そして双葉は結局イッセーの弟なんやなって。
サーゼクスさんの突如の来訪とロゼさんとの出会いから数日。
サーゼクスさんは次の日にはウチを出た。これ以上厄介になるのは悪いと近くの高級ホテルへ行った。
そして町の下見……という名の観光を始めた。
ゲーセンやファストフード、神社などなど魔王の力と権力でやりたい放題をしてグレイフィアさんがよく頭を抱えていた。この人も苦労してんなぁ。
しかし、何事にも真剣なサーゼクスさんを見ると魔王にふさわしい人なんだなと思う。ファストフード店では全品頼んで、結局オカルト研究部総出で食べるのを手伝ったが。
それでも面白い人ではあったし、ロゼさんもそうだ。
この人も護衛役ほっぽってスイーツの食べ歩きをしていた。なんでも、魔界にはこういった施設があまりないらしい。そういえば、俺が作ったケーキを喜んで食ってたがこの人、極度の甘党だわ。胸焼けするほどバクバク食べてるしな。
にしてもイチ兄の様子がおかしいので聞いてみたが……なんでもリアス先輩のおっぱいにブーステッド・ギアで譲渡したらどうなんの? という話をサーゼクスさんとしていたらしい。
いや、待て待て。仮にも赤龍帝の力だぞ、この前ドライグ泣かせたのもう忘れたか?
しかしイチ兄は真剣に悩んでいるらしい。まぁ、相談もできねえよな……おっぱいに譲渡とか考えつかねえわ、というかサーゼクスさんもアホだろう。
でも興味はある……おっぱいではなく、尻にしたらどうだろうか? うむむむ、とてつもなく大きくなるとか? いや出力が上がるわけだから張りや艶がよくなるはず?
結局、俺とイチ兄は相談された日、久々に徹夜で語り合った。最期にはおっぱいにも尻にも譲渡だ! という結論に終わったが。
さらに数日、今日は日曜日。
本来ならアーシアやリアス先輩も交えてゲームしたり、買い物行ったり、師匠とお菓子作りする日だが今日は用事があるんだな、これが。
「いってきまーす」
四人で外に出る。
眩しい太陽が俺たちを照らすが、仮にも鍛えている俺と悪魔たちがバテるわけ……あった。
さすがに自然には勝てないんだな、これが。氷魔法を応用して冷気を流す手段もあるが、俺は攻撃魔法が出来ない。アーシアに負担かけるわけもなく、俺達はのろのろと歩いていた。
「おっ、来たな。皆おはよう」
「よー、ゼノヴィア……お前元気そうだな」
この熱さの中、平然と立っているゼノヴィアを賞賛するが首を振りながら、ゼノヴィアはタオルを見せる。
「平気ではないさ。この暑さ、噂に聞いていたが凄まじいな日本は。こんな暑さの中活動できるキミたちを尊敬するよ」
そんなことを言っているゼノヴィアだが、実はウチの近くのマンションに暮らしている。
リアス先輩たちのように旧校舎で暮らすことも提案されていたが、さすがに嫌だったのかマンションを借りることとなった。
まぁ、いきなり生活が一変したし気軽に来れるというのもゼノヴィアにとっては良いらしい。
「そういえばアーシア、宿題の方はどうだ?」
「双葉さんに教えてもらってなんとか」
「そうか……なら双葉、アーシア、これが終わったら少し見てくれないかい?」
「……あのさ、俺後輩なんだけど」
頼ってくれるのは嬉しいが、トテトテと歩いてきてアーシアが見せてきたテキストは二年生のものだった。流石にわからないと言ったら涙目になったので、一緒にやることがおおくなった。
おかげで二年生の勉強も出来て俺もいいんだがな。
リアス先輩やイチ兄を頼ればいいのに、なんでか俺なんだよなぁ……まぁ、アーシアも優秀だから教えることが少ないんだがな。
ゼノヴィアはアーシアとはすっかり仲良くなった。昔は首筋に剣を置いたりもしたが……あっ、そうそう、それで後悔してたまに自虐モードに入ったりするんだよね。
そして二人が何故か祈ってダメージを受けている。
「さぁ、皆今日はプール開きよ!」
リアス先輩が元気いっぱいに言う。
実はプール清掃を条件に、ソーナ先輩がプールを最初に使っていいという話がありリアス先輩はそれを受けた。
なんかソーナ先輩が俺を睨んでいたが……嫌われてたりするんだろうか? 匙先輩以上に使われてるのよな、俺って。お茶くみ、書類整理、印刷etcetc……何度逃亡して匙先輩に捕まったことか。
うぅ、リアス先輩の優しさが身にしみるわぁ。
まぁいいさ! 今日は楽しもう!! プールなんて何年ぶりだろうか!
