いつもの世界を守るために   作:alnas

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クオリディア・コード、終わっちゃいましたね。
またねとあったから、二期があるのかないのか……とはいえ、この話はまだまだ続いていくので、どうかお付き合いください。
全部終わったらEDで何度も見てきた学園ものを書いてしまおうかと思ってます。
まあ、なにはともあれ、続きをどうぞ。


諦め

 リヴァイアサン級を狙った剣でこっちはわりかし限界なんだよなぁ。

「……殺してやる」

 上から、抑揚のない声が聞こえる。

 視界の先には、大穴の空いた天井と、こちらに真っ直ぐに向かってくる、斬々の姿。

 どう見ても、これは敵わない。

 これまで感じていた殺気とは段違いの悪意が、すぐそばまで迫っている。

「正真正銘、化け物だったか」

 いやはや、姉ながら大したもんだ。ここまで手も足も出ないとはねぇ……一撃もかわせなかったじゃんか。

 けどまあ、作戦は終わり。

 なんだかんだ、今日も世界を救ったはずだ。

「なにを、笑っている?」

「ぐっ……」

 空中で首を掴まれ、その場で問われる。

 こいつ、『デュアル』だったのか? そんなこと、一度たりとも聞いたことないぞ!?

「ん? ああ、不思議か? 私が空中にいれるのが」

「まあ、な」

「簡単なことだ。自由、おまえが見てきた<アンノウン>は空を飛ばないのか?」

 言われ、気づく。

 俺が見てきた奴らは、大半が空を飛んでいたではないか。

「<アンノウン>なんかと同調しやがって……ホント、どういうつもりなんだよ」

「さあな。見ている世界が違うんだ。貴様に理解されようとは思わん」

 だろうな。俺も、わかりあいたいとは思っていない。

 もっとも、この状況じゃ下手なこと言えないんだが……。

「なあ、斬々」

「命乞いか? 案ずるな、おまえはこの世界から消える。そして、もう一度私と戦うことになる」

「んなことじゃない。ってか、意味不明なこと言うんじゃねえよ」

 なんだよ、もう一度戦うことになるとか訳わからん。

「なに、そのうち知れるさ。この場を生きて帰れたのならな」

「ハハッ、無茶を言ってくれる」

 眼目も月夜もいまだ戻ってこない。仮に戻ってきたとしても、上にはもういないのだから、合流するのも難しい。

 だが、考え続けなくては。とどめをさされる前に、回避する策をなんとして!

 ひとまず、落下時に感じた桁外れの殺気は収まっている。笑っていたのが功を成したか。

「俺とおまえの<世界>は、似て非なるモノだ。互いに通ずる者が多ければ多いほど、力を発揮する。けど、実のところ一人である方が扱いやすい」

「なにが言いたい?」

「……斬々、なぜ同調しているはずの<アンノウン>の力を使わない? 外には五万と<アンノウン>がいたはずだ。空を駆けるのが必要なのはわかる。けれど、いまも、前回も、おまえは<アンノウン>の力をまるで使いはしない」

 ギリッ、と首を絞める力が増す。

 呼吸するのがキツくなるが、知ったことじゃない。

「ひとつ問うぞ。俺たちが弱いから使わないわけじゃないんだろ? おまえの見ている世界に、本当にそこに――ガッ!?」

 もはやしゃべらせる気はないか……。

 言葉を発そうにも、口からは呼吸音が漏れるだけ。

「驚いたな。独自の発想のみでそこに行き当たるとは。だが、それは間違いだ」

 なにを言いたいのかわかっただろう彼女は、自由なもう一方の手の指を揃え、手刀の型を作り出す。

「もう聞くべきことはない。眠れ、自由」

 チッ、ダメか――……。

 せめてもの抵抗に右手の握り拳を作った直後。

 斬々の側頭部に、なにかが撃ち込まれた!?

「これは!」

 そのおかげで手の圧力が緩み、、喉の圧迫が終わった。

 喉を潰される前で助かった!

