緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

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どうも乃亞です。大分夏の暑さも緩くなってきたような気がしてますがいかがお過ごしでしょうか?ちなみに私はこの夏ですでに3回ほど熱中症気味なサムシングでダウンしてたりします、体調管理って難しいですね。

2020.7.3 加筆修正、改行等の調整を致しました。


第66話

 シャワーから帰ってみると理子はすでに影も形もなく、代わりにメモが残されてい他のでそれを確認。その内容は『遊戯室』とのこと。普通に考えておそらく『()が遊戯室にいる』ということだろう。多分千花の情報だけじゃ価値が釣り合わないとでも思ったんだろうな、意外と義理堅い奴め。

 まぁとりあえずメモの言うとおりに従いますか。

 

 

 

 さてさてやって参りましたよ遊戯室っと。さーてどこに目的の人物がいるかねぇ……って探す手間も省けた。どうやら先に人払いしていたらしく、中に1人しかいないからな。

 

「──ーもう逢える頃と、()()()()()()()

「……だろうな、俺もそう()()()()()

 

 その第一声に電話で話した時以上の重みのようなものを感じつつ、とりあえず話す雰囲気を醸し出しているので、相手のことを観察することを兼ねてそれに応じる。

 俺より大柄なその男は、その髪を着ている一昔前のスーツと合わせてオールバックにしている。いつかの夢に出てきたように、鼻は高く顔も整ってる。これくらい整ってればパイプが似合うわけだ。ベクトルは違うけどこの顔の整い方は少しあの()()()()()に似てるのかもな。靴はこれまた一昔前の革靴で仕込み刃が入ってそうな雰囲気がある。注意だな。

 

 そして何より無視できないのは……こいつ、『持ってるな』。系統がごちゃごちゃに混ざってるような印象が拭えないから、おそらく複数の超能力を使えるな。手に入れた経緯は知らんがな。

 そもそもおいそれと超能力を増やせるものなのか。……と思ったが俺も水を操る能力と仮定の未来視があるんだったわ。理子曰く千花も空間系の能力を使えるようになったって話だし元々持っていた風の能力と合わせれば2つだ。意外と身近にいるもんだな。

 

「さて、明智零司君。君とは何度か君の夢で会ったけれど、初めて直接会うことだし改めて自己紹介させてもらおう。──ー初めまして。僕はシャーロック・ホームズだ」

「こりゃ丁寧にどうも。明智零司だ」

 

 残された資料にも一通りは目を通す……というか授業で習った程度の知識だが、紳士的というのはまぁその通りなんだな。

 

「まずは、僕の示したヒントを正しく使ってここまで辿り着いたことを褒めさせてもらおう。おめでとう、だがここからが本題だ。君は僕に一矢報いることができるかな?」

「そのために来たんだ、できるできないじゃなくてやらなきゃレキに顔向けできねぇよ」

蕾姫(レキ)君か……ウルスの姫君と君が結びつくのは僕の推理の範囲内だったが、彼女の感情が芽生えるのがあそこまで早いのは想定外だったよ。そしてその想定外を生み出したのは明智零司君、君だ」

「俺はそんなに大した奴じゃねぇよ。コカイン吸いすぎて頭ボケたんじゃねぇか?」

「いやいや、謙遜はよしたまえ。君のその未来視……君は『仮想の未来視』と呼んでいるんだったか。とにかくその能力(チカラ)の影響で僕は推理をし損ねたんだよ」

 

 パイプをふかしながらシャーロックはそれが楽しいことかのように語る。そしてそばに置いていたステッキを持つと俺に向き合った。……ん、あのステッキ多分中に仕込んであるな。持った時のステッキの動き方が木だけで出来てるそれじゃなくて、中に金属が入ってる物の動きだった。

 

「君のその能力は分類(カテゴリ)するなら魔眼の類だ。君は一度未来視を使った時に栄養失調による衰弱で倒れたことだろう。その時に受け身をとらずに倒れたとローズリリィ君から報告をもらったが、それは君が未来視をしたことによって一時的に現実の君の視神経が異常を起こしたと考えて良い。つまり、その異常の影響で身体の栄養バランスが崩れ、衰弱が発生したということになるね」

 

