ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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他人からの評価って気になるよねって話。


番外編 スクープ! スクープですよ!

**天津芽衣(めい)視点**

 

 

 

 兵藤双葉という人間の評価は普通でした。

 同じクラスでしたが、成績がそこまで良いわけでもなく、生活態度には問題なし、これだけなら普通の生徒、少なくとも私の評価はそうでした。

 だが彼には秘密がある、私は見たんです……彼が人間とは思えない跳躍力で飛んでいる姿を! この前は逃げられましたが私は絶対にスクープにしてみせます!

 

 

 

****

 

 

 

「ふーたーばーくんー」

「げぇっ!?」

 

 朝、早速彼に話を聞くために話しかけましたが、彼は青い顔をしながら脱兎のごとく逃げ出してしまいました。

 その足の速さは風のよう、傍から見ても陸上選手以上の脚力だってわかります。

 ここ一週間くらいチャレンジしてますがこうやって逃げられるんですよね。

 やはり彼には秘密がある! まさか新聞部として入部してはや二ヶ月、射命丸先輩の下で一年過ごすかと思ったら、こんなスクープを! むふふふ、楽しみです。

 

「双葉に何か用?」

「いえいえ、少し聞きたいことがあったんですけどね。逃げられちゃいました」

 

 私に話しかけてきたのは塔城小猫ちゃん。

 我がクラスのアイドル兼マスコットです……可愛いなぁ、同性の私でも癒されるそのミニマムボディ。うぅ、写真を撮りたい! でも我慢です。

 おや、そういえば小猫ちゃんは双葉くんと仲が良かったはず……というかホの字であるってのはクラスでの周知の事実です。

 まぁ、残念がる男子と女子が多かったですねえ。彼って普通にしてるとカッコいいんですよね、最近雰囲気というか体格が良くなって二年の木場先輩と並んで隠れファンが多いみたいです。

 おっと、そんなことよりも取材取材。

 

「小猫ちゃん、双葉くんってどんな人ですか?」

「……どういう意味?」

 

 あ、あらー? なんか小猫ちゃんの視線が怖いです。

 手を振って、取材であることと双葉くんを狙っていないことを伝えてようやく小猫ちゃんは話してくれました。いえ、実はお菓子で釣ったんですけどぺろぺろキャンディーを舐める姿がめっちゃ可愛いです、はい。

 さて、メモ帳出して準備準備っと。

 

「お人好しですね」

「ほうほう、そこに惚れたんですか?」

 

 小猫ちゃんが赤面してクラスの何人かが鼻にティッシュを詰めてますね。

 いやぁ、惚気話で一本書けるかも。

 

「ほ、惚れてなんかいないです」

「いやいや、お似合いですよー……そうですねー、双葉くんって何かスポーツをしてるんですか? 妙に体格がいいんですけど」

 

 友人の筋肉フェチの子が妙に興奮してたんですよねー、なんかすっごいいい筋肉してる子がいるって、その子は服の下からでも筋肉が見えるらしいですけどよく分かりません。

 小猫ちゃんは考えこむ姿勢を取ると話しだしました。

 

「……朝に自主トレーニングしてるって聞きました。双葉のお兄さんに聞けば詳しく聞けるかも」

「双葉くんのお兄さん……えぇ!? 無理ですよ! あの野獣イッセーじゃないですか!!」

 

 情報はありがたいですけど無理です!

 あの変態三人組に話しかけたくはありません! あのリアスお姉さまを謎の催眠で自分のものにしたとか聞きましたもん!

 で、でも、せっかくの情報なのに……うーん。

 そう私が悩んでいると、小猫ちゃんは手をポンと叩いて助け舟を出してくれました。

 

「木場先輩はどうですか?」

「行きます! 行きます!! ぜひ行かせてください!!」

 

 あのイケメン王子! 木場祐斗先輩ならぜひ行きたいです!

 以前遠目から見ましたがあのイケメンに甘いマスク! 女の子ならメロメロですよ~……ハッ! いけないけない! これは取材です! あわよくばお近づきになるとか考えていません!! えぇ、一回写真を取るなんて思っていませんから!

