緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

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第28話

桜木町駅付近のパーキングが何故か軒並み混んでいるというハプニングがあり、なんとか18時58分に着いた俺はレキとマサトを探していると…いた。いやぁ、時間前とはいえ待たせたかな?

 

「遅くなった、悪いな」

「いえ、時間には間に合っています」

「そうだな、大方駐車場が混んでたとかそんなんだろ?それでも間に合ったって所を評価するけどな」

「それならありがたいってやつだ。んでどこで食べる?俺はぶっちゃけどこでもいいんだが」

 

時間ギリギリに来た俺を寛大にも許してくれた2人には感謝、だな。

 

結局昼も食ったマクドで手を打つことにした俺たちは昼の時とは変わっていた店員にそれぞれ注文し、適当につまみながら話すことにした。

 

「んじゃ俺から行くか。俺が得た情報は、予定日とモノ、そしてそこに来る人員だ。予定日は明後日21時、おクスリと拳銃が大部分らしい。んでボスは来なくて、幹部クラスが1人だけだと。なんつーかなぁ、全体を潰すには情報不足は否めないね」

 

俺がそう切り出すとマサトがそれに続ける。

 

「なるほどね、それならいい話というべきか悪い話というべきかはわからないけど情報があるな。なんでも華龍組は薬局もやってるようだからそこを突けば壊滅に追い込めるだろ?明智の話に出てきたクスリの取り引きってのにも繋がるしな」

 

…へぇ、思った以上に大きな魚だな。釣りがいがありそうだ。でもそれだと問題があるんだが、レキの報告を聞くか。

 

「倉庫の件ですが17時23分頃に動きがあり、華龍組本拠地から出た車が倉庫の1つに止まり何やら作業をしていたようです。おそらくそこが倉庫の1つかと。……ここがその場所です」

 

そう言いレキが取り出したのはドラグノフにつけていたのであろうスコープと、横浜付近が大きく切り抜かれた地図。まずスコープを借りて見てみると、海岸沿いに1つそれらしいものがあった。何やら作業をしている男数名付きの写真で。次に地図を見るとやはり、海岸沿いにはっきりわかるバツ印。ここがその倉庫、ということだろうな。

 

「と、なると1つ問題があるな。取り引き現場をしょっぴく組と組本拠地を叩く組の2つが必要だ。取り引き現場をしょっぴくだけでは組本体はしらばっくれるだろうし逆もまた然り。スピードが大事になるな」

 

俺がそう言うとマサトはニヤリ。彼にしては珍しい表情だ。

 

「俺が組本拠地を1人で叩く。明智とレキは取り引き現場を抑えて欲しい」

「おいおい、ちょっと待て。それはいくらお前でも厳しくないか?」

「いえ、零司さん。おそらく一石さんの方法が一番効率的です。一石さんに零司さんでは純粋な戦闘力では、勝てない。それは貴方が隠している超能力(ステルス)を使っても覆すことは至難です。ならば直接的に一番の戦力の一石さんを本拠地に送ることは何も間違いでは無いと思います」

 

お、おお…レキが珍しく饒舌に喋ったかと思ったらマサト>俺とのこと。いやそれは別に構わないんだがなんで超能力を隠してるのを知ってるんだよこいつ。マサトは初めて知ったみたいな顔してるのに。

 

「そうか。2人がそう言うなら本拠地はマサトに任せるよ。但し、少しでもヤバいと感じたら通信を入れてヘルプを求めることな、これが条件だ。…てか超能力持ちってバラすなよな、こちとらバレないように隠匿してるのに」

 

そう言いつつ俺はコーラに付いた水分を超能力でまとめて手の上に集め、小さな水晶球みたいなものを作る。それを見たマサトは若干の驚きを見せ、レキは無表情…に見えてその実少し眉が動いている。

 

「マジか明智、それは知らなかったぞ。…作戦は了解した。お前らもヘルプ必要なら早めにな」

「おう、こっちは任せろ。高校世界一の狙撃手(スナイパー)に高校世界一の拳銃手(サジット)だぜ?」

「はは、それもそうか」

 

互いに冗談を交わしつつ、情報交換と食事は和やかに終わった。

 

何やら用事のあるらしいマサトと別れ、俺とレキは歩いていた。

 

「そうだ、お前に聞きたいことがあったんだよ」

「なんでしょう?」

「お前さ、どこで俺の超能力を知った?」

 

そこまで告げると俺は少しだけ雰囲気を変える。嘘を言うことを許さない、という意味を込めて。

そんな俺のことなど何処吹く風なのか、レキは淡々と答えた。

 

「風が貴方のことを超能力持ちと判断しましたし、貴方が海外で任務を受けていた時の映像も少し見ました。それで超能力を使うことを知りました」

「そうかい。…今回は良いけどさ、あんまり人の手の内をバラすようなことはしない方が良いぞ。些細なことで人は敵対するもんだ、お前も無闇に敵は作りたくないだろ?」

 

俺はそこまで言うとレキの鳶色の目を見る。レキはこくり、無表情ながらも頷いて了解の意を示してくれた。

それにしてもまた風、か。なんなんだろうな、ホント。

そう思っていたらレキの主張は終わっていなかったらしく、一言ポツリ。

 

「ですが」

「?」

「隠す余裕のないほど強い相手がいる、そのことは念頭に置いた方がいいかと」

 

隠す余裕のないほどの相手、か。真っ先に思いつくのはやっぱり怪盗ローズリリィ。てかあいつには憎たらしいことに過去の自分がすでに超能力使っちゃってるからバレてるんだけどね。仕方ないこととは言え、そこは惜しいことをしたのかな?

あるいはフランスで噂程度に聞いた超偵攫い、魔剣(デュランダル)とか怪盗リュパン一味とか?いるのか知らないけど。てかリュパン家って没落して解散したんだっけ、詳しいことは知らないけど一時的に籍を置いてたパリ武偵高の人が言ってた気がする。

そんなことをすべて考え、俺はレキにこう告げる。

 

「もちろん。超能力に限らず、俺が武偵として磨いたちからは隠すためのものじゃない。己が信じた義を通す為の力、だからな」


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