翌日、俺たち第二艦隊は、いつものように船団護衛の任務をもらった。いつもの仕事なので特に準備するものは何もない。時間が来るのを休憩室で待っているだけだ。そこへ、金剛と比叡がやってきた。おーおー、金剛は笑顔満開だな。
「天龍、サンキューね!」
「聞いたよ。敵艦隊撃破だって」
抱きついてくる金剛を脇にうっちゃりながら、比叡に苦笑いを返すしかない。比叡も若干苦笑いだ。
「出撃か?」
「ああ。編成を変えて、南へ進むことになりそうなんだ」
「ワタシが旗艦なのデース!」
比叡の言葉を金剛が受け取る。俺は龍田と顔を見合わせて笑う。第六駆逐隊も、雲の上のような存在の金剛たちを見て微笑を浮かべていた。
「昨日暁と響が有効に使ってくれたソナーと爆雷は、五十鈴と由良が装備して連れて行くことになった」
「後は、瑞鶴と飛龍が一緒なのデース」
「万全じゃねえの?」
二隻に、俺は笑い返す。その編成なら、潜水艦が出てきても平気だな。俺たちより、五十鈴や由良は対潜攻撃の訓練を積んでるはずだ。由良なんか、伊達に第三艦隊の旗艦を外れてたわけじゃなかったもんな。第六駆逐隊が成果を出したから、ようやく出番ってわけだ。がんばれよ、五十鈴、由良。
「暁と響もありがとう。二隻が戦果を出してくれたおかげだ」
「雷と電もアリガトなのデース!」
「そっ、そんなことないです」
「そうなのです。自分たちの仕事をしたまでなのです」
暁と電が恐縮してそう言う。おーおー、畏まっちゃって。ちらっと響を見ると、響もこっちを見返して微笑んでる。
「撃沈されんなよ?」
「霧島が待ってるから、ちゃんと帰ってくるよ」
「ワタシは、出撃ついでに榛名も探しマース!」
そう笑顔を残して、比叡と金剛は休憩室を出て行く。第六駆逐隊にホッとした空気が流れた。まあ、いつも俺たちと一緒だから、普段戦艦娘と話することなんかないもんな。
「そろそろ時間じゃない?」
龍田が懐から取り出した懐中時計を見ながら言う。もうそんな時間か。
「行こう」
響が言って立ち上がる。ばらばらと、それに倣って第六駆逐隊のメンバーは立ち上がった。その後についていくように、俺と龍田も歩を進める。
岸壁に出ると、護衛予定の船団はもう沖で待機しているようだ。電が全員を確かめるように俺たちを振り返る。目が合ったので、俺は頷いた。それに電もおずおずと頷き返す。
「第二艦隊、船団護衛に出撃なのです!」
電の声が岸壁に響いた。その声を合図に、俺たちはまた、果てることのない海へ駆け出していく。
そうして、第一艦隊大捷の知らせが届いたのは、俺たちが仕事を終え、鎮守府に戻ってからのことだった。