「ぐ、ぐふふふ」
「イチ兄、顔が犯罪者だ」
一抹の不安もあるがな!!
****
「……あばっばばっば」
「どうしたの? 双葉くん♪ 感想を言ってくださらないと」
プールサイドで俺は必死に、ウェイクアップフィーバーしそうな腰の魔戒剣を制御していた。
くっ、そうだった。水着買うっていってたもんね! そりゃこうなりますわ!!
俺の体にくっつく朱乃先輩の水着は白だった。いやそれはいい……だが布面積が、大事な部分隠れればいいでしょ、っていうくらい小さいッ!!
イカンですよ! おっぱいが! ふとももが! 尻が! 尻が!!!
「わ、私もどうですか? 双葉さん」
「……アーシア、よく似合っている」
ムニュッとした感触で鼻血が出そうになる。ちなみに、イチ兄はリアス先輩に抱きつかれて失血死しそうなくらいドバドバだしている。
アーシアは学校指定のスクール水着だった。胸に「あーしあ」と何故かひらがなで書かれているのが面白い。
うんうん、アーシアまで朱乃先輩みたいな格好したら俺が憤死するよ。
「姫島先輩、そろそろ離れてください」
ジト目でコチラを見る小猫もアーシアと同じようにスクール水着だ。
これまた胸に「こねこ」と書いてあるのが面白い。
しかし朱乃先輩はうふふと笑うとさらに密着してくる。ぎゃああああああああ、胸があああああ!! あと引き締まったお腹もこれまたああああああああっ!!
「あらあら、私は双葉くんにオイルを塗ってほしいだけなの。それにこの水着は双葉くんに見てもらうために選んですもの」
「破廉恥過ぎます。そ、それに双葉はおっぱいよりもそ、そのお尻の方が好きなはずです!」
やめてえええええええ!! 人の性癖を大声で言わないでええええ!!
てか、朱乃先輩と小猫の間に火花が……いや、待て、小猫尻尾はやすな! それ確か猫又モードっていう戦闘モードのはず! てかスクール水着に猫耳オプションとかやめなさい! お前の体型と相まって怪しい店の恰好みたいになってるわ!!
「先に私達の泳ぎの練習を見てもらうんです」
「……そうだったわね。双葉くん? あとでね」
チュッと言う音と柔らかい感触が首筋に……ぬほっ。
軽くキスされたせいで、我慢していた鼻血が噴き出る。やわかけええ!! いい匂いするぅうううう!!
「ッ!!」
「言ってなかったかしら、私と彼ってこういうこともするんですの……お二人はまだですものね」
煽らないでええええ!! ていうか言いたいこと言って行っちゃったよ!! この場の空気どうしてくれんですか先輩ぃいいい!!
泣き顔で頬を膨らませたアーシアと小猫は俺の手を引いてプールに……えっ? えっ?