 パイプを美味そうに吸いながら講義でもしているかのようにシャーロックは語る。それで自己陶酔でもしてくれてたらいいのに俺の動きにもしっかり対応してるとでも言わんばかりに反応を返すので迂闊に動けない。まぁ俺に関係ある話だししっかり聞いてあげますかね、イ・ウーの教授さん。

 

「そしてこれが一番の理由だが、君は気づいていないだろうが使用した後に目が少し蒼く発光しているのだ。これもローズリリィ君の報告にあった通りだったが今確認できた。()()()()()()()()()()()()()使()()()()?」

「……バレねぇかなと思ったんだけど目が光ってんなら仕方ねぇか、ご名答だ。理子が俺の部屋から帰ったタイミングで未来視を使った。つまり俺にはこの戦いの結末が視えているわけだ。それでも俺とやるのか、教授さん?」

「ふむ、たかだか16年ほどしか生きていない平和な国に生まれた未熟な子供に150年以上凶悪かつ強靭な怪人たちを数多仕留めてきた僕が倒せるとでも?」

「まぁそりゃあ21世紀にもなって治安の落ち着かないあっち(欧州)で戦ってきたあんたに言わせたら日本は平和ボケって言われても仕方ないわな。ただ、俺が()()()()()()()()。俺がそうしたからな」

 

 へぇ、安い挑発に口だけでも乗るあたり、シャーロックって意外と負けず嫌いなんだな。挑発を返すときに眉が少しひくつく辺り、先祖と子孫の関係なんだなやっぱり。……さて、こちらも良い感じに準備完了だ。あんまり長引かせると未来視の反動で倒す前にこっちがぶっ倒れそうだしな。

 

「さぁ遠慮はいらない、おいで零司君。僕の条理予知(コグニス)と君の未来視のどっちが上かな?」

「ちょっと違うな。これは探偵と武偵のどちらが上かの戦いだッ!」

 

 ドッ! ドドドッ! ガーン! 

 ……どこか遠くで爆発音が聞こえるのは理子か? そういえば爆弾魔だったな、武偵殺しって。

 その音を合図代わりに俺は左足で軽く地面を小突く。それをキッカケにシャーロックの真下からいきなり間欠泉のように海水を射出させる。

 

「おっと」

 

 軽く後ろに下がったシャーロックに対し、射出した海水をブラインドにして素早く後ろに回ろうとして……!! あっぶねッ、このまま突っ込んでたらステッキが思いっきり首のあたりにぶち当たる所だった、こわっ!! 

 というかわざわざ超能力でブラインドを作ったのに反応早すぎないか? まるでブラインドが効いていないみたいだ。少し距離を置いて……ってッ! これは……水鉄砲(ウォーターガン)か! 水の自動反射を切っておかないで良かった。無かったら肩口ズドンの位置だなこれ。

 

「……!! 今のは水の超能力だな?」

「それを使えるのは君だけではない、ということだよ。そして僕が使えるのはこれだけじゃない。これから少し面白いことをしてあげよう」

「そんなもん最初からお断り、だっ!」

 

 いやはや困ったな。やっぱり近接でも距離を取っても俺がイニシアチブをとれないタイプか。なら今度は数で攻めるだけだッ! 

 まず水を操ってシャーロックの視線を切りその間に水で分身を作り上げる。数は……部屋の広さ的に3つ以上は邪魔になるな、じゃあ分身は2つでいい。それでその分身に小太刀を放っておく。これでシャーロックには小太刀を持った俺が3人いるように見えるはず。

 

 ブラインドを解除して突貫する俺は三方向から攻撃するが……バチィィッッ!! すかさず何かを射出するシャーロックに3人まとめて吹っ飛ばされた。なんだ今の、当たった所が痺れるということは電気……というより雷球みたいなものか? というか吹き飛ばされてても痛覚までは付けてないから水分身は動けるはずだ……ってなんだそりゃ。水分身が綺麗な氷像になってるんですけど。シャーロックの方を見るとなんかキラキラダイヤモンドダストみたいなものを出していかにも超能力を発揮した後みたいな雰囲気だしてるし。水、雷、氷って超能力のバーゲンセールかよ、見てて飽きないなぁオイ! 

