ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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男の娘は良いと思います!(マジキチフェイス)
皆も女装山脈やろう!


時を停める吸血鬼

 翌日の放課後、俺達は『開かずの教室』と言われている部屋の前に立っていた。

 以前からおかしいと思ってたんだ、この場所だけ外からなんも見えないし、『KEEP OUT』のテープが貼られ、扉にも呪術的な刻印、さらには封印まで組み込まれている。

 とんでもない化物でも飼っているのかと思ったが、実は『僧侶』がここにいるらしい……いやいやいや、ここまでするってどんだけ危ないやつなんだ。

 

「危険過ぎるから封印してるんですよね?」

「いいえ、それもあるんだけど深夜にはこの封印は解けているのよね。でも出てこないのよ」

 

 サーゼクスさんの話では、眷属とした時にリアス先輩の力を超えていたらしく危険過ぎるということで今まで封印していたらしい。

 今までの功績が認められてそろそろ使ってもいいよってことになり、今回封印を解きに来たが……出てこないってどういうこっちゃ。

 

「行くわよ」

 

 俺の疑問に答えず、リアス先輩が手をかざすと刻印や封印が次々と消えていく。普通の扉へと姿を変える。

 そしてリアス先輩と朱乃先輩が入って行くと叫び声が聞こえた。

 

「イヤァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

「うるさっ!?」

 

 あまりの音量に俺とイチ兄とアーシアにゼノヴィアが驚くがリアス先輩と朱乃先輩は気にせずに入っていく。

 

「ごきげんよう。元気そうでよかったわ」

「な、な、何事なんですかぁああああ!?」

 

 中からばったんばったんと音がする。

 なんだ? 声が少女にも少年にも聞こえるが……にしても声からして幼い子なのかな?

 

「あらあら。封印が解けたのですよ? もうお外に出られるのです。さぁ、私達と一緒に出ましょう?」

「いやですぅうううう! ここがいいですぅうううう!! 外に出たくない! 人に会いたくないぃいいいいい!」

 

 どう聞いても引きこもりです、本当にありがとうございました。

 俺は踵を返して帰ろうとするが皆から止められる。

 

「待つんだ、双葉くん! 気持ちはわかるけど!」

「そうです、双葉ならもしかしたらいけるかも!」

「人をカウンセラーみたいに使うなっての!! これはリアス先輩と眷属間の問題だろ!?」

「待て待て、双葉。キミは必要な人間だ!」

 

皆が俺を引き止めるが止めるなぁああああああ!!

 馬鹿野郎!! 面倒くさいカンジがするんだよぉおおおお!! 止めるなみんなぁああああ!! 俺は帰るぞぉおおお!

 

「どっ……せい!!」

「ぎゃぷらん!?」

 

 フルパワーの小猫に投げ飛ばされ、俺は半分閉まった扉に激突するとギャグ漫画のようにずり落ちる。

 い、いてぇ……主に鼻が痛い。

 顔を上げると部屋の中が見える。

 カーテンを閉めきっているのか薄暗い室内だが、以外にもかわいい装飾やぬいぐるみが置いてある。

 しかしそれから浮いているのが棺桶だった。

 そしてリアス先輩と朱乃先輩から逃げようとしている……少女が目に入った。

 うん、女子生徒の制服着てるから大丈夫だよな? でもなんだこの違和感は? 見た目は可愛らしい少女なんだが……その……作りすぎてる感じは?

 

「おぉっ!! 金髪美少女!」

 

 俺が入ってきた影響か、皆がぞろぞろと入ってくる。

 イチ兄ェ……だがなんだろうかホントこの違和感は。

 その疑問は最悪の形で、リアス先輩の口からはっきりされる。

 

「ごめんなさい、イッセー。この子、男の子なのよ」

「「えっ」」

「さらに言いますと女装趣味なんです」

 

 イチ兄が天に向かって慟哭していたが気持ちはわかる、わかるぞぉ!

 師匠と小猫がため息をついてるが知ってたのか……そりゃそうか、ずっと昔からリアス先輩と共にいたんだから。

 俺だってショックがデカイ。

 女の子なら夢のダブル金髪僧侶タッグとか出来たのに……くぅ、亡くなった神様の影響かこんちくしょうううううううううう!!