「落ちて」
「双葉さんッ!!」
「理不尽だぼぎおごほあ!?」
そのままプールに落下した。
****
「はい、いっちにーいっちにー……だー、ほら! 水に顔をつける! ビート板持ってれば沈まないから!」
あの後、約束通り小猫とアーシアの泳ぎの練習を付き合っていた。
なのだが、アーシアはまだしも小猫が泳げないのは意外だった。いや、冷静に考えれば猫の妖怪なんだっけ? そりゃ水苦手か。今だって、水に顔を沈めるのも嫌がるし。
バタ足はしっかりしているが、めちゃくちゃに動かしてこれまた動かない……ヘッタクソすぎるだろ!! ここまでとはな。
まぁ、ビート板使って多少マシになったが。
ととっ、もう25メートル泳ぎ切ったのか。
勢い余って、小猫のビート板が俺の胸に直撃するが……い、痛くないし、角がみぞおち入っても大丈夫だし。
「……ごめんなさい、練習付き合ってもらって」
「気にすんな、誰にしも得手不得手がある」
小猫の頭を撫でながら、抱き上げる形でプールサイドに上がろうとさせるが、小猫は俺の体にしがみつく。
小さくてもやっぱり女性なのか柔らかい感触を感じる。
「双葉は優しいです。私が姉さまのことで悩んでいる時もこうやって手を貸してくれました」
「どうした藪からスティックに、いつもの毒舌はどうしたよ」
コカビエルとの戦いの後から、なんかたまに甘えるようになってきた小猫。
よく膝の上に乗って本を読んでいるが……娘がいたらこういう感じなのかなと本人には言っていないが、俺はそう思っている。
小猫は甘えん坊らしいというのがリアス先輩の談であり、泣かせたら尻叩きじゃ済まさないわよというお達しも出ている。
「……ムードを考えてください」
「ヘイヘイ、ムードの前に泳げるようにならないとな。ほら、もう上がれ。きちんとタオルで体を拭いて柔軟するんだぞ?」
今度こそプールサイドに上げると小猫はふくれっ面で俺を見る。
「……私だってあなたのことが――――」
「小猫―?」
「なんでもないです! ……アーシアさん、交代です」
随分暗い顔をしてたが大丈夫か? やっぱ、泳ぐのが苦手なのにやったのが悪かったのか?
そう思っているとアーシアがふくれっ面で俺を叱咤する。
「ダメですよ、双葉さん! 小猫さんだって女の子なんですから」
「えっ? なんでそういう話に」
「黙って聞いてください!」
「イエスマム!」
何故かアーシアに説教されたが俺にはとんと検討がつかなかった。
そして俺が怒られている間、イチ兄は水中に潜って師匠と競争するリアス先輩のおっぱいを凝視していたという……ドライグが泣きながら俺に念話を送ってきた時は俺も頭抱えたわ。
****
「すー……すー」
「寝ちゃったよ……んー、泳いだ泳いだ」
飲み込みが早いアーシアを教えるのは簡単だったし、アーシアはビート板いらなかったからな。
途中、戻ってきた小猫に謝りつつ一緒に泳ぐかというと機嫌が急速に直った。
そして三人でワイワイ何周も泳いでいたら、アーシアも小猫も体力を使いきって敷いてあったブルーシートに横になると仲良く寝てしまった。
全くタオルで拭いてないのにな。
さすがに髪の毛とかは拭けるが、胸とかはリアス先輩にやってもらった。
今はタオルを胸にかけて、パラソルの下で二人共ぐっすりだ。
頭を撫でながら、俺はプールではしゃぐ師匠を見て、目を細める。
イチ兄とも仲良くなってきたし、クラスでは以前のようなクールさは無くなったが親しみやすくなったと聞いている。
……うーん、リアス先輩に父親みたいと言われてるがそうなのかも。最近、保護者目線で皆を見ているような? いやいや、小猫以外年上だし、何失礼なことを考えてるんだ!
