ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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アーッ! サンキューサーッ♂(ダーク♂潮干狩りなどの要素はございません)



戦いの後に

 コカビエルどころか、アザゼル、白龍皇、呀という予想外の襲撃者もいたがなんとか事態を終息させて数日間、俺は自宅待機を命じられていた。

 因子を体に埋め込まれた影響、限界まで鎧をつけた後遺症の経過を見ていたせいだ。

 因子は体から抜けていたためそこまで影響がなかった、思った以上に鎧の後遺症が酷かったらしい。……戦いが終わるたびにぶっ倒れてませんかね、俺。

 毎日毎日、お見舞いに朱乃先輩が来るので父さんとかがどもってた。

 でも見た目超絶美少女だからなぁ、朱乃先輩。礼儀正しいし、なんかアーシアとバッチンバッチン火花散らしながら俺の看護をやってたが。

 今日は放課後だけ登校して、校庭に突き刺さったままの牙狼剣を回収していた。

 リアス先輩たちが人よけの結界と地面の陥没ということで、校庭に人を立ち入れずにいた。実は、この魔戒剣、何故か女性は絶対に持てないという不思議な特性を持っていたりする。

 牙狼剣を引き抜き、鞘に収める前にじっと刃を見る。

 ……俺は、黄金を取り戻すことは出来るんだろうか? あの光はあの子達とアルトリアさんのおかげで得た光だ。

 先代のすさまじい強さと力強い光を見て、正直嫉妬した。

 俺の鎧は徐々に金色が戻っているとはいえ、ほとんどが黒だ。……魔戒騎士の鎧は使用者の精神を反映してその形と色に変わっていく。つまり、俺が黄金を取り戻せないのは精神が未熟なんだろう。

 

『自分を卑下するな、小僧』

「ザルバ……」

『確かにあの光は人々の祈りが形になったものだが、ただの祈りではあそこまで光らないさ。焦るな、お前さんは十分すぎるほど頑張っているよ』

 

 ……な、なんかこそばゆいな、いつも辛口なザルバがどうしたよ。

 

『だがお前さんは不安定だ。その激情を捨てるなとは言わない、制しろ。あと暗黒騎士、奴は危険だ』

「……心滅のその先、だったか?」

『あぁ、そうだ。心滅獣身、その先にある禁断の力、闇を喰らい打ち克った者だけが到達する禁忌だ。いいか? 心滅獣身ならまだ戻れる、だが暗黒に呑まれたら二度と帰って来れないぞ……心しておけ、どんなに強靭な精神を持っていようが闇はお前らを狙っている』

 

 剣を鞘に戻し、栞に入れる。

 ……禁忌の力、か。だがアイツへの異常までの嫌悪感と危機感はなんだったんだ?

 わからないことだらけだし、ため息を付きたくなるが……。

 

「強くなるしか無いんだろうな、もう」

 

 ここまで巻き込まれたら開き直るしか無いし、あの子達と約束した。

 俺は黄金騎士なんだと、守りし者として守ると。

 嘘はつきたくない、最後に見えたあの子達の笑顔だけは曇らせたくないんだ。

 

「双葉、もう出歩いて大丈夫なのか?」

「匙先輩とソーナ先輩?」

 

 声が聞こえそちらを向くと、匙先輩が片手を上げながらこちらに歩いてきた。

 ソーナ先輩はいつもの涼しげな表情でいる……あぁ、そうだ、先日の匙先輩の件で謝らねえと。

 

「ええ、大丈夫です……あ、あのソーナ先輩、すいませんでした。勝手に動いた挙句、匙先輩を巻き込んで」

「……そうですね、この後リアスからたっぷりと説教されるでしょうからあなたへの説教は止めておきましょう。匙にはもうお仕置きは済ませましたし」

 

 ガクガク震えながらおしりを抑える匙先輩に、俺は目を背ける。

 確かお尻叩き千回だっけ? イチ兄もそれをリアス先輩からやられたらしいが……俺もやられるのか? 嫌だよ、ケツが割れるよ、俺人間だよ。

 

「でも平気そうでよかったよ。会長なんか心配して、ため息が……モゴッ!?」

「余計なことは言わないでいいのです……コホン、兵藤双葉くん」

「えーと、双葉でいいですよ? ソーナ先輩は上級生なんですから」

 

 そう言うと何故か会長は顔を俯けてしまう。

 ん? なんか俺変なコト言ったか?

