緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

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第44話

イ・ウーの教授(プロフェシオン)ことシャーロック・ホームズとの通話を終え、考察も始めたらキリがないのでとりあえず終わらせる。

 

「んっ〜〜!!疲れたな…」

 

推理を終えてひと段落ついたときの感覚はなんというか、寝起きの感覚に近いんだよな。思考に没頭するあまりある種のトランス状態にでも陥ってるのだろうか。

だからこうしてひとしきり推理を終わらせたらノビをする。俺の習慣というか癖みたいなものだ。

 

 

……にしてもこの部屋って異様に大きいよな。俺はあてがわれた部屋をくるっと見回しながらふとそんなことを思った。使っていいと許可をもらったのは1週間くらい前だったはずだがその間俺はレキのこともあり自分のことで手一杯で一回も使ってないからな。今回は誰にも聞かれるべきじゃないと判断してこの部屋の初使用に踏み切ったわけだがいい機会だ。少し見てまわろう。

 

大きさは8畳くらいあるだろうか。かなり広いスペースには前の使用者の趣味なのか黒い防弾ソファーがL字に並べられてある。さっきまで座ってたがふわっふわの柔らかいやつだ。ソファーのそばにはこれまた恐らく防弾であろう特殊なガラスを用いたテーブルがある。

 

ソファーの奥にはベッドとテレビが1つずつある。ベッドの左には中身が空っぽな冷蔵庫が置いてあり1日2日なら生活できそうではある。洗濯機ないから完全には無理だろうが…

 

 

一言で言うならなんだろうか……そうだな、無駄に広い居住可能な応接間。これがぴったりだろうか?

 

そう思い、しばらく探索しているとベッドになにやらカラクリが仕掛けられているのを発見した。ぱっと見なにもないように見せかけてスペースを作ってその中に色々収納する感じのやつだ。

なになに…どうすれば開くものか…?普通に引いてもビクともしない。恐らく腕利きの装備科(アムド)生徒に頼んでつけてもらったのだろう、中々に手の込んだ作りになってるな。

 

「んー、これじゃどうしようもないな。一回、全体を見てみようか」

 

一旦後ろに下がり、俺はベッドの側面をジッと眺めてみる。するとベッドの右端に隙間があるのを見つけた。

 

「なるほどね」

 

俺はベッドの下部分を手にし、右にずらす。するとベッドの板が下に降りる動きをしたのでもう一度引っ張るとカラクリが解け、隠されていたものが白日のもとにお披露目となった。室内だけどな。

隠されていたものは……!!

 

「エロ本かよ……」

 

そりゃもう、何冊もエロ本がうじゃうじゃ出てきた。そりゃベッドに隠すものだろうけどその無駄な技術力を発揮するのをやめろよ、ホント。期待して損したぜ、全く。

 

俺はキンジほどじゃないけど女性の()()()()()を忌避する傾向がある。思春期の男子らしくないのは自覚してるがどうにもダメらしい。キンジみたいな病気(ヒス)持ちじゃないから保健体育とかの授業は普通に見れるんだけどな。ただこういう本や動画はムリだ。とりあえず回収だけして明日武藤にでも持ってかせるとしよう。

 

総評としては、ここを秘密の隠れ家にするのはいいかもしれない。そのくらいには評価が高い。

 

 

隠れ家(仮名)から自室に戻る前に、バレるわけにはいかないエロ本を安全に運べる車っていいなぁと再確認しつつ寮前の駐車場で武藤に連絡をかけ、自室に歩き始めた。

2コール目に出てくれるあたり根っこはいいやつだよな、ホント。

 

「もしもし、明智だ」

『おう、明智か。どうした?お前から連絡なんて珍しい』

「まぁな。時に武藤よ、明日少し時間があるか?」

 

俺の唐突な質問に武藤は少し間を空けて不思議そうな声音で返してくる。

 

『いや、空いてるけどなにか頼み事か?今なら安いぜ』

「なにが安いぜだ、全く。この前、俺が探偵科(インケスタ)棟で部屋もらったって話したろ?」

『ああ、羨ましいぜ全く』

「んで今日行って中を掃除がてら見回したらさ、その…エロ本がだな」

『ほぉ……?』

 

エロ本の声を聞いた瞬間、武藤の声が無駄にイケボになる。紳士アピールか何か?

 

「それでだな、俺には無用の長物ってやつだからお前に引き取らせたいわけなんだが……」

『明智よ…』

「ア、ハイ明智です」

 

いやいつまでその無駄イケボ続けんだよ。気味わるいぞ…

とは思ったものの、武藤の次の言を待つ。ほぼ確実にないことだが、真面目なことかもしれん。

 

『引き取り金額はいくらだ……?』

「………はい?」

『引き取り金額だ……!男の宝をタダで譲り受けるなんてこたぁ俺にはできない!ましてや先人の貴重な宝だ、ともすれば国宝級の価値があるかもしれないぞ……!』

 

ありません。あっても困るわ、そんなん。ともあれ、向こうから勝手に貸しを作ってくれるようなのでそれに乗っかるとしますか。

 

「じゃあ今度一回俺の頼みを聞いてくれ。それでいいな?」

『よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

うるさいうるさい、耳にツーンときた。そんなに欲しいものなのか、コレ(エロ本)

 

『……にしてもよかったぜ。なにがあったかまではわかんねぇけど明智、元気になったみたいで』

「あ?」

『いや別にたいしたこたぁ言ってねぇぞ?最近のお前、割とマジで辛そうだったしさ。元気そうな声が聞けてよかったってそんだけだ』

 

……ちっ、全く以ってどこまで行ってもいい奴だな、こいつ。

 

「まーな、気持ちに折り合いはつけたからな。んじゃ明日、11時でいいか夏休みだし。寮の下で待ってるぞ」

『おう!』

 

俺は携帯をしまい、自室のカードキーを使って部屋の鍵を開けて入ると、いつものようにレキがリビングでぽけーっとしていた。

 

「ただいま」

「お帰りなさい、零司さん」

「おう、とりあえず風呂場の掃除してるからなんかあったら呼んでくれ」

 

最近はレキもしっかり返事してくれるし、成長してるのかもな。

今はまだムリだけど、今日不知火に言われて気づいた俺の気持ちをいつか伝えてレキの本心の答えを聞きたい気持ちはあるもんだな。

そんなことをおもいながらいつもの癖でリビングにバックを放り投げて風呂場の掃除などといった家事に取り組むことにした。

 

……思えばここで選択をミスったのかもな。あんなことになるなんて流石に思ってなかったぜ。


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