「双葉くん」
「ん? 朱乃先輩?」
肩を叩かれ朱乃先輩がニッコリと笑顔を見せながら、俺を手招きした。
……嫌な予感がするんですがそれは。
ちょっと嫌な顔が出てしまったんだろうか、朱乃先輩は苦笑しながら指差す。
「ほら、今リアスとイッセーくんがオイル塗りしているでしょ? それにさっき言ったじゃない。小猫ちゃんたちが終わったら私だって」
「……あー、言いました言いました」
そういえばそんなことも言ってましたわ。
俺は立ち上がり、朱乃先輩に手を引かれてイチ兄たちの隣まで来る。
「あれ? 双葉?」
「ごめんなさいね、イッセーくん。私達もオイル塗りに参加しますわ……さっ、双葉くん、こちらのオイルを使って?」
朱乃先輩がブルンと勢い良くブラをはず……外したァ!?
「イチ兄見るな!! いいや、こっち向くな! 朱乃先輩も! 堂々と脱がないでください!」
真っ赤になりながら、俺は目を背け……られるわけねえだろうが馬鹿野郎ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 男として! いや漢として!! こんなスンバラシイ乳に目を背けられたら、そいつは不能かホモだ!
ち、畜生、俺もイチ兄の弟ってわけか、おっぱいには勝てなかったよ。
「そんなマジマジと見られたら照れますわ」
見るしか無い、あのビッグバストを……いやいや、落ち着け夏の暑さで我を忘れていた。
心頭滅却、手渡されたオイルを手に……あれ? オイルってどうすればいいんだっけ?
「双葉、オイルを手につけて馴染ませるの。いい? 落ち着いてやるのよ」
「ら、ラジャー」
よく見ればリアス先輩もブラ外していらっしゃる!! 畜生、イチ兄の奴め!! 大人の階段登るつもりだったのか!!
そんな俺の恨みも知らずに、朱乃先輩がビニールシートに横たわり、黒髪をどけて背中を見せる……すげえ、真っ白だわ。
あと背中から腰のラインが綺麗、モデルなんて裸足で逃げ出すわこんなん。
あと尻! うぉおおおおおっ!! 大きいし形もいい! 生きててよかったぁあああ!
「双葉……心するんだ。指に全神経を集中させろ!」
「応ッ! ザルバ、ちょい見ててくれ」
『……はぁ』
オイルを手になじませる前にザルバを外す。
なんかため息をつかれたが知るかボケぇえええ!! いざゆかん、女体の神秘へ!!
「あぁん♪」
「ッッッッッ!!!!」
なんちゅう、なんちゅう肌や……すべすべで柔らかくて、それでいてしっかりとした弾力がある。
触る指の一つ一つで感じる。この肌になるまでどれだけのケアを!! くぅ、朱乃先輩と結婚する人はいいなぁ、この肌を毎日独占だろ? 羨ましすぎて牙狼の鎧が黒くなりそう。
さすがに横乳には手が伸びなかったが、背中、腕、足と満面なくオイルを塗っていく。
うぅ、つやつやですんばらしいよぉ……だが俺は紳士だ。おっぱいと尻には触らん。というか触ったら何かが壊れそうで。
「双葉くん、触りたい? 胸やお尻に」
「そりゃ触りたいです……あっ」
口が滑ったぁあああああああああああああ!! うわぁ、気になってる先輩にそんなこと言ったら嫌われるぅううう!!
だが、朱乃先輩はニコリと笑うと上半身を起き上がらせて、俺に抱きついて……あばっばばっばばっばば、コリコリとした感触が胸にぃいいいっ!
「溜めているんでしょう? リアスから聞きました。アーシアさんに日頃ベタベタされて離れていない時はないって……だから今日は存分に」
かみっ。
うにゃあああああああああああああああああああ。耳たぶをアマガミ、もとい甘噛されてるよぉおおおおっ!!
