ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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今回で終わるはずだったのにどうしてこうなった……。


白い龍と黒い騎士

「……どうした、黄金騎士。トドメをさせ」

 

 横たわるコカビエルは静かに言う。

 既に俺の鎧はいつもの金と黒の鎧に戻っており、牙狼剣もいつもの形状になっている。

 俺は震える手で牙狼剣を逆手に持ち、コカビエルの胸へと刺そうとした……だが、俺の手は牙狼剣を振り下ろさず、そのまま投げ捨てしまった。

 

「何故捨てる。同情でもしたか? お前の剣は誰かを守るためにあるのではないのか?」

「ふざけんな。あんたは楽になりたいだけだろうッ!」

 

 ちょうど制限時間だったのか、牙狼の鎧が強制的に外れ、俺はドッと流れこむ。

 膝を付き、覗きこむ姿勢でコカビエルと向き合う。

 

「あの人が許しても俺は許さない! あんたも、バルパーも罪を償うべきだッ! 死ぬんだったらそれやってから勝手に死ね!!」

「手厳しいな……ぐぅっ」

 

 コカビエルは痛みに耐えながら起き上がる。

 リアス先輩たちが戦闘態勢に入るが、俺は片腕でそれを止める……もうコイツに戦う力は残ってねえよ。

 するとコカビエルが地面に手を当てると、先程まで光っていた魔法陣が急速に弱まっていく。

 

「勝者へのご褒美だ……安心しろ、術式は時期に解ける」

 

 信用ならないのか、リアス先輩は朱乃先輩に魔法陣を調べさせるように支持した。

 終わったのか……しんどかった。

 そう一息つくと俺の胸から因子の球体がポンと飛び出る。

 

「……さぁ、行きな。多分、天国にいけるからよ」

 

 ゆっくりと天に登っていく因子の球体を見送りながら、俺は祈った。

 せめて、あっちでは平穏であることを願う。

 

「安心しろ、今治めているのはミカエルだろう。ヤツならば無下にはしないさ」

「……なぁ、本当に止まれなかったのか?」

 

 俺はコカビエルを見つめて、そう言う。

 ……エクスカリバーと融合した後の戦い、コイツは手を抜いていた。いや、もう戦う気なんてなかったに違いない。

 いくら俺とイチ兄があそこまで出力あげようとも、コイツならばやりようはあったはずだ。

 コカビエルは苦笑しながら、俺に言う。

 

「長く生きるとな、考えが凝り固まってしまうのさ。プライド、地位、欲望……俺の場合はお前に負けるまで止まることが出来なかった」

「面倒だな」

「あぁ、本当に面倒だ……本当に殺さなさないのか? 今ならば通常の魔戒剣でも死ぬぞ」

 

 しつけーよ、お前さんのお叱りとか罰はもっと上の人達にやってもらうわ。

 ……はぁ、なんかドッと疲れた。

 

「――――甘いな、黄金騎士」

「ッ!?」

 

 本当に一瞬だった。

 誰かが俺の前に転移してきて、そのままの勢いで蹴り飛ばした。

 いきなりのことで魔力強化されていなかった俺の体はゴムマリのように吹き飛ぶ。

 ぐっがぁっ……意識が一瞬落ちたぞ。

 

「この程度の奇襲もわからんか」

「グッ!?」

 

 空中で首を捕まれ、万力のような力で締め上げられる。

 だ、誰だこいつは……コカビエルの奥の手か!?

 

「コカビエル!」

「俺は知らんぞ! そんなことよりも早く助けろッ! あのままでは死ぬぞ!」

 

 くそっ、また首かよ……ぐぐぐぐっ!! 畜生、酸素が足りなくて頭がよく回らないし、疲労と魔力不足のせいで意識が……あっ、クソッタレが。

 

「黄金騎士、貴様が死ねば俺が次の牙狼となる!」

『バカを言うな、お前さんのような邪念の塊が牙狼を纏えるはずがない』

「ならば堕とせばいい。漆黒の闇よりも深く、深淵なる者……暗黒騎士に」

「馬鹿を言ってんじゃねーぞ、この騎士モドキが」

 

 首の重圧が消えた途端、俺の目の前に光の槍が打ち込まれる。

 ゴホッ、ごほっ!! 酸欠と土煙のせいで死にそう……激しく息をしていると誰かに肩を掴まれる。

 

「大丈夫だったか?」

「ごほっ、あ、ありがと――――」

 

 うございますとは続かずに、俺は肩を掴んだ人物をぽかんと見る。

 黒髪の悪そうな風貌、そして背中から生える十二枚の羽……だ、堕天使!? さらにコカビエル以上の幹部!? えっ、誰!?