 

「で、では双葉。あなたにも罰として生徒会の仕事をこれから手伝ってもらいましょう。今からあなたは生徒会雑務兼便利屋です」

「えっ!?」

 

 聞いてない聞いてない! というか生徒会!? なんか俺生徒会に入ることになってる!?

 

「リアスからは既に了承を得ていますし、『今回の件で双葉には首輪をつけ置きましょう』ということです」

 

 リアス先輩ぃいいいいいいいい!!

 というか生徒会とか俺やったこと無いんだが、大丈夫かな。むしろこの時期に入っても良いのだろうか?

 

「これで正式に俺の後輩ってわけだ。可愛がってやるぜ、双葉」

「お、お手柔らかに」

 

 引きつった笑みを浮かべながら、肩を組んでくる匙先輩を見る。

 あー、退屈はしなさそうだわ、ホント。……とと、そろそろオカルト研究部に行かないとな。

 俺は先輩たちに一言断りを入れる。

 

「すいません、そろそろ部室の方に顔を出さないと」

「おう、こってり絞られてこい」

「……ではまた後日、同じ一年生の子を送りますので。では双葉、お気をつけて」

 

 手を振られながら、俺は駆け出す。

 体に魔力を流しながらぴょーんと飛んでいくが今は放課後で、この前のコカビエル戦の影響で部活動は休止しているはずだ。のびのびと行こう。

 と甘く考えていたのが悪かったのか。偶然残っていた生徒に発見され、後日問いつめられることになるがそれはまた別の話になる。

 

 

 

****

 

 

 

「おっ、来たか。やぁ、双葉」

「……なんでお前がここにいんのっ!?」

 

 なんとか追跡を振り切った俺は部室の窓に着地し、部室内に入るとうちの制服を着たゼノヴィアが笑顔で出迎えてきた。

 いやいやいやいや、なんでいんだよ!? てか、お前さん普通に茶菓子食ってるけどこの前、私悪魔嫌い、食うもんかとかそんな感じだったじゃないか。

 何小猫と一緒にモグモグ食ってんだよ!! てか誰か突っ込んで!!

 

「な、なんでここに?」

「こういうことさ」

 

 バサッという音をしながら、ゼノヴィアの背中から見慣れた黒い翼が生えていた。

 あぁ、悪魔になったのね、それならここにいても――――しょうがねえわけあるかぁああああああああああああああああ!!

 

「おま、お前、馬鹿じゃねえの!? お前教会側の人間だったじゃん! 人が寝てる間に何してんだよ!!」

「神がいないと知ってやぶれかぶれ……と言いたいんだけどね。私はあの時、キミ達と戦い、悪魔と戦うことに疑問を持ってしまった。もうあそこでは戦えない、しかし帰れる場所もない私にリアス部長が勧誘してきたんだ。悪魔の誘いってやつだな」

「結局はやぶれかぶれじゃねえか!! てかいいのかよ、お前はエクスカリバーの使い手でなおかつデュランダルの使い手っていう、教会でも屈指の戦力だろうよ」

 

 そういうとゼノヴィアは目を伏せながら、どこか達観した表情を見せる。

 

「神の不在を言ったら面白いように爪弾き者にされたよ。……デュランダル使いであろうとも切り捨てるとは思わなかったよ。尊敬の眼差しが侮蔑の眼差しに変わった時は流石に堪えた」

 

 ……そうか、アーシアの時と同じか。

 異端であればどんな有用な人材であろうと切り捨てる。ほんと天使側は何を考えてるんだ、ここまで異端を排除するなんてよっぽどの理由があるのか、それとも本当に切り捨てているだけか。

 あっ、そうだ、エクスカリバーはどうしたんだろうか? 師匠が派手にへし折ってたけど。

 

「エクスカリバーの核はイリナに託したさ。デュランダルと違って、アレは替えが効く。恐らく修復されて別の使い手に託されるか、封印されるだろうからね……八本目に関してはリアス部長に聞いてくれ」

「双葉、話したと思うけど八本目。『堕天の聖剣』はコカビエルの願いもあってあなたが使い手に選ばれたわ」

「……いや、俺よりもゼノヴィアの方が良いと思いますよ。なんせ、俺適正ゼロらしいですし」

 