「双葉、羨ましいなぁオイ!」
「あ、朱乃? そろそろ双葉を離してあげたら? 困ってるわよ」
「あら? リアスはイッセーくんとイチャイチャしててください。というかリアスは押しが弱すぎるんです。私ならもう胸とかお尻とか好きな場所を触らせてあげるのに」
助けてええええ!! このままだと俺の理性が崩壊する!!
頭のなかで本能と理性が戦っているよ! でも本能のほうが勝ちそうだよ! やべえよやべえよ。
「双葉は純情なの! そんなことしたらその子が獣になっちゃうわ!」
「いいじゃないですか。男の子は元気な方が……あら? リアス、なんで双葉くんのことをそんなに?」
「大事な義弟よ! その子は私がしっかりと管理します! それにアーシアが傷つくわ」
「あらあら、私の気持ちを知ってるくせにイケずな主様もいたものですわ。押しかけようにもあなたがいるから我慢してたけどやめましょうか」
「それは駄目よ! それにあなたと一つ屋根の下になったらそれこそ双葉に襲いかかるでしょう!?」
あ、あれ? いつの間にかお二人が立ち上がって言い合いに?
イチ兄もぽかんとしながら見ている。
ていうか二人共ブラを着てください! ぶるんぶるんととんでもねえもんが揺れてやがりますよ!! あとクーパー靭帯だったけ? それが傷つきますよ!!
「大体朱乃はいつもそう! 気に入ったものを横からかっさらうのが嫌なのよ!」
「この際だから言いますけど、本当リアスって大事なものは手元に置かないと駄目な主義ね! それに双葉くんとの関係はあなたに関係ないじゃない!」
「姉として、あの子の貞操は管理します! それに結婚するまでそういうのは駄目よ!」
「そういうところが押しが弱いの! リアス! うかうかしてると横からイッセーくんを盗られちゃいますよ!」
「うるさい! 卑しい雷の巫女さま」
「黙ってらっしゃい! 紅髪の処女姫さま」
俺とイチ兄はそそくさと退散する。
アカン、なんか知らんがこの場にいると俺とイチ兄に飛び火する気がする。
というか、二人共いつものお姉さまオーラが吹っ飛んで子供みたいに取っ組み合いしてるんですが!?
「大体、朱乃あなた双葉に避けられてるじゃない! そういう態度が悪いのよ!」
「私は自分の武器を使っているだけです! 瞬きする暇さえあれば彼に処女だって捧げられます! おっぱい吸わせるっていったのに最後にヘタれた誰かさんとは違います!」
「段階が必要なのよ! そんな体ありきの関係なんてアーシアみたいに心を通わせてる子には無駄よ!」
「なら何度でも迫ります! 彼は優しいし、カッコいいし、強い!」
……なぁにこれ? 新手の羞恥プレイ? それとも罰ゲーム。
途中からどれだけ俺とイチ兄がカッコいいかって言う言い合い合戦になってるし、イチ兄が赤面してるわ。
うぉおお、リアス先輩そこまでイチ兄にゾッコンだったとは、早く想いに気づけよな!! イチ兄!
「双葉、お前いい加減朱乃さんの気持ちに答えてやれよ?」
「先輩が後輩に思う気持ちだろ? 俺は尊敬してるよ、朱乃先輩のこと」
ダメだこりゃとイチ兄が天を仰ぐ。
なんでぇ? いや、確かにスキンシップが激しいがからかってるだけだろうし……そう考えていると俺達の近くの地面が削れる。
「ん?」
「……逃げるぞ、イチ兄」
ヤバイ、この場にいたら殺される!! なんか知らんけど魔力まで出して本格的に喧嘩してるよあの二人ぃいいいい!!
