やっとここまでこぎ着けた……、、、
お気に入り300件越えました!いつものことながら、ありがとうございます!
それではどうぞ!
……長い夢を見ている気がする。それも楽しくない系列の。その夢にはキンジや理子、それにピンクいアイツまで出てきてる。バーみたいなところが舞台で理子とアイツがアル=カタで戦ってる。
アル=カタかぁ。イタリア語の
いやそれはいまどうでもいいか。さて、ピンクいアイツはどう思ってるのかわからないが、理子は最悪アイツを殺しかねないような
これじゃ最悪なことも起こりかねない。そう思い手を伸ばそうとしたが、第三者の手によって遮られてしまった。
「
チラッと見やるといつかの夢の時見た白人がそこにいた。こいつ……!
「あぁ?
「そのことは素直に申し訳なく思っているが、この戦いに水を差させるのとは話が変わってくる。その不満なら直接僕に向けたまえ。大丈夫、この戦いが始まる前に必ず一度直接会えるはずだ。というかそもそもこの戦いに今の君と僕らは干渉できないのだがね」
干渉できない……?あぁこれが夢だからか。
「君の考えてる通りだよ。僕の推理が正しければ理子君はキンジ君や僕の曽孫を殺すことはないよ。いつか話したと思うけどこれは、彼ら2人の
……?今の言い方はおかしいだろ。多分ってなんだ多分って。おそらく一緒にいた年月だけなら俺なんかよりも長いハズなのに多分って。
このことはまた時期を見て検証するとしよう。
そう思っていると目の前の映像が少しずつぶれ始めた。何が起こってるんだ?
「そうか、そろそろこの夢は終焉を迎えるのか。口だけで申し訳ないけど今度こそ相互不可侵は守らせてもらうよ」
「次守らなかったらお前らの船ごと水圧でチリ一つ残さず潰すからな。覚悟しておけ、あと一度だけお前に直接対決を仕掛けてやる」
「それでいい。それなら一つだけ、『アンベリール』という言葉を覚えておくといい。これでも僕は君のことをすごく評価しているんだ。母国に誓おう」
「そうかよ、んじゃ今はもう語ることはないぜ。じゃあな」
そこまで言い切るといよいよブレは許容範囲を超え、目の前さえおぼつかなくなってきた。目の悪いやつってこんな感じなのかな?
そして俺はゆっくりと目を覚ました。
「わーお、知らない天井なんてテンプレな言葉が出てくるとは」
というかここ、個室じゃん。窓から差し込む光的に朝みたいだし、ちょっと状況を整理しようか。俺はローズリリィとの戦闘後、『仮想の未来視』と
………あれ?これって有り体にいえば自滅?恥ずかしくね?とりあえず起きるか。
というわけでベッドから起きようとしたが、それが叶うことはなかった。理由は2つ。1つ目。俺の体力がベッドから起きれるまで回復してないから。2つ目。俺の手を誰かが握っていてそれを解かなきゃ起きられないから。
……手?横を見てみるとライトグリーンの髪。鳶色の目はあいにく眠ってるせいで開いていないが姿勢良く寝ていらっしゃる。そこから伸びた両手が俺の手を優しく包み込んで離さない。
そうか、レキか。意識が落ちる寸前に見た景色を思い出す。倒れる俺に焦ったように駆け寄るレキ。
ずっと介抱してくれてたんだろうか?俺の手を握る両手は小さいけどすらっとしていてとても綺麗で。こんな子に惚れてしまったのも仕方ないかなって思える気がした。
初めて会った時は無表情だけどすごく可愛くて。入学して話してみると凄く電波みたいなやつで。それで狙撃の
やっぱり俺はコイツが好きで。やっぱりコイツの側にいたいな、なんて思うのは惚れた弱みなんだろうか?
自分でもチョロいやつだと思う。女の涙に注意しろとはよく言われることだが涙さえもなしに落ちた訳だし。
「……ん」
俺が体を動かして自分の体が動いた影響だろうか、レキが眠そうに目をこすって起きたようだ。
「おはよう、レキ。それともまだ眠いか?それならまだ寝てても……」
「零司さん!」
!?俺の姿を認識した途端、レキが俺に飛びついてきた。なんだなんだ!?