 とりあえず涙目の男の娘に聞いとくか。

 

「なんで女の子の服を?」

「だ、だって女の子の服のほうが可愛いもん!」

「もんとか言うなよぉおおおおおおおおおお!! 似合ってるのがすげえええムカつくぅううううう!! 返せ! 一瞬でもアーシアとダブル美少女僧侶とか考えた俺の純情返せよぉ!」

「人の夢と書いて儚い」

 

 お前ら悪魔やんけ!! あっ、でも俺の夢が儚く散ったから……畜生、畜生ぅ……似合ってるのが確かにむかつく!!

 

「ていうかあなた達は誰ですかぁ」

「彼らは新しい眷属、つまり仲間よ……あぁ一人、人間で魔戒騎士がいるけど」

「よ、よろしくな?」

 

 ひぃいいいいっ!! と言って男の娘は俺から距離を取る。

 そんな取って食うってわけじゃないんだが……あーもう!! 面倒くさいなぁ!!

 イチ兄も怒ったのか、無理やり引きずり出そうとした。

 

「ほら、部長も言ってるだろ? 早く出――――」

 

 瞬間、イチ兄が固まった。

 いやイチ兄だけじゃない、部屋の景色がさらに薄暗くなって、皆が灰色で止まっている。

 な、なんだってんだよ……コイツは!?

 

「お、オイ!? 皆どうしたってんだ!」

「な、なんで動けるんですかぁあああっ!?」

 

 泣き声で気づく、コイツの目が何か別の物に変貌している。……魔眼って奴か!?

 くそっ、封印したのはこれのせいか。

 俺は男の娘……メンドイギャーギャー泣くからギャー助と命名し、ギャー助に詰め寄って聞く。

 

「おい! お前がこれをやったのか!?」

「は、はぃいいいい!! でもすぐに元に戻りますから!! だからぶたないで!! 怒らないでええ!!」

 

 ギャー助の目の中に恐怖が見えた途端、俺は掴んでいた胸ぐらを離す。

 ……そうか、コイツが人嫌いなのも外に出たくないのも。

 

「見たくないのか、止まってる人の顔が」

「な、なんでそれを?」

 

 ギャー助が恐る恐るという風に俺を覗き込む。

 俺はとりあえずなるべく優しい声で話しかけた。

 

「だって、お前さっきからリアス先輩たちから目線外してるだろ」

 

 視線というのは思った以上に分かりやすい、特に師匠と修行してると目を見てないだけで木刀が頭に叩き込まれるからな。

 いやぁおかげで人の目線が気になって仕方ねえよ。

 ギャー助は伏目がちに先輩を意図的に視界から外していた。恐らくだったがビンゴでよかったよ。

 俺はため息を付きながら座る。こういう時はなるべく目線を合わせたほうが良いと聞くからな。あとしっかりと目を見る、ジーっとな。

 

「あ、あの……あの……」

「怒鳴って悪かったな。とりあえず自己紹介、俺の名前は兵藤双葉! ただの人間だ!」

 

 手を差し出すとギャー助は俺の顔と手を交互に見ながら、ぼそぼそと小さい声で話した。

 

「ぼ、僕はギャスパー・ヴラディ……その、吸血鬼です」

 

 おずおずと俺の手に触れてきたギャー助はそう言った。

 ……えっ、吸血鬼?

 

 

 

****

 

 

 

「驚いたわ、まさかギャスパーの『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』の中で動けるなんて」

『小僧、お前さんなんか隠し玉持ってるのか?』

「いや、普通に動けたんだが? なぁ、ギャー助」

「は、はい……」

 

 俺の後ろに隠れながら、皆の様子を覗き込むギャー助。

 さっきの停止空間の中で動ける奴がいてよっぽど嬉しかったのか。リアス先輩たちが動けるようになってた頃には俺とは少しだが話せるようになっていた。

 ギャー助、いやギャスパーは人間と吸血鬼のハーフらしく。この強すぎる力で迫害を受けていたそうだ。

 リアス先輩も中々のお人好しだよね。眷属たちが皆それなりの事情を持って迫害された人たちばかりじゃないか……それで強力だってのが、リアス先輩の縁の力ってわけか。

 