 

「アザゼル!?」

「お前への説教はあとだ、コカビエル……静観しているつもりだったんだが、コイツが出て来たんじゃ話は別だ。おっと、下級悪魔くんたち、今は争う気はないから安心しろよ」

 

 アザゼル? どっかで聞いたことがあるような? ないような?

 俺が首を傾げていると、ニカッと笑いながらアザゼルは俺に笑いかけ、こういった。

 

「久しぶりだな、俺の名はアザゼル。堕天使のボスをやってる」

「……うぇえええええええええええええええええええええええええええええ!?」

 

 俺は仰天しながら、アザゼルを見る。

 うそぉ!? 堕天使のボス!? 確かにちょいワル風のお兄さんでイケメンだけど若すぎんだろ!! てかコカビエルもそうだが長生きしてんのに見た目若いやつばっかか!!

 ていうかなんで堕天使のボスが俺を助けたの? あれか? コカビエル倒したやつは俺が相手するというやつか!? 勘弁してくれよ! さすがにもう一戦は無理だ。

 

「アザゼル……またしても邪魔を」

「お前も飽きないねえ。金色を取り戻したから取りに来たか? なぁ、暗黒騎士」

 

 そこにいたのは漆黒のフードを被った男だった。

 全身が真っ黒でよく見えないがその手は人の手だった。大きさ的に大人ではない、俺と同じ……いや俺の手と見間違うほど似ている。

 手に持つのは、俺の白い柄とは真逆の真っ黒の鞘の魔戒剣……いや違う! あれは魔戒剣じゃない、もっとどす黒いナニカだ!

 

「ッ!! うおおおおおっ!」

「おい馬鹿っ!! あぁ、もうこういうところはそっくりだな!!」

 

 俺はアザゼルを突き飛ばし、辛うじて残っていた精神力を使い魔戒剣を手元に呼び戻す。

 そして振りかぶりながら、暗黒騎士と打ち合う。

 キィンという金属音を立てながら俺たちは鍔迫り合いを始める。

 

「向かってくるのか?」

「お前はダメだ。お前はここにいちゃいけない!!」

 

 俺の本能、いや全神経がやつを敵だと言っている。

 ただの勘だが、身の毛もよだつ吐息に臭ってくる腐臭はこの世のものとは思えない。

 こいつは一体なんだ!?

 

「打ち込みが甘いぞ」

「なっ!?」

 

 容易に弾かれ、宙に浮かんだ俺は掌底をくらい吹き飛ぶ。

 くっそ、実力差ある相手にはいつもこうされてるかもしれん!

 

「どうした……鎧を召還しろ。もっとも今の貴様では心滅をする可能性すらあるがな」

『挑発に乗るな、小僧!』

「……舐めるなッ!!」

 

 剣を天に掲げ、円を作る。

 だが相手も同じように剣を掲げ、円を作り同時に振り下ろす。

 俺の体に鎧が装着され、相手も同じように鎧を身に纏う。

 

「牙狼……?」

 

 誰のつぶやきだったか分からないが、俺も相手の姿を見て驚愕する。

 あの時、アルトリアさんと戦っていた先代、そしてご先祖様の鎧をいびつに歪め、真っ黒に染め上げた色。フリードが身にまとっていた鎧の黒が白く見えるほど、こちらの黒は鬱々としていた。

 そしてその剣だ。俺の持つ牙狼剣とほぼ同じ。

 

「何者だッ!」

「我が名は呀。暗黒騎士・呀だ!」

『馬鹿な、心滅のその先……闇を克服したあの暗黒騎士だと!?』

 

 ザルバが驚愕しているが、俺はそれ以上だ――――がぁっ!?

 

「ぐ、ぐあああああっ!?」

 

 体が焼けつくように熱い。

 いつの間にか視界に何か文字が下から上へと流れていく、な、なんだこれは!!

 

「くくくっ、自ら魔道に踏み込むか?」

「させねえよ」

 

 強い衝撃が後ろから加えられ、俺の鎧が強制的に解除された。

 俺は激痛でのたうち回る。ヤバイ、なんか痛いというか上書きされるような感覚がする。なんかわからないけどすげえ怖い!! 限界超えて鎧つけたのはこれが初めてだったりするんでな!!