 次の休み時間に行こうかなと考えているとキンコンカンコンと始業のチャイムがなり始めました。しかし双葉くんの姿は見えません。

 くっ、帰ってこないつもりですか双葉くん! いいですよ! まずは外堀から埋めてあげますよ!!

 私は席に戻り、ふと後ろを向くとサラッと双葉くんがいました……い、いつの間に! やはり彼には秘密がありますよ!!

 

 

 

****

 

 

 

「双葉くんのことが聞きたい?」

「はい! 小猫ちゃんから仲が良いと聞いたので」

 

 次の休み時間、私は早速木場先輩の元へ行きました。

 いやぁ、ホントイケメンですね! 後ろから女子たちの視線が集まりますがこれは情報収集です! 決してやましい思いは……少しありますが、今は我慢です。

 木場先輩は考えこむとにこやかに笑いながら快く了承してくれました! ホント、イケメンっていいですね! 心までイケメンですよ!

 

「それで何が聞きたいのかな?」

「えぇっと、木場先輩から見た双葉くんはどういう人物なのかということを」

「うーん、そうだね。危なっかしいかな」

 

 木場先輩はにこやかにそう答えてくれました。

 ほうほう、それは何故ですか?

 

「彼ってスイッチが入ると自分の身なんて二の次三の次で頑張ってしまうんだよ。それこそ自分の体が傷ついても構わないくらいに」

「そうなんですか?」

 

 お人好しなのはわかる。双葉くんはよく、クラスの手伝いとか率先してやるし頼まれたら基本的にやってくれる。

 だがそこまで頑張る姿を見たことがない私にとっては意外だ。

 どっちかというと彼は怠惰なような気がする。

 授業中はよく寝てるし、でも起きた途端数学の問題を解ける彼ってもしかして天才だったりする?

 

「僕は彼と出会ってまだ数ヶ月だからね。やっぱり兄であるイッセーくんに聞くのが良いと思うよ」

「木場先輩まで~」

 

 うぅっ、やっぱり聞くしか無いのかなぁ。

 本当に泣きたい気分になると、木場先輩は少し困ったような顔をしながら頬を掻く。

 

「うーん、じゃあ部活で聞いてみるかい? 今日は双葉くん、生徒会に顔出しするとかで来ないから」

「生徒会?」

「あれ? 知らないのか。彼って生徒会に入ったんだよ」

 

 し、知らなかった……射命丸先輩が聞いてたら笑われますよ。

 情報は命、誰よりも率先して持たないとって言われているのに! にしても生徒会かぁ、オカルト研究部で忙しいと聞くのに、掛け持ちして大丈夫なのだろうか?

 うーん、それにこの時期から生徒会の役員になるってのはやっぱり彼には秘密がありますね!!

 

「僕から部長に言っておこうか?」

「じゃあ、お言葉に甘えます」

 

 実はやったーと思ってたりする。

 あのリアスお姉さまや朱乃様、転校生のアーシア・アルジェント先輩にゼノヴィア先輩と美少女が集まる部活というオカルト研究部にいけるとは!!

 双葉くんに感謝しなきゃね! これはスクープ待ったなしですよ!!

 

 

 

****

 

 

 

「粗茶です」

「ど、どうも……」

 

 と考えていた時期が私にもありました。

 実際に対面するとこれまた緊張します。学園のアイドルたちが目白押しと言うのは一般生徒の私にとってはキツイです。

 あっ、一人は除きますがよく双葉くんはこんな場所にいられるなぁ……はっ! やはり秘密があるんですよ! 隠された力とか!

 

「それで天津さんだったわね。祐斗から話は聞いてるわ、双葉について聞きたいそうね」

「そ、そうなんでしゅ! ……はわ、はわわわ」

 

 クスクスと笑うリアスお姉さまなんですけど、私は赤面して俯いてしまいます。

 うぅ、緊張しすぎて噛んでしまいました。

 

「そう緊張しないで? でも双葉のことをなんで知りたいの?」

「えっと、その……私、新聞部の新人でして! ちょっとした学園のこととかを特集する企画を頼まれたんです! それで同じクラスの双葉くんがいいかなぁって思いまして」

 