『あんまりな状況だったから、お兄さん、つい手が滑っちまった』

 聞こえてくるのは、だるそうな声。

「ナイス援護だ、千種」

『こっちは片付いた。すぐに、四位さんが来ると思うぞ』

 偶然か、千種が言葉を言い終えたとき、壁をぶち破って、壱弥が突撃してきた。

「天羽!」

 そういや、途中カナリアの歌声が聞こえてたっけ。まさかと思うが、この戦場に来てるなんてことはないよな……。

 壱弥を見て、そんな思いが浮かんだ。

 だが、そんなふうにゆったりしている場合ではないと、再確認させられた。

「羽虫がこぞって集まりだしたか」

 冷たい声が、目の前で放たれる。

「ゆっくりしてる時間もないが、この後はそうそう邪魔に来れないのでな。最後に遊んでいくのも悪くはない」

「は?」

 言うが早いか、斬々は俺を脇に抱え、空を駆け出す。

「チッ、天羽を連れ去るつもりか! おい千葉カス、撃ち落とせ!」

『はいよ』

 壱弥が即座に俺たちを追い出し、後方に続く。

 首を回すと、視界の端で光る物体が映った。千種の弾丸か。

「二度目はない。いい腕だが、どのみち私には届かん」

 いともたやすく、弾を掴み取る斬々。こいつ、どうなってんだ……。

「ふっ!」

 千種の方を気にしている斬々を狙い、壱弥が重力の塊を作り出し、彼女を押さえつけようとする。

「ふはははは! 心地いいぞ、朱雀壱弥。自由の本気の数分の一程度の威力だが、人にしては上出来だ」

「こいつッ!」

 こたえてないどころか、楽しんでやがる……。

「どうした。このままでは進んでしまうぞ?」

 一歩、また一歩と、壱弥をあざ笑うように空を歩む斬々。

 どうする、どうすれば――海ほたるからも随分と離れちまったし、ここからでは月夜の抜刀も届かない。というより、だんだん離れていってないか? なぜ……なぜ、海の方へと向かうんだ?

「おまえ、なにするつもりだ!」

「戦うなら、この私が完全となったときだ。それはいまではない」

「知るかよ!」

 やっとのことで回復していきた光を、拳に纏わせる。こんなとき、限界のある<世界>ってのは嫌になる。最高出力なんてものを出した後じゃ、しんどいのは当然か。

「みゆちん!」

 そんな中、ひときわ大きな声が響く。

「姫さん!」

「……天河舞姫か。最強と謳われるおまえの一撃、味わっておくのもいいかもしれんな」

 ダメだ! 姫さんは完全に力任せの一撃。純粋な力のみでは、化身刀には太刀打ちできない!

「っざけんな!」

 抱えられている手から抜け出し、正面に降り立つ。

 俺の<世界>は、束ねて繋ぐモノ。幾重にも重なった、連撃をも可能にする光だ!

