。弱き者が踏みにじられ、それを止めようとする気持ち。そいつが牙狼を再び蘇らせた。その気持ちを篭めてあいつを切り裂け、小僧!』
「……俺は、俺はッ!!」
柱から飛び出し、俺はレイナーレに向けて走りだす。
「無駄だと言っている!」
「無駄じゃねえっ!!」
飛んできた光の槍を腕で弾き飛ばすとレイナーレは目を丸くする。
俺もびっくりしたけど、これが牙狼なんだろう。
想いを力に、怒りをその牙に乗せて相手を切り裂く黄金の狼。
まずは一撃、レイナーレの腹部を蹴りつけるとじゅぅうううう!! と何かが焼かれる音とともにレイナーレの体が焼かれる。
「ぎゃあああああ、わ、私の体が焼かれる!?」
『本来ならこの程度の堕天使なら今の一撃で終わってる……が、今はこのくらいが限度だろうな』
「十分だよ!!」
ダメージが入るならいずれは殺せる!!
拳をきつく握りしめ、追撃を重ねていく。
自分でも驚くように体が動く。いや、今はやる気になってるから牙狼が動くんだろうな。
激しい殴打に耐え切れずにレイナーレは防御しようと羽で体を隠してしまう。
……意外と硬いぞ、この羽。ん? 待てよ? これ羽だろ?
そう思い、俺は一度殴打をやめて羽を握りしめる。
「な、何を」
「鬱陶しいんだよ、その羽」
足に力を篭め、強引にレイナーレの背中から羽を引き抜く。
絶叫が響き渡るが俺に罪悪感はない。アーシアにしたことを考えればまだまだこの程度、児戯に等しい。
たまらず、レイナーレは光の槍を連射して俺との距離を離す。
さすがにこの量を受けきれずに、防御の構えのまま背後に飛ばされ柱に激突する。
畜生やたらめったら撃ちやがって……。
「ぐっ!!」
『坊主! アレを見ろ!』
ザルバの声につられて、前を見るとレイナーレの体から淡い緑色の光が出て、体の傷を癒していく。
だが背中の羽までは治せないのか、一向に生える気配がない。
これで至高の堕天使とか言ってたのかあいつ。ちょっとオーバー過ぎんだろ。
「よくも、よくも私の羽を!!」
「羽で良かったじゃねえか、アーシアから奪ったものはこんなもんじゃ済まんぞ」
もぎ取った羽をそこらに投げ捨て、俺は再び構えを取る。
レイナーレの顔に余裕の表情はない。あるのは敵意と恐怖だけだ。……なんだあいつ? まさかだと思うが俺にビビってんのか?
そう思っているとレイナーが突然笑い出す。
「私の仲間があなたのお兄さんやお仲間さんたちがじわじわとなぶり殺されるのを目の前で見せてあげるわ。絶望させてアザゼル様の元へ送ってあげる」
煽るのがこいつの性分らしい。
でも時と場合を考えるべきだと、俺は思うよ。
「そうかい……でだ」
ゴシャアアアア!!
激しい音共に先ほど天井から外に出た堕天使のオッサンがクルクルと回転しながら飛んでいき、先程まで牙狼剣が刺さっていた場所に突き刺さった。
「お前の仲間ってのはそこに犬神家してる奴か?
「馬鹿なドーナシーク!?」
「無事か双葉ァアアアア!? ってなんだお前!?」
『黄金の!? い、いや、黄金が消えている?』
「遅いよ、イチ兄」
牙狼を装着した俺に気づいていないイチ兄に苦笑する。
イチ兄は全身から血を流し、まさに満身創痍という形だが立っていた。
……信じてたよ、やっぱ俺の兄は凄い人だわ。
「双葉……なのか?」
『お前の弟は魔戒騎士だったのか!? さらに黄金騎士の!?』
『なんだ、赤いの。元気そうじゃねえか』
何やら混乱しているドライグに、鼻歌でも歌い出しそうな余裕さで話しかけるザルバ。
えっ、何ザルバ、ドライグと知り合いなの?
『ザルバ……』
『まさかお前さんが悪魔側に着くとはな。あれから会ってなかったが変わったか?』
『いいや、今回の相棒は人間からの転生悪魔だ。ちなみに装着者の兄でもあるぞ』
「……黄金騎士に赤龍帝? 冗談じゃないわ、なんなのよ、あんたたちはっ!!」
半狂乱という風に髪を掻き毟りながら叫ぶレイナーレ。
何? 赤龍帝? イチ兄のことか? 乳龍帝の間違えじゃねえの?
