緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

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お久しぶりです!乃亞です!
さて前回投稿っていつだっk…?去年8月???hahaha…

……
………
…………

大ッ変お待たせいたしました…どのくらいの方がまだ覚えてくれているかわからないですが重ねてお詫び申し上げます。
久しぶりすぎて文体も変わってるかも知らないし最新機能とかあるならそれも把握できてません。申し訳ないです。


第67話

 ……ザザーン、ザザーン。

 

「……んぁ……?」

 

 未来視の過度な仕様で気絶していた俺が目を覚ましたら、どこだかよくわからない波打ち際に倒れていました。

 

 ……えっと??? 

 いや起きたのはいいけどあたりは暗いし空には満天の星空って……

 そうじゃなくて! 

 

「……はぁ? いやいやいや、シャーロックとかイ・ウーとかあとは……そう、アンベリール号とかはどうなったんだ……!?」

 

 身の回りのものを確認すると……うん、何も抜かれていない。というか俺の銃は二丁とも完全に整備(オーバーホール)されてるし俺の小太刀は綺麗に研磨された跡があるんだけど。

 そして、俺の覚えのない小瓶が1本。中には紙が入っているようだがボトルメールみたいなもんか? これまた前時代的なブツだな。

 ペンライトとかその辺の小道具も無事だし一応用心して開けてみるか。にしてもなんだってこんな古典的な情報伝達手段なんだ……

 

『明智零司君へ

 僕の推理だと昼に目覚めるはずなのだが、君のことに関して推理すると外れることが多いから夜に目覚めているんだろう。

 まず『ここはどこか?』という君がまず浮かべるであろう問いだが、それは自分で考えたまえ。それができない君ではないだろう? そして君が導いた結論はおそらく正解だ。

 

 さて、アンベリール号の事件の顛末だが君が日本に帰るころには『鯨との衝突による海難事故』ということで処理され、遠山金一君の死と引き換えに犠牲者0ということになるだろう。

 君は日本に帰ってからやるべきことをやるだけで良い。例えば金一君がいなくなった結果……いやこれは君にはヒントを与えすぎたかな。

 ともかく、君がなすべきことをしたその先に平和があるから君は君の道を進みたまえ。その先でまた会おう。 S.Holmes』

 

 ……まぁ、そのなんというか。言いたいことは色々あるんだが、一言にまとめるとこうだ。

 

 

「……何やってんだか、俺……」

 

 

 

 

 とりあえずここがどこだか知りたい俺はケータイを取り出し、今の時間の確認をしようとしたのだが、どうやら充電が切れているらしく電源が入らない。おかしいな……。

 元々満タンでそこまで使ってなかったはずなのだが、どうせあのバカ(シャーロック)の仕業だろう。安易に場所を特定せずに自分の頭で現在地を推理しろとかそんなちょっとした嫌がらせの類だな。わざわざボトルメールにしたのもそれが原因か……仕方ない、ちょっと考えるか。

 

 まず手持ちの電波時計が狂っておらず、懐中時計と同じ時刻を指していることから日本から1000キロは離れていないことを確認。

 んで今は夜だから方位を調べるには星を見るのが一番なんだが……あったあった。

 

 日本でも見える冬の星座の代表格、オリオン座。東京からの見える角度との差からして、ここはおそらく上海に近いところ。

 ……おそらくあのシャーロックのことなので正式な渡航手続きなんかせずにここに放置してるだろうし、もしかしなくても不法滞在だなこりゃ。

 

 となるとこっそり日本に帰らないといけない。バレなきゃ犯罪じゃないので武偵3倍刑の原則は適用されないしな。

 上海から東京は直線距離でおよそ1760km、だいたい東京博多の倍くらい。となると博多に戻ってそこから新幹線か飛行機で帰ろうか。俺の水の超能力がいくら使いやすいとはいえ、超能力の無駄遣いは抑えたい。

 

 ……さて、ここまで方針立てたしそろそろ声掛けても良いだろ。

 

「……なぁ、俺に何か用か? そこの糸目」

「やはり気づかれていましたか。流石は法国(フランス)徳国(ドイツ)で名の知れた三頭剣(ケルベロス)。伊達じゃないですね」

「安い挑発だな、そこまで調べてるなら俺がその名前好きじゃないのも知ってんだろ? ……ったく、とりあえず話なら付き合うから名前くらい名乗ったらどうだ?」

「ええ、ここで貴方のような個人での巨大戦力と無駄に不和になる必要もないですしね。私は諸葛静幻、藍幇という組織に属しています」

 

 そう自己紹介しながら糸目でニコニコしながらコテコテな中国人が出てきた。てかこのコテコテ中国人……もとい諸葛は今藍幇って言ったか? それって……。

 