 嘘だが仕方ない。

 マンガやアニメ見たく跳びはねる彼を見たとか頭の病院を紹介されるに決まっている。

 リアスお姉さまにそんな事されたら不登校になってしまいます。

 

「ふーん……そうねえ、心配かける子よ。本当に」

「えっと、具体的にはどんな風に?」

 

 リアスお姉さまはため息を付きながら口を開く。

 

「気に入らない相手には突っかかる、相談もなしに一人で独断専行、誰かの為にやるのにそのくせ自分の悩みとか打ち明けないのよね」

「へえ……にしてもリアスお姉さ……リアス先輩は詳しいですね」

 

 双葉くんと出会って数カ月程度なのに随分と詳しい。

 すると朱乃様がにこやかに笑いながら私に話しかけてくれました。

 

「ふふっ、でも男の子は手のかかるくらいが可愛いんですよ。そうだわ、知っていらっしゃる? 彼って方向音痴で、入学式にここの森で迷ってたんです」

「あぁ、アレですか」

 

 思い出した。クラスの紹介の時に一人だけいなくて、最後にボロボロで木の葉っぱとかくっつけた彼が来たんだったんだ。

 一時期モリゾーとか言われてからかわれてましたね。

 へえ、方向音痴……ふむふむ。

 

「あと私が初めてこの町に来た時に案内してくれたのも双葉さんなんです」

「優しいですね」

 

 アーシア先輩の笑顔が眩しい。

 本当に年上か忘れるが、持ち前の明るさですぐに溶けこんで密かに人気を高めているんですよね。というか聖女様てのがいるのなら彼女みたいな人なんでしょうねえ。

 ……あっ、そうだ。アーシア先輩に聞きたいことあったんだった。

 

「実はクラスで双葉くんから女の人の匂いがするっていう話があるんですが……未確認ですがアーシア先輩の匂いだとか」

「ふぇ!? ち、違います! 毎日いっしょに寝てるとか……あっ」

 

 一緒に寝ていると……一緒に!?

 

「アーシアさん!? リアス、私は聞いてないですよ!?」

「あぁ、だから黙っていたのに……アーシア、口をチャックしておきなさい。あとごめんなさいね、天津さん。今日はお開きにしてもらえるかしら」

 

 な、なんだかとんでもないことをしてしまったような?

 アーシア先輩が朱乃様に詰め寄られていますし、アーシア先輩も泣きながら「だって双葉さんと一緒に寝ないとねむれないんですぅううううう!」とかとんでもないこと言っているんですけど。

 ……えっ? 何? 双葉くんって実はモテる? いや、モテてました。

 

「……小猫ちゃん、大変ですね」

「そもそも双葉、気づいていませんから」

 

 えぇ!? 実は双葉くんってプレイボーイかクズ野郎って……あぁ、そういえばあの人、告白されても告白と思わずにスルーするっていう朴念仁でしたね。

 こりゃ苦労しますよ、小猫ちゃん。

 

「小猫ちゃん、何かあったら手伝いますよ」

「……お願いします」

 

 結局、この後、言い合いになる二人に追い出される形で私はオカルト研究部から出ました。

 あっ、そういえば野獣イッセーに話聞いてないけどまぁいいや……でもこれだけでも十分記事に出来ますよ!

 

 

 

****

 

 

 

「うーん、大収穫です!」

 

 メモを読みながら私は満足気に帰路につきます。

 にしても双葉くんって結構人気者でしたね、というか女のに小猫ちゃん、朱乃様にアーシア先輩に好かれてる事実を知って嫉妬しそうです。

 あぁ、たまに双葉くんがお昼にアーシア先輩とかと食べてるっていう噂は本当なんですね。くぅー、羨ましいです!!

 

「あっ、そうだ。今日みたいテレビあったんでした」

 

 私はふと立ち止まって腕時計を見ます。

 急げば間に合いそうですけど、どうせなら近道をしましょう! 路地に入ればいいんです!