 家で寝ている時、リアス先輩に言われたのだが、コカビエルが持っていた八本目のエクスカリバーは俺に譲渡される運びになったそうだ。

 元々、悪魔は聖剣に興味はないし教会の交渉材料にもなるが、今回の事件への褒美という形らしい。今は、ボロボロになった刀身を修復しているらしい。

 ……でも、俺バルパーが言うには適正ゼロだし、あの時は皆の力があったからこそ振れたようなもんだしな。

 

「大丈夫だと思うよ。基本的に聖剣というのは持ち主を選ぶもの。キミなら振れるさ、双葉くん」

「師匠……でも憎くないんですか? アレは」

「もういいのさ。確かに思うところはまだあるし、この悩みは一生消えない。けれど僕は復讐に生きることは辞めたんだ。同志たちの分までしっかりと生きる、これが僕の誓いさ」

 

 スッキリした表情で笑う師匠の顔には、もうあの時見えた闇は見えてこない。

 ……もう大丈夫みたいだな。

 あぁ、そうだ。バルパーとかイリナとかは。

 

「バルパーは教会に引き渡したよ。ちゃんとキミの言葉を向こうに伝えたから一生独房の中だろうね。イリナは……運が良かった。戦線を離脱していたおかげで、神の不在を知らずに済んだのだから。おそらく次会うときは敵同士だけどね」

 

 目を細めながら外を見るゼノヴィアの心情は分からないが、自分の身をかけてでも守りたかった親友と戦うかもしれないという心情は俺にはわからない。

 リアス先輩は部室内を見渡すと、話を切り出した。

 

「今回の件で堕天使側、教会側から打診が来たそうよ。両者とも内容の細部は違うけれども言っていることは同じ。連絡を取りたい、ということよ」

「なるほど、もう戦争なんか懲り懲りだからか」

 

 まぁ、今回は堕天使の暴走だが三陣営、どこでもこういった火種は燻っているんだろうな。

 コカビエルがやらなくても誰かがやっていた、とどの陣営も思っていることだろう。

 今回は運が良かった、いや起きたことは最悪だがその後の事後処理で済んでいるのが幸いだろう。

 最悪、世界が吹き飛んでていてもおかしくはなかった。

 

「あと堕天使側から……双葉、あなた個人と話したいという打診が来たわ。断っても構わないとのことだけど、どうする?」

 

 ……どうするって言われてもなぁ。

 絶対コカビエルと呀関連のことだろうな。……出るしか無いだろう。

 

「受けますよ。話すだけだ、戦うのは懲り懲りですけどね」

「分かったわ……皆、よく聞いてちょうだい。近いうちに三大勢力のトップが集まって会談を開くことになったわ。そこに私達もいくことになるわ」

 

 あぁ、なるほどさすがに緊張感が高まっていたせいで世界情勢に亀裂が走りかけてるんだろうな。

 まるで現実世界のキューバ危機みたいだ。

 あと行くのは当事者だからだろうなぁ……うわぁ、行きたくねえ。絶対問題起きるだろ、というか起きなかったら奇跡だよ。

 

「普段はこんな感じなのか?」

「双葉のことか? 一回スイッチ入ると凄いんだけど平常時はいつもこうだぞ」

 

 頭を抱えているとゼノヴィアとイチ兄の声が聞こえる。

 うるせえ! こちとら受身の姿勢は取れても攻める姿勢はまだ出来てないんだよ。

 ……あぁ、胃が痛くなってきた。

 

「そうだ、アーシア・アルジェント……いやアーシア、本当にすまない」

「えっ?」

 

 ゼノヴィアは頭を下げながら、アーシアに謝る。

 

「主がいないのであれば、救いも愛も無いはずだ。自分勝手だと思うがキミと同じ立場になって初めて理解したよ……キミは凄いな。私よりも苦しいはずなのに主への祈りを忘れなかった。殴りたいのであれば殴ってくれ」

「いいんです。苦しかったですし、悲しかったけれど、私は今が幸せです。悪魔になりましたけど、本当に大事な人に会えて私は本当に幸せなんです」

 

 アーシアは聖母のような顔でゼノヴィアを許す。

 うぅ、ホント良い子だよアーシアは頭を撫でてあげよう。

 感極まって、アーシアの頭を撫でているとゼノヴィアが首を傾げながら、こちらに質問してきた。

 

「双葉、キミはアーシアと付き合っているのか?」

「えっ!? い、いや違いま――――」

「違うよ、アーシアは妹みたいなもんだ……って痛い痛いっ!!」

 

 ふくれっ面のアーシアが泣き顔でこちらの頬をつねる。

 いったい! ほっぺたがあああああああ!! 割と洒落になってない、洒落になってないから!! じゃれつきは嬉しいけど悪魔になった影響で筋力とか上がってるの忘れてるだろう!?

