ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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おそらく次回は巻いていくと思います。
というか五巻は双葉を絡ませられないから結構困る。


ゲーム前夜

**三人称視点**

 

「失態ですね」

 

 パーティー中止から一夜明けた頃、三大勢力の会談が設けられた。

 結果的、と言うよりも客観的に見れば今回の事件は悪魔側の監視能力に疑問符をつけざるを得ない結果となってしまった。

 先の一言を言ったのは堕天使の副総督であるシェムハザである。ちなみに、アザゼルはと言うとカジノで遊んでいたことを突っつかれたくないのか、端っこで茶を飲みながら縮こまっている。

 SS級はぐれ悪魔『黒歌』が使い魔を使い、妹と接触。そしてそれに気づいた黄金騎士とリアス・グレモリーとその眷属が事態に対応。最上級悪魔であるタンニーンの協力を得て、黒歌と闘戦勝仏の末裔『美猴』を撃退、直後乱入してきたコールブランドの使い手により両者とも逃亡を許してしまう。

 

「当時黄金騎士が『禍の団』襲撃を予想し、それを報告したのにも関わらず取り逃がした悪魔側の警備体制はどうなっているのですか」

「それについては弁明のしようがない」

 

 シェムハザの言葉に答えたのは、苦い顔をしたサーゼクスだった。

 そこを突っつかれては弁明のしようがないどころか、下手をすれば黄金騎士が命を落としていたという状況を妹の口から聞いたときは頭を抱えたものだ。

 

「相手は『禍の団』独立特殊部隊『ヴァーリチーム』の孫悟空『美猴』と猫魈『黒歌』、更に聖王剣コールブランド所持者も関与。一人ひとりが絶大な力を有するメンバーの三名も来るとは……。そして黄金騎士を先行させた悪魔側には責任が――――」

 

 グチグチとシェムハザと天使側のセラフたちも怒っているが当たり前だろうし、サーゼクス自身も少し甘く見ていたと言うしか無い。

 兵藤双葉、黄金騎士は人間なのだと改めて認識した。幾ら強くなろうとも、些細な事で命を落とさしかねないし、黒歌が双葉に執着していることはサーゼクスも報告を受けていた。だからこそ、今後は双葉だけは公式の場でも武装を許可しようと考えていた。

 シェムハザの小言が長い、というのはアザゼルも知っているが今日は特に辛辣であったとアザゼルは思ったが、そういえば双葉の母親を慕っていたことを思い出し、コイツでも私情を出すことがあるのかと密かに思っていた。

 しかしながら、今回の事件は黄金騎士の気絶とリアス・グレモリーとその眷属である塔城小猫の軽症だけで済み、赤龍帝の禁手化という誤算もあり追求する声は小さい。

 むしろプラスであったといえるが、監視体制についてはサーゼクスも思うところもあるのかシェムハザと意見を交換していた。

 そこから少し離れた場所ではチビドラゴン化したタンニーンと上役達がリアス・グレモリーとソーナ・シトリーの戦いについて話し合っていた。

 

「俺はリアス嬢を応援するか。直々に鍛えた赤龍帝がいるからな、面白いぞ乳をつつくと強くなるんだ」

「アザゼルのもたらした知識はレーティングゲームに革命を起こしそうだよ。下手すれば半年以内に上位陣に変動があるかもしれない」

「そりゃよかった。ここ十数年もトップの十名に変化がなかったものですから。これでおもしろいゲームが拝めそうですな」

 

 危機感なんぞ無かったというかゲームが楽しみで仕方ないのか、タンニーンたちは和やかに話しているが、他勢力も似たようなものだ。

 そんな時、部屋の扉が開かれ入ってきた人物にその場にいた全員が度肝を抜かれた。

 

「ふん。若造どもは老体の出迎えもできんのか」

 

 入ってきたのは隻眼の老人だ。古ぼけた帽子、白く長い髭は床に届きそうであり、杖をついているが足取りから必要が無いことは誰の目を見ても明らかだった。だが、全員の視線は老人の隻眼に集中している。

 

「――――オーディン」

 

