アルシェの物語〜In the Beginning was the Word〜   作:Menschsein

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遭遇 7

<モモンガ&アルシェ>

 

 モモンガの横払いは、死の騎士(デス・ナイト)の右手に持っていたフランベルジュによって受け止められた。そして、左手に持っている大盾による打撃攻撃がモモンガを襲うとした時……

 

雷撃(ライトニング)!」

 

 モモンガのすぐ脇を、稲妻が駆け抜けていった。そして、死の騎士(デス・ナイト)の動きを一瞬だけ止めた。

 

 モモンガは、その一瞬の隙を逃さなかった。モモンガは横に流されていった自らの剣を自らの筋力で上段の構えへと移動させ、そして一気に振り下ろした。

 金属音と共に、死の騎士(デス・ナイト)の兜から突き出ている禍々しい二つの角の一本がクルクルと宙を舞った。

 

「来たか。アルシェ!」とモモンガは言いつつ、どうしようかと思案する。

 モモンガが仕掛けた攻撃は死の騎士(デス・ナイト)に軽くあしらわれて逆にカウンターを受けてしまう。逆に、死の騎士(デス・ナイト)から仕掛けてる攻撃は、モモンガの経験不足故に対応できない。

 大盾に意識をしていると、フランベルジュによって、フランベルジュに意識を集中すると、大盾によって殴りつけられる。死の騎士(デス・ナイト)は、フランベルジュと大盾の二つを用いて、そして虚実(フェイント)を織り交ぜながら攻撃をしてくる。

 フランベルジュと大盾という二択の選択肢だけではない。見せつけられた死の騎士(デス・ナイト)の足技。様々な角度から多彩に繰り出される死の騎士(デス・ナイト)の攻撃は、無限のバリエーションがあるようにモモンガには思えた。

 モモンガとしては、まだ、前衛としての役割を果たしきるには経験が圧倒的に不足しているように感じる。だが、アルシェが来てしまったのだから、仕方が無い。幸運なのは、アルシェが飛行(フライ)の魔法を使っていることであろう。アルシェが空を飛んでいる限り、死の騎士(デス・ナイト)はアルシェに危害を加えることはできない。

 モモンガは、頭を切り換えた。今回は、前衛として護衛を守るというのは、今後の課題にさせてもらおう……。まずは、協力して魔物を倒すという成功体験を積ませてもらうとしよう。

 

「モモン! お待たせ!」とアルシェは叫ぶ。

 

「よし、今から反撃の時間だ。死の騎士(デス・ナイト)よ! 我等、冒険者チーム“モモンと愉快な仲間達”が揃ったからには、最早お前達に勝ち目はない! チームの力は、(いち)タス(いち)は、二ではなく、三にも、百にもなると知れ!」と、モモンガは高らかに宣言し、背中に残していたもう一つのバスタードソードも抜き二刀流となった。その剣先は死の騎士(デス・ナイト)へと向けられていた。

 

「オオオァァァアアアアアアーーー!!」と死の騎士(デス・ナイト)もモモンガの勝利宣言に呼応するかのように雄叫びを上げる。

 

「アルシェ! 俺が奴を斬る! 最後のトドメを頼むぞ!」とモモンガは言って、再び死の騎士(デス・ナイト)との間合いを詰める。

 死の騎士(デス・ナイト)は、たとえ、第十位階の魔法を受けたとしても、HPが(いち)で残るという、二人が協力して倒したという達成感を得るには最適な特性を持っている。

 

「トドメ? ごめん。私の魔法、あんまり効いている様子がない!」とアルシェは言うが、それに対するモモンガの返答は無かった。代わりに聞こえたのは、「”現断(リアリティ・スラッシュ)”斬り!!」というモモンの声。

 

 アルシェは、モモンの二つの剣の斬撃によって、真空波(かまいたち)のようなものが、地面をも切り裂きながら死の騎士(デス・ナイト)へと向かっているのが見えた。

 アルシェは、渾身の力を振り絞って、「雷撃(ライトニング)!」と叫んだ。

 

<フォーサイト>

 

 フォーサイトの面々は、飛行(フライ)を唱え、そして実際に空中に浮かんでいるアルシェを見て、唖然としていた。そして、死の騎士(デス・ナイト)のもとへ、そして同じ冒険者チームであろうモモンのもとへと飛んでいくアルシェの背中を見つめていた。

 

「あのお嬢さん、まじで第三位階を使えるみたいだな……」とヘッケランが呟く。

 

「そうですね。そして、あのアンデッドに放った魔法。あれは、雷撃(ライトニング)。同じく第三位階魔法です」と、ロバーデイクは解説するように言った。

 

「ということは、あの娘、ロバ—と同じ位階をあの年で使っているということ?」とイミーナが、ロバーデイクを見ながら言う。

 

「そうとしか考えられませんね。間違い無く、“天才”の部類にはいるでしょうな」とロバーデイクは、嫉妬するわけでもなく嬉しそうに答えた。

 

 そして、墓地を囲む帝国騎士、冒険者、ワーカーにも聞こえるような大きな声が響いた。

 

「よし、今から反撃の時間だ。死の騎士(デス・ナイト)よ! 我等、冒険者チーム“モモンと愉快な仲間達”が揃ったからには、最早お前達に勝ち目はない! チームの力は、(いち)タス(いち)は、二ではなく、三にも、百にもなると知れ!」

 

 それは、“釣りはいらない”モモンの声であった。

 

「おいおい、ようやく本領発揮ってわけかよ。って……、一匹倒しちまったな」と、ヘッケランは、一体の死の騎士(デス・ナイト)の体が黒い霧となり、風に消えていくのを見つめていた。

 

「凄いの一言ですね。あのフールーダ氏の魔法でも倒れる気配がなかった死の騎士(デス・ナイト)が」とロバーデイクが言う。

 

「このまま、全部、倒しちまえ! 期待のルーキーチーム“モモンと愉快な仲間達”! “釣りはいらない”モモン。そして、“美少女”アルシェ!!」

 

 ヘッケランのその言葉と共に、絶望し、青い顔をしていた墓地を囲む面々の活気が甦る。そして、“モモンと愉快な仲間達”を応援する大喝采へと変わっていったのであった。

 


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