 呀と名乗った騎士はつまらなさそうに首を振りながら、剣を収める。

 

「残念だ……アザゼル、それに赤龍帝か? ……ほぅ、赤に釣られて白い龍も来たか」

「おせえぞ、ヴァーリ」

 

 カッ! と空が白く光り、一筋の光が落ちてくる。

 校庭の地面に付くか付かないかのギリギリに浮かびながら、それは舞い降りた。

 白い全身鎧、だがどことなくイチ兄の『赤龍帝の鎧』にそっくりだ。

 まぁ、おおまかな特徴と雰囲気が似てるだけで細部が全くの別物だが。

 

『よう、白いの』

『あぁ、赤いの、久しぶりだな』

 

 ドライグが誰かと話しかける……白い龍? まさか、ニ天龍の片割れ、白龍皇か!?

 だー!! コカビエルからなんか大物来すぎだろ、ここ!! ふざけんな! 馬鹿じゃねえの!? もう一回言う、馬鹿じゃねえの! ここでラグナロクでも始める気か畜生―!!

 

「安心しろ、ヴァーリは今までの白龍皇と違ってすぐに始める馬鹿じゃない。そう、構えるな赤龍帝」

「信じて良いのかよ」

「少なくとも今は信じてくれて構わない。初めまして、ライバルくん」

 

 聞こえてきたのは若い男の声、イチ兄と年齢が近いのかもな。

 白龍皇……ヴァーリでいいのか? まぁ、ヴァーリはアザゼルと隣同士で立つと呀を威圧する。

 

「どうする? いくらお前でもここにいる戦力は辛いだろう?」

「……ふん。黄金騎士、命拾いをしたな」

 

 呀はそう言うと姿がフッと消える。

 ……見逃してもらえたのか? 倒れながら気配を探るがアイツの嫌な気配を探る。なんだろうか心の底から湧き上がる嫌悪感と恐怖感っていうのかな。

 そういうのをやつから感じた。

 

「一端の魔戒騎士になったってことだろうな。まさか消耗してる状態で鎧つけるとは思わなかったが」

「……先ほどの戦いは見事だったよ。もう一度聖剣と融合すればあの力は使えるのかな?」

 

 いつの間にか地上に降りていたヴァーリは俺の目の覗きこむ。

 鎧で表情までは見えないが、言葉の端々から感じるのは戦いたいという欲求であることに間違いない。さっきからニギニギと両手を握ってるからな。

 もう一度聖剣と融合、か。

 

「無理だろ。アレはあの子達とアルトリアさんが起こしてくれた奇跡だ、二度目はねーよ」

「そうか、残念だ。アレだけの実力を持っているなら俺と満足のいく戦いが出来そうだけどね……しかし、今代の黄金騎士と赤龍帝は未熟だと聞いてたけど中々どうして見どころがあるじゃないか」

 

 禁手を解き、リアス先輩に肩を貸されながら立っていたイチ兄は、リアス先輩の前に立ち構える。

 ……もう限界だろうに、確か禁手になると丸三日間は神器自体が使用不能になるはずだ。

 ヴァーリはそんなイチ兄に口笛を吹きながら、拍手した。

 

「根性も満点か、いいよ気に入ったよ……もっと強くなってくれ、その時に決着をつけよう」

「上等だ、ここでやってもいいんだぜ!!」

「止めとけ。ヴァーリ、あんまり煽るな、ここには戦いに来たわけじゃない……コカビエル」

 

 アザゼルは頭を掻きながら、ヴァーリの兜部分を叩き、コカビエルの元へ歩き出す。

 コカビエルはじっとアザゼルを見ながら、言葉を待った。

 

「……止めに来たのか?」

「あぁ、悪魔たちに被害が出る前に介入するつもりだったがお前さんをぶっ倒すとはな……ったく、総統の俺が勝手気ままなのも悪いんだろうが戦争なんて起こしてどうするんだ」

「自殺、したかったのだろうな。黄金騎士にも言われたが」

 

 すっきりしたような顔で笑うコカビエルに、アザゼルは深い溜息をつく。

 

「お前は仏頂面が基本かと思ったんだがな、その顔気持ち悪いぞ」

「だろうな、自分でも違和感を感じるほど心が晴れた……黄金騎士」

 

 ふと呼ばれた俺は、頭だけを動かしてコカビエルを見る。

 悪いが一歩も立ち上がれねえぞ。体を少しでも動かすと激痛が走るんでな。

 

「すまなかった……」

「謝るなら最初からやんじゃねえよ……おかげでこっちは魔王さま呼んじまったよ」

 

 ……ん? やばくね? この場に魔王さま来るってことは三大勢力のうち、二つのトップが来るんだろ? ……ラグナロク起きるじゃないですかヤダーッ!!

