緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

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第26話

予定通り14時に俺たちは桜木町駅に集合し、ランドマークプラザのマクドナルドで少し遅めの昼食をとりつつ情報交換を始めた。とはいえ、レキの件があったから俺はそこまで情報収集できていない。レキの鷹の目とマサトの情報収集能力を頼りにさせてもらおう。

 

「んでさ、どうだ?マサトは何か掴めたか?」

「そうだね、とりあえず聞き込みを中心に情報を集めてみたが、そうだな。現地の人いわく、最近色々騒ぎが増えてるらしい。おそらく華龍組の末端の奴らだろうが、騒ぎが増えてるってことは近く何か大きな事が起こる可能性も高いと俺は見てる。倉庫を見つけられれば手っ取り早いがそれは俺よりも適任がいるだろ?」そこまで言い、マサトはレキの方をちらりと見る。

レキもこくりと頷き、それに続けるように話し始めた。

「まだ開始してから半日も経っていませんが、華龍組の付近の監視はおそらく他の組と比べても異常なくらいに堅牢でした。視認できる限り、門番のような人が2人、これは90分交代です。その次に監視カメラが少なくとも10台、それにセンサーのようなものもありました。」

…うーん、やっぱりな。ああいった奴らはバレると面倒なことをする時は異常に慎重にやるからな。んでバレそうになったらトカゲの尻尾切りの要領で末端から切っていく。一網打尽にするにはどうしたらいいんだろうな?

「それで、一石さんが言っていた倉庫についてですが、今の所はまだ動きはありません。動きがあり次第お伝えします」

そこまでレキは言うとパクリ、チキンフィレオを食べ始めた。言うべきところは言った、そういったあたりか。

「ということは俺の番よな。横浜まで足を伸ばして見たけど今の所は何もなしだ。ただし、()()()()()()()()()()()()から1週間以内には()()んじゃないかという情報を貰った。警戒は怠らないようにしなきゃな」

そう伝えるとわずかにマサトとレキがピシッと意識を張り詰めたのが分かった。流石はSランク、意識の切り替えが早いな。

「んで目下すべきことは倉庫の位置、そして取引の日時の絞り込みだな。夜は交代で監視を続ける。異論は?」そこまで聞くと2人は首を横に振ってないことを示した。

となると、ホテルの予約が必要か。俺は車内泊でも構わんがレキは(普段からそんな素振りは全く見せないが)女子だ。そんな奴を車内泊させるわけにはいかん。

 

「おいレキ。お前はホテルの予約は取っとけよ?マサトはどうするんかわからんが、お前は女子だし取っとけ」

「もう既に取ってあります。零司さんはどうなさるのですか?」

「ん?俺か、俺は車で来てるし車内泊するつもりだが」

「………」

うゅ?なーんかレキの目が冷たい気がする。マサトの方は…ってあれ、あいつトイレ行ってるんですけど…うーん、なんか知らんがピンチ?いやなぜに?

「あ、あのーレキさん?」

「はい」

「怒ってらっしゃる?」

「怒ってません、万全な状態を保つためには緊急性が今は無いためホテルに泊まって準備した方が良いと思ってはいますが」いや、めっちゃ怒ってるでしょ貴女?なんでかわからんけど。

「怒ってませんか?」

「……怒ってませんよ」答えるまでにタイムラグあったし。なんだろうな、ホント。

「…わぁーったよ、どっか泊まって準備すりゃいいんだろ?外国ならともかくまだ治安のいい日本で車上荒らしなんてそう無いだろうに」

結局無言の圧力に耐えかね、俺は折れた。圧力っていうかロボットにガン見されてるみたいな感じ。ちょっと怖かった。

フランスとかドイツにいた時は見てくれからヤバイやつ多かったから友人の組織の息のかかったホテルを使わせてもらった。途中から報酬金でフランスのちょっとした別荘を買ったけどね。

とりあえずやることは情報収集。そんで泊まるホテルを見つけること。特に後者はやらなかったら狙撃されるんじゃないか?味方にね。

 

 

情報交換と言える程のことはしてないが昼食をとって2人と別れた後、俺はさっさとホテルを取り関内方面へと車を向けた。すると…確かに何人かそっちの人がいるな。ほら、あの黒いスーツ着てる奴とか特にそんな雰囲気出てる。普通は見逃すかもしれないが耳栓みたいなのつけてるし、あれが通信機の役割をしてる可能性があるな。

俺は車をパーキングに停め、バレないように尾行を開始する。こういう時、俺の視力の良さは役に立つ。近づく必要がないからな。するとあっちは山下公園の方だろうか、そっちへと歩みを進めているな。あそこは人通りが平日でもそこそこ多いから集中しないとな、あともし尾行がバレていた時のために周囲の警戒も怠らないようにせねば。

スーツの男は山下公園のベンチに座り、カモメとかハトを眺めている。ありゃ、見込み違いか?そう思った次の瞬間、男は何か喋り始めた。ここからでは生憎聞き取れないので読唇術で読み取る。なになに…?

『ちゅうごくとのぱいぷがつながればおれたちかりゅうぐみもかんとうにはばをきかせられるからな みするなよ』わぁーお、ビンゴ!偶然だが情報ゲット、奴は華龍組の一員らしい。

その後も俺はバレないように海を見に来た観光客を装いつつそいつを監視しているとこんなことが分かった。

・中国との取引は明後日21時

・取引品はクスリと拳銃

・ボスは取引には出てこない、幹部が1人だけ来てあとは下っ端

 

ふむ、これだけわかりゃなんとかなるか。さて、そろそろお暇したいところなんだが俺はまだ動かない。いや、動けないと言った方が正しいか。俺が読唇術をしている間にそっちの方々が増えてきてしまって迂闊に動けない状態になってしまった。この動かし方は流石と言うところだな。

 

さて、どうしたものか。


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