 

 そして更なる問題が1つ。この戦いの内容がすでに俺の予知からかなり逸れている上に代償だけいいように持ってかれている。おそらく、あいつの条理予知(コグニス)……だったか? ともかくそれに俺の予知が引っ張られて正確な予知から外れた未来に進んでやがる。そんでもって俺は予知の代償でグロッキーっと。端的に言ってヤベェぞこれ。

 

「なるほど、水の分身を出して数的有利を作ろうとしたんだね。うん、流石に良い判断をするのが早いね。ただし、推理不足だ。使える超能力は水だけではないとヒントを出したのにそれを生かせていない。それではすぐに負けてしまうよ? 僕だけにではなくこれから君が出会う敵に。何せこれは君への予習なのだから」

 

 そういったシャーロックのスーツがビリビリに破れて、胸……いや、肺か? ともかく胸部が人間ではあり得ないくらいに膨らんでいく……? これはマズイ気がする! どうすれば……そうか、仮想の未来視か! 

 ふらっと今日2回目の前後不覚、無理解の感覚。でも今回は30秒もいない。なんせ今シャーロックがやろうとしてることの解除(ディスペル)だけだからな。咄嗟に思いついたけど10秒程度の先の未来を視るだけだからさっきやローズリリィに使ったものより正確性が上がって反動も減るはずだ。

 

 

 

「……その目、未来視を使って僕の『ワラキアの魔笛』を不発にしたね?」

「ウッ……そ、それがどうしたって? というかワラキア(Wallachia)だと? ワラキア……ルーマニア……ブラド? 

なるほど、そこ(イ・ウー)に無限罪のブラドもいるのか。ルーマニア武偵中で噂話程度に聞いたことがある。

ブラド……ルーマニア……? 吸血鬼伝説……そうか! 今の発言で全て読めたぞ、お前の超能力のカラクリ。お前輸血かもしくは遺伝子移植かあるいはそれに類することをやって超能力者の遺伝子をもらったな? それを体内に取り込むなり移植するなりして複数の能力が使えるようになったわけだ」

 

「ふむ、今の一言でそこまで推理できるのか。すごい推理力だ、いい探偵になれる。僕が保証しよう」

 

「そうかい。じゃあついでにもう一つお前の情報について答えあわせでもするか? お前、目に頼ってないだろ。視界の情報をシャットアウトしてるか失ったか、そのどちらなのかは知らないがお前は水によるブラインドを無効にし、水分身と俺本体を区別して分身だけ器用に凍らせた。これはお前が目に頼っていない証拠だ。違うか?」

 

「……これは驚いた。実は僕は60年ほど前に毒殺されかけてね、それ以来盲目なのだよ。これを暴いた人は君が初めてだ。なぜなら僕は目が見えるように振舞っていたし、周りで何が起こってるかそれこそ水を常に貼り巡らせて知覚している君並みに理解している。もちろん君が分身を出しても心拍数のあるなしで本物と偽物の判別をするなんて造作もないことさ」

 

 自分のカラクリを暴露されてもなおニコニコしてるシャーロック、あれは自分の勝利を確信してるな。その余裕、俺が文字通り吹き飛ばしてやる。

 

「じゃあお前みたいな前時代の探偵さんは引退してもらわないとこっちの食い扶持も足りなくなるから、なっ!」

 

 そういって俺は軟式野球ボールより少し小さいくらいの水球を()()()()()()()()取り出して投げる。シャーロックはそれをステッキで突いて首を傾げた。……かかったな。

 次の瞬間、ドゥヮッッッッッ!! という馬鹿みたいな爆発が起きて部屋をぶち抜いた。おいおいこんなに火力出るのかよ、原液のニトロって……。

 

 俺が平賀さんに頼んだものの一つ、ニトログリセリンのほぼ原液。簡単な衝撃で爆発するから水とかで混ぜて感度を下げてないといけない紛れのない法規制ものの危険物って奴だ。武偵弾でも別に良かったんだけどあれ一発でとんでもない額吹っ飛ぶからな。今回は平賀さんからもらった俺が超能力で24時間完全管理して暴発しないようにしながらこの戦いに持ち込んだんだが、こんなもん持ち込んでどう武偵局を誤魔化そうかということが懸念事項だったんだよな。

 

 ま、どーせあの武偵殺し(理子)がアンベリール号を爆発させたから向こうに罪を押し付ければいいやっていう思考放棄で放ったんだが……やりすぎだわ。ちなみにシャーロックがステッキに着いた瞬間にニトロに混ざってる水分を一気に抜くという方法でほぼ原液を再現……ってそれはどうでもいいか。

