緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

60 / 71
第58話

ふぅ…疲れた。にしてもエ○キドゥ、実戦でも普通に有効だなコレ。超能力で拘束するっていうアイデアはあったが、使い続けないといけないってのと有効範囲から動けないっていう欠点があったから使うのを躊躇っていたんだがな。今回みたいな使い方や、相手の動きを鈍らせたりする程度ならそんなに精神力も削られないし有効だ。

……まぁ流石に本家みたいな神性に対する特攻効果はないけどな。

 

『お疲れ様です零司さん、今からそちらに向かいますね』

「ん、おおレキか。お疲れ様。相変わらずとんでもない狙撃技術ありがとさん」

『レキもだけどお前も大概だぞ、明智…。現場ついてから10分経ってねぇぞ、スピード解決なんてレベルじゃねぇ』

「そうか?それよりもヘリコプター落としたら許さんぞ武藤。後は…中空知、聞こえてる?」

『はい、何かご用でしょうか?』

強襲科(アサルト)としての俺の役割は終わったけどこれから探偵科(インケスタ)としての俺の役割がある。中空知に頼みたいのは現場に探偵科の生徒3名と鑑識科(レピア)の生徒6名を呼んでいただきたい。できればBランク以上で」

『わかりました』

 

正直、以前話を聞いた爆弾魔『武偵殺し』の手法っぽいから証拠が見つかることはあんまり期待できないけどな。やるに越したことはない。あと被害者の方にも話を聞きたいし。

 

俺はこちらに飛んできたヘリコプターに手を振りながらこれからどう動くかを考えて、っておい近いとこに留めようとするなよアホ武藤!!

 

 

 

 

というわけで今俺はレキと一緒にカージャックの被害者、澤村鷹展(たかのぶ)氏に事情聴取を行っている。と言ってもレキは何も話さずにそばに控えてるだけだけどな。武藤?今物理的にVの字になって地面に寝てる。そんなにヘリコプターの操縦つかれたのかなー?時々「明智……轢いてやる……」とか聞こえるけど気のせい。ついでにこの惨状を俺がやったとかそんなわけないから。

おっと、ちゃんと仕事しなきゃ。

 

「澤村さん、改めてお聞きしますがジャックされたと気付いたのは運転を始めてどれくらいでしょうか?」

「うーん、10分は経ってないかな。信号待ちで止まろうとしたら携帯が鳴ってね、それに出ると無機質な声で『貴方の車はジャックされました。助けを求めてはいけません。助けを求めると爆発しやがります。アハ、アハハハハハ』って言いはじめてね。いやー焦ったよあの時は」

 

そう言い、ポリポリと頭を掻く澤村さん。大した精神力の持ち主だ。普通ならもう少し声が震えてたりしていても良いものだがそれが見られない。

 

「そこでなんですけど、どうやって救助依頼を出せたのですか?助けを求めると爆発って言っていたのに」

「そこに関しては、わからない。ただ、近くに東京武偵高の人口浮島(メガフロート)があることを思い出してね。そっちに行けば通学中で異変に気付いた学生さんがSOSを私の代わりに出してくれるかもしれないと思ってね。ちょこちょことスピードを落とさないように走ってたら何人かの学生さんと目があって、マバタキ信号(ウインキング)をしたら通じたってところかな」

「なるほどなるほど、ではレインボーブリッジに来たのも…?」

「そうだね、SOSを出すことに成功したと確信したから万一爆発しても被害が少なくなるようにレインボーブリッジに車を進めたってことになるね」

 

とても落ち着いている人だ。俺は日本の有名な武偵ってもんをそれほど知らないけど、変な欠点…例えば銃にトラウマがある、とかさえなければ間違いなく有能な武偵なのだろう。日本より凶悪犯罪が多いヨーロッパでも十分に活躍できそうな武偵だ。

 

「わかりました。とりあえずこのくらいで聴取を終えさせていただきますが、後日再聴取ということで武偵高にお越しいただく可能性がありますのでご連絡先をいただけますか?」

「はいはい、……武偵高か、懐かしいな。梅子は元気か?」

「梅子……と言いますと綴先生ですね。年がら年中吸っちゃいけないようなもの吸ってる以外は元気です。お知り合いで?」

「まぁ、ね。同期みたいなものさ。よろしく言っといてくれ」

「承知いたしました」

 

綴先生のことを話してる時の澤村さん、すごく懐かしそうにしてたな。下の名前で呼んでたし仲も良かったんだろうな。

 

そう思いつつメモ帳に聴取から得た情報をまとめていると、やっと武偵高から鑑識科を乗せた車がやってきた。めんどくさいからアホ(武藤)も連れ帰ってもらいたいところなんだが。

 

「明智様、お疲れ様であります!」

「あ、あぁ。ありがとう島」

 