 ……けどこれは間違いでした。

 

「あれー? こんなに長かったっけ?」

 

 確か数分しか通らないはずなのに、中々出口に出ない。

 おかしいなぁ? この道は近道だったはずなのに……そう思っている私の前に、スーツ姿の男性が歩いてきました。

 うぇえ、この道狭くて一人くらいしか通れないのに。

 けれど私は偉い子です! 道は譲ります! 脇に逸れて道を開けようとするといつの間にか私の目の前に、男性が立っていました。

 あ、あれ? いつの間に? そんなことも思う暇もなく、男性は私の肩を掴みました。

 万力のように強い力で掴まれて、私は痛みと恐怖で短く叫び声を上げました。

 

「いいねえ、ここの町に来てから第一号が君みたいな可愛い子で」

「ひっ――――」

 

 首筋を舐められたッ!!

 気持ち悪くて涙が勝手に溢れ出します……誰か助けてよぉ。

 私の表情を見ながら、男性は益々悦の入った表情で私を見つめる。

 

「存分に叫び声を上げてくれ。結界は張ったから誰も来ない……趣向を変えよう。食いながら犯すってのはどうだろうか?」

 

 ビリリっと言う音とともに、私の制服が男性に破かれました。

 反射で手で肌を隠そうとしますが、男性に手を抑えられて身動きが取れません。

 嫌、いやぁ……こんな奴に見られたなんて。

 

「うーん、やっぱり若い子の肌はいい……大丈夫さ、すぐに気持ちよくなる」

「何言ってんだこの変態」

 

 突然、男性の体が吹き飛びました。

 そして腰が抜けて、倒れようとする私の体を誰かが……いえ、双葉くんが優しく抱きとめてくれました。

 彼は吹き飛んだ男性を睨めつけながら、制服を脱いで私の肩にかけてくれました。

 彼の姿を見ます……下着を着ていなかったのか、鍛え上げられた上半身が見えて赤面しちゃいます。

 

「悪いな、臭うけど我慢してくれ」

「誰だよぉおおおおっ!! 俺の食事の邪魔してくれやがったのは!!」

「ば、化物ッ!?」

 

 男の姿はもはや人間ではありませんでした。

 言うなればゲームで出てくるミノタウロスっていう牛の化物みたいな感じです。

 私は怯えて後ろに下がりますが、双葉くんは睨みつけながら一歩前に出ます。

 だ、ダメっ!

 

「ふ、双葉くん逃げましょう! 殺されちゃいますよ!!」

「逃がすわけがないんだろぉおおおお!! 男の肉は好きじゃねえんだ!! サンドバックにして殺してやるよぉおおおお!!」

「うるさいなぁ……まぁ、安心しろ……えーと名前なんだっけ? もう面倒だからパパラッチ短くしてパチ子な」

 

 ふ、ふざけてる場合ですか!! てか名前を覚えてないって酷いっ!! パパラッチってなんですか! 私は記者の卵なんです!!

 そんな様子にミノタウロスは怒り狂ったのか、頭を前に突き出して突進してきます。

 あ、あんな突進が当たったら死んじゃいますよ!!

 でも双葉くんは逃げるどころか、拳を握りつつ構えて……迎え撃つつもりですかっ!? 無茶ですよ!!

 

「人間のくせに……生意気だなぁああああッ!!」

 

 私は目を背けました。

 激しい音がしました……けれども聞こえてきたのは血が滴る音ではなく、ミノタウロスの驚愕の声でした。

 

「ど、どうして受け止められるんだっ!?」

「力が弱いんだよ……それに毎日イチ兄がコレ以上の突進してくるんだ、受け止められるに決まってんだろ」

 

 目を開けておそるおそる見ると、片手でミノタウロスの体を受け止めている双葉くんがそこにいました。

 ……自分の目が信じられません。

 ぽかんとしていると双葉くんが空いている手をこちら……に……あれ? なんかねむ……い。

 

「悪いが寝ててくれや、大丈夫。起きたら全部夢だったと思うから」

 

 そんなセリフを聞いた直後、私は耐え難い眠気に負け、意識を手放しました。

 

 

 

**双葉視点**

 

 

 

 全く、生徒会の仕事という名の買い出しを放り出して来てみたらクラスメートがはぐれ悪魔にチョメチョメされかけてた。

 エロゲかよ? 相手もミノタウロスみたいな奴だし。

 てか眠りの魔法うまく出来てよかったよ……まぁ、あとは生徒会やリアス先輩に任せても良いんだがな、コイツは許さん。

 