 アザゼルは深々とリアス先輩に頭を下げる。

 

「すまんな、リアス・グレモリー。うちの部下が迷惑をかけた。敵同士だとは言え、賞賛するよ。よくコカビエルを止めてくれた」

「……礼なら、黄金騎士に言ったらどうかしら。彼が動かなければこの件は最悪の結果になっていたかもしれないわね」

「違いないな……にしても、魔戒騎士は想いを力に変えるというが今回の件は本当に興味深いな。ウチ(グレゴリ)で調べさせてくれないか?」

 

 冗談はキツイぜと言いたいけど、ヤバイ……意識が。

 久々に全力を出し切った、いや全力以上を出しすぎて保ってられねえや。

 ……アカン、あとは頼んだわ、イチ兄。

 俺は意識を手放し、瞼を落とした。

 

 

 

**三人称視点**

 

 

 

「双葉ッ!!」

「安心しろ、疲れて寝てるだけだ。まぁ、アレだけの現象を起こしといて疲労だけで済むってのも不思議な話だがな」

「――――そうだな、アザゼル」

 

 紅い閃光が校庭に落ちた。

 リアスたちは目を丸くし、アザゼルは細めながら呟いた。

 

「サーゼクスか」

「あぁ、久しぶりだな……リアス、大丈夫かい?」

 

 突然の魔王の登場にこの場にいる全員に緊張が走る。

 当たり前でもあるが、この場にいるアザゼルとサーゼクスは敵対勢力のトップにして、戦いが起こればこの場の風景どころか地図が書き換えられるほどの実力を持っている。

 両者は暫く睨み合うが、アザゼルは再び深いため息を付きながら頭を掻く。

 

「お、お兄さま……」

「安心しなさい、リアス。この場で戦うほど私達も馬鹿ではない。アザゼル、あなたもそうだろう?」

「話が分かってくれるやつで良かったよ。これでセラフォルー辺りが出て来たらこの町が吹き飛ぶからな」

 

 とりあえず両者がぶつかり合う危険性が無くなったことを確認し、リアスと眷属たちは一息つく。

 アザゼルは懐をゴソゴソと探ると一つの球体を取り出して、サーゼクスに見せる。

 

「詫びとは言わないがこの場の修復は任せてくれないか?」

「そこまで信用する訳にはいかない。……先の戦争で一番最初に手を引いたのはあなたであり、神機使いを集め戦力を拡大しているではないか。そしてその白龍皇、神滅具までも手元においているのが何よりの証拠だ」

 

 ポリポリと頭を掻きながらアザゼルは心底めんどくさそうな顔をしながら、サーゼクスに話す。

 

「俺は自分の趣味で研究してるだけなんだがな……まっ、そう思われるわな。戦力を確保しているのは事実だしよ」

「……相変わらず食えない人だ」

 

 にこやかに笑うサーゼクスだが、その実、いつでも滅びの力を撃てるように構えている。

 だが、アザゼルはサーゼクスに背を向けると背中の羽を羽ばたかせ飛び立つ。

 その後ろにヴァーリは黙ってついていった。

 

「リアス・グレモリー! お前さんの強者を集める縁は貴重なものだ! そこにいる赤龍帝に、新たな禁手となった聖魔剣の使い手、そしてバラキエルの娘に、猫魈の生き残り、そして黄金騎士。大事にしな! お前らは伸びるよ」

「堕天使のボスにほめられるのはあまり嬉しくないけど、ここは素直に受けるわ」

 

 そして、飛び去ろうとした時、アザゼルは思い出したかのようにサーゼクスの方を向き直る。

 

「サーゼクス! 近いうちにあの件は受けるぜ!」

「……この件の手打ちというわけか?」

「それもあるが、俺も戦争は懲り懲りでね。あと三大勢力が争っている場合じゃなくなってきたってのもデカイ」

 