 隻眼の神と言われたら即座に出るであろうほど有名な北欧の神々の主神、オーディン。

 その傍らには鎧を着た戦乙女のヴァルキリーを引き連れていた。

 全員が息を呑んでいる中、アザゼルは片手を上げて悪態を付きながら挨拶する。

 

「おーおー、久しぶりじゃねえか、北の田舎のクソジジィ」

「久しいの、悪ガキ堕天使。長年敵対していた者と仲睦まじいようじゃが……また小賢しいことでも考えているのかの?」

「ハッ! しきたりやら何やらで古臭い縛りを重んじる田舎神族と違って、俺ら若輩者は思考が柔軟でね。わずらわしい敵対意識よりも己らの発展向上だ」

「弱者どもらしい負け犬の精神じゃて。所詮は親となる神と魔王を失った小童の集まり」

 

 両者に険悪なムードが流れるが、アザゼルの方から白旗を振る。

 

「独り立ち、とは言えないものかね、クソジジィ」

「悪ガキどものお遊戯会にしか見えなくての、笑いしか出ぬわ」

 

 アザゼルが舌打ちをするが、三大勢力以外から見れば何をいまさらと言った具合の協力体制だろう。

 自分たちが弱まったから馴れ合うなど負け犬と言われてもしょうがないとアザゼルはわかっているが、昔からこのスカしたオーディンのことが嫌いな彼はついついこうやって口喧嘩をする。

 そこにシェムハザとの会話を一旦止めたサーゼクスが、オーディンに挨拶しに行く。

 

「お久しゅうございます、北の主神オーディン殿」

「サーゼクスか。ゲーム観戦の招待来てやったぞい。しかし、おぬしも難儀よな。本来の血筋であるルシファーが白龍皇とは。しかもテロリストとなっている。悪魔の未来は容易ではないのぉ」

 

 明らかに皮肉と分かる言葉だが、サーゼクスの表情は変わらず笑みだ。

 この程度の嫌味などとうの昔に聞き慣れているし、そもそもな話温厚なサーゼクスが怒るなど身内に手を出されるか、下劣な手段に訴える以外はないのだが。

 オーディンはつまらなそうに鼻を鳴らすと、その隣に立っているセラフォルーに視線を映す。

 

「時にセラフォルー。その格好はなんじゃいな?」

「あら、オーディンさま! ご存知ないのですか? これは魔法少女ですわよ☆」

 

 いつものようにコスプレしながらピースサインをオーディンに送るセラフォルーに、色んな意味で呆気にとられる周囲。

 北欧の神、それもオーディンにこんな態度取れるのは世界広しとはいえどもセラフォルーくらいなものだろう。

 オーディンは下品な顔をしながら胸部と腰回りをジロジロと見る。

 

「ほほぅ、最近の若い者にはこういうのが流行っておるのか……いいのう、実にいいのう」

「オーディンさま、卑猥なことはいけません! ヴァルハラの名が泣きます!」

 

 そう言って、オーディンの視線を遮ったのは傍に控えていたヴァルキリーだった。

 

「まったく、おまえは堅いのぉ。そんなんだから勇者の一人や二人、ものにできんのじゃ」

「ど、どうせ、私は彼氏いない歴=年齢の戦乙女ですよ! 私だって、か、彼氏ほしいのにぃ! うぅぅ!」

 

 オーディンの一言に泣き出すヴァルキリーにアザゼルはドン引きしていたが、オーディンの付き人としては若いので優秀なのが分かるし、その歳なら泣くほどではないだろうと心のなかで思う。

 それに最近は人間も弱くなってきたので勇者を見つけるのは容易ではないこともわかっている。ごく一部の例外を除けば人間は弱い生き物なのだ。

 

「すまんの。こやつはわしの現お付きじゃ。器量は良いんじゃが、いかせん堅くての。男の一つもできん」

 

 人選に疑問が浮かぶが、この場にいる全員がスルーする。オーディンがふざけている神とはいえ、こんな場所に連れてくるということはそれなりなのだろうと各々解釈する。

 オーディンは嘆息を一つ入れると、改めてサーゼクスとセラフォルーに向き直る。

 

