緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

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どうも乃亞です!
今回からは小休止(リロード)章。零司君とレキにはイチャイチャしてもらいます!
………できるよな??
それではどうぞ!


間章〜再装填〜
第52話


ローズリリィとの激戦を終えた俺、明智零司はその代償として武偵病院への入院を余儀なくされていた。

 

「矢常呂先生、いつになったら退院できますかね?」

「そうねぇ〜。軽く見て10日、大事をとるなら20日くらいじゃない?退院しても少なくとも夏休み終わるまでは全力戦闘禁止ね?どうせ入学式で『水投げ』があるんでしょうけどそれでの戦闘もなるべく避けてね?……と、言いたいところなんだけどどうせ明智君のことだから君への挑戦者が相次ぐんでしょうね」

「水投げ、ですか……」

 

水投げとは元々は緑松校長の母校で『始業式の日には誰が誰に水をかけてもいい』みたいな謎の悪習が武偵高の血気盛んな阿呆どもが何をトチ狂ったか『徒手なら誰が誰にケンカをふっかけてもいい』なんてルールに改悪した悪習オブ悪習みたいなもんである。

 

下級生は上級生に上勝ちを狙い、上級生は上級生で下級生に負けたら示しがつかないという理由でとっても盛んに行われているようで。去年まで神奈中とか海外とかいたから東京の武偵高文化ってのには詳しくないのだが、1つだけ言わせてくれ。バカ共め。

 

俺は興味ないのでこちらからは吹っかけないが、こないだの定期外考査でSランクとっちまったから吹っかけられることは容易に想像できる。全くもって鬱だ。

 

「水投げの怪我人って毎年結構多いから対応めんどくさいのよね、はぁ」

「そんなこと救護科(アンビュラス)の先生が言っていいんですか?まぁ僕も聞く限り水投げが悪習なのは言うまでもないとは思いますよ」

「救護科だからよ。それで話を戻すけど、体を軽く動かす、銃を撃つくらいならやってもいいから絶対に無理しないこと。本当にひどい衰弱状態だったんだからね?」

「何回言うんですか、それ……」

 

まぁ常日頃から病人だの怪我人だのを見てる矢常呂先生が言うんだし、相当ひどかったんだろうけどそんなに強調しなくても。

 

「とりあえず診察はこれで終わりでいいわよ。自分の病室戻っていいですよ」

「ありがとうございます」

 

そう言って診察室を出る。すると、いつからいたのかは分からんがレキがいた。

 

「おう、レキ。よくここがわかったな。」

「部屋に誰もいなかったので診察室と予想しました」

「なるほど、まぁそうなるか。というかさ、毎日来てくれるのは嬉しいけど飽きないか?何もねぇだろ、ここ」

「それは違いますよ」

「そうかぁ?」

 

病院なんかいてもなんも楽しくねぇけどなぁ。そう考えてるとレキは決してこっちを見ようとせずにポツリ。

 

「零司さんがいるじゃないですか。………部屋戻りましょう」

「!!??……お、おう。戻るか」

 

いきなりなんてことを言い出すんだコイツは。びっくりした。いやメチャクチャ嬉しいけどさ。

俺はレキの手を取り、病室に戻る。今日も平和だな。

 

 

 

「………おい、なんで勝手に部屋でくつろいでるんだアホ理子」

「あ!あっちとレキュだ〜、お邪魔してるよ〜!」

 

部屋に戻るとなぜか理子がいた。いやなんでおるん。

理子は俺とレキの繋がれた手を見てニンマリ。人が出るよな、こういう時。

 

「お熱いですなぁ〜!武偵高裏サイトでも早速話題になってるよ2人とも!『前から噂になってたけどホントだったんだ〜』とか『なんだあのリア充カップル』とか散々言われてるしファンクラブなんかもう暴動寸前みたいだよ〜」

「お前が広めたんだろ……ってちょっと待て。ファンクラブ?」

 

なんだそりゃ。レキか、俺が言うのもおかしい話かもしれんがものすごく可愛いもんな。

 

「あれ?知らない?というかその顔だと知らないんだろうねぇ」

「知らん。レキはどうだ?」

「私も知りません」

「だよな。レキのファンクラブだろ?どうせ」

 

そういうと理子はきょとん、としてからすぐイヤーな笑顔を見せはじめた。なんかキモいぞ、お前。

 

「レキュのファンクラブも確かにあるけど、あっちのファンクラブもあるんだよぉ〜〜??自覚ないかもだけどあっちって一年男子の中だとぬいぬいと人気を取り合ってるんだよ?」

 

不知火(ぬいぬい)?まぁあいつはイケメンだしな。てかあいつと俺じゃ戦いにすらならねぇだろ。あいつの方が女子のことを分かってるし顔もあいつの方がいいだろ。

そう思ってると理子はランドセルみたいなカバンの中をガサゴソしてパソコンを取り出したかと思うとこちらに画面を見せてきた。何だこれ。

 