「でも双葉もわかったでしょ? ギャスパーが封じられていた理由が……さらにマズイのがこの子、才能の塊なのよ。勝手に神器の力が強まって将来的には禁手になるとも言われているわ」

「……そりゃ、外出すのはマズイわな」

 

 万が一、現状のギャー助を外に出して間違っても禁手になってみろ。

 町一つが止まりましたとか普通に起きそうで怖い。ギャー助もそれが嫌でずっとひきこもってたんだろうな。

 難儀なやつだ、吸血鬼に半分人間……今じゃ悪魔、か。

 

「お前も苦労してんだな」

「ふ、双葉さんも苦労してますよ。黄金騎士の情報は悪魔ネットで見てました」

 

 悪魔ネットあんのかい! と思ったがそういえばサーゼクスさんがネット環境あるよとか言ってたが悪魔専用のネットとかあるのね。

 5chみたいなネット掲示板があったりして……。

 

「ずたぼろ掲示板にスレ上がってました。最弱の黄金騎士って」

「あるんかい!! あぁ、ごめんごめん今のツッコミだから」

 

 や、やりにくい。一々ツッコムと怯えるのは俺としちゃやりにくいんだよ。

 そしてギャー助が入りこんだのは、コイツがすっぽり入るほどのKONOZAMAのダンボール……コイツ、本格的に引きこもりしてやがった。

 でも悪魔の契約自体はしてたらしく、ネット使った契約だと上位に食い込むレベルなんだとか。

 

「ほら出てこい、逃げんなって。あと俺には神器効かないから意地でも出すぞ」

「う、うぇええええん! 離してくださいぃいいい!! 僕はこの中で暮らしますぅうううう!」

「部長、こんなんで大丈夫なんですかね」

 

 イチ兄がため息を付くが俺だって付きたいよ。

 つうか暴れんなよ、暴れんなよ! 縛るぞこの野郎!!

 リアス先輩が頭を抱えながら、首を横に振る。

 

「さっきも言いたけど才能の塊なのよ、この子。能力的には朱乃に次ぐか、それ以上か。本気で育成したら吸血鬼のパワーに優れた魔力、そして停止の魔眼っていう最高の駒になるわ」

 

 チートくせえ!! あっ、そうだ普通に陽の光に当ててるが大丈夫だろうか?

 映画だと一瞬で灰になったりするが。

 

「安心して、その子はデイウォーカー……日中でも動ける吸血鬼の一族の血も入ってるからよっぽど強力な光じゃなきゃ死なないわ」

 

 マジかよ、吸血鬼だろ……というかこの世界なんでもいるなぁ。

 すまん、ヴァーリ、俺驚かすのだったらもっと身近なものでいいぞ、俺大抵のもの見たと思ったらまだまだだったわ。

 

「ふぅ……ごめんなさいね、イッセーと双葉。この子をお願いできる?」

「えっ? なんでですか?」

「これから会談の打ち合わせなのよ。朱乃は『女王』だから連れて行かないと駄目だし、祐斗は聖魔剣について話があるそうなの」

 

 あぁ、なら仕方ないか。

 師匠は俺の肩を叩きながら言う。

 

「あとは頼んだよ、双葉くん」

「へーい」

 

 気乗りはしないが師匠に頼まれたらいっちょやりますか。

 ゼノヴィアが得意げな表情で俺に胸を張る。

 

「任せておけ、マスター。コイツみたいな吸血鬼は初めてだが、私は幼少期から吸血鬼と戦ってきた扱いなら任せてくれ」

「任せられるわけねえだろうがぁああ!! お前に任せたらとんでもないことになるわ!! ……ほらギャー助!」

 

 俺は強引にギャー助をダンボールから引きずり出し、リアス先輩の前に持っていく。

 

「な、なんですかぁ、双葉さん」

「リアス先輩が行くんだ。ちゃんと挨拶する、それがまず一歩だ……怖くても目を見ろ、お前の目は停めるだけじゃない。誰かの瞳もしっかり見れる」

 

 ギャー助は不安そうに俺を見る。

 大丈夫だって、いざとなりゃ魔戒剣でぶっ叩けば強制的に神器止まんだろ、昔のTVみたいにさ!