俺たちはダッシュで別方向に逃げる。俺はプールへ、イチ兄は用具室へと。
激しい音を立てながらプールサイドが破壊されていく……あぁ、もうめちゃくちゃだよ、これ。
「双葉くん、また何かしたのかい?」
「してませんよ。それよりも師匠、ずっと泳いでたんですか?」
肩で息している師匠に聞くとニッコリと笑う。
この人、確か小猫たちに泳ぎを教えている時もやってたよな? 嘘だろ? 何キロ泳いでるんだよ。
「水はいいよ双葉くん。僕の師匠にも、水の中は負担が少ないから修行しやすいって言われたしね。こんどやろうか」
「あぁ、はい。それはもちろんなんですけど、アレは大丈夫なんですかね」
雷撃と滅びの魔力が激突している。
だが師匠は苦笑しながら首を横にふる。
「死にたいのなら止めてもいいけど……それにあの二人、昔からたまにあぁやって喧嘩するんだ。まぁすぐに落ち着くよ」
そ、それでいいのか? と思っていると二人がぜーぜーと息をしながら両手をついていた。
あっ、本当だ……とりあえずタオルと飲み物持っていくか。
プールから上がってクーラーボックスが置いている場所まで歩いて行くとアーシアと小猫が起き上がっていた。まぁ、アレだけの魔力の波動なら気づくよな。
「な、何があったんですか?」
「リアス先輩と朱乃先輩が喧嘩した。悪いがアーシア一応着いて来てくれ、怪我してたらマズイし」
タオルと飲み物を持つとアーシアと共に息切れしている二人のもとまで行き、タオルと飲み物を手渡す。
すると二人共無言でそれを受け取ると一気に飲み干す。
そしてタオルで口元を拭くと無言で俺を見つめる。
……うん、俺が悪いってのはなんかわかった。とりあえずごめんなさいって言っておくか。
「――抱いてくれ。子作りの過程さえちゃんをとしてくれれば、後は好きなようにしてくれて構わない」
なんか用具室からとんでもねえ発言聞こえたぁあああああああああああああああああああ!? この声はゼノヴィア!? だ、誰だ!? ん? 用具室? 確かイチ兄が逃げ込んだ場所……うぉおおおっ!!
俺は魔力を足に込めて用具室の扉を蹴飛ばした。
吹き飛ぶ扉を呆然で見るのは今にも半裸のゼノヴィアを押し倒そうとするイチ兄……ブチィっと俺の頭の血管がキレた。
「ま、待て! 双葉これ、これは誤解だ!」
「安心しろ、イチ兄。俺はただの一発で済ます」
俺の後ろから皆が走り寄ってくるが、リアス先輩がブチ切れていらっしゃる。
まぁ、俺も教育的指導で一発殴らせてもらうが。
「イッセー、あなたって子は」
「違いますよ! ほら、ゼノヴィアお前もなんか言えよ!」
「……初めてが見られながらか。いいだろう! さぁ、イッセー私を抱け!」
「とんでもねえこと言ってんじゃねえぞ元シスター!? というか貞操は大事にしなさい!」
俺はゼノヴィアの頭を掴むとズリズリと引っ張っていく。
イチ兄にはリアス先輩だけで大丈夫だろうが、この色ボケシスターには一度説教しないと駄目らしいな。
「待て、双葉。私はお前の兄から子種を貰いたいだけなんだ! 私は強い子を産みたいという願望が」
「分かった分かった……とりあえず正座で説教だ」
この日以来、ゼノヴィアは俺をマスターと呼ぶようになった。
そして正座で説教というのがゼノヴィアを止めれる唯一の手段となったが、説教してもゼノヴィアがイチ兄の子種を狙うことは止めることはなかった。
理由を聞いてみるとこれまた単純で、悪魔になったからやりたいことをすればいいとリアス先輩に言われて、以前から興味があった子育てというのがしたくなったそうだ。
正確に言えば強い子を産みたいということらしいが、そこでドライグを身に宿すイチ兄に目をつけたそうだ。
俺はというと戦友として見ているのでそういう目線にならないそうだ。
そんなこんなで波乱に満ちたプール開きは終わりを迎えた。
****
壊したプールサイドを修復し終わり、俺は一人で帰っていた。
イチ兄たちは先に帰らせた。
リアス先輩たちは最後まで食い下がったが、俺が悪いからという理由と修復の魔法を練習したかったので一人でやらせてもらった。
そして日も暮れた頃、ようやく俺は帰ることが出来た。
まぁ、ソーナ先輩に報告されたら説教されただけなんだがね。修復自体は三十分で終わったから。
「ん?」
首を鳴らしながら、校門に向かうとそこにいたのは校舎を見上げる銀髪の青年だった。
外国人だろうか? うちの学校、意外と留学多いんだよな……まぁ、異能力者ばっかなんだが、もしかしてコイツも?