痛い痛い!! アーシアステイ!!

 

「……ふふっ、楽しそうで良いところだ。それでは今日は失礼するよ。学校生活というのは初めてだからね、覚えることがたくさんある」

 

 そう言ってゼノヴィアは立ち上がって、扉から出ようとするとき、俺はアーシアのほっぺたつねるから逃れて、ゼノヴィアの背中に声をかける。

 

「あぁ、そういえばゼノヴィアって一年に転入すんの?」

「違うぞ? 双葉、ゼノヴィアは俺と同学年。つまり先輩だ」

 

 ……またかぁあああああ!! せ、先輩なぁ、大丈夫か? 割りとポンコツっぽいんだよなぁ。まぁ、イチ兄やアーシアがいるから大丈夫か。

 そんな時、アーシアも口を開いた。

 

「あ、あの、今度の休日に皆さんで遊びに行こうって話があるんです! その、ゼノヴィアさんも……どうですか?」

 

 鳩がガトリング食らったような顔をしながら、ゼノヴィアは苦笑する。

 その顔はどことなく嬉しそうだった。

 

「すまない。色々やることが多くてね……でも、落ち着いたら学園を案内してくれるかな?」

「はい!」

 

 悪いやつじゃないんだよなぁ、ゼノヴィアは。

 ただ真っ直ぐすぎて融通が利かない性格なんだろうけど、一度気を許せば仲良くすると思うんだ。

 それに元教会側の人間だし、アーシアと話が合うと思うから友人になってくれたら嬉しいなぁ。

 

「双葉、そして聖魔剣の使い手。今度、手合わせをしよう……キミたちから学ぶことは多いはずだ」

「いいよ。今度は負けないさ。ね、双葉くん」

「ええ、師匠なら勝てますよ!」

 

 ゼノヴィアと師匠、そして俺で拳を打ち合わせる。

 うんうん、なんか青春っぽいな……色々あったが終わったんだなって。

 ゼノヴィアが部室から出て行くと、リアス先輩がニッコリ笑顔をしながらこちらに歩いてきた。

 ……ん? なんか忘れているような。

 

「双葉、これから部活をしようと思うんだけどあなたへの説教が残っていたわね」

「……お、俺も用事が」

「逃しませんよ」

 

 背中に柔らかいものがぁあああああああッ!! ……振り向くと朱乃先輩がこれまた満面の笑みで俺を羽交い締めにしていた。

 た、助けて!! イチ兄! アーシア! 師匠! 小猫!!

 

「諦めろ」

『そうそう、お前の無茶のせいなんだから』

「たっぷり怒られてください」

「こればかりはどうしようもないな」

「……私も参加します」

 

 NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!! 味方が誰もいねええええええええええ!!

 そのまま俺は小猫と朱乃先輩に体を抑えられたまま、ケツを突き出す形で動きを止められる。

 馬鹿野郎お前! 俺は逃げるぞ! お前!

 

「しってる? 魔王の妹からは逃げられない」

「笑ってない! 目が笑ってないです先輩!! てかズボンに手かけないで!! はぁはぁしないでえええええええ!!

 

 プリンと俺の生尻が外気に触れる。

 お婿にいけなくなっちまうよ! というかな、何を!?

 

「あなたにはしっかり教えこむために尻叩き三千回、私と朱乃、小猫の三人でするわ。もう無茶しようなんて思わないくらいね」

「死ぬ!! 俺の尻が死にますって!!」

「大丈夫ですわ……私は雷撃も込みです」

「私は仙術つかって」

 

 死ぬわぁああああああああああああっ!!

 ジタバタと動きながら必死に逃げ出そうとする。てっきり言葉で言われると思ってたのに! こんな子供がやられるような叱り方とか嫌だあああああああああ!!

 

「魔力で尻を強化しなさい!」

「やだやだやだ! 小生やだ!!」

 

 大きくリアス先輩の手が振られる。

 あっ、これアカンやつや……畜生、耐えてやらぁ!! 悪魔になんかに絶対負けない!!

