緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

33 / 71
どうも乃亞です!
お気に入り数、150人突破しました!!いつものことながら、ありがとうございます!
対華龍組も大詰め、寝不足の零司君はしっかりと逮捕することができるのか!?!?それではどうぞ!


第31話

潜伏を始めて早60分、夜の8時半頃。華龍組の動きはまだ、ない。その間ずっと緊張感を張り詰めて待っている。狙撃をするときとかにもこういう待機状態や緊張状態ってのはあって俺は悲しいかな、慣れてはいる。慣れてはいるけど気分の良いものじゃないよなぁ。釣りで魚が釣れるのをひたすら待つってのにも似てるけど釣りほど気楽にできるものでもない。そういった独特の状況で待つ。ひたすら、待つ。

 

 

待っているとブォーッ!!っと船の汽笛が不意に聞こえ何事かと思うが体は動かさない。動いたら隠れてる意味が薄れるからな。

そういえば今日は横浜ベイスターズのホームゲームだったか。あの球場、ホームチームの誰かがホームランを打つと汽笛鳴らすことがあるからな。多分それだろう。

そう思っていた俺にインカムから無線が入る。

 

『零司さんですか?レキです。華龍組本拠地から車が2台でました。おそらく今零司さんがいる取り引き現場に行くためかと思われます。より一層気を引き締めて下さい』

『一石だ。こちらからも確認が取れた。おそらく内部は加工されているのだろうが形だけはトヨタのヴェルファイア2台だな。で、どうする?もうそろそろ頃合いだと思うんだが』

 

……ついに動き始めたか。ヴェルファイアは7人とか8人とか乗れる車だ。最悪20対1を想定して動くべきだな。

多対一の一側の基本的な動きはまず敵の(司令塔)を狙い他の奴らの判断を鈍らせるところからだな。そこからの動きは大まかに分けて2種類。1つは司令塔を失ってどう動くべきかわからずさっさと片付けられる種類。もう1つはこういった状況を想定した動きをする奴ら。後者は特に面倒だな、指示系統が乱れない軍隊は良い軍隊だし暴力団でもそうだろう。ただし、そういった時はうちの世界一の狙撃手に補助をしてもらおう。

そこまで考え俺は2人に指示を出す。

 

「明智だ。まずマサト、お前は申し訳ないけどまだ待機だ。今はまだその時じゃない。決定的なところでマサトには動いてもらう。次にレキ。レキは俺が戦闘に入ってすぐはまだ攻撃をするな。俺が右手の親指と人差し指だけを伸ばした状態で上に手をやったら狙撃開始だ。そんで狙撃なんだが……お前って跳弾狙撃(エル・スナイプ)出来るか?」

『はい、三重跳弾狙撃(トリプルエル)くらいなら一ミリも的を外しません』

「お、おう…いつもお前には驚かされるな。んじゃそれを使って狙撃地点がどこからなのかある程度でいいから判断できなくさせてくれ。頼むぜ」

『わかりました』

『こっちも了解した。タイミング逃すなよ?』

「もちろん」

 

指示系統が乱れない軍隊の弱点と言い切れるかどうか微妙だけど一応弱点は出処の分からない攻撃。そういう面では狙撃ってのがこれほど適しているものもない。その狙撃手がうまいなら尚更だ。

 

『標的、そろそろ取り引き予定地に着きます』

 

10分するかしないかでレキの声がインカムに響く。抑揚があるわけじゃないけど声、綺麗だよなコイツ。聞き取りやすい。

 

「了解。あとは手はず通りに」

『はい』

 

それだけ伝え俺は細心の注意を払い、車が到着するのを待つ。ほどなくして先ほどの報告通りのヴェルファイアが波止場に到着し、中からぞろぞろと出てくる出てくる。

あとは取引先の中国系マフィアさんにご登場いただいてまとめて逮捕と行きたい所だ。

 

 

『零司さん、海の中から潜水艦のようなものが来ました。数は2隻。おそらく取引先のものかと』

 

あれから10分ほど待ち続けているとレキからの報告が来て、同時に俺は苦虫を噛み潰した顔をする。どうやって来るかとおもったらそれ(潜水艦)か、また厄介なものだ。

 