 アザゼルの言葉に、サーゼクスは眉を動かす。

 アザゼルはそんなサーゼクスの苦い表情を見ると苦笑しながら飛び去る。

 

「では失礼する。赤龍帝、また会おう」

「……待ってくれないか、ヴァーリ」

 

 もう動けないコカビエルとフリードを肩に背負ったヴァーリだったが、コカビエルの言葉に動きを止める。

 訝しげにリアスたちはコカビエルを見るが、既に戦う気はないコカビエルを警戒するだけに留める。

 コカビエルは手に持ったまま、今にも崩れそうな剣を放り投げ双葉の近くに投げ渡す。

 

「起きたらそれを黄金騎士に渡してくれ。俺にはもう必要のない……否、持っていてはいけないものだ」

「教会側の人間としては返して欲しいところだが、黄金騎士への手打ちと言うわけか? コカビエル」

 

 今まで一言も喋らず、額に大量の汗をにじませていたゼノヴィアはコカビエルにそう問いかけると頷く。

 

「あぁ、教会側が回収してもいいがそうするほど無粋ではあるまい」

「……私は教会から奪われた三本のエクスカリバーを回収しろと言われたが新たに発見されたエクスカリバーを回収しろとは言われてはいない。それに、この剣は我々には扱えないだろう」

「……話はそれだけか? コカビエル」

 

 ヴァーリが急くようにコカビエルに催促する。

 だが、そのコカビエルに待ったをかける人物がいた。双葉の兄、イッセーだった。

 

「待てよ! 双葉に……いや、迷惑をかけた奴らに謝罪もなしかよ!」

「落ち着け。コイツの処罰は堕天使(コチラ)側で行う。良くて力の剥奪、悪ければ永久凍土(コキュートス)へ永久に封印だろうな」

「違うッ! 俺の弟はあんたのせいで死にかけたんだ!! その顔が腫れ上がるまでぶん殴らないと気がすまないッ!」

 

 全身から怒りのオーラを出しながらイッセーは吠える。

 彼の頭からはおっぱいなど吹き飛び、純粋に弟のために怒る兄の姿そのものだった。

 その後ろでリアスは胸をときめかせて、その様子にサーゼクスが泣きながら感動しているが今は追求しまい。

 

「……赤龍帝、俺は逃げん。殴りたければ今殴れ。殺してもらっても構わない」

「ッ!! ……ふざけるなぁああああああああっ!!」

 

 コカビエルに詰め寄りながら、吠えたのは木場であった。

 彼は拳を強く握り、全身から怒りをコカビエルにぶつける。

 

「彼は、僕の弟子はお前に言った! 楽になりたいだけだと! 罪は償うべきだと! 今、彼が起きていたのならまた同じことを言ったはずだッ!」

「……」

 

 木場はそのまま抱きかかえているコカビエルの胸ぐらを掴むと、白龍皇に動じること無く思ったことを口に出す。

 

「僕は悪意によって無残に殺された。だけど今を精一杯生きると誓ったッ! ならあんたこそ生きるんだッ! それが彼への、いや今までやってきたことへの報いだッ!」

「……そうだな。ならば誓おう、黄金騎士と彼女に。俺は二度と間違えない、精一杯生き、この命が尽きるまで償い続けると」

 

 コカビエルは頬に一筋の涙を流しながら力強く、そう言った。

 ヴァーリは何か考える素振りを見せるとそのまま飛び去った。

 この場にいる全員が深い溜息をつくが、アーシアや朱乃は急いで寝ている双葉に走り寄る。

 しかし、双葉は規則正しい寝息を立てながら寝ていた。

 

『安心しな、嬢ちゃんたち。体の傷はそこの剣の小僧の仲間さんたちが癒やしてくれたよ』

「よかった……」

 

 安堵の息を吐きながら、二人は双葉の体を抱きかかえる。

 その様子を小猫はじっと見ていたが、リアスが肩を叩いてひと押しする。

 

「行きなさい」

「でも……私は」

 

 悩む小猫をリアスは微笑みながら、拾った頃と同じように頭を撫でる。

 

「今のあなたは仙術が使えるはずよ。あの子の気の調子を整えてあげなさい」

「……はい!」

 

 頭から猫耳を生やしながら、小猫は双葉に駆け寄る。

 リアスはその様子を母親のように、見つめるが瞬きをしていつものリアス・グレモリーの表情へと戻す。

 傍にサーゼクスが歩み寄っていたからだ。

 リアスは膝を付き、頭を垂れると謝罪の言葉を述べる。

 