 

 ……ボロボロになってもう欠けらも遊戯室だった跡が残ってないんだけどシャーロックさんは……生きてるな。生体感知……呼気の水分比の反応アリ、だ。というかさっきより威圧感増し増しなんだけどどうしようか……。

 

「これは『復習』になるかな、零司君」

「……おいおい、HSSかよ。いよいよもってお手上げだぞこりゃあ」

 

 そういえば金一(カナ)さんも潜入してたんだったな、だったらHSSを貰っていてもわからない話じゃねぇな。問題はHSSまで発動させたこのバケモノをどうするか、だ。

 シャーロックは手持ちのステッキをそのままフェンシングの持ち方に変えて完全に本気モード。殺す気マンマンだな、こりゃ。

 

「全くもってさっきの爆薬は推理できなかったよ。多分君の未来視の影響だろうが君のことを条理予知しようとするとやはり推理に差異が生じる。実にあの教授以来2人目だよ」

「そんなに貴重な俺に免じて退却してくれると嬉しいんだがどうだ?」

「そんなことをするとでも思うかい?」

「デスヨネー」

 

 そういうとシャーロックはキンジのHSSの時のそれより速い踏み込みで俺にステッキを突き立ててきた。なんとか間に合った自動防御で直撃は避けたが、もし当たったら心臓コース……って危ねぇ! 俺がHSSのやつの動きに慣れてなかったら即死コースじゃねぇか! 

 

 距離を取ろうとする俺にぴったり付いてくるシャーロックはそのままステッキで俺を殴りかかってくるのでそれを根本で受け止めつつ俺は空中で水で剣を二本作り上げそれをステッキと切り結ぶ。

 そしてここで仮想の未来視を使って『ステッキが水の剣に絡め取られて捨てられる未来』を視る。

 

そしてその未来の通りステッキを捨てて俺は改めてシャーロックと向き合う。武器を捨てたところで、どうせかの有名なバリツが飛んでくるんだろ? 推理するまでもねぇな。

 対するこちらは正直、短時間の未来視とはいえたくさん使いすぎていい加減グロッキーなんだよ。まぁここで決めきれないとレキに怒られるから一気に決めにいかないとな。

 

 やっぱり徒手空拳の構えをしたシャーロックのやつにしっかり向き合い、ここで初めて俺の愛銃……ベレッタPx4ストームと.44オートマグを構える。俺といえばこれだよな、やっぱ。それに応えるかのように二丁が光り輝いてるのは気のせいじゃないはず。

 ……さぁ。色々ギリギリだし初手で相手を詰みにするウルトラCを出すか。未来視の能力があるとわかった時点で考えてはいたんだ。使う相手がいないから頭の宇宙の彼方に飛ばしちゃってたけど。

 

「……仕方ない。出し惜しみは無しだシャーロック」

「最初から言っているだろう? 『遠慮はいらない』と。あいにくこの船が戦闘に耐えれられるのはもう5分もないだろうから2分で方をつけようか」

「それはそれはとても優しい教授だことで。……いくぞッ!」

 

 こういう時、キンジみたいに『この桜吹雪、散らせるものなら散らしてみやがれッ!』って啖呵を切れたらかっこいいんだろうなぁ。そういう発言残してくれても良かったんだぜ、ご先祖様? 

 

「シャーロック。今から見せるのは文字通り……魔弾。崩せるものなら崩してみろッ!!」

 

 そう言うが早いか俺は一斉射撃で二丁全ての弾を一気にばらまく。ダブルカラムのオートマグから14発、Px4ストームから20発の計34発はまるで遊戯室のビリヤードのように様々に反射しながらシャーロックを狙う。大丈夫、これは()()()シャーロックに当たる。なぜなら俺の仮想の未来視で約2の30乗の未来の中から当たる未来を選択したからな……! 