 

「あっ、やっぱ無理無理無理! ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 この日、俺は人の尻の可能性を見た。

 

 

 

****

 

 

 

「……まだ痛い」

 

 週末の休日、俺達はカラオケに来ていた。

 本当はオカルト研究部だけだったが、イチ兄の友人たちに生徒会メンバーも一緒に来て今熱唱している。

 ……俺? 歌下手くそなんだよなぁ、さっきも皆が俯いちゃったし。

 カラオケに来る前にボウリングもやったが、リアス先輩とソーナ先輩がデットヒートを繰り広げてた。すごいね、ボウリングって全部ストライクって出来るもんなのね。

 今はオカルト研究部VS生徒会で歌合戦してると思う。

 

『行かないのか?』

「座ると痛いんでな。それに後輩の俺が皆のジュース持ってこないとな」

 

 生徒会では異性交友禁止らしいが、今回だけはってことで見逃してもらっているというか、俺がソーナ先輩誘ったんだよなぁ。

 結界なかったら周囲にどんな被害出てたかわからないし、生徒会の人たちには頭が下がるわ。

 アーシアが聖書の朗読しそうとしたときは全員で止めたが、さすがにイチ兄たちが死んじまうよ。……意外にソーナ先輩がアイドル曲をノリノリで歌ってたときはびっくりしたが。あっ、リアス先輩は演歌だったよ、渋すぎるだろ。

 

『……良い歌声だったがな、お前も』

「笑うな、ザルバ。戻るか……」

 

 部屋の中に戻ると師匠とイチ兄がドラグ・ソボールのOPを熱唱していた。

 あー、師匠はたどたどしいけど声がいいなぁ。

 

「あっ、戻ってきたわね、兵藤弟」

 

 えーと桐生先輩だったかな?

 確かアーシアとよく遊びに行ってくれる人で、イチ兄を色眼鏡なしで見てくれる稀有な人だが……まぁ、イチ兄と同類なんだよな。悪い人ではないんだが。

 うーん、なんか視線が俺の腰のあたりに?

 

「ふむふむ……いいモノ持ってるわね」

「?」

 

 首を傾げながら席に座る。

 ジュースを飲みながら、イチ兄たちの歌声を聞く……うん、いい感じだな。

 

「これが終わったらショッピングね。そろそろプール開きだから水着見に行かないとね」

「私は双葉くんに選んでもらいましょうか」

 

 ぶっほっ!? ごほっ、ごほっ、気管に入った。

 久しぶりにびっくらこいたわ……ん? なんか視線が……って、ソーナ先輩がすげえ寒々しい目線ガガガ!?

 

「会長、目が! 目が!!」

「チクショー!! イッセー、お前の弟モテすぎだろ!!」

「そうだそうだ!」

 

 あぁ、もうなんかめちゃくちゃになってるよ!

 そんな時にマイクが投げ渡される……し、師匠!?

 

「一緒に歌わないか?」

「……えっ、でも俺下手くそですし」

「僕だってそうだよ……それとも嫌かい?」

 

 ……はぁ、そんな顔されると歌わざるをえないじゃないですか。

 よし、やるか。イチ兄もマイクを持ってるし、今日は歌って忘れよう。

 

「よっしゃぁあ! 俺の歌を聞けぇ!!」

 

 俺と師匠とイチ兄、それに乱入する形で匙先輩の四人でドラグ・ソボールアニメ、劇場版、OVAのOP合唱をした。

 師匠の顔に一筋の涙が流れてたのを俺は見た。

 

 

 まぁ、ここで綺麗に終わればよかったのだが、後日桐生先輩の撮った写メが学園中に流出したせいで、イチ兄×師匠、俺×師匠のチョメチョメ本が氾濫し、漫画研究部との戦いが始まったのは完全に余談だ。

 ちなみに生徒会の副会長が鼻血垂らしながら、サムズアップしてきた時は天を仰ぎたくなった。

 

 




◯プリンス×ビースト、プリンス×パダワン
 いわゆるやおい本と呼ばれる禁断の書物。原作では完結したが今作では双葉と木場の師弟関係を知った一部女子たちが妄想力をフル活用して作ったのがこれ。パダワンは某宇宙戦争な映画から。ちなみに双葉受け派と攻め派で激しい攻防が繰り広げている。ちなみに朱乃は受け派な模様。

終わったああああああああああああ!! ぬわぁああんもう疲れたもぉおおおん! 次回は会談編か単発の閑話!

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