俺に気づいたのか校舎から目を離し、俺の方をまっすぐに見る。
澄んだ青い瞳が俺を射抜きながら、天使のような笑顔でこちらに微笑む。
「やぁ、いい学校だね」
「……あぁ」
この声、どっかで聞いたことがある。
つい最近だ……どこだ? こんなヤツなら記憶に残ってもおかしくないんだが。
ふと彼の銀色の髪を見つめる。
綺麗だ、まるであの時見た白銀の鎧……白銀!?
「お前、まさか?」
「気づいたのか? 敵意は見せていないが……まぁいいか。俺の名前はヴァーリ。今代の白龍皇さ。よろしく、今代の黄金騎士、兵藤双葉」
やっぱりか……プレッシャーは感じないが、背中から生えた光翼からとんでもない力を感じる。あれがブーステッド・ギアと対をなす
人生で一度会えばめっけもんどころか会えないことのほうが多いんじゃなかったのか? 神滅具ってやつは。十三個あるうちの二つに出会ったぞ、この野郎。
「俺のコレを見たら震え上がるか、何かしらリアクションを見せるべきだと思うんだが」
「悪いがここ数ヶ月で嫌というほど予想外のものに出会ったんでな。俺を驚かせたきゃ、神かそれに準ずるもの持って来い」
ため息を付きながら、歩き去ろうとする。
「オイオイ、俺が戦えばキミは死ぬぞ? 何もしないのか?」
「する気もないだろ? お前さんだって魔王がいるこの町で面倒事は嫌だろう?」
「……ふむ、今代の黄金騎士は頭も冴えるか。お兄さんとは大違いだな」
俺の目が細まる。
……イチ兄に何かしやがったのか? そう目で言うとヴァーリは肩をすくめて、首を横にふる。
「話しただけさ。それに正直、戦うならキミとやるほうが楽しそうだ」
「面倒くさいからパス」
俺はため息を付きながら、ヴァーリに背を向ける。
極力体の震えを隠しながら、走ろうとする俺の足を必死に抑える。
勝てない、プレッシャーは感じないが圧倒的な実力差くらいはわかるし、その気になればこいつはこの辺り一帯を破壊し尽くすほどに強い。
ヴァーリの笑い声が背後から聞こえる。
「アザゼルからの伝言だ。『近々会いに行く』、確かに伝えたぞ、黄金騎士」
俺はそれだけ聞くと全速力で走り出す。
そのまま自宅に帰宅すると、着た服のままベッドに潜り込み、必死に体の震えを止めるために目を閉じた。
その日、俺はヴァーリによって全てが壊される悪夢を見た。
気づくと一万字書きそうになるのが怖い。
ちなみに双葉の各ヒロインへの感情。
姫島朱乃・頼れる先輩、いたずら好きだけで無意識に一目惚れしてるので話しかけづらい。
アーシア・アルジェント・妹みたいなもの。スキンシップも甘える事なんだろうな。ただし嫁へは俺とイチ兄ぶっ倒してからにしろ。ただし素手でな!!
塔城小猫・マスコット兼癒やし役。尻尾と猫耳を触りたい、でも嫌がるだろうしやめとこ。
鈍感すぎぃ!! まぁ、この鈍感にも理由が……そこは結構あとになりますが、必ず描写します。