「な、なんなんだよ!! 俺の飯の邪魔をしやがって! ……まさかエクソシスト!?」

「残念、魔戒騎士だ」

 

 受け止めている手のひらに魔力を集中させ、そのまま打ち出す。

 小規模の爆発がミノタウロスの頭部で起こるが、俺は気にせずそのまま蹴り飛ばす。

 ゴムマリのように飛んで行くミノタウロスを見て溜息をつく。

 うん、すごく弱い……ていうか、今の蹴りで瀕死になってるよ、コイツ。

 

「う、嘘をつくなぁああっ! 俺にはわかる、お前力隠している悪魔だろ!! 人間に混じって人外の匂いがするぞぉおおっ!!」

「悪いが魔力が使えて、剣が振れる人間だ。あとお前さん、ここを治めてる悪魔誰かわかってやってんのか?」

「知らねえよぉおおおっ!! 俺は食いたい時に食う! 年若い女の肉って美味いんだぞ! 柔らかくて! そして頭を最期まで残すと断末魔の叫びが――――ぐぶぉっ!?」

 

 転がるミノタウロスの首元を強引に持ち上げて腹部にストレートを打ち込む。

 そのまま蹴りも加えて、連打していく。

 ……ゲス野郎がッ!!

 

「やめっ、やめて!! 悪かったよぉおおっ! そいつはもう食わないから見逃してくれよ! なぁ、弱い者いじめはイケないって教えるんだろう? 人間ってやつはさぁ!!」

「あぁ、そうだな……だがお前も食事をするときにやめてって言って止めたか?」

 

 アッパーカットでミノタウロスの体を上空に打ち上げる。

 俺は壁を蹴り上がりながら、魔戒剣を取り出して刀身に魔力を集中させて開放する。

 

「やめろぉおおおおっ!! 俺が何したってんだよぉおおっ! 俺は、俺はぁああああっ!!」

「俺のクラスメートに手を出した、それだけで十分だ。地獄に堕ちろ、牛野郎ッ!!」

 

 振りかぶって頭から一刀両断する。

 屋上に着地するとベシャっと音を立てながら真っ二つになった牛野郎が落ちてくる。

 ふぃー……弱いやつでよかったよ。

 

『鎧を召還するまでもなかったな』

「あぁ……にしても、リアス先輩の領地ってわかってたんかね、コイツは」

『分かってなかっただろうな。にしても良いのか? あんなことすりゃ、お前さんもっと付きまとわれるぞ。もうちょいうまい方法とかあっただろ』

 

 仕方ないだろ、体が勝手に動いたというかなんというか。

 それに結界を張るレベルのやつだから放っておくわけにはいかなかったし、クラスメートが襲われてたら誰だって助けるだろ。

 にしてもどうすっかねえ、この死体……そんなことを考えていると見慣れた魔法陣が展開され、中からリアス先輩が出てくる。

 

「双葉!?」

「あぁ、ちょいと遅かったですね。終わってますよ」

 

 指を指し、真っ二つにした牛を見せるとリアス先輩はため息をつく。

 あ、あれー? ほめられるかと思ったのに。

 

「全く……それで被害者は?」

「あそこに倒れてる子ですよ」

 

 リアス先輩は屋上から路地を見下ろし、パチ子を見る。

 あぁ、そういえば俺の制服アイツに貸しっぱなしだわ。

 

「天津さんね……あなたを嗅ぎまわってたから使い魔で少し警告しようと思ってたけど、まさかはぐれに出会うなんて」

「記憶の処理とか、衣服の修繕とか出来ますか?」

 

 リアス先輩は頷く。

 よし、ならアイツをこっちに持ってくるか。

 屋上から飛び降りて、近くに着地する……うわぁ、幸せそうな寝顔。さっきまで恐怖で怯えてたとか嘘くせえ。

 ったく、面倒なクラスメートだが感謝しろよ? ソーナ先輩に怒られるかもしれないのに。

 

「むにゃむにゃ、うへへ、スクープですよ~」

「何がスクープなんだか」

 

 はぁ、と溜息を付いてパチ子をおんぶする。

 ……おぉ、結構胸ある。

 まぁ、このくらいはいいだろう。どうせ起きたら全部忘れてるだろうが。

 

「今度は近道なんてすんじゃねーぞ」

 

 俺はそうつぶやくと足に力を込め、一気に屋上まで飛び上がった。

 

 

 

**芽衣視点**

 

 

 

 昨日の帰り道からの記憶がありません!