「ほら、これ武偵高の裏サイトの1つなんだけどここではあっちの寝てる写真が1つ10万で取引されてるよ〜。そんで…、こっちがレキュ。体育の写真がこれは1つ15万だねぇ〜」

「は、はぁ!?」

「……」

 

確かに見ると俺の寝てる写真、銃売ってる写真。それにどっから出てきた、飯食ってる写真まで上がってる。レキの方も似たり寄ったり。

ほぼ裏サイトとか使わないからなぁ、俺。ガセ情報とホンモノの情報がごちゃごちゃで結局自分で調べる方が早いってなるからな。レキは……言わなくても分かるだろ?こいつが裏サイトとか見始めたら末期だ、末期。

 

だが今回に限ってはそれが裏目に出たらしい。初出の情報だ。……ん?ちょっと待て。

 

「それで、何しに来たんだアホ」

「えへへぇ〜あっちのお見舞いに来ちゃった!流石だねぇあっちは。VIPルームでしょ、ここ?」

「お見舞いありがとさん、ほんじゃ帰れ」

「酷い!?」

 

あんまりこのアホの対応続けてるとこないだみたいになりかねん。さっさと撤収させるべきだろう。

 

「りこりんに帰れっていうのにレキュには言わない!これは!こ!い!だ!」

「そうだけど何か?てかお前もモテそうだし恋人の1人や2人作れるんじゃないのか?」

「サラッと惚気るとか意外とあっちやるねぇ〜。そんでさっき言ったファンクラブの暴動の話なんだけど……」

 

ホントに話聞かないなコイツ。

 

「レキュのファンクラブ『ああっ、レキ様!』とあっちのファンクラブ『この素晴らしい零司様に祝福を!』が衝突寸前なんだって!」

 

何だそのどっかで聞いたことあるようなファンクラブ名。

 

「へぇ、レキは知ってた?」

「何か起こりそうだとは風が言ってましたが、それ以上は」

「意外とレキュって敏感だよね、そういうの。それでその2つのファンクラブのうち、『ああっ、レキ様!』の方が『明智許すまじ』って激おこ状態。『この素晴らしい零司様に祝福を!』の方が『2人を見守ろう』って方針らしいよ。んで『ああっ、レキ様!』の過激派がそろそろ動き出しそうなんだって。多分水投げの日に徒党をくんであっちに戦いを挑むんじゃない?」

 

ホントに悪習だな水投げ!ホントにめんどくせぇ……

そろそろ付き合いきれなくなった俺は病室の机の中にしまってたDVDを取り出し、備え付けのテレビにフリスビーのように投げる。これ前キンジにやったら器用だなって言われたっけ。

 

「おおー!あっちやるぅ〜!」

「俺は今からテレビを見るから面会謝絶だ。ファンクラブのことは教えてくれてありがとさん。つーわけで帰れ理子」

「りこりんに言ってレキュに言わないってことは……エロビデオ!?エロビデオなんでしょ〜、隅に置けないなぁあっちぃ〜!!」

「んな訳ねぇのはお前の情報収集能力なら理解できるはずだが」

 

あぁもうコイツ帰らねぇな。いいやそのまま見よう。

いつの間にか隣にちょこんと座ってたレキの髪を撫でながらローディングが終わったらしいDVDを見始める。

 

映ったのは巨大な怪獣と戦う巨人の特撮。3分間のアレだ。

 

「……えっと。あっちって意外とそういう趣味だったのね」

「日本の特撮技術がすごいってのと戦闘の時の格闘術が意外と応用できるから見てるだけだよ。さっきDVDしまってた机の中見れば分かるだろうけどドラマとか映画も入ってるよ」

 

へぇーとかいいつつ、理子は机の中を漁る。いや漁るなよ。ちなみに残念ながら理子が期待してるであろうエロビデオはない。

 

「ホントに色々入ってる……」

「だから言ったのに。ほら、途中カットしたから戦闘部分だぞ」

 

今見てるのは怪獣と人間の共存をテーマにした奴なので最初はむやみやたらに傷つけない。だから怪獣が切り掛かったり殴りかかったりするのを受け流したりするのだが、この技術は応用できそうだということで動き方を見ている。どうせ動き回ったらキレられそうだしな。

 

「おぉー、倒せ!ビームだ!」

「やかましい、黙っとれ」

 

 

最後は巨人が怪獣を沈静化して円満解決。やり方は違うだろうけどこれが武偵の目指すべきなんだろうな、とは思う。綺麗事ばっかりじゃ済まないから武偵なんていう職業ができたんだろうけど。

 

「意外と面白かったよ〜、んじゃ帰るね!ばいばいあっちとレキュ!」

「はいはい、お疲れ様」

「では」

 

やっと帰る気になったようだ。理子がスキップで病室を出たのを確認しつつレキに話しかける。

 

「なぁ、レキ」

「はい」

「今度、どっかに服買いに行くか」

「……はい」

 

その時のレキの表情は多分、嬉しそうだった。


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