表情見ようとしても顔押し付けてくるし…ホントになにがあったんだよ?
「零司さん……零司さん!」
「おう、俺は明智零司だよ。どうした?」
「3日も目を覚まさないで……ずっとこのままかと思って凄く怖かったんですからね?」
「え”?……3日?」
なにそれ初めて聞いた。え?3日も寝てたの?
「矢常呂先生からは『出来るだけのことをしたけど……正直こんな栄養失調と衰弱の複合状態はアフリカでも見たことないわ。いつ起きるのかは彼次第ね。最悪な場合は……わかるわね?』なんて言われたんですよ?」
「お、おう悪かったよ……」
凄い怒られてる。怒られてるけど……
「零司さん言ってたじゃないですか。『説教したいことがたくさんある』って。『伝えたいこともある』って!『終わったらきっちり話させてもらう』って!それに……」
そこで一旦レキは言葉を止める。そして意を決したように顔を上げる。ずっと俺に付きっきりでいてくれたんだろう、疲れの滲んだ顔に少しの涙の跡を残してレキは落ち着いたのか、静かに続きを言い始めた。
「零司さんはこうも言いました。『二度と俺の前からいなくなるな』ってそう言ったんです。それなのに零司さんが無茶して私の前からいなくなったら、意味がないじゃないですか」
「………」
そうだよな。レキは多分俺のことを心配してくれてたんだよな。で、あればこそ。この言葉はしっかりと聞かなければならない。それが俺の責任だ。それを履き違えてはいけない。
「本当に、怖かったです。どうしてくれるんですか?」
レキ、お前今自分の表情見えてるか?
そう聞きたくなるほどレキは微かに、少し不慣れだけど、笑ってくれていた。
「どうしてくれる、か」
レキはなにも答えない。言いたいことはまだまだたくさんあるだろうに、なにも口を挟んでこない。
「そう、だな。んじゃ特別だ。説教を垂れてやる。なんでローズリリィなんかのいいなりになろうとしたんだバカ。俺とローズリリィとの因縁知らんとは言わせねえぞ。それで挙げ句の果てに
「いえ、そんなことは」
「まだだよ、お前は世間の常識ってもんを知らなすぎる。俺の部屋来た時なんざリビングでシャワーの準備しようとしたろ?男の俺の前で。デリカシーってもんつけやがれ。リビングでぽけーっとしてる暇あるならテレビでも見て一般常識つけようぜ。次。俺とお前の洗濯物を一緒に洗うな。これは俺が気にしすぎなのかもしれんが洗濯する時は分けろ。これが俺の部屋で暮らす時のルールだ。そして最後。さっきお前には自分の武偵としての価値を理解してないって言ったな。お前は自分の女としての価値も分かってねえ!お前みたいな美人がいなくなったらそのまま世界の損失だこんちくしょう!」
病み上がりだからこれだけ言うのにも疲れる。全く、世話のかかるお姫様だこと。
まだまだ言いたいことはあるがこの辺で打ち止めに……いやあと一つ言うことあるな。
「それでお前は女としての価値がわかってなけりゃ俺の彼女ってことも理解してねぇ。彼女がいなくなったら彼氏は血眼で探すものなの。そこんとこ、わかってる?」
そこまで言ってレキをしっかりと正面から見る。
一世一代の大告白ってやつだ。漢は度胸、なんてな。
「……さてと、俺からははっきり言ってなかったな。レキ、俺と一緒にいてくれ。俺の彼女になってくれ。そんでさ、お前さえよければ……大学を卒業したら結婚してくれないか?」
そこまで言って俺はレキを真っ直ぐ見る。相変わらずほとんど表情はないけどなんとなくわかる。レキは今、照れてる。
「あの……零司さん」
「うん」
「私からもお願いです。こんな私でよければ私と一緒にいてください。私と付き合ってください。それで…いずれは婚約して下さい」
……うわっ、これは照れる。目の前には好きな美少女、その美少女から結婚申し込み。おまけに真っ直ぐ見られてる。鏡見てないからどうとも言えないけれど今俺の顔真っ赤だろうな。
「……一緒に答えてみるか?」
「はい」
「「
………もう恥ずかしくて恥ずかしくてどうしようもない。
「……ちなみにいつからそう思ってた?」
「…多分貴方に最初に婚約をお願いしに行った時からです。零司さんは?」
「……そうだな、気づいたら惚れてた」
「…ずるいです」
そう言って笑いあった。いいなぁ、こういうのんびりした時間。長らく忘れてた気がする。
そのままのんびりしていると何やらレキが真面目な顔をして何か言いたげなんだが…?