 母さんに聞きましたがふらふらして制服も脱がずに寝ていたと……うーん? そんなに疲れてましたっけ? でも体は元気満点です! 見たかったテレビは見れませんでしたが!!

 とりあえず学校に行き、自分のクラスへ行きます!

 そうして歩いていると後ろから声をかけられました。

 

「おう、おはよう」

「おはようござ……あれ? 双葉くん?」

 

 眠そうな顔をしながら歩いてきた彼は、あくびをしながら私に挨拶してきました。

 むむむ!? いつもなら逃げ出すのに? 怪しいですねえ、これは怪しい!

 取材ですよ!! 取材!

 

「どうしたんですか? 逃げてばかりだったのに」

「逃げるのに飽きたから……で? 俺に聞きたいことってなんだ?」

「むっ! 余裕ですね! 私は……私は……あれ?」

 

 そもそもなんで双葉くんにこんなに興味を持ったのでしょうか?

 あれ? あれあれあれー? 記憶にモヤが掛かったように思い出せません!

 すると双葉くんは苦笑しながら私に言います。

 

「思い出せないってことはどうでもいいってことだろう?」

 

 そう、なんでしょうか?

 気になります、気になりますよー!! ……でもなんだか、双葉くんの言う通りかもしれません。忘れるっていうのは案外どうでもいいことなのかもしれません。

 双葉くんはそれだけ聞くと歩き去ってしまいます。

 むむっ……あれ? でもなんか思い出しました!! 私思い出しましたよ!!

 

「双葉くん! アーシア・アルジェントさんと一緒に寝てるって本当ですか!」

「思い出すのそこなの!? あっ、ちがっ、待て待て話を聞けステイステイ!!」

『ギルティイイイイイイイイイイイイイイイイ!!』

 

 うにゃあああああああああああという叫び声を上げながら、双葉くんは異端審問会(自称)に追いかけられ始めます。

 なんだかよく分かりませんがすっきりしましたし……そうですよ! 双葉くんは学園のアイドルに注目される人! 彼を特集すれば射命丸先輩に褒められます!!

 

「あっ、待ってくださいよー。朱乃様や小猫ちゃんのことも聞かせてくださいー」

「ふっざけんなぁあああああああああああ!! 金輪際、人助けなんかしねえぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 絶対にあなたの記事を書きますよ! 双葉くん!

 私の名前は天津芽衣! 記者の卵です!!

 

 

 




◯天津芽衣
 オリジナルキャラクターであり、双葉の超常的な身体能力を目にして記事にしようとするミーハーな感性の持ち主。だが写真の腕前は結構あり、過去に入賞とか度々している実力者。今回は運悪くはぐれに出会ったが、コレ以後超常的なことには巻き込まれなかった。
 以前からこういうキャラ出してみたかったのとサブキャラクターも必要じゃね? と思った作者が追加したキャラである。出番は少ないがたまに出るかも?

◯射命丸文
 某東の方のキャラであり、原作同様天狗だが天狗であることを隠して駒王学園に通っている。多分出てくることはない。彼女が発行するブンブン丸新聞は結構好評で、生徒たちが毎月楽しみにしていたりする。

◯ミノタウロスっぽい牛野郎
 本名はハインツ・グリンデ。中級悪魔で、見た目によらずパワータイプではなくテクニックタイプの悪魔。主を殺したわけではなく、別のはぐれが主を殺害した際に逃げ出したらしい。人間界では度々事件を起こしていたようで狙われていたが持ち前の結界で逃げていた。ちなみに死体は双葉によってバーベキュー(魔導火の実験台)にされて灰となった。


 番外編終了、会談編イクゾー!!(デッデデデデカーン)

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