なにより壱弥と霞の関係性もわりと好きなalnasです。夜羽もいつかは出したいキャラですね。
まあ、それには話を進めていかないといけないのですが。
というわけで、最新話です。どうぞ!
騒がしい……。
神奈川だけでも賑やかなのに、各都市の代表が揃うとさらに騒がしくなる。
「いいか二百十三位。おまえはいつも本気を出さないからダメなんだ」
「おまえが倒れたら出してやるよ、四位さん」
ええい、おまえらは毎度のごとく言い合いやがって。
「待ってる間くらい静かにできないのか?」
「いや、できないでしょ。絡まれるんだもの」
普段のおこないだろうなぁ。あ、ブーメランだこれ。言葉にしちゃいけないわ。
「壱弥、女子たちが来るまでは言い合いをやめないか? いくらカナリアの浴衣姿をまた見れるからってテンション上がっててもさぁ……」
「上がってなどいない。いない……」
なんてわかりやすい奴だ。
普段もこれくらい素直なら、通訳などいなくても言いたいことがわかるんだが。
それはそれとして、壱弥と千種はそわそわしすぎだろ。
「おーい、みゆちーん!」
あ、姫さんだ。
後ろには、保護者のように優しい顔をしたほたるの姿。
二人とも、浴衣に着替えてきたようだ。とは言っても、少し前に見たばかりなのだが。
「走ってくるなよ、姫さん。転ばれるとかなわん」
「はーい!」
元気な声がすぐ近くで聞こえる。
返事をする頃には、俺の前まで到達していたようだ。
「姫さんたちが来たってことは、他の二人も来るのかな?」
「うん、みんな準備できたからすぐに来ると思うよ」
「そうか。で、ほたるさんや。姫さんから俺に視線が動いた瞬間に嫌そうな顔するのやめない?」
「やめる必要がない」
「そうっすか……」
おっかしいなぁ。俺、今回はまだなにもしてないんですけどね。
姫さんに触れたわけでもないし、触れられたわけでもない。仕事もさぼってないときた。
怖い顔で睨まれるのは理不尽だろ。
「ねえねえ、みゆちん」
「んー? なんだ、姫さん」
あ、ほたるの目つきがさらに悪くなった……。
「今日のお祭り、一緒に回ろうね!」
なるほど。
ぜんぶ理解したぞ、俺。
姫さんのことだ。そのことはほたるにも言ったはず。知ってたら怖い顔にもなるわけだ。
「まあ、回るのはいいけどな。ほたるも一緒にだろ?」
「そうだね!」
「ならほら、拗ねてる友達も誘ってこいよ」
「え? ほたるちゃん、拗ねてるの?」
無自覚かぁ。仲良いから、誘わなくても一緒に行くと思ってたんだろうな。
姫さんと違って、ほたるには言葉や行動で伝えた方がいいんだよ。
特に信頼のある人ならなおさら、なにか明確に伝わるモノが欲しくなるんだ。
「自分で確かめてみなよ。なんにせよ、言葉にして誘われるのは嬉しいものだよ。いつも隣にいると、ついついそうあるものだって思いこんじまう。たまにはさ、ちゃんと言って欲しくなるんだ」
「……そっか。ありがと、みゆちん」
俺から離れ、ほたるへと振り向く。
これで俺への被害はあるまい。姫さんとほたるが楽しんでくれればいいさ。
「あ、お姫ちんはっけーん」
「遅くなっちゃってごめんね、みんな」
そうこうしているうちに、明日葉とカナリアも合流したか。
場所が違うだけで、合宿と変わらないな。
「いっちゃん、どうかな?」
「浴衣なら先週も見ただろ。特に感想はない」
「えぇ……」
壱弥、おまえそれ照れ隠しなの? 本気で言ってるの? ダメだ、あいつの性格上どっちか判断つかねぇ。
「まったく、これだから4位さんは」
「なに?」
「女心のわかってない4位さんは困る」
千種の口から、女心なんて言葉が出てくるだと? なに、祭りの雰囲気にすでに当てられてるんですかね? キミたち今日テンションおかしくないかな。
「お兄が女心わかってるとか、ウケる」
「いやいや、俺ほどわかってる奴いないでしょ。なあ、天羽」
「すまん、おまえほどわかってない奴もいないでしょう?」
「みゆちん、面と向かって言うとかホントウケる」
ここで肯定するのって難しいんだよ。シスコン度なら一番だろうけどさ。にしても、みんな楽しげだな。
「よし! じゃあみんなでお祭を始めよう!」
「ん? 始める?」
「うん、始めるの」
姫さんの言葉に反応してしまった。
「なに、祭りってまだ始まってないの?」
「お兄聞いてなかったの? 今日のお祭、あたしらが開催を宣言しないと始まんないんだよ?」
「いや、聞いてないんですけど」
千種は知らなかったのか。
むろん、俺もなにも聞かされてないんですけどね……なに、なんで毎回俺には情報回ってこないのよ。あれか? これも姫さんからの信頼の証かなにかなの? 不便すぎるわ。
「カナリア、どういうことだ?」
「あれ? いっちゃんも知らなかったの?」
「まったく聞いていない。おまえにはどこから情報が来ていたんだ?」
「ひーちゃんからだけど」
全員の視線が、姫さんに集中する。
「あ、あれー?」
困ったように髪をいじる姫さんだが、そういえば。
「カナリア、姫さんからはどうやって情報を伝えられたんだ?」
「え? ああ、メールだよ」
なんとなくわかったな。これは過去には例があったりするし。
「姫さん、端末貸してみ」
「うん」
姫さんの端末を借りて中を見ていくと、確かに今回の一件の内容が書かれているメールがある。しかし、宛先にあるのは女性陣のみ。
その中には、うちの四天王たちの名もある。
神奈川の運営と、各都市の代表の女子にのみ送ったわけか。
「姫さん……これ、宛先に俺たち男子組が入ってないぞ」
「え!?」
宛先を見せてやると、なんでだろう? と姫さんが首を傾げる。
「なんでだろうもなにも、操作ミスだろうな」
「失敗しちゃったみたいだね。みんな、ごめんね……」
謝ると、明日葉とカナリアが微笑む。
カナリアにたしなめられた壱弥はむすっとして、少し不機嫌そうに。
千種は、仕方ない、といったため息を吐きながら。
誰も、否定しあわないのは合宿のおかげだろうか。多少なりとも、雰囲気が柔らかい。
「そんじゃ、全員が今日のことを知ったところで、始めますか」
外ではいまかいまかと待っている生徒たち。
ここではどこを回ろうかと話し合ってる6人。始めてやらないと、どこかから文句が飛んできそうだ。
外に出ると、賑やかな音が聞こえる。
「あ、いっちゃん、りんご飴あるよ、りんご飴!」
「わかったから腕にひっつくな! こら、離れろカナリア!」
あいつら仲良いな。
にしても、さすがは姫さん。出た途端に姫さま姫さまと歓声が聞こえて来る。
「みんな、今日はお祭だよ! いつもと違う、戦うことじゃなく、楽しむことに全力でいこう! 東京、千葉のみんなとも仲良くね!」
姫さんの言葉に、神奈川中の生徒たちが揃って笑顔を向けた。
「えっと、まあ今日はケンカとかなしね」
明日葉が短くそう伝え、
「全員、普段バカなんだから、人さまに迷惑かけるなよ。とりあえず、それだけ守ってください。いや、ほんと俺のせいにされたらたまったもんじゃないんで、お願いします」
千種が釘をさす。というより、これは懇願に近いのかな。
「みんな、今日は笑顔でね!」
「今日だけは戦うことを忘れろ。普段から俺一人で十分だが、いざというとき動けない奴は必要ない」
壱弥の発言に、東京の生徒以外が静まりかえるが、カナリアが即座にフォローを入れる。
「えっと、つまり今日は楽しい日だから、戦闘のことは気にせず、いざってときにまた戦えるように休んでほしいってことです!」
なるほど、どう訳したらそうなるのか毎回さっぱりだ。
「じゃあ、あとはみゆちんから一言!」
「はい?」
「一言!」
くっ、強引な……。
「しゃーない。全員、面倒ごとだけは起こすなよ。あとは好きにしてよし」
「みゆちんからも一言もらったところで、お祭を始めるよ!」
俺たち代表全員がグラスを掲げる。
すると、倣うように他の生徒たちも思い思いにコップを、食べ物を頭上に掲げた。
「これより、神奈川主催! 三都市合同夏祭りを開催するよ! みんな、カンパーイ!」
『カンパーイ!』
盛大な歓声と共に、三都市では初になるであろう、合同の祭が始まった。
しかし、なぜ合図が乾杯なのだろう?
「それで、おまえたちはどうするつもりだ?」
壱弥が俺たちに向けて問うが、ほたるは姫さんと屋台を回る気満々だな。
「俺はとりあえず静かな場所でゆっくりしてる」
「え? お兄屋台見に行かないの?」
「なに、明日葉ちゃん回るの?」
「回るし! だからお兄も行くの!」
「……なん、だと」
さらば千種。おまえに安寧の地はないぞ。なぜなら、俺にもないからな。
「私はいっちゃんと回ろうと思うけど、みんなバラバラだね」
「なら、またあとで合流すればいいだろ」
俺が提案すると、不思議なものを見るような目を全員にされた。
「なんだよ」
「天羽は人との関わりを持たないタイプだと思ってた」
「あたしも。みゆちんから提案されるとか意外すぎる」
相変わらず失礼な兄妹だね、キミら。
「俺だって関わりを持つ相手くらい選んでるっての」
「じゃあ、みゆちんはみんなが気に入ってるんだよね?」
「姫さん、そこでその質問はずるくないか?」
そうでもない、なんて言えないだろ。
「ふん、俺はあまり乗り気はしないが、いいだろう。一通り回ったら、またここに来てやる。精々、俺より早く着いていろ。行くぞ、カナリア」
「え? あ、いっちゃん、待ってよ! じゃ、じゃあみんあ、またあとでね! もう、いっちゃ〜ん!」
さっさと行ってしまう壱弥を追うように、カナリアも人混みに入っていく。
はぐれないためか、二人して手を繋ぎながら。
「明日葉ちゃんも、お兄ちゃんと手繋いで歩く?」
「繋がないし。お兄きもい」
などと言いつつ、服を掴んで歩いて行ってしまう明日葉たち。
残ったのは俺たちだけか。
「なら、俺らも行くか」
「うん、三人で楽しもうね」
「私は二人でもいいんだが……」
ぶれないなぁ。
とりあえず、二人はうちじゃ人気なんだから、静かに食事もできなそうだ。
それでも、たまには笑顔でいれる時間になればいいが。
次でお祭は終われたらいいなぁ……本編進めないと。
アニメも佳境に入ってきた感じがしますし、せめてアニメ終了までにこの話もいいところまで進めてしまいたいですね。
そしてカナリアはやはり大事な存在ですね。周りが笑顔になります!
また、感想なんかももらえると嬉しいです。
では、また次回。