「そう。私の自動反撃にも弱点はある。だからこそ」

 轟音が、光が、辺りに鳴り響いた。

 俺から放たれた右腕の先には、彼女から放たれたであろう左腕が。

 しかし、本来ならその左腕さえも消し飛ばすほどの威力が込められていたはずだ。俺の、正真正銘最後の一撃だったんだぞ……。

「ちっくしょう…………」

 幾重にも重なる、同一箇所への連続攻撃。

 彼女のためだけに編み出した、俺の<世界>による一撃。それすらも、届かない。

「前の私であれば、その一撃の前に沈んでいたかもな。生憎、自動反撃だけが取り柄ではないので――」

 左横から、壱弥の拳が斬々の顔にめり込む。

 右側からは、姫さんの出力兵装が、彼女の細い体を両断しようと引かれる。

「――自動反撃」

 ダメだ。どこを狙おうと、鍛え抜かれた彼女の防御は崩せない……。

「くっ……」

 幸いにも、籠手が砕かれただけで済んだ壱弥。

 出力兵装を受け止められた姫さん。

 この二人でも、敵わない。

 元々、俺が始めた戦いだ。あいつらまで巻き込んで潰されては、今後が危うい。

「姫さん、壱弥! もういいから、おまえらは手出しするな! そんで、さっさとここから逃げろ!」

 完全に誤解していた。

 最早俺たちの手には余る存在になっていたんだ、斬々は。

「このまま戦い続けても、誰かが傷つくだけなんだよ! だから――」

「私は、みゆちんを置いて逃げたりなんか、できないよ」

 俺の言葉を遮るように、姫さんが宣言する。

 いつもいつも、俺の言うことなんて聞きやしない。

「同感だ。おまえには仮があるからな。それに、ここで助けようとしないのは、俺じゃない」

 壱弥までか。

 俺の隣に降り立ち、斬々を睨む。

「俺の仲間が世話になったな。これ以上、好き勝手にできると思うな」

 有りえない。

「ハッ、まさかおまえの口から仲間なんて言われるとはな」

 最初に出会った頃からしたら、想像もできない変化だ。ああ、これだから人と一緒にいるのは嬉しいんだ。

「朱雀くんがみゆちんを仲間と認めたってことは、私も仲間だよね!」

「なぜそうなる……」

 壱弥とは反対側に立つ姫さんが、嬉しそうに壱弥に話しかけるが、対する壱弥は嫌そうな顔をした。

 次いで視線を俺に移し、

「おい天羽。おまえのところの主席は頭いってるのか?」

「あ、それちょっと千種っぽいな」

「やめろ! 俺を千葉カスと同じにするな! あいつとだけは一緒にされたくない!」

 おいおい、否定の仕方ひどすぎるでしょ。

『嫌われすぎじゃね、これ……』

『あはは、お兄だもんね。ウケる。あ、みゆちん、あたしももうすぐそっち行けるから待っててね』

 はい? ちょっと、明日葉まで来るの?

 俺の苦労は無駄か、そうですか。

「揃いも揃って、どうして都市代表ってのは人を放っておかないかね」

「みんな、みゆちんが心配なんだよ」

 姫さんが教えてくれるが、いまいちピンとこない。

 第一、全員激戦を終えて疲労もあるだろうに。

『天羽、無事そうだな』

「ほたるか」

『千種と後方支援に回ってやる。あとは好きに決めろ』

 言いたいことだけ言い、それっきり一言も聞こえなくなった。

 ほたると、引き続き千種も斬々の相手をすると。

 はあ……俺は正直、諦めていたんだがな。化け物の相手は、同じ化け物か怪物でなければできないと。

「<世界>での消耗は激しいし、傷も多いんだけど、こんだけ言われちゃ、もうひと頑張りするしかないじゃねえか」

 タイミングよく、カナリアの歌声が響く。あいつ、寝込んでたはずなんだけど、元気なもんだな。

 本当に、ありがたい。

 真っ直ぐに斬々へと視線を向ける。

「つまみ食い程度の気分でいたが、代表全員とやりあえるとは、面白い。だが忘れるな。多対一だろうと、この場はなお私の独壇場だ。さあ、仲睦まじくかかってくるが良い。実のところ、多対一はこの私の得意とするところでな」

 やるしかない。

 どうせ、言い聞かせたところで誰一人聞かないんだ。

「さあ、行こうかみゆちん。今日最後の作戦だよ!」

「ああ、今日も世界を救おうぜ!」

 ――並び立つ俺たちに対し、妖しく笑う斬々が両手を広げた。

 ここからが、本当の正念場だ。




最終回を迎え、緩やかに衰退していきそうですが、この話は完結に向け速度も増しながら進んで行く……予定です。
本編とはまた違った視点から進む本作を、これからも宜しくお願いします。
最後に、クオリディア・コード、ひとまず最後まで楽しませてもらいました!
では、また次回!

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