 リアス先輩はニコニコしながら、ギャー助の言葉を待つ。

 ギャー助は俯いてぼそぼそと呟くが、唇を噛んでリアス先輩の目をしっかり見てこう言った。

 

「い、いってらっしゃい……うぅぅうう」

「ふふっ、行ってきます。それじゃ皆、あとは頼んだわよ」

 

 部屋の魔法陣に乗るとリアス先輩たちが転送されていく。

 なんか朱乃先輩の目が怖かったが気にしないでおこう、怖い……雷撃怖いお……。

 ギャー助は顔を真っ赤にするとすぐさまダンボールへ逃げ込む。まぁ、最初の一歩は上々ってところだな。

 ゼノヴィアがうんうんと頷きながら俺に話す。

 

「さすがマスターだ。ところでイッセーとの子作りは」

「ゼノヴィア……また正座するか?」

 

 青い顔しながらゼノヴィアが黙りこむ。

 ふぅ、久々に本気で怒ったからかゼノヴィアが俺に従順になってくれてよかったよ。

 隙ありゃイチ兄とずっこんばっこんしそうだからな、こいつめ。そもそも貞操観念が頭からスッポ抜けてるからどうしようもない。

 とりあえずゴム渡したから最悪の結果は起きないだろう。

 

「双葉、どうするんだ? コイツ、すぐにダンボールに入っちまうし」

「……うーん」

「双葉、これ」

 

 小猫がトテトテと歩いて何かを手渡してきた。

 なんぞやと思って手を見ると……にんにくが握らされていた。

 

「どうしろと?」

「投げ込んで、強制的に外に出させるんです」

 

 なるほどナイスアイディアだ。

 俺はダンボールの穴からにんにくを入れる。

 するとギャー助が飛び上がりながら悲鳴をあげた。

 

「ゼノヴィア確保だぁ!!」

「了解」

「ぶええええええええん!! ガーリックはらめえええええっ!!」

 

 えぇい! 一々可愛らしい声を出しおってからに!!

 男なんだが男じゃなく見えるのが立ちわりいぞ、ギャー助!! ……仕方がない、荒療治だ。

 

「ゼノヴィア」

「なんだ?」

「死なない程度にギャー助を走らせろ」

 

 ゼノヴィアの眼光が鋭くなった。

 

 

 

****

 

 

 

「斬られるぅううううっ!! 消滅しちゃうぅううううっ!!」

「ほらほら、走れデイウォーカー」

 

 誰もいない校舎内で伝説の聖剣を振り回したゼノヴィアがギャー助を追いかけていた。

 心なしかゼノヴィアはウキウキしているが振り回されているデュランダルが泣いている気がする。

 

「……双葉さん、ギャスパーさんは大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だろ、掠ったら死ぬかもしれんが」

 

 まぁ、ゼノヴィアなら間違っても振ることはないだろう。てか制御出来ないのに持ちだして良いのかお前は……いや、出すなら良いんだけどさ。

 その後ろで小猫もにんにくを持ちだして追っていた。

 

「ギャーくん、逃げないとにんにくぶつけるよ」

「ガーリックパートツゥウウウウウウ!! うわぁあああん!!」

 

 泣けるなら余裕あるな、うんうん。

 しかしイチ兄はため息を付きながら俺に話かける。

 

「でも良いのかよ、アレじゃ逆効果じゃあ」

「走りこみは重要だし、まずは人に慣れないとどうしようもないだろ。刃物もったゼノヴィアに怯えなくなれば無問題」

「お前って時々考えがかっとビングするよな」

 

 まぁ、冗談だがな……追いかけろとは言ったがそこまでしろとは言ってない。

 お互いため息を付いていると何故かジャージ姿の匙先輩がこちらに歩いてきた。

 

「おー、やってるやってる。あれが噂の引きこもり眷属か」

「匙先輩、なにしてるんですか?」

 

 俺がそう言うと匙先輩がジト目でコチラを見る。

 

「花壇の手入れだ。お前は色々あってこっちに顔出さないから知らないだろうけど、魔王さまや天使に堕天使のお偉いさんまで来るからこっちはてんてこまいでな……まぁ、お前は役員っていうか補助要員みたいなもんだし、会長に可愛がられてるもんなぁ」

 