「零司さん」
「はいはい、零司だよ」
「この際です。一つだけ零司さんにお詫びしなければならないことがあります」
「お詫び……?」
なんだろう、全く思い当たる節がない。何かされたっけ……?
「もう今からひと月くらい経つんでしょうか、私が零司さんに最初に婚約をお願いした日に戦ったじゃないですか」
「あぁうん、ひと月経つのか。それで?」
「あの時、本当は私の負けでした」
「はい?」
いや待て待て、流石に話についていけん。もう少し話を聞こうか。
「あの時、右カフスのボタンがどうなったか覚えてますか?」
「あぁ、2つまとめて吹っ飛んだやつね。それで?」
「本当はあそこは1つずつ飛ばさなければいけないところなのに2つまとめて飛ばしてしまった。あれは
あぁそういうこと。あの時は俺の思考的には神業だと思ったのだが、本業狙撃科のレキにとっては負けも同然のものだったのか。
「いいんじゃない?あれがあったおかげで今があると思ってさ。もしあれが
「……ありがとうございます。最後に1つよろしいですか?」
「今日のレキは本当におしゃべりさんだな。そんなレキもだんまりなレキも可愛いけどな」
「またそんなことを言って……零司さんの方が素敵です。それで最後に何ですが、夢。見つかりました」
あぁ、いつか調子乗って言ったっけか。なりたい自分を常に描けーだとかそんなこと。今思うと恥ずかしいな、これ。
「へぇ、俺でよければ手伝うぜ」
「はい。それで私の夢は」
そこでじっと俺の顔を見る。もう慣れたぞ、もう照れ……あ、ダメだこりゃ。また照れるわこんなん。
レキはそのまま真っ直ぐに、それこそレキ自身が言った銃弾のように真っ直ぐにその言葉を発する。
「私の夢は零司さんと共に歩むこと。これです」
「………」
うわ、なんだこれ。恥ずかしくって恥ずかしくって死にそう。いや昨日までゆるーく生死彷徨ってたっぽいけど。
「変なこと言いましたか?」
「……ああああ変じゃない変じゃない!ビックリしただけだ、全く…」
こんなことを本人に伝えられるのは良くも悪くもこいつくらいだろ。
敵わんなぁ、こいつには。
「わかった。その夢、俺も一緒に見させてくれ」
そう言って俺はレキに右手を差し出す。レキは少しもじもじした後、そのほっそりとした指を俺に出してきた。
「と、いうわけで。レキ、気づいてる?」
「えぇ、大分前から」
「おっけー」
そう言って、俺はリハビリがてら
「りゃりゃっ!?」「うおっ!?」「あっ!」「ちょっとお前ら馬鹿ッ!!?」「あややや!?」「あはは…」
1から順に理子、キンジ、白雪、武藤、平賀さん、ここまではなんかなだれ込んできた。最後に苦笑しながら出てきたのはいつもの優男スマイル不知火。
「おはようお前ら。こんな朝から俺に会いに来てくれたのか?勤勉だなぁ」
「おはようございますみなさん。零司さんにお見舞いに来てくれてすごく嬉しいです」
「「それで」」
「誰が提案したんだ?あんまり嬉しくってそいつの体内の水分奪っちゃいそう」
「それで積極的に乗ってきた人はどなたですか?零司さんにお見舞いに来てくれるなんて嬉しくってついうっかり
俺とレキの笑顔にほぼ全員凍りつく。不知火が唯一涼しい顔をしてるけどその実、冷や汗をかいてるのを俺は見逃さない。
そんな中始めに声を出したのは理子。主犯格だろお前。
「で、でもあっちかっこよかったよ?『レキ、俺と一緒にいてくれ。俺の彼女になってくれ。そんでさ、お前さえよければ……大学を卒業したら、結婚してくれないか?』なんてそうそう言えないよ〜」
器用に声真似なんざしやがって。てかそう考えるとこいつら結構前からいたな。武藤もそれに続く。
「いやさ、来たらそんなことになってたからさ。邪魔かなぁ〜なんちって」
やはりというかなんというか。反省してないようです。いるかどうか知らんが神様、こいつらに罰を……俺たちが下せばいい話じゃん?
