いつもの世界を守るために   作:alnas

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みなさん、この日の投稿ということで感のいい人はお気づきでしょう。
そうです。今年もサンタものでひとつ書いときました。
短く、しかも特に脈絡もない話になりましたので、適当に流してくださいな。
では、どうぞ。


彼女からの贈り物

「「「「クリスマスプレゼント!?」」」」

 執務室に集められた四天王の面々の驚きの声が重なる。

「そう、クリスマスプレゼント!」

 彼女たち四人の声量にも負けず劣らずの少女一人の声が、執務室の中で木霊した。その声を気持ちよさそうに聞く者、あまりの満足感から体を痺れさせる者、少女が話していた――否、呼吸していた空間の空気を一心不乱に吸い込む者、皆々の声量の大きさに耳を塞ぐ者と、それぞれが普段通り、なにも変わらない行動を取っている。

 だが、視線だけは真面目なものであり、そのすべてが二つに括った白髪を感情と共に揺らす少女、舞姫へと送られていた。

「プレゼントって、誰にですか?」

 いち早く舞姫に反応した青生が尋ねると、舞姫は決まってるじゃん、と言った顔で対象の者の名を告げる。

「みゆちんにだよ、みゆちん!」

「…………」

「はい?」

「あ?」

「ああ、自由さんですか」

 四天王は各々に反応し、突如として刀を握り出したり、鬼の形相をしたりとするが、その様子を眺めていた青生が慌てて止めに入る。

「止めないでください自由さんとは一度ゆっくりと話す必要があると思っていたんです」

「そうだね。僕もついていくとしよう。彼とは語り合わないと気が済まない。主に拳でね」

「まあ待て二人とも。あいつとは私が話をつける。主に刀でな。こちらの一言で終わらせてみせよう」

 殺気、凶器渦巻く中、何事も感じていない舞姫が再び口を開いた。

「それでね、みんなにはなにをプレゼントしたらいいかを聞きたいんだけど……その、ダメかな?」

 自分たちよりも身長が低いためか、自然と上目でねだられているように映る。

「ヒメが言うのならもちろん協力するよ」

「ヒメさんがどうしてもと言うのなら当然力をお貸ししますええいくらでも」

「もちろん力を貸すとも」

 これまで発していた殺気は嘘のように霧散し、晴れやかな笑顔を浮かべた三人が協力的なムードを作り出す。変わり身の早さに定評があるのではなく、舞姫の言葉に賛同するのが常なだけなのである。

「しかし姫殿。彼はそこまで物欲があるようには思えないけど?」

「そうなんだよねぇ……みゆちんがなにかを欲しいって言ってくれたこと、一度もないんだよ。これでも一人で結構悩んだんだけど、欲しそうなものってひとつしか思い浮かばなかったんだよね」

 腕を組みながら語る舞姫に、彼女の相棒たるほたるも口を挟む。

「あいつの欲しいものか。ちなみにヒメはなにを考えていたんだ?」

「ん? 私が考えていたのはね、なんと首席の座1日ぶん!」

「……ヒメ、確かにそれは東京、神奈川、千葉の生徒の中には相当数の生徒が欲しいているものだとは思うけど、天羽はいらないと言うんじゃないかな」

「そうかな?」

「たぶんね」

 優しい口調で舞姫の頭を撫でながら答えるが、様子を見守っている他の三人もほたるに同意するように頷いている。

 ランキングとは無縁で生きている現在の彼にとっては必要ではないのだろう。彼女と和解する前であれば欲していたかもしれないが、いまとなっては拘る理由がない。

「どうしよう、困った!」

 頭を抱えて慌てる舞姫だが、彼女には優秀な部下が付いているのだ。

 希望を胸に集まったメンバーへ視線を送ると、青生以外の三人が苦虫を噛み潰したような顔をしており、中には血涙を流さんとする輩まで三人いる。

 が、全員が全員舞姫のことを大切に思い、彼女の期待に応えたいという欲はある。同時に、舞姫の向けられている好意の相手が自分たちでなく、しかも男と来たのでは心中では憎しみが絶えない。

「ぐぎぎ……おのれおのれおのれおのれおのれおのれぇっ! しかし、しかし姫殿を裏切ることなどできるはずもない!」

「仕方ありません影で呪うくらいで済ませましょういまはヒメさんに力を貸さなければいけませんから」

「………………今回だけだ」

「ふふっ、みなさん素直じゃないんですから」

「「「素直に言っていいならこの瞬間から天羽を潰していくぞ」」」

「そ、そうですか……ごめんなさい自由さん。私一人じゃ止められないです」

 青生が祈っている中、会議は進み、

「せっかくならサンタとして夜中に忍び込んだらいいんじゃないかな?」

「クリスマスですしね。いいかもしれません」

「ならばパーティーの後にこっそりあいつの部屋に忍び込むか。すまない、私は少し天羽の部屋を探ってくる」

「ああ、頼むよ。僕らは彼の行動パターンの把握をしておくから」

 各自が納得して執務室から出て行く準備を整えていく。

「あ、あのみんな? どうするの?」

「ヒメはサンタ服に着替えて、プレゼントを準備しておいてほしい。だいじょうぶ、あとは私たちに任せて」

「そっか! うん、ありがとう!」

 それから数時間後、再び集まったほたる、銀呼、柘榴による詳細が過ぎる潜入経路や天羽自由の行動パターンが算出されていたが、それはまた別の話だろう。

 なぜならこの作戦、普通に彼の部屋に正面から潜入する運びになったのだから。

 その夜、あろうことか自由は部屋の鍵を閉め忘れたまま寝てしまっていたのだ。舞姫が楽々潜入できたのはこの一点のミスが大きい。

「ふふっ、寝てるねーみゆちん」

 難なく彼の寝床にたどり着いた舞姫はふと、自由の寝顔を観察しだした。

「みゆちんって、なにもないと寝てることが多いよね。でもあまり寝てるときをじっくり見る機会ってないんだよねぇ。意外とかわいいよ、みゆちん」

 なんて言いながら、サンタ服を纏ってプレゼント袋を用意してきた舞姫は、袋の中からひとつの箱を取り出し、彼の枕元に置く。

「みゆちん。いつもいつも、私のことを思ってくれてありがとう」

 言葉にしてみるが、それだけでも舞姫の口元は緩み、普段とは違った笑みがそこには浮かんでいた。が、満足はできなかったのか、少々自分の作り出した雰囲気に呑まれたのだろうか。

「みゆちん、私ね……みゆちんには本当に感謝してるし、出会えてよかったって思ってる。だから、これはお礼」

 誰も見ていない、彼女だけの世界。

 明かりもなく、光差す星空すらカーテンに閉ざされた、彼女のためだけの演目。

 その中で、彼女は自由の頬に口付けをひとつ。

「…………メリークリスマス。今度は起きてるときに、またありがとうって伝えに来るね」

 静寂の中、舞姫も去った部屋。

 そこでは、一人の少年のため息が漏れたとか漏れなかったとか。

 




去年は自由がサンタだったので今年は舞姫にしたかった。それだけのお話です。
つまり来年は自由がトナカイで姫さんがサンタになって三都市をめぐるわけですよ。なんて話はこれくらいにして寝ます。
ではみなさん、メリークリスマス。

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