「聞いとるぞ。サーゼクス、セラフォルー、おぬしらの身内が戦うそうじゃな? まったく大事な妹たちが親友同士というのにぶつけおってからに。タチが悪いのぉ。さすがは悪魔じゃて」

「これぐらいは突破してもらわねば、悪魔の未来に希望が生まれません」

「うちのソーナちゃんが勝つに決まっているわ☆」

 

 にこやかに笑い合う二人だったが、その間でバチバチと物理的に火花が散っている。

 二人共どちらも勝つと思い込んでいるためであるが、実際にしてリアスとソーナの総合力はそう大差はないというのがこの場にいる全員の見解だ。

 オーディンは空いている席に座ると話し出す。

 

「さて、『禍の団』もいいんじゃがの。わしはレーティングゲームを観に来たんじゃよ。―――日取りはいつかな?」

 

 オーディンの登場と休憩も含めてだろうか、シェムハザがため息を付きながらレーティングゲームについて話しだした。

 各人も各々の見解を交えつつ話し始めると、アザゼルは部屋から立ち去り廊下の長椅子に体を投げ出して休みだした。

 凝った肩を回しながら、双葉の病院へはいつ御見舞に行こうかなど考えていた。

 すると会議室の扉が開き、サーゼクスがでてきた。

 アザゼルは驚きつつも、姿勢を正して隣の席を手で勧める。サーゼクスはニコリと笑うとそこに座る。

 

「アザゼル、単刀直入に言うが今回の勝負なら、まずリアスの眷属は誰から取る?」

「イッセーだな。精神的支柱なら双葉とイッセーってことになるが、今回は双葉は参加しない。ならイッセーを取る」

 

 アザゼルは真面目な顔をしながら言う。

 戦いというのは戦力差だけでは決まらない。例え数で圧倒していても、精神的支柱が無くなり崩壊した戦を幾つも見てきたアザゼルなら、イッセーを先に取るという選択肢を出した。

 いつだって諦めずに突っ走る姿というのは誰かを鼓舞するのだ。

 特にリアス、ゼノヴィアには大ダメージだろう。下手をすればリアスは行動不能になる可能性もあり、撃破するというのであれば最優先だろう。

 各人の戦闘能力は圧倒的にグレモリー眷属が上なのだ。しかしソーナは純粋な力押しが効かない戦術眼がある。

 今までゴリ押しで勝ってきたグレモリーには少々辛い相手だと言えよう。

 

「ソーナは確実に狙うだろう。いや狙わないわけがない」

「……彼が抜けた後は大丈夫だろうか?」

 

 サーゼクスは心配そうにアザゼルに言う。

 リアスが打たれ弱いというのはサーゼクスは知っている。

 戦争を知ってしまった両親が蝶よ花よと育て上げたリアスは良い子に育った、しかしながら折れるという経験をあまりしていないのが気がかりであった。

 もしも負ければとサーゼクスは頭の片隅で思ってしまうのだ。

 

「まぁ、心配はないんじゃないか? 双葉観戦するからあいつら奮起するぜ? ただしそれはシトリー側も同じだろうがな」

「その双葉くんの様子はどうだ?」

 

 サーゼクスの言葉に、アザゼルは顔をしかめながら大きく息を吐いた。

 

「体の傷は大丈夫だが、心のほうがな。ネムレスも危惧してたよ、いつか心滅するんじゃないかってな」

 

 その言葉を聞いてサーゼクスは顔を曇らせる。

 心滅獣身、その言葉は三大勢力の中でも畏怖する者が未だ存在するほど深く記憶されている。

 もしもそうなったら、二人はそう考え深い溜め息を落とした。

 

 

 

**双葉視点**

 

 

 

「体の毒素も無事に除去、体の傷もこの分ならば一週間で完治するでしょうな……本当に人間ですか? 黄金騎士殿は」

「人間のつもりなんですけどね」

 

 あれから数日、イチ兄たちのレーティングゲームの前日。

 ようやく俺は担当医の了承も得て退院する事になった。

 本来ならその日でも良かったが、リアス姉さんからきつく言われ数日間は大人しくしていた。

 