『あぁ、あの赤いのはな。昔やんちゃした時に「赤龍帝」って呼ばれてたんだよ』
『今はこの通り
へえ、そんな大層な名前付けられていたのか、ドライグって。
まぁ、そんなことは良いや。
ボロボロになったイチ兄は俺の隣に立つ。
「ボロボロじゃないか、イチ兄。そこで休んでおけよ」
「はっ、お前こそぴーぴー泣いてても良いんだぜ?」
自然と、手が伸びる。
コツンと拳を軽く打ち合わせ、俺達は頷く。
負ける気がしなかった、今なら神様だってぶった切れる。
「やるぞ、イチ兄」
「あぁ、双葉!」
『
神器から発せられた音声と共に、俺とイチ兄は同時にかけ出した。
「二人なら……どうにかなると思ってぇええええ!!」
小さい光の槍を周囲に展開するとそれを飛ばしてくる。
マズイな、俺はまだしもイチ兄が!
「プロモーション! 『
するとイチ兄が加速し、次々と飛来する槍を避けていく。
ハハッ、やるな!! なら、こっちは真正面から行かせてもらう!
俺は鎧の防御力を信じて、腕を交差させながら槍の大群に突っ込む。
『そうだ、お前の想いが強ければ強いほど鎧はそれに応える』
「うぉおおおおおおっ!!」
ザルバの言葉通り、鎧は攻撃をすべて弾き飛ばしてくれる。
だが、そんなことより俺の心の中は怒りで染まっていた。
――――双葉さん!
アーシアの声が頭に響く。
優しくて、子犬のように俺を慕ってくれた少女。
俺は、その子を守れなかった。
きっと何処かでアーシアは期待してたはずだ。俺が助けに来ることを、俺と再び出会えることを。
でも、それはもう無い。
後悔と怒り、そして無力感が俺の胸によぎる。
……でも俺は生きている。
「おぉおおおおおおっ!!」
この想いを胸に、俺は生きていく。
忘れたりなんかしない。
たった数日、それだけを過ごしたアーシア・アルジェントという少女のことを決して忘れない。
きっと、
この力でなら、誰かを守れる。
『剣を抜けぇ!!』
「ッ!!」
ザルバの声に反応し、腰に付けてある鞘から牙狼剣を引き抜く。
鎧をまとったおかげなのか。何の特徴もないただの長剣が変化し、束頭と刀身に紋様のついた長剣となっていた。
引きぬいた牙狼剣は、その衝撃だけで飛んできた光の槍を弾き飛ばした。
「抜いただけで!?」
『今のお前じゃ一振りするので限界だろうぜ』
「一振りで……十分だ!!」
そう一振りで十分だ。
だって、今の俺は一人じゃない。
「俺のことはどうだって良い。でもてめえはアーシアちゃんに取り返しの付かないことをしたッ!!」
『
頼れる兄がいる。
その兄が、アーシアのことで本気で怒り、力を貸してくれる。
自分には勿体無いほど良い兄だ。
イチ兄の評価は学校では高くない。だけどそれはイチ兄の一側面、エロだけを見ているからだろう。
今のイチ兄みたらクラスの女子何人かは落ちるんじゃないかな? 男の目から見てもカッコいいもの。
「喰らいやがれぇえええええええ!!」
「おのれええええええ!! 下級悪魔風情がぁあああ!!」
砲弾の飛び込んだイチ兄の拳がレイナーレの頬を捉え吹き飛ばす。
当たりどころが浅かったのか、レイナーレは片方の翼を使って空中でバランスを取ろうとするが、それを見過ごす俺じゃない。
剣を構え、膝を曲げた俺はそのまま突っ込む。
「く、来るな!! 来るなぁあああ!!」
半狂乱になったレイレナーレの槍を鎧で弾き飛ばしながら突き進む。
その姿に恐怖したのか、青ざめたレイレナーレは片方の翼を広げ、必死の形相で逃げようとする。
負けるとわかったから逃げるのか。
だが、その前に俺の手とイチ兄の左手がレイレナーレの両足を掴む。
逃がすわけがねえだろ!! アーシアの敵をさ!!