「……へぇ、藍幇ねぇ。なぁ諸葛さんよ、俺の記憶違いじゃなきゃその藍幇って組織は日本にこっそり潜水艦で来てチンケな(オモチャ)やらクスリやら売りに来てると思うんだが気のせいか?」

「こっそりだなんてとんでもない。先方にはしっかりアポイントとってから行きましたからね」

「来たことは否定しない、と」

 

 確か半年前くらいに横浜で華龍組とアウトローな取引をしてたのを俺とかレキでとっちめようとして逃げられたんだよな。

 あの時の逃げ足からして普段からクスリや武器の密輸(デリバリー)をやってるんだろうと思ってたんだが、なるほど。

 中国に本拠地を構えているなら日本は格好の密輸入先なわけだ。何せ治安が悪くなって、結果銃規制やらが緩くなって日が浅いわけだし。

 そこを指摘してもニコニコ顔を崩さない諸葛はおそらくこちらが言ってきそうなことは大体想定してる感じだ。要するに頭がキレる。

 なんというかシャーロックみたいな先の見通しの良いタイプだな。

 こちらの手持ちの情報もほぼないし話だけでも聞くか。

 

「それで、要件は?」

「簡単な話です。私達藍幇と貴方で商談を、と思いまして」

「……なんか最近似た話題でこちらが損したばかりなんだがな。まぁ聞いてやる」

「それほど貴方という一個人を警戒してる組織が多いということですよ。さて、交渉なんですが今貴方は日本に帰るための足が欲しい。違いますか?」

 

 ……自分らの都合を推察されるのを避けるのと同時にこっちの都合を把握してるぞって暗に告げてきたわけだ。頭がキレて地位もある奴ってのは基本自分が勝てる時しか来ないから相手に回したくないってのに、こいつといいシャーロックといいどうして俺に突っかかってくるんだか。

 

「それがどうした。戻るだけなら超能力ですぐ帰れるが」

「こちらの条件を呑み込めば、イ・ウーの技術も付いてきますよ? お得だと思いますけどねぇ」

「技術? どういうことだ? というかあんたら藍幇とイ・ウーは関わりが……あぁなるほど、技術の共有か提供をしているわけだな」

「まぁそのような物だと思っていただいて結構です。では商談を。私どもが提供するのはこちらのオルクスという潜航艇です。最大船速は約170ノットだから東京までは3時間強で着く計算となります。元々は海水気化魚雷だったものを改造して自動操縦できるようにしてありますが、いかがですか?」

 

 といって諸葛が見せた図面に俺はパッと目を通す。……ふうん、本当に見た目は魚雷っぽいな。流石に俺だけではその細部まで理解できないが、武藤か平賀あたりに見せたらヨダレ垂らして喜びそうだな。それくらいの価値は読み取れた。

 

「なるほどねぇ、こんなトンデモ技術の結晶を俺にいくらで? 流石にパッと見ではどのくらいのレベル技術なのかわからんが、そう安くないだろ」

「まぁそれなりには。設備や改造費諸々で10万人民元は下らないモノです」

 

 じ……10万人民元!? 日本円で大体150万かよ……。安い車なら買えるぞ……。

 流石に高い、と目で伝えると諸葛はそれもわかっていたかのように首を縦に振ってきた。まぁ予想通りだろうよ、いきなり150万をぽんと出せる人間は富豪じゃなくて不用心なカモだ。

 

「ですので今回は、『今後ビジネスの邪魔をしない』という条件で1万人民元でお売りいたしましょう」

「…おいおい諸葛さんよ、急に10分の1になったがどういうつもりだ? あとその条件はまさに俺が苦汁をのんだ条件だから却下だ。受けるとすれば『積極介入をしない』までだ」

 

 俺の言葉と同時に諸葛の目が少しつり上がったのがわかった。なるほど、うまくハメてきたな。諸葛静幻、食えない男だ。

 

「その言葉を引き出せたら重畳です。それでいいでしょう」

「……チッ」

 

 諸葛の出してきた書類(何故か中国語と日本語両方で書かれていた)に目を通し、渋々サインをする。シャーロックも諸葛も、頭が働く人は敵の有能な人を封じることがうまい。さながら首輪のように縛りが増えていくのは本当にケルベロスのようで嫌になるぜ、全く。

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 

 このトンデモ技術の結晶での潜行は思ったより快適で、俺自身が少しの水流操作をしただけで予定の3時間強よりも早く、具体的には2時間半で東京湾に2つある人工浮島の何もない方、通称空き地島に無事に着いてしまった。数人乗る想定で作られていたのか広々とした空間で体が固まったりもしてない。

 

「……っと、ちゃんと着いたか。ってオイ!」

 

 俺が空き地島に上陸した瞬間に背後でガラガラガッシャンという嫌な音が立ったので、振り返ると見るも無残。さっきまで乗ってたトンデモ技術の結晶がバラバラに。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

 クッソやられた!!!! 諸葛の奴め、自壊装置仕込んでやがったな!?!? どんな構造なのか詳しく調べられると困るからか!! やりやがった、それなら9割引でも得だよなぁ!? 15万貰えてさらに厄介者追い払えるなんてよぉ……。

 

 カチンと来たわ、幸い脳内にちょっと見せてもらった図面を全て記憶してるからそのままアウトプットして再現してやる……! 