「フェニックス家から提供された『フェニックスの涙』のおかげもあるでしょうが、それでも目を疑う回復速度ですな」

「……ちょっと複雑ですけどね」

 

 俺が倒れたという情報は秘匿されていたのが、どこからか聞きつけたフェニックス家、あのヤキトリのお父さんが善意で送ってきたらしい。

 なんでもお礼だそうだが、息子をぶっ飛ばした皮肉かな? と思ったがこれ以上にない回復アイテムなのでありがたく使わせてもらった。

 アーシアに治してもらえばいいじゃん? と思うかもしれないけどレーティングゲームが近いため、リアス姉さんたちはそっちに専念してもらってる。俺にかまけるくらいなら勝ってくれたほうが嬉しいしな。

 

「グレモリー本邸から迎えが来ると連絡を受けていますので、このまま病院の外でお待ち……ん? すいません、少しよろしいですかな?」

 

 電話がかかってきたのか、医者は受話器を取った。

 医師は何度か受け答えをした後に、受話器を戻すとニッコリと笑顔を俺に向けてこう言った。

 

「リアス様の迎えがロビーにてお待ちのようです」

「そうなんですか? じゃあ急がないと」

 

 俺はそう言って椅子から立ち上がり、医師の誘導のもと一階のロビーに向かう。

 荷物? 着てた魔法衣くらいなもんだから実質無いようなもんよ。御見舞品とかは後でグレモリー本邸に送ってくれるそうだ。

 少し早歩きでロビーに向かうと見慣れた後ろ姿が見えた……朱乃先輩だ。

 あちらも歩いてくる足音で気づいたのか、振り返りパァッと明るい笑顔をみせてくれる。

 

「おやおや、黄金騎士殿も隅に置けませんな」

「冗談、学校の先輩なだけですよ。じゃあ先生、色々お世話になりました」

 

 俺は片手を上げて先生に挨拶し、朱乃先輩の元へ走った。

 

 

 

****

 

 

 

「体の方は大丈夫ですか?」

「元気モリモリですよ、むしろ持て余してるくらいだ」

 

 俺が帰るためにリアス姉さんが用意してくれたのは馬車だった。

 本当は転移魔法陣が病院の地下に設置されているそうだが、極力魔力は使わないよう先生に言われていたからこういった方法を取ったらしい。

 馬車の中では俺が入院してた間の話を朱乃先輩から聞いていた。

 

「へぇ、イチ兄は禁手になったんですか」

「えぇ、双葉くんが倒れた後、リアスのおっぱいをつついて至ったそうよ」

 

 うん、それは聞きたくなかったかな! というか、それでいいのか赤龍帝、それでいいのかドライグ……まぁ、十中八九泣いてるよな。ノイローゼにならないか心配だよ、ホント。

 

「ところで朱乃先輩は大丈夫なんですか? 明日ですよね、レーティングゲームは」

「このくらいなら大丈夫よ……それに寂しかったの」

 

 隣りに座っていた朱乃先輩が俺に体を預けて、ぎゅうっと抱きしめてきた。

 慣れてきたけどいきなりやるのは止めてよ、ホントびっくりするからさ。

 車内には二人っきり、外には馬を従えてる人もいるけどここ防音らしいので気兼ねなく甘えられる環境なんだろうな。

 そうやって優しく朱乃先輩を抱きとめながら、頭を撫でていると朱乃先輩の体が少し震えていることに気づいた。

 

「朱乃ちゃん……?」

「んっ、ごめんなさい。少し勇気をもらってたの」

 

 勇気? と俺が顔をしかめたのに気づいたのか、朱乃ちゃんは俺の胸に顔を埋めながら甘えるような声で言った。

 

「まだ怖いの、私の中にある堕天使の力を使うのが……」

 

 嫌がっていた力を使うのには勇気がいる。

 小猫は吹っ切れたと聞いたが、朱乃ちゃんはまだ怖いらしい。

 当然か、朱乃ちゃんにとってはその力がお母さんを殺す引き金となったようなもんだからな。

 その力がまた誰かを殺すんじゃないかと恐れているんだろう。

 