「おう確かに邪魔だな。でもそっから今さっきまで立ち聞きしていい理由にはならねえよなぁ!?アァッ!?」
「やばい!明智が本当の本気でキレてやがる!逃げるぞお前ら!」
「させると思うか??ドアの前よく見てみろよ?」
キンジはこういう時に謎のリーダシップ出すのやめた方がいいと思う。そんなんだからか知らんけど
ドアの前にはしっかりと水の防壁を張ってある。普通には抜けられないし抜けた後も容赦なく水の槍が相手を攻撃する二段構えだ。
「あややや!戦闘はあややのいないところでやるですのだー!!」
そう言って俺のベッドの下に潜り込む平賀さん。ま、こいつは後でレキにお尻ペンペンさせればいいから置いとくか。
「キーくん窓だよ、窓!」
「窓から出ても良いですよ。ただしその場合私の弾が貴女を貫きますがよろしいでしょうか、理子さん?」
「ひぃぃぃぃ!!」
レキの脅しに髪を逆立てる理子。いやお前どうやってんだよそれ。
騒ぎは武偵病院全体に広まり、矢常呂先生がすっ飛んできて全員に説教をすることでお開きとなった。
俺とレキのやり取りを録音していた理子のレコーダーは俺が没収したことを明記しておこう。
騒ぎの後、俺はレキに手伝ってもらって武偵病院の屋上まで来た。
3日も寝てると体のバランスがおかしくなってるようでレキの助けは本当にありがたかった。
「やっと、ローズリリィを捕まえたんだな」
「はい、どうですか?宿敵を捕まえた感想というのは」
「どうなんだろ。まだ実感が湧いてないってのが1つ。まだ終わってないってのが1つ、かな?」
「終わってない、ですか」
「そう。終わってない。確かにローズリリィは捕まったかもしれないけどあの無意味に小狡いやつだ、どっかのタイミングで脱獄か司法取引して出てくるだろ?それに攫われた俺の妹はまだ帰ってきてないしな」
「千花さん、ですよね?」
「あれ、教えたっけ?ま、いいや。そうだよ、千花はまだ帰ってきてない。どこで何やってんのか知らないけど家に帰ってこないってことはなんか事情があんだろ?それもこれも俺がなんとかして千花を家に帰す。それで母親にビンタさせてやるよ」
「それは違いますよ」
「ん?」
「零司さんが、じゃなくて私たちで、です。私も手伝うに決まってるじゃないですか。零司さんを独り占めできなくなるかもしれないのは少し寂しいですが」
そう言ってレキは鳶色の瞳で真っ直ぐに俺を見る。思えばこの真っ直ぐさにも惹かれたのかもなぁ。
「そっか、そうだよな」
「そうです」
「そんじゃレキ。改めて、よろしくな」
「こちらこそ、零司さん」
そう言ってどちらからともなく顔を近づけて、その距離がゼロになった。
そよそよと吹く朝特有のスッキリとした風が俺とレキの新たな門出を祝ってるかのようで、少し気持ちよかった。
そうして俺…いや俺とレキの物語はここからまたスタートするのであった。