「お兄さま今回の件は」

「いやいいんだ、リアス。重要なときに間に合わない不甲斐ない兄ですまない……この場にいる眷属たちには褒美をとらせないといけないね」

 

 柔和な表情で笑うサーゼクスだが、リアスの表情は硬い。

 当初の予定では一時間かかる予定が、三十分ほどで到着していたのだ。明らかに幾つかの手順をすっ飛ばしてこちらへ飛んできたに違いない。

 このことに関して、兄が他の古い悪魔たちから政治的に介入されるかもと思っていたリアスだったが、サーゼクス自身首を振って否定する。

 

「アザゼルが出て来たんだ。むしろ手順を踏んでいたら取り返しの付かないことになっていたと言い訳が付く。……あぁ、そうだった。初めましてだったね、赤龍帝、兵藤一誠くん」

 

 挙動不審になるイッセーは、名前を呼ばれピンと背筋を伸ばしてどもりながら返事をする。

 

「ひゃ、ひゃい! ひょ、兵藤一誠っす! え、えーと今日もお日柄もよく……じゃなくて!! えーと、その」

「面白い子だ、リアスが気に入るのもわかるよ。……まぁ、妹の眷属に赤龍帝を宿すものがいると聞いた時は驚いたがね」

「えっと、サーゼクスさま?」

「そんな堅苦しい呼び名はよしてくれ。お義兄さん、もしくはサーゼクスでいいよ」

 

 えぇっ!? と驚くイッセーだがサーゼクスの言葉の半分も理解できていない。

 なんでお兄さん!? えっ、弟が欲しかったのか!? 程度にしか思っていない。

 しかしリアスにはしっかり意図が伝わったのか、顔を真赤にしながらプルプルと震えている。

 叫び出さないのは妹としての弔辞か、それとも好きな男を認められたという女の喜びか。

 サーゼクスはそんな妹と未来の義弟への様子を笑うと眠っている双葉に目を向ける。

 

「彼が黄金騎士か。以前に見た時よりも随分と強くなったようだ……歴代でも最弱と蔑まれているが成長速度だけならば歴代の英霊たちを凌駕してる。末恐ろしい限りだ」

 

 そう、歴代でも最弱。そうザルバに言われているが双葉の成長速度は傍から見てもおかしい。今までの英霊たちがスポーツカーならば、双葉は無理やりジェットエンジンをつけたモンスターマシンと形容するしか無い。

 本来ならば数年かけてやる修行の殆どを二段飛ばしどころか五段ほど飛び越えてやっているといえば異常性がわかるというものだ。比較対象が悪魔というだけで、双葉は人間の括りから言えば既に英雄を遥かに凌駕するバケモノだ。

 

「願わくは彼が守りし者でいて欲しいと私は願うよ。かつて、我々のために金色を解き放ち救おうとした先代のようなね」

 

 サーゼクスが呟いた言葉に、リアスはただ静かに双葉を見つめていた。

 その時だ、ゴフッと言って双葉が吐血した。

 

「あ、あわわわわふ、双葉さん!!」

『あぁ、さっきの鎧召還で内蔵にダメージ行ってたのか』

「冷静に言ってる場合ですか! アーシアさんとりあえず治癒を!」

「ふ、双葉くん!! しっかりするんだ!!」

「き、傷は浅いですよ?」

「結構吐血してるぞ!? 双葉―! 衛生兵! 衛生へー!!」

 

 リアスは頭を抑えながら、慌てる眷属たちに喝を入れるため歩き出した。

 吐血した双葉は少し目を覚ましながら、うるさいなぁと思いながらまどろみに身を任せた。

 

 




◯暗黒騎士・(キバ)
 牙狼一期のラスボスにして人気が高い騎士。その実力はシリーズを経ているが最強クラスの強敵。実はテレビ本編外でこっそり復活をしかけたりパチンコで味方として牙狼を援護することもある。あとラスボスでありながら外伝が作られるという。詳しくは本編を(ry)。何故か、この世界(D×D)の世界に来ているが鬼神のような以前の力を失っている模様だが、各勢力に警戒されるだけの実力は保持している。

次回、尻叩き1000回。双葉のケツは耐え切れるのか……多分痔になると思うんですけど(名推理)。書いてて思いましたがこの巻、ほんとイッセー影薄いなぁ。

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