「情けないわよね。リアスの女王たる私がこんなのじゃ……ごめんね、双牙くん、あなたに甘えて」

「……いいんだよ、朱乃ちゃんは頑張り屋だから。俺で良ければ勇気をあげる」

 

 朱乃ちゃんの震えが止まり、胸から顔を出して潤んだ目でコチラを見てくる。

 徐々に近づいてくる朱乃ちゃんの顔、俺は目を閉じてそれを受け入れた。

 

「んっ……」

 

 あの神社のときのように優しいフレンチキス。

 柔らかい感触と優しい匂いが鼻腔をくすぐる。

 朱乃ちゃんは俺を覆いかぶさるように肩に手を置いて、俺を押し倒してくる。

 

「わっ!? 朱乃ちゃ……ふぎぃっ!?」

 

 座席のクッションに頭をぶつけるが、柔らかい感触で痛みはない。

 だが今までにないくらい積極的な朱乃ちゃんの姿勢に少し驚くが、その間もなく俺の唇を塞ぐように朱乃ちゃんがキスをしてくる。

 体が猛烈に熱くなってくる。

 恥かしさや朱乃ちゃんの興奮が肌に感じられて、徐々にお互いの息が荒くなっていく。

 マズイ、と思う反面止められない自分自身に驚くが、そういえばこの数週間そっちの処理を全くしてないことを気づいた。

 

「ま、待って朱乃ちゃん、このままはまず……んんっ!?」

「お願い、もう少し……もう少しだけ」

 

 ヤバイ、マズイ、でも気持ちいい、これしか頭から無くなっていく。

 心臓の鼓動が耳元に聞こえるほど、早く鼓動している。

 ふと、朱乃ちゃんが動きを止めてぽすんと俺の胸に飛び込んできた。

 

「……ねえ、双牙くん、し、しちゃう?」

「……」

 

 頭がクラクラしてくる。

 酸欠と朱乃ちゃんの匂いと今までの行為で俺の脳内はフルスロットルだ。

 いや、我慢しろと理性は言ってるが本能が限界ギリギリだ。というか理性も半分くらい叩き折られかけている。

 あとこういう時に恥ずかしがらないで、むっちゃ萌えるから。

 断るべきだろう、朱乃ちゃんのこれからを考えれば。だが悲しかな十代の性欲はそんな道理は知るかぁ!! と脳内で暴走している。

 

『なぁ、俺がいるの忘れてないか』

「「!!!!?!?!?!?!?!」」

 

 声にならない叫びというのはこういうことを言うのだろうか。

 指にはめていたザルバを完全に忘れていた。

 二人共勢い良く飛び上がって、広い座席で正座しながらザルバに言い訳する。

 

「ちちちち、違うのよ!? ゆ、勇気貰っていただけで、その……さっきのはもう一回って意味で」

「そ、そうだぜ! ザルバ! へ、変な意味じゃないから!!」

『乳繰り合うのもいいが、ここでシたら匂いでバレるぞ。特に朱乃の嬢ちゃんは処女だろ?』

 

 ぶほっ!? とお互いに吹き出す。

 最早先程までのアダルティでR-18禁の雰囲気は四散している。

 というか処女とか言うなし!! 真っ赤になってうつむいちゃったじゃねえかよ!!

 

『童貞と処女じゃ苦労するぞー』

「うっせ!! 余計なお世話じゃ!」

 

 俺はザルバにデコピンしながら、真っ赤になった顔を両手で覆う。

 正直に言うと助かった。あのまま言っていたら確実にイタしていただろうな、雰囲気って怖いわ。

 この後、本邸に着くまで俺たちは真っ赤な顔を隠しながら沈黙していて、本邸に着いた時リアス姉さんから怪訝な顔をされた。

 

 

 

****

 

 

 

「まぁ、決戦前夜だから最終確認も兼ねるか。双葉、お前から見てリアスたちはどうだ?」

 

 夜、イチ兄の部屋で最終ミーティングをしていた。

 俺が参加してもいいのかと思ったが、ソーナ先輩たちの情報は話さなくてもいいと言われたので参加している。

 おじさんから言われた質問に俺は、少し考えて答えた。

 