「ヒッ――――!」
「逃げんじゃねえよ……」
「至 高 の 堕 天 使 様 よぉっ!!」
そのまま俺たちは力まかせに地面にレイナーレを叩きつける。
血反吐を吐きながら痛み出すレイレナーレを踏みつけ、俺は牙狼剣を、イチ兄は拳を構える。
もはや美少女の面影もないレイナーレに感謝する。そんなブサイクな顔なら幾らでも切り裂けるぜ。
「アバッ……に、人間風情が、この至高の!」
「うぉりゃあああああ!!」
「はぁああああっ!!」
イチ兄の拳が突き刺さり、地面に蜘蛛の巣のようなヒビが入る。
すかさずそこに俺の牙狼剣が胸のあたりを突き刺す。
「ぎゃあああああああああああああああああっ!! い、痛い痛い!!」
「……」
叫びだすレイレナーレに何の感情も沸き起こない。
アレだけの事をしておきながらまだ抵抗するのか? 往生際が悪いにも程がある。
「た、助けて……助けて……
『この期に及んで命乞いとはぁ……堕天使もレベルが落ちたな』
『全くだ、アザゼルのやつ、部下のしつけくらいしろってんだ』
ドライグとザルバの呆れ声が聞こえるが、今の俺はそれに答えることはない。
イチ兄も冷ややかな目でレイナーレを見下ろす。
「私綺麗でしょ!? 人間の女なんかよりもずっと、ずっと使えるわ! ……あ、う……い、イッセーくん! 助けて!!」
その言葉を聞いて殴らなかった俺を誰かに褒めて欲しい。
どこまで性根が腐っていればそんな言葉が吐けるのか。自分の勝手な都合で近づき、あまつさえ殺した相手にさえ助けを乞うコイツは、堕天使でも何でもない。ただのクズ野郎だ。
そんなイチ兄は悲しそうな目でレイナーレを見る。
そこで俺はハッと気づいた。
イチ兄は本当に大好きだったんだ、この堕天使が。
打算でも、嘘でも、自分のことを初めて好きと言ってくれた異性を本当に、本当に愛していたのだろう。
だからこそ、俺の怒りは収まることを知らない。
優しい兄はこのことを一生忘れないだろう。いつか恋しても、こいつの事を思い出し、そして恐怖するだろう。
「私、あなたのことが大好きよ! 愛してる! だから一緒にコイツを倒しま――――ヒグッ!!」
耐え切れなくなったのか、イチ兄は顔に一撃加えて黙らせる。
その顔には一筋の涙が流れていた。
「もう、無理。悪い双葉、最後は頼んだわ」
「……任せろ」
その言葉にレイレナーレは表情を凍らせた。
「やめ――――」
「ッ!!!」
そのまま剣をグッと押し込み、切り上げる。
断末魔を上げることもなく、真っ二つになったレイレナーレを俺はなんとも言えない感情で見る。
そして俺の体が再び光り、鎧がはじけ飛ぶ。
ドッと力が抜けて膝を付く。
勝った、そう勝ったはずなのに、俺の心は満たされることは無かった。
辛うじて無事だった椅子に横たわるアーシアは生き返ることはない。奇跡か、悪魔の気まぐれでも起きないかぎり。
「……アーシア、ゴメンな」
もう二度と笑わない彼女の顔を見ながら、俺は耐え切れず泣き崩れた。
●ザルバ
何故か牙狼剣と共に祭壇の中で眠っていた魔導輪。
原作とは違い、ホラーではなくあくまで物に魂が宿ったという代物であるため、原作の命の対価は存在しないが、代わりの対価として一定量の魔力を要求するということになっている。
●魔戒騎士
先の大戦で数が減ってしまったが、現在でも存続している。原作のように人間界を守る者もいれば、冥界、果ては天上を守る者たちもいる。原作のような元老院や番犬所みたいな指令書はないため、自分の意思で戦う。
ちなみにほとんどが人間以外の人外で構成されている。
なお、今回イッセーが単独で堕天使を撃破出来たのはドライグのサポートと双葉が部室に泊まっていた際、リアスたちに軽く訓練させてもらってたのとドーナーシークがイッセーを舐めていたため、所詮は噛ませ犬。ちなみに犬神家してるので分かりにくいが首の骨が折れて死んでいる。