 

「……っとその前にとりあえず壊れちまったもんは仕方ねぇし証拠隠滅も兼ねて水で圧してバラバラにしとくか……」

 

 さらばトンデモ技術の結晶。そしてご機嫌麗しゅう、もう日の目を見ない金属ゴミ達よ。

 

 

 

 

 教務科の高天原先生にとりあえずでっち上げの依頼完了のメールを送り、潜入の為の作業を探偵科の部屋で行なっていた関係もあって実に久しぶりの自室に戻ろうとすると、男子寮にこの時間にしては異様な人だかりが出来ている。しかもその中で帯銃してる人はいなさそうという謎な状態。なにこれ? 

 ……ってこれマスコミだな、ちょっとだけ見知った顔もいる。今は疲れてるから顔隠しながら裏口からさっさと入りますか。

 

 

「……遠山金一武偵の弟さんですよね?」

「お兄さんが未然に事故を防がなかったせいでアンベリール号は海難事故にあったんですよ!?」

「何か一言言う義務がありますよね?」

「何か一言いただけませんか?」

 

 ……どこのマスコミかわからないが随分な言い草じゃねぇか。これはおそらくあの会社が訴訟でさらに損害受ける前に裏で騒いで非難の方向性を金一さんに向けたってところか。にしても海難事故を未然に防ぐ? 面白い考え方するもんだな、武偵庁の武偵とはいえ一介の乗客に全てを守れってか? すげぇ便利屋扱いなこって、普段は煙たがってる癖にな。

 

 ……そもそもアレは海難事故ではねぇし、海難事故だとしてもそれを未然に防ぐなんて未来視を持ってなきゃ……いや、未来視を持っていても出来ないことだ。未来視はそこまでノーリスクで使えるほど万能じゃない。少なくとも俺は出来ない。

 

 ……それに取材班は金一の弟(キンジ)って言ったか? ったく、ただでさえ崇拝一歩手前くらいの気持ちを持っていた兄貴が死んだってのにその上にこんなわけのわからない言いがかりまでつけられるなんて俺があいつならやってられない。というか千花が消えた時にそれに近い誹りを受けて、未だに一族の中で俺を白い目で見る奴も少ながらずいるから近い経験はある。

 

 ……はぁ、おそらくシャーロックの奴が言ってた「やるべきこと」ってのはおそらくあの昼行灯(キンジ)をこういうわけのわからん連中から守れってことなんだろう、面白い。ならその上でこいつらをシャーロックの条理予知(コグニス)を上回るように操ってみせるさ。個人的な作戦名は……そうだな、『完璧を超える不完全(ディパッシー パルフェ)』とかでいこう、それが良い。

 

 俺はとりあえず水の超能力で擬似的な雨雲を作り出し、寮の周り1km一帯を土砂降りにした。こうすれば高級機材をお持ちの皆様は壊したくないから一時撤退するって寸法だ。流石に0から水を作り上げてるから大分精神力を使うけどな。

 

 案の定マスコミが蜘蛛の子を散らすように逃げ帰り始めたのを見てちょっとだけスッキリした俺は悠々と正面から寮に戻る。仕事熱心なマスコミの方々は機材を大事にすると。

 まぁおそらく今日の東京は降水確率0%だろうから防水設備とかも持ってきてないんだろう、ざまあみろ。

とりあえず作戦は明日からスタートだ、疲労がドッと全身に来てる。このままではいい出来にならない。明日になったらまずは…キンジのケアからか。




珍しく後書きを。
ここまで投稿が滞ってるのは強いて言うなら個人的な都合で生活の拠点が一時的に国外になっていた関係で資料(原作)が確認できなかったとかまぁそんなのはあるんですけど流石にここまで投稿できないとは思いませんでした。重ねてお詫びを申し上げます。
エタらないように目指してはいたんですけど原作に入るのがここまで遅れるとは思わなかったですね…。今回も割と内容をキツキツに詰めたので字数が多くなっていました。原作前パートはあと1話か2話を予定してます。アリアんをお待ちの読者様、今しばらくお待ちを。

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