「全体的にパワータイプだよね」

「そうだな。リアス、ソーナ・シトリーはグレモリー眷属のことをある程度知っているんだろう?」

「大まかに、ね。正直ウチのほとんどの主力武器は認識されているわ。フェニックス家との一戦を録画したものは一部に公開されているし、ギャスパーや小猫に至っては駒王学園襲撃の際伝わってしまったし」

 

 こうやって考えるとリアス姉さんとソーナ先輩の情報量の差は凄まじいな。

 恐らくリアス姉さんは全体的なソーナ先輩たちの力量は把握してないだろう。まぁ、どっちも知ってる俺から言わせれば、攻撃力に至ってはリアス姉さんたちのほうが圧倒的に上だ。

 

「戦力差は同じ、八体八……正直厳しいなぁ」

「なんでだよ、双葉。俺達が負けると思ってんのか?」

 

 俺のつぶやきにイチ兄が苦言を呈するが、負けるとは言ってないだろうが。

 まぁ、これは言ってもいいだろうな。

 

「正直、駒を動かすって点ならリアス姉さんよりもソーナ先輩に軍配が上がるよ」

「……悔しいけどその通りね。ソーナの戦術眼は私よりも上、それは認めるわ」

 

 だからこそマズイんだよなぁ。

 正直、戦力差がほぼ無いとしたらソーナ先輩が狙うのはイチ兄だろう。

 戦局をひっくり返すほどの力ならゼノヴィアや師匠だって持ってるが、敵のテンションを塗り替えすほどの力を見せつけるのはイチ兄だけだ。

 

「お前たちはパワータイプが多い。一番気をつけるのはカウンターだろうな。小猫ならわかるだろうが相手の力が強大なほど効果的なのがこれだ。万が一、シトリー側にカウンター特化、もしくはカウンター系能力を持つ者がいれば厄介だろうな」

 

 ……俺は表情を変えないように務める。

 おじさんの言葉通りカウンターに特化した人たちはいるし、ソーナ先輩自体力押しではなく絡めてを多く使う人だ。間違いなくゼノヴィア、イチ兄対策に積極的に使うだろうな。

 

「カウンターならば、力で押し切ってみせる」

「ゼノヴィア、お前はどんな修行してきたんだよ……」

「言わなかったか? 破壊力重視だ」

 

 自信満々に言うゼノヴィアに、俺、アザゼルおじさん、師匠はため息をつく。

 ゼノヴィアは首を傾げているが、コイツは深刻だ……誰かコイツに技術という言葉を教えてください、このままじゃ師匠の負担がマッハだ・

 

「お前たちが勝つ可能性は八十五パーセントと言われているが――――それは絶対じゃない。お前たちも格上だったライザー・フェニックスに勝った経験があるだろう。個人の力は絶対じゃない、覆されるものだ。もちろんお前らにも言えることだ」

 

 おじさんの言葉に皆が表情を引き締める。

 長い間、戦場にいた者の言葉は身にしみるというのは修行でも実感出来るし、勝負は絶対じゃない。

 

「勝つ見込みが一割、一パーセントしかない連中が何度もそれを覆してきたのを見てきた。甘くみるなよ、実力差があまりない戦いは気持ちで戦力差がひっくり返ることがある。いいか? 絶対に勝てると思うな、絶対に勝ちたいと考えろ。双葉、お前にも言えることだぞ」

 

 真っ直ぐな瞳に俺は無言で頷きながら、おじさんと共に最後のミーティングを行う皆を見守った。

 明日、どちらかが勝つ。

 どちらも応援したい気持ちはあるし、どちらにも勝って欲しい。だけど勝利というのは公平にあるものじゃない、どちらかが勝ち、どちらかは負けるのだ。

 俺に出来ることは最後までリアス姉さんとソーナさんの戦いを見守ることだろう。

 




詰め込めるだけ詰め込めぇ!!(皮肉)
まぁ、次回とその次回でレーティングゲームは終了のはず。
ココらへんは原作とそう変わらないからしょうがないね。

次回「兄と先輩の意地」禁手と殴り合える匙の実力ってすげー高いよね。

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