個人的にはエンディング後が最高に燃えましたね。あそこまで早くこちらも追いつきたいです。
この作品は、最低でも毎週アニメ放送後に更新しようとしてますんで、時間があったら、アニメ放送後にこの
作品も覗いてもらえたら嬉しいです。
では、どうぞ。
思えば、自分の<世界>を発現させたのは、いつ以来だろう?
俺の情報は管理されてはいるけれど、たぶん、三都市含めても内容を知っているのは、それこそチームメイトと生徒会の面々だけなのではないだろうか。
そんなことを思いながら、無意識に右手を前に突き出していた。
「押しつけられるのは給仕だけで十分なんだがな……」
光の奔流が体から溢れ出し、俺を包む。
眼前にまで迫った姫さんの一撃を感じると、かすかに光が反応を示し、やがて、最強の力に呼応するように膨れ上がる。
体の全身に回っていた光はいまや右手に集約され、遥か上空にさえ届き得る一本の光の柱のようにさえ思わせた。
「さて――それじゃあ今日も世界を守ろうか!」
高く、強く輝く光と、姫さんの一撃がアクアライン寸前で激突する!
「っ、これは予想以上だなぁ、おい!」
最強の少女の必殺は勢いを止めることなく、なお進む。
こっちは最初から全力だってのに、拮抗はおろか、わずかにでも威力を削げた風にも思えない。
すべての敵を薙ぎ通しても満足することなく、破壊を続けようとする。
ただただ強い。
姫さんの力は強大すぎるゆえに、守るための破壊を要求されることが稀にあるのだ。別に、本人が望んでいるわけでも、<世界>の代償ってわけでもない。有り余る力が絶大なだけに、仕方ないこともある、それだけのことだ。
「だからこそ、うちの首席には象徴でいてもらわないと困るんだよ!」
姫さんは希望だ。
姫さんは光だ。
俺たち神奈川の生徒だけではない。いずれ、この世界すべての平和の象徴にだって、きっとなれる。
「それまでに出る被害は、最小限に留めてやる。俺が、俺たち神奈川の生徒全員で!」
突如、俺の<世界>である光の柱が霧散する。
右手に光は残ったものの、姫さんの一撃をかろうじて受け止めていた光の柱は消えた――かに見えた。
「待ってたぞてめえら!」
俺一人の力なんて知れてる。
他の誰であれ、姫さんの力には耐えられない。
たとえば俺の力で姫さんの一撃を止めれないように。
でも、みんなでなら、どうなると思う?
必殺の向こう側。
神奈川の生徒たちが集う側で、ひとつ、またひとつと光が灯っていく。
「やっぱ、俺は一人で立てるタイプの人間じゃないってことだな。いい光景じゃねえか」
やがて神奈川の生徒のほとんどが、己の体に光を宿し始める。
銀呼、柘榴、青生。
珍しいことに、眼目がこちらに手を振っているのが見えた。
俺は遠いものを鮮明に見れるほどいい目を持っているわけではないんだが、この状態になると、みんながみんな、自分のことを俺に教えてくれる。
声など聞こえる距離にないはずなのに、多くの生徒たちの歓声が聞こえて来るのは、きっと、繋がっているから。
『姫殿のためなら、僕らはいつでも協力するさ!』
『せっかくの見せ場をつくってあげたのですから頑張ってもらわないと困りますさっさと姫さんのために止めてください』
『あ、あの……私でもお手伝いできるのってこれくらいのことなので、あとはよろしくお願いします!』
四天王の三人の声が響く。同時、彼女たちの体の内から光が漏れ出す。
見せ場なんて来てほしくなかったが、こいつらからしたら、姫さんのために働け! って感じなんだろうな。
嫌になる。
こんなとき、みんなに素直に礼を言えない俺が、嫌になる。
俺の<世界>により、強引に繋がっていく俺と神奈川の生徒たち。彼らの応援に応えるだけの力を、いまここで見せることが、せめてもの礼になるのなら――俺はいつだって、光になれる気がするんだ。
真っ直ぐ見据える視線の先で、ほたるが何事かを呟く。
『さっさと止めてしまえ。おまえならできるだろう?』
口の動きが、そんなことを言ったように見えた。
直後、ほたるの体も、光のひとつになり、姫さんの横で、最後の生徒が輝きに満ちた。
その瞬間、全力を出しても止められなかった姫さんの一撃が、俺の光と拮抗し始める。
でも、わずかばかり押しとどめたところで、じきに押し切られることは目に見えているのだ。
「まあ、だからこそ、協力してもらってるんだけどなぁ!」
消えたはずの光の柱が、天より俺に降り注ぐ。
手にではなく、俺の全身に、包み込むように。それに応えるように、反対側にいる神奈川のみんなの元にある光が一人一人から離れ、俺に集結する。
集まり、束ね、力と変える。
一人の限界を、全員を以って覆す! 希望が、信頼の光が消えない限り!