 対するシャーロックも条理予知でそのことがわかったのか、余計な動きをしない。

 シャーロックがやったのは一つだけ。()()()()()()()()()()()()()()()()()。ウワー、バリツッテホントニベンリデスネー。

 

「惜しかったね、零司君。未来視と銃の上手い組み合わせだ。ただ、相手が悪かった。僕じゃなければ決まっていた所だ」

「あぁ、確かにお前とやるには銃だけじゃ役不足だろうよ。ただ、あんたの発言は間違いが一つ存在している。ヒントは……そうだな、周りを思い出してみろよ。そんでここがどこだか思い出してみろ」

 

 シャーロックはそこまで聞くと初めて驚いた表情を見せた。流石は武偵の始祖と言われるだけはある、圧倒的な推理力だな。

 

 そう、ここはアンベリール号、豪華客船ってやつさ。ただし俺たちや理子(武偵殺し)、場合によっては金一さんがどったんばったん爆発物を爆発させたり派手に暴れまわったおかげで沈む寸前のな。そんで今の銃撃で更に方々に傷を入れておいた。

 さてここで問題。アンベリール号はどこに沈むでしょうか? 

 

「まさか君の魔弾というのは……!」

「そのまさか、って奴さ。()()()()()()()()()()()()()()、これが弾だ。遠慮はいらない、多分遥か上空に飛ばされるだけだ。空中散歩をとくと味わうと良い!」

 

 そう言い終わるや否や、この遊戯室の耐久値が限界を迎えたらしく方々の傷跡からシャーロック一点をめがけて海水が殺到した。そしてそのまま遥か上空へとシャーロックを思いっきり飛ばした。……一応9条破らないようにクッションは用意しておこうか。

 

 にしても……シャーロック・ホームズ、か。いつだったかもう忘れたけど電話での会話はしたことあるし、その子孫のピンクいのとは会ったこと……というか連絡先知ってるけども、まぁ本物というかオリジナルというのはオーラが違うな。傑物感ハンパない。正直この戦いでも思いっきり手を抜かれてたしな。

 まるで『ほんのちょっとだけ先の未来を視て相手に攻撃を当てる』ことを思いつかせるような戦い方を強制されて色々ガタが来てる。……あぁ、いい加減眠くなってきた……ッ!! この雰囲気は……! マジかよ、今のでも倒せねぇのかよ化け物め……! 

 

「うん、流石に今のは推理できなかったね。君の未来視がまた僕の条理予知を歪めたのか。あぁ、クッションはいらないよ。君も知っている通り、僕は沢山の超能力を使えるからね。高台から傷一つなしで降りるくらい初歩的な芸当さ」

「そうかよ、クソッタレ……」

「それにしても千花君といい君達明智の一族は興味深いね。どうして平和な島国からこんな才能が生まれてくるのか、この世界は面白い。その類いまれなる才能と勇気で、どうか助けてやってほしい」

「……はぁ……助ける……だぁ? ……次から……次へと……面倒事を……押し付けやがって……んで……誰だよその……助ける奴ってのは……」

「僕の曽孫と、いずれ出会うそのパートナーだ。生憎まだ僕が彼らに会うべき時じゃない。だから少なくとも僕があの子達に会うまでは……守ってやってくれ。それが結果として()()()()()()()()()()

 

 ……レキを……ローズリリィに……攫わせることで……俺を挑発して……直接会って戦って……その果てに頼むことが……曽孫(アリア)……とパートナーのお守りだぁ……?? パートナーって十中八九キンジだろ……? ったく……とことん人をナメてやがる……。クソッ、ダメだ……疲労で思考が……まとまんねぇ……! なら言いたいことだけ……言って落ちるか……。

 

「……世界を救うたぁ随分景気がいい話だなオイ……まぁ良い。俺は武偵だしな、依頼ってことで受けてやる。ただ、ことキンジのことに関しては……お前の推理は外れるぜ。断言してもいい」

「ははっ、未来視を持つ君のことだ。心に留めておくよ。……それじゃあまた会おう、明智零司君」

 

 チッ、余裕かましてるシャーロックの奴に弾の1つでもブチ込みてえのにもう指の1つも動かねえや。そう思った俺は素直に意識を飛ばすことにした。あーあ、完全勝利したかったなぁ……。

 

 

 

「最初は致命的な敗北の回避。その次には数秒先の超近未来を未来視する事で攻撃を回避、また僕に攻撃を命中させる未来を選択、というところか。全く、大した成長速度だよ」

 

 ……なんて言ってんだ……もうよく聞こえねえや……。

 そのまま俺はゆっくりと意識を手放した。……マジで疲れた……。




割と詰め込んで作中内のキリがついた気がします。…やっと原作の領域に入れるかな?
誤字、感想等お待ちしてます。

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