車を停め、とててと現れたのは武藤と共に車輌科期待の星と目される島苺。身長たったの135cm。そんで乗り物オタク。1つ聞きたい、小学生かお前?小学生みたいに新幹線見て喜ぶらしいし。服装も制服をフリフリのロリータファッション(白ロリだの甘ロリだの理子にギャーギャー言われたが分からん、南無)だし。

だがこれは好都合だ、帰りは島にヘリコプターを輸送してもらおう。

 

「あっちー!!レキュー!!乙だぞぶんぶん!!事件に間に合わない系ヒロイン、りこりんの登場だよ〜!!」

「いやそこは間に合ってくれよ」

「同じく」

「きゃっ、冷たい!えへへ〜、洋服のデザインしてたら寝落ちしちゃった!」

 

続いて降りてきた理子にツッコミを入れる。……というかこいつら(島と理子)似てんな〜、背が低いところとか。フリフリなところとか。

あんまりジッ、と見てたのか理子がくねくねし始めた。なにそれ。

 

「なになに〜、あっち彼女のレキュの前でりこりんに惚れちゃった?レキュには無いものもあるしねぇ〜」

「はい?」

「…………………」

「いや待って待ってレキもこいつの言うこと間に受けないで俺はいつでもレキ一筋だからマジで!!理子の言うことと俺の言うことどっちが信用に足るか考えてみてくれ………いただけると嬉しいのですが検討してくれませんかね?」

 

変に理子が茶化すからレキに絶対零度の冷たい目で睨まれた。なんという理不尽。というか理子にあってレキに無いものって……って怖い怖いレキさん怖いよ!!

 

そんなこっちの心情はつゆ知らず、理子はとててて〜と現場のオープンカーの鑑識に参加し始めた。ホントなんなの?

あっちをゴソゴソ、そっちをコソコソとして理子は感心したような表情をしていらっしゃる。

 

「おぉ〜、派手にぶった切ったんだねぇ〜!そんでこれはUZIじゃん!UZIには傷1つついてないとかやるねぇあっち!」

「………もういいや、レキ後はこいつらに任すぞ。俺は学校戻る、付き合ってられん。島ぁー、学校の車1つ持って帰るけどいいかぁー?」

「使うんだったら車輌科の倉庫に戻しておいてくれると嬉しいのであります!」

「はいはい、ヘリとそこにひしゃげてる武藤は頼んだ」

「了解したであります!」

「よしっと……ほらレキ、そこで膨れてないで帰るぞ。今帰ると何か美味しいものが付いてくるかもな」

「……仕方ないですね、わかりました。今回はそれで手を打ちましょう」

「いやあのホントに誤解なんだって……」

 

そうして俺は島たちに仕事の引き継ぎを終えて未だに膨れているレキを連れて学校に戻ることにした。

 

ーー残っていればまた違った結末があったかもしれないのにな。

「……くふっ♪」

 

 

 

教務科にとりあえず報告を終え教室に戻るや否や、俺とレキは好奇心旺盛なアホ共、特に血の気の多い強襲科の生徒たちに囲まれて取材を受けていた。

 

「2人ともお疲れ様!」

「爆弾を狙撃で外したって本当?やっぱりすごいなレキさん!」

「暴走車5台を1人で投げ飛ばしたってやっぱり明智は人間じゃねぇだろ!」

「そんで変形した暴走車を1人でフルボッコだってな!」

「やーかましい疲れてるんだよアホ共!そんで最後2つ!それは間違った情報だたわけ!特に最後!!どこのトランスフ○ーマーだそれ乗ってみてぇなおい!」

「「「「「いやそのツッコミはねぇわ」」」」」

「わぁ息ぴったりで俺ビックリ」

「「「「「アハハハハハハ!」」」」」

 

なんでそんなに情報がねじ曲がって伝わってしまうのか。……大丈夫かこの学校の通信科(コネクト)情報科(インフォルマ)……。そして俺はいつからツッコミ役になったのか。あと現代文の先生、マジですんません。いやなんで俺が謝ってるのかわかんねぇけど謝っておいたほうがいい気がした。

 

……武偵殺し、ねぇ。何が目的なのかサッパリわかんねぇところが不気味だよな。ここまで手の込んだことしておいて愉快犯ってこともありえねぇし。『仮想の未来視』なら或いは……なんて考えてみたけどボツ。リスクとリターンが見合ってないし、そもそもその人が犯人であるという証拠が無いから使って未来を見ても検挙には至らないだろうな。

あとは……そうそうアンベリールアンベリール。調べよう調べようって思って後回しにするのは良く無い癖だよな。……嫌な予感もするし。

 

やっと静かになった教室で面倒くさそうに授業する先生を見ながら俺は一抹の不安を拭えずにいた。




零司君は エル○ドゥを 覚えた!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。