「お、来ましたね。あなた方が取引先の藍幇(ランパン)の方々ということでよろしいですかね?」

(シー)。そっちこそ華龍組でいいアルか?これが(ブツ)アル……何してるネ?早く持ってくるヨロシ」

 

そういってランパンと名乗った中国訛りっぽい発音の少女は側に控えていた奴を使って取り引きする物を持ってこさせるようだ。ならそこで強襲開始だ。

俺はインカムで指示を通す。

 

「明智だ、マサト準備はどうだ?」

『一石だ。いつでもいけるぜ、後は明智の指示(オーダー)1つで動けるよ』

「いいねぇ。んじゃこっちはそろそろ取り引きが始まるからカチコミかけるぜ。インカムを切らずにそのままにしておくから、マサトはこっちの強襲開始を確認したら強襲開始で行こう」

『了解だ、キッチリ決めさせてもらうとしよう』

 

よし後は捉えるだけ。しっかりと手ぬかりなくやっていこう。

 

「これが注文の品アル。チャカにドスによみどりみどり!キヒヒ、しっかりクスリもあるネ」

「注文通りだな、よし代金を支払うとしよう」

 

ヤクザは予め持ってきていたらしいお金を少女に渡し、少女もそれを受け取った。うん、ここしかないよな?そう判断した俺はマサトに小さく「スタートだ」と呟き、反応を待たずに小太刀を一本抜いて走り出す。標的はもちろん、奥で4.5人に守られてえっらそーにしてる幹部らしき人。そして銃はまだ、出さない。音が出る都合上今のタイミングには不向きだからな。

 

素早く幹部を守るヤクザの側頭部に蹴りを打ち込み、そのまま幹部の方へ蹴り飛ばす。

 

「ひっ!?」

「はいはいすんませんねっ…と」

 

突然の出来事でビビりまくりの幹部さんの腹めがけ峰打ちでフルスイングする。そんな使い方で良いのかってツッコミくるかもしれないけど気にしない。哀れな幹部はそのまま吹っ飛び護衛の幹部の1人を巻き込んでぶっ倒れた。

 

「はいはい、という訳で武偵です。密輸とかその他諸々で逮捕しまーす。大人しく投降するのがオススメですよ」

 

残された護衛のヤクザを適当に小太刀でいなし、ベレッタPx4ストームを取り出し、取り引き現場を見やる。取り引きをしていたヤクザは茫然自失といった感じで…ふーん、ランパンとかいう少女の方はビックリはしてるもののどこか楽しげ。なーにがそんなに楽しいのか。

 

「キヒヒッ、日本(リーベン)の武偵は腑抜けばかりとおもていたけども良さそうなのいるアルネ。しょうがない、これ以上の取り引き(ビジネス)は中止にするヨ。引き揚げるネ、再見(ツァイツェン)

 

そういって煙幕(スモーク)らしきものを投げ、本当にランパンと名乗った連中は引き揚げるようだ。追おうかと思ったが華龍組の方が優先だな、これなら。

 

「チッ、煙幕なんざ出しやがって」

そう言い、俺は即座に超能力を発動し水を放ち煙を落とす。視界は再び正常(グリーン)に戻ったがランパンはもうすでに逃げたようだ。しかし、水の中。倒すことができなくても策ならあるぞ?

『追いますか?』

「やめとけ。水中はさすがにお前でも狙撃範囲外だろ。……で、残された華龍組の皆々様々!全員、逮捕な?」

 

レキじゃさすがに水中は無理だろ?無理、だよな?まぁ、それは良い。とりあえず残された華龍組残り10人くらいを睨めつけると戦闘の意思は残っているようで、全員迎撃態勢に入ってきた。ふーん、統制は出来てる方なのね。んじゃ、遠慮なく!

 

「そうですかい。全員敵対、か。ま、当然っちゃ当然な話か」

 

そう言い俺は一番近くにいたヤクザに向け走りつつ、左手のベレッタPx4ストームで一番遠くにいるヤクザの右肩、左膝を撃つ。警戒がわずかに薄れていたところに銃弾を浴び、ヤクザはその場に倒れこむ。

一々確認している暇はない。そのまま近くのヤクザに斬りかかり、ヤクザがそれを避けて右肩が来るであろう位置に半ば置くように銃を撃つ。ヤクザは俺の想像通りに動き、肩に銃撃を受けよろめいた。そこにトドメの峰打ちで気を失わせる。

 

ここまですると残りのヤクザは単体で挑むことの無意味さを知り複数で挑みかかるような陣形になった。うん、ここかな。

俺は即座に右手の小太刀を鞘に収め親指と人指し指を延ばした状態で上に向ける。

 

いきなりの意味不明の行動にヤクザは揃いも揃って上を向いてしまう。仕方のないことかもしれないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

キッキキンという金属音と共に陣形の中央にいたヤクザが地に倒れる。狙撃を受けたことを理解してるのかな?

と思うと何人か理解していたようで顔面蒼白になってるな。とりあえずレキに狙撃ストップを指示し相手の出方を伺う。

 

「オ、おい今の狙撃だろ?無理だ、勝てるわけねぇよこんなの」

「なっ、お前らそんなこと言ってもムショ放り込まれるんだぞ?今なんとかしねぇと俺たちに未来はないんだぞ?」

 

なんつーか敵なはずの俺の前で呑気な話をしてるなぁ。

 

「そ、そうだ!本部に連絡すれば良いじゃないか!その手があったか!」

「残念だったな、本部は俺の仲間がもう手をつけてるところだぜ?残念なことに助けに来てもらうって手も打ち止めだ。さて、もっかい投降を促すけどどうする?」

 

まるで明日の朝食をどうするか聞いたかのような気軽さで聞く。こうすることで相手よりも心理的に上だぞ、という誇示をする。

その誇示はどうやら効いたようで、残りのヤクザは全員武器を捨て両手を頭の上にあげ、ホールドアップの姿勢をとった。

 

「賢い選択、ありがとうございます」

 

俺はそう言いヤクザ全員に手錠をかけたり、ロープで縛ったりする。同時にレキに神奈川県警への連絡をしてもらい素早い対応をしてもらうことする。神奈川県警は中学の時よく協力したりしていたからそれを覚えてる人も多いだろうし、なんとかなるでしょ。

 

 

「ふう、これで最後の1人っと。誰も逃げてないし非常によろしい」

 

最後の1人を縛り上げ、俺が次にすることは海に駆け寄ること。何をするかというと、この間の実験で採用する価値はあると判断した水中感知だ。これでランパンの連中の行方を探る。

 

……っふぅ、まだこの感覚はなれないな。んで潜水艇っぽいのは……っあった。もう横須賀あたりまで行ってるとは、思ったより早いな。俺もなるべく早くやったつもりだがあそこまで行かれると流石に手を出せない…。

仕方ない。ランパンよ、今回はお前らの勝ち逃げで許してやろう、だが次は無いぞ?

俺は海面から手を引き、超能力で手に付いた海水を払いながらインカムで経過を確かめることにした。

 

「明智だー。レキ、神奈川県警は連絡ついたか?」

『はい、零司さんの名前を出したら懐かしそうな声と共に現場に急行してくださるとのことでした』

「それならよかった。マサト、今平気か?」

『はいよ〜今移動中だ。経過だろ?7割は終わった、残り20分くらいで片付けるからこっちにも輸送車の手配を頼む』

 

この短時間でもう7割制圧したのか、バケモノか?あいつは。そうなると俺も本当にやることないな。

 

「わかった、その辺は任せとけ。レキは俺と合流な、そこからだと本部を狙撃するのは無理なんだろ?マサトも終わったら合流だ、今日はもう遅いし終わったら学園島まで輸送してやる」

『わかりました、今から向かいます』

『恩にきる』

 

そこまで連絡をしてちょうど来た県警の人に懐かしそうに声をかけてもらい、ヤクザと密輸品を輸送車に送ってもらう。どうせそこまで良い品じゃないだろうしくすねたりはしない。

 

その後とことこと歩いてきたレキと本当に20分くらいで片付けてしまったマサトを車で拾い、学園島に戻る。もう時間も遅いので任務達成(クエストコンプリート)の旨だけをとりあえず高天原先生にメールで送り、詳しい調書を明日に回すことにし、久しぶりの自室での睡眠を満喫するのであった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。