 ため息をつく匙先輩に謝るが、匙先輩は顔を上げるように言う。

 うぅ、すいません、でもこっちもこっちで忙しかったんです。

 

「にしても女の子かよ、可愛いなぁ」

「匙、アレ女装だぞ……つまり男だ」

 

 次の瞬間、匙先輩が崩れ落ちて慟哭する。

 

「嘘だろ兵藤!? あんなにかわいい子が男とか世の中間違ってるぜ!!」

「あぁ、間違ってるよなさらに引きこもってたのに女装趣味とかわけわからん」

 

 あぁ、それは同意する女装趣味って半分見せるためにあるもんだしな。

 どういうことなんだろうな……ただ女装が好きというか長年やってる気もしなくもない。部屋を見たらご丁寧に化粧道具まであったからな。

 まぁ、いつか聞いてみればいい話だ。

 

「なるほど? 悪魔くんたちはここでお遊戯会か」

「ッ!? アザゼル!?」

 

 皆が驚き、武器を構える。

 俺も魔戒剣を構える。

 マジかよ……会談まであと少しだってのになんで来やがった!!

 

「そうマジになるな。あの時コカビエルと互角に戦った黄金騎士ならわかるだろうが、俺はコカビエル以上に強いぞ? 死にたいのであれば打ち込んでこい」

 

 怯えるアーシアとギャー助を背に俺は冷や汗を垂らす。

 伊達に十二枚の羽してねえってか、隙がねえぞこのおっさん!! 

 

「だからそう構えるなっての、ただの散歩がてら聖魔剣使いに会いに来たんだ。コカビエルから聞いてなかったか? 俺は神器マニアで自主的に研究もしてんだよ……てかいないのか。たく、損したぜ。サーゼクスに予定を聞いとくべきだった」

 

 敵意は無いがそれが逆に怖い。

 全員がかたずを飲んで見守る中、アザゼルはギャー助に目を向けると目を細める。

 

「そこのヴァンパイア。見たところ魔眼系……いや分かった、『停止世界の邪眼』か。そいつは使いこなすのが難しい部類の神器だがやりようはある。そこの悪魔くん、そう『黒い龍脈』を持つお前さんだよ。そいつをヴァンパイアに繋げろ、余剰分のパワー吸い取れば多少は安定するだろうよ」

 

 俺たちは驚くが……出来なくはないのか? 確かに匙先輩の神器は相手の力を吸い取る能力だ。神器に使えるなら、扱いきれていない分を吸い出せば制御できるかもしれない。

 だが匙先輩は複雑な表情をしながらアザゼルに問いかける。

 

「俺の神器にそんなことが……」

「これだから今の神器使いはもったいねえってんだよ。その力は応用が効くんだぞ? ブーステッド・ギアがイカれてるだけで、普通の神器だって十分な奇跡の産物だ。『黒い龍脈』はかつて龍王と呼ばれたヴリトラが分散して封じ込められた一つだ。まっ、これも研究でわかったんだがな」

 

 アザゼルは思いついたようにポンポン言うが……あぁ、あの目はイチ兄と同じ目だ。

 好きなもんをとことん追求する瞳、あぁいう目をする奴に悪いやつは……結構いるが信用しても良いはずだ。

 

「アザゼル……いやアザゼルさんか、手っ取り早くギャー助が神器を使いこなせる方法はないのか?」

「あるぞ? そいつは吸血鬼だ。ドラゴンの力を宿したものの血を飲めば一時的に能力的なリミッターが外れる。赤龍帝なんて持って来いだろうな」

 

 そうか、吸血鬼だからこそ血で解決できるのか。

 だがギャー助って人工血液でも嫌がるらしいんだが大丈夫なのかな?

 

「あー、そうだ。赤龍帝に黄金騎士、悪かったなヴァーリが勝手に接触して」

「全くだよ、部下の扱いを徹底してくれよ」

 

 堕天使にはいつも煮え湯を飲ませられるからな。

 今度もあったらさすがに三大勢力としちゃ一番信用度を無くすだろうな。

 アザゼルは肩をすくめて、俺を見つめる。

 

「あぁ、そうだ。お前にも話があったが……これは会談中でも良いだろ」

「適当だな、オイ!?」

「性分だ。なんせ俺たちは女のおっぱい触って堕天した馬鹿野郎どもの集まりなんだからな」

「本当かよ!!」

 

 イチ兄、そこ反応せんでいい。

 あぁ、本で読んだわ……確か山の頂上でやったんだったか? 元々は人間を監視する存在だったが人間に恋して堕ちたとかなんとか。まぁロマンチックなシチュエーションだな、全く。

 アザゼルはそれだけ言うと姿を消す。

 言いたい放題言って帰る……さすが不良集団のボスってわけか? とりあえず俺はため息を付いて匙先輩に提案する。

 

「申し訳ないんですけど匙先輩、ちょっと付き合ってください」

「仕方ねえな、でも信じるのかよ。相手はアザゼルだぜ?」

「失敗しても力が吸われるだけですし……やるだけやってみましょう」

 

 結果から言えば出来た。

 ただし予想以上にギャー助の力が強くて見学しているアーシアたちやボールを渡すイチ兄が停まるので俺が仕方なく練習に付き合うことになった。

 やることは単純だ。バレーボールをゆっくりと投げてなるべく被害が出ないように上向きに向かせて空中にあるボールを停めさせる。

 

「よーしギャー助、もういっちょだ」

「は、はいぃいいいい!!」

 

 ボールを投げて、ギャー助に当たるか当たらないかの瀬戸際になった時ボールの動きが止まった。

 うし、十回に四回は視界内のもん全部止めるが大分飲み込みが早い。やっぱ才能の塊ってのは本当らしい。ギャー助の顔にも自信の色が見えてきた。

 よしよし、こうやってハードルの低いのからやらせていこう。コイツは逃げるからな、キツイことしたらダンボールに逃げこむからな。

 焦らずゆっくりと行こうか、やっとコツを掴んできたんだ。

 

「双葉―、そろそろ戻ってもいいか?」

「えっ、あぁもうこんな時間か」

 

 匙先輩に言われて、校舎の時計を見ると既に六時を過ぎている。

 うーん、もうちょっとやりたいがこの後はイチ兄たちは悪魔稼業もあるからな。

 ここまでにしとくか。

 

「よーしギャー助、今日は終わりだ」

「つ、疲れましたぁ」

 

 女の子座りするんでねえよ、似合ってるのが腹立つ。

 ……さて、俺は帰るか。

 

「んじゃまた明日な、ギャー助」

「えっ? 帰るんですか?」

 

 そりゃ俺は人間だしな。イチ兄たち悪魔じゃないからずっとはいられねえよ。

 しかし、ギャー助が泣きそうな顔を見ると帰れるに帰れん。

 畜生、可愛い顔ってのは理不尽極まりないな……ため息をついて、頭を撫でる。

 

「また明日な」

「明日も、明日も会えるんですね!」

「まぁ、リアス先輩に頼まれたしお前が使えるようになれば大分皆楽になる」

 

 雑魚チラシとかにちょうどいいしな、その能力。

 女性だったら時止めて、イチ兄の洋服破壊で一発KO、男でも師匠が追撃すりゃ良い……あれ? ギャー助強くなったらリアス先輩敵無しじゃね?

 いや、弱点も多いか。にんにく、十字架、聖水に……あと流水とかも駄目なんだっけ? 吸血鬼の最大の弱点、光だってそうだが。ギャー助の場合はさらに倍々になるだろうしな。

 うーん、まぁそこら辺はリアス先輩が考えるべきだろう。

 

「双葉さん……僕、頑張ってみます」

「双葉でいいよ、同い年でさらに同じクラスなんだろ? 全然気づいてなかったが」

 

 小猫に言われて知ったが、コイツ俺と同じ学年でさらに同じクラスだったらしい。

 ギャー助が顔を真赤にして俯くが、微妙な気分だ……男じゃなきゃなぁ。

 

「イチ兄、後は頼んだわ。アーシアも無理しないようにな」

「おう、任せておけ!」

「はい、双葉さん! すぐに帰ります!」

 

 そう言って俺は皆と別れ、帰宅した。

 だが俺は学校にもう一回戻ることとなる……まさか、イチ兄に任せたらあぁなるとはなぁ。

 

 




CVあやねる(ジョージボイス)
全くあやねるのショタボイスは最高だぜ!

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