「――いっっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」
神奈川すべての想いを背負い、自ら姫さんの一撃へと突っ込む。
近くからだろうと、遠くからだろうと変わらない。あとはなにもかも俺次第なのだから。
柱からの光が降り注ぎ終わり、希望の光そのものとなった拳と、姫さんの一撃が再度衝突する。
耳にギャリギャリと互いを削り合う不愉快な音が響き、腕には絶大な疲労が溜まる。
これ以上は振らせないと言うように、俺の体力を一瞬で奪う。
やめれたらどれだけ楽か……最強と謳われる少女の攻撃を受け止め、消滅させるなど、誰がやりたいものか。他の都市の代表に頼んでも、力一杯拒否られるのが目に見える。
だから俺だったのかもな……なんせ俺がコールドスリープ中に見てた夢は――いや、違うか。
「俺が俺のためにやってることだ。他の誰のせいでもない。ここに俺がいて、タイミングよく事が進んだだけ……だからそろそろ、止まれ!」
『止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!』
俺の叫びに重なるように、みんなの声が腕を押し出す。
これ以上は進めないと思っていた拳が、姫さんの一撃に食い込む。
「これで、どう――だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
裂帛の気合いと共に、力任せに腕を振り切る。
眼前に迫っていた破滅は、轟音を轟かせ消滅していった……。
「はあ……やっぱり姫さんだけは、みんなを束ねてやっとだよなぁ、ちくしょうめ…………」
繋がっていた声もすでに聞こえず、普段の俺だけに戻る。
時間にしてわずか数秒。それがいまの俺の限界。
体を浮遊感が襲う。
空中に投げ出された体は言う事を聞かず、重力に逆らわず落ちていく。
「海なだけマシか……これで地面とかだったら即死だったな俺」
海から上がってこれないと結果的に同じ気がするが、どうにかなるだろ。
「わけがわからない。ちょっとはマシかと思えばこれか」
近くから声が聞こえる。
今日聞いた、憎たらしくも真っ直ぐな声。
「仕方なくだ。一度だけおまえの手を取ってやる」
その声の主が、俺の手を掴む。
途端、浮遊感が消え、代わりに上に引っ張られる。かかる重力に抗うように、だんだんと。
「まさか助けが来るとは思わなかった。いや、素直に助かったよ、ありがとな」
「ふん……助けたわけじゃない。あまりに情けない姿をしていた無能を拾っただけだ」
「そうか、おまえ素直じゃないだけか。そうかそうか。ハハッ、なんだやっとおまえのこと少しだけわかってきたわ」
「なにを笑っている! 落とすぞ貴様!」
声を荒げる壱弥だが、どうにもその顔が焦っているように見えてくる。
実際は、数時間前に見ていた表情となんら変わらないように思うが、俺の意識に変化があっただけかもしれない。
「……アホ娘の攻撃を返せるような奴がいるとは思わなかった」
「ん? ああ、あれね……あれは俺がやれたわけじゃないよ。なんていうか、いろいろ面倒なんだ」
「それでも、おまえがやったことに変わりはない。あの光の輝き……さしずめ、『輝ける者たちへ』――グリッターといったところか。ただの無能かと思っていたが、アホ娘のストッパーでランキングが伸びないのか、おまえ?」
「うるさいよ。言っただろ? ってか、人の<世界>に妙な名前つけないでもらえる!? 痛いんですけどこの野郎! あとな、ランキングとか関係なく、守りたいものだけ守れれば満足なんだよ俺は。ランキングに固執してなにも守れないなら、結局は意味ないだろ」
その言葉に返事はなかった。
返事の代わりなのか、地上に降ろされた。
「おまえの考えは俺にはわからん。でも、おまえがただの無能じゃないことだけは覚えておく」
ぶっきらぼうな言い方だが、どうやらお互いのことをわかりあい始めるきっかけはできたと見える。
「お疲れさん。アホ娘がアクアラインを壊すかと思ったけど、あんたが止めるとはな」
今度は千種か。
と言うか、うちの姫さんはアホ娘で呼び方が定着してしまっているらしい。
「おお、そっちこそお疲れさん。まあ、二人のやり合いがなければ俺が出張ることもなかったと思うけどな」
戦力としては余裕だったんだ。
故意の事故さえ企まなきゃなんとでもなったでしょ?
「素直に撃たれなかったいっちゃんさんが悪い」
「なんだと!?」
始まったよ、バカ同士の言い合いが……保護者の方々は早く止めに来てくれ。
呆れながらやり取りを眺めていると、横で着地音が鳴る。
「次から次に、俺の周りに集まってくるんじゃないよ」
「そうもいかないだろう。ヒメが望んだことだ」
うちの保護者は甘々だな。
「みゆちん、ごめんなさい! 無理させちゃって、みんなからも……」
「気にするな。おまえの無茶を止めるための俺だ。運良くその場に居合わせればやるだろ。だから謝るな。俺たちのトップが三百位台の人間に頭をさげるのはやめろ」
「でも……」
「いいから、おまえは笑ってろよ。そんで、神奈川の連中に勝利を伝えて、奴らも笑顔にさせてこい」
それは俺にはできないことだから。
俺にできることは、もうやったから。
あとはぜんぶ、おまえたちの仕事だ。
「頼むぞ舞姫。俺はほら、そもそももう限界だし? だから回収……頼むわ…………」
足元がおぼつかなくなり、視界が暗転する。
意識も朦朧となり、近くで俺を呼ぶ声も、どこか遠いことのように思える。
「さ、て……今日もせかい……すくったな、ひめ……さん…………」
最後に見えたのは、三都市の代表全員が集まり、こちらに何事かを叫ぶ姿だった。
そこまでで、俺は意識を手放した……。
ああ、やはり前線に立つとロクなことがない。
次回は後日談を踏まえた上で、オリ話を挟んでいこうかと思ってます。
個人的にいっちゃんさんや霞なんかとの絡みも増やしていけたらなと思ってますが、ヒメや眼目との絡みが一番多いんだろうなぁ。
